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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

「負担増」で退所0.4%

2006-09-14 21:01:58 | 介護保険
昨年10月に介護保険施設(特養、老健、療養病床)の食費と居住費が自己負担になったことにより、「負担増」を理由に施設を退所した人が全国で少なくとも1000人以上いることが、厚生労働省の調査で明らかになった。

調査は、都道府県と全国の市区町村に、これまでに各自治体が把握した退所者数の報告を求め、24県44市区町から回答を得たもの。
それによると、退所者数は1267人で、調査した施設の入所者に占める割合は0.4%であった。利用者の所得段階では、低所得者ではない一般の所得層が大半を占めたという。
退所者のほとんどが、在宅サービスの利用などにより自宅での生活が可能な人や、より居住費の安い相部屋や他の施設に移った人ということで、厚労省は問題にはならないとしている。

低所得者でないとはいえ、「負担増」を苦にしたことには変わりない。介護保険施設においては、負担が増えたとはいえ、全体の費用は年金額から払えないほどにはならないのが現状だ。
数が少ないことと、深刻な状況が少ないことで、厚労省も問題視していないのかもしれない。しかし、療養病床23万床が整理されることになる6年後に、同じように暢気なことを言うことができるだろうか。

療養病床の転換先は有料老人ホームである。
有料老人ホームの利用料は、安くて1ヶ月13万円からである。上を見ればきりがない。そのような値段になったときに、「負担増」を苦に退所せざるを得ない人がどれほど出てくるのか。
今回の調査結果を違った角度から見ると、近い将来の深刻さが滲み出してくるようである。

そもそも国のねらいは、より介護報酬が低い在宅サービスへの移行である。
厚労省の調査結果では、入院患者のうちの何割かが在宅での生活が可能だとしているが、果たしてそうだろうか。
療養病床では長期入院患者が多く、家を長く空けている人も多いだろう。また、障害を持った状態で生活できるような環境(内も外も含め)ではないかもしれない。
そのような人が在宅に戻るためには、適切なケアマネジメントが欠かせない。また、家族や地域の見守りの目も必要になってくるだろう。認知症があればなおさらである。
そして何より、本人が家で「生活をしたい」という意欲が欠かせない。生活がない入院生活を長く経た後、意欲を取り戻すことができるのか。家は患者を暖かく迎え入れてくれるのか。乗り越えるべき壁は多い。

以前も書いた通り、療養病床が転換されること自体は賛成できる。しかし、お金がなければ施設に入所したり、病院に入院することができない社会は反対だ。

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