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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

アルツハイマーのワクチン開発なるか?!

2006-06-22 19:19:02 | 認知症
1999年にアリセプト(塩酸ドネペジル)が発売されて以来、その他のアルツハイマー型認知症の治療薬はまだない。日本においてはだが。

他の国では、塩酸ドネペジル以外の薬も併用され、その結果一定の改善効果を示しているものもあるが、日本ではまだ発売されていない。

アルツハイマー型認知症の記憶・知能障害は、脳内の神経細胞末端ら出るアセチルコリンが不足し、ベータアミロイドと呼ばれるタンパク質が蓄積(老人班)して起こるといわれている。アリセプトの効果は、アセチルコリンが酵素によって分解されるのを妨害して、結果的にアセチルコリンの作用を強めることにある。
ベータアミロイドは若い頃からでも徐々に蓄積され、一定以上蓄積されてその症状が現れる。アリセプトを使用しても、アセチルコリンの働きを一時的に強めることはできるが、ベータアミロイドの蓄積を抑えるものではないため、いずれ効き目が薄れてくる結果となる。

ベータアミロイドそのものを減らすことが根本治療には欠かせず、そのワクチンの研究に力が入れられていた。しかし、これまでは臨床試験で一部の患者に髄膜脳炎の副作用が出て治験が中止されていた。
ワクチン治療薬ができるのは時間の問題と言われていたが、このほど東京都神経科学総合研究所とスイスの国際チームが開発に成功したという。

現在はまだ動物実験の段階だが、アルツハイマー病のマウスに投与してベータアミロイドの蓄積を調べたところ、投与しなかったマウスに比べて1/3~半分程度に減っていたという。
長期間投与しても、免疫に関する細胞の過剰な活性化や副作用はみられていない。

このワクチンが完成・発売されれば、アルツハイマー病は不治の病ではなく、治る病気となる。
本人や家族、また認知症ケアの関係者にとっても大きな転換点となるだろう。
本人や家族にしてみれば、大きな不安が取り除かれ、これからの生活に光が差し込むことになる。
認知症ケアの関係者にとってみれば、これまでの対応だけでは不十分で、治療につなげる役割もより重要になるだろう。早く発見すればそれだけ治療も早く行えることを考えると、『早期発見』のもつ意味合いも大きくなってくる。

今後、アルツハイマー型認知症のケアは必要なくなるかもしれない。しかし、そうなると今度は前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症などのその他の認知症に対するケアの専門性が求められてくるだろう。
その頃には、それらの認知症に対する根本治療薬もできているかもしれないが。

福祉タクシーを地域支援事業に

2006-06-13 21:07:40 | ノーマリゼーション
介護保険対象者に車への乗降から移動までのサービスを提供する「介護タクシー」は、値段も通常より安く、介助付きとあって通院に介助が必要な人にとっては大きな需要がある。しかし、現在は要介護1以上でないと利用できない。

今年4月の改正により、要介護1の人の半数以上が要支援になることから、今まで介護タクシーを利用していた人が利用できなくなり、困惑しているようだ。

2004年4月に政府が条件付きで、営業用ではない白ナンバーの車での介護タクシーを認めるように制度を改革したことから、参入業者が相次ぎ競争も激しくなっている。
許可を得ていない白ナンバーでの有償運送は「白タク」と言われ、法律で禁止されている。
しかし、介護タクシーの運転手は介護技術が一定ではなく、乗降介助を断られたり、病院までの付き添いという部分では不十分な面が多い。
実際には、要支援の人でも必要な介護タクシーが必要な人は多く、困っている人は多い。

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介護が必要な高齢者や障害者をNPO法人などが有料で自動車で運送するサービス(「福祉タクシー」)が、今年の4月から許可制になったが、使用できるのは福祉車両だけと限られている。
実際には、市町村や都道府県などが関係車らで構成する運営協議会を設置し、そこでの承認を得た上で国土交通省に許可を求めることになっている。
しかし、現状では顧客減少を恐れるタクシー業界の反発に合い、全国約2千ある市町村のうち、約1割の市町村でしか、運営協議会が設置されていない。

タクシー業界は不況で、そこでの労働者の雇用状況は安定していない現状はある。しかし、自らの利益だけを追求する姿勢だけでは、いずれ顧客は離れていってしまうだろう。
「福祉タクシー」は、介護タクシーが使えない人にとっては、貴重な資源である。そして、その市場は介護タクシーよりも大きい。
ここで、利用者を無視した状況が続くのは好ましくない。

やはり、運営協議会の設置は、公的な行政が積極的に行う必要があるだろう。運営協議会を設置した上で、市内の全車両を管轄するセンターを設置し、そこで一括して車両の手配をするという案もある。
低所得者も利用できるように、地域支援事業もしくは福祉事業に位置づけ、一定の予算がつけば利用の幅は広がるだろう。

さまざまな利用者がいる中で、当然ニーズも多種多様である。公的に裏づけされたセンターが利用者のニーズに合った車両を手配することで、公平性も得られるだろう。
タクシー業界にとってもみても、自社だけのネットワークで顧客を待つよりは、顧客獲得の機会が増えるのではないだろうか。
ぜひ、市町村には、検討してもらいたい課題である。

時間の止まった家

2006-06-05 22:00:59 | 読書感想文
私たちが普段かかわる困難事例の多くは、『家』が関連している。

ゴミに埋もれて暮らす人、一人では家で生活できなくなってしまった人、家庭内の虐待・・・
時間の止まった家 「要介護」の現場から』は、そんな人・家たちに向き合った、在宅介護支援センターの医師がつづった物語である。

この本の中で、『家』は人間の生き方の固執した部分を映し出す鏡のように表現されている。
あとがきの中で著者は、以下のように言っている。

― 私が訪問し、滞在するなかで見えてきたのは、いわゆる社会的に「典型的な家庭」「標準的な家庭」を目指した、「家」に縛られた人々ほど、自分の家庭にジレンマを抱いてうまくいっていなかったし、反対に、無理せず自分たちなりに身の丈にあった「家」を築き上げてきた人々ほど、家族機能がうまく働いた、落ち着いた家庭を持ち、満足しているという事実であった。―

人は、わが生活において、少なからず理想を持っている/持っていた。
叶えられなかった理想が、大量のゴミ、暴力、何十匹もの猫、ホームレスなどさまざまな形で表れるのかもしれない。
そしてさらに、理想がいびつな形として表れた家に固執していく・・・。

さまざまな事例を通しながら、家の素晴らしさ、家という理想が持つ魔力に触れてみてはいかがだろうか。