What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

知ってる?在宅療養支援診療所

2006-10-28 18:36:48 | シリーズ 医療制度改革
在宅療養支援診療所がスタートして、7ヶ月が経過しようとしている。全国の一般診療所のうち、約1割が届け出をしているというが、その存在はなかなか実感することはできない。
それもそのはずで、地域によっては届け出をしている診療所がないところもある。都道府県別にみると、10倍以上の開きがあり、都市部に偏在していることがわかっている。

「最期を自宅で迎える」ことを支えるための診療所ができたものの、現状では、これまでの往診を大幅に増やすことは人員的にも難しいのが現状だ。
また、連携先の医療機関や訪問看護ステーションを設定する必要があり、新たに取り組もうとする診療所にとっては、これまでのネットワークの有無が大きく影響する。
実際に届け出はしたものの、条件の厳しさや患者への負担(診療報酬が上がる分、患者負担も上がる)のため、実際には行っていないところもある。
私たちが地域において、在宅療養支援診療所の存在を実感できないのは、この辺りに理由があるのだろう。

自宅での最期を望む人は多い。しかし、現状ではその人たちが安心して自宅での最期を迎える仕組みには至っていない。
在宅での看取りを支援する診療所を増やすために、手厚い診療報酬を設定したものの、その1~3割は患者の負担になる。当然、患者も満足できるような体制を取らなければならない。
地域の病院において医師不足が叫ばれている中、在宅医療を志す医師はどのくらいいるのだろうか。さらに、限られた空間、設備、人員体制の中で患者を看取るためには、医師の経験、幅広い知識が欠かせない。
それだけではない。在宅で最期を迎えるためには、さまざまな関係機関の協力が必要だ。往診のほかに、訪問介護や訪問看護などの介護保険サービス、それらをマネジメントするケアマネジャーの存在も欠かすことはできない。
医師、事業所の管理者、ケアマネジャーそれぞれが対等な立場で、役割分担のもと連携する必要がある。これまでの縦型の組織が当たり前と思っている医師では勤まらない。

療養型病床の縮小に伴い、一部の患者は在宅へ戻ることが想定されている。その鍵になるのが、この在宅療養支援診療所だ。
医療費抑制に端を発しているとはいえ、多くの人が望んでいる在宅での死を支える仕組みの第一歩でもある。しかし、その存在はまだまだ知られていない。
スタートして半年以上経つのに、これだけ知られていなければ、どこかに問題があるのかもしれないと考えてしまう。
ぜひ、大きな存在にまで育ってほしい。

これからの生活を支えるためには…

2006-10-18 21:44:30 | 福祉雑記録
最近はいろんな商売があると関心していたが、亡くなった人の『遺品整理サービス』なんてものまであるらしい。

引越しをしていた会社が、遺品の整理を頼まれることが多くなったのをきっかけにサービス化したそうだ。家具などの大きいものから、食器、衣類など身の回りのものまで生活の跡をそのまま請け負っている。中には、仏具関係のものまであり、お寺さんに処分を頼むなどの適切な処理をしているとのこと。

家族の形態は時代とともに変化してきている。三世代家族から核家族へ。兄弟の数も少なくなり、夫婦共働きの世帯も増えている。
家族のかたちが変わっただけでなく、家族に対する考え方も変わったように感じるのは私だけだろうか。
自分のことは自分で。親のことよりも自分たちのこと。
遺品整理サービスがクローズアップされることは、家族のつながり、意識というものの変化を感じさせる。

成年後見制度や地域福祉権利擁護事業のニーズが高まっているのも、社会全体の方向性が個人主義に向かっているからかもしれない。
家族、親戚がいても関わることを拒否することはめずらしくない。親を思う気持ちよりも、煩わしさのほうが勝るのだろう。
日本の法律には、養護者を定める法律はない。相続権や順位などは決められていても、親族だからといって養護する義務はないのが現状だ。

判断能力が衰えても、自立して暮らしていくための方法の一つとして期待されている成年後見制度だが、問題も露見している。
制度利用者も増え、広く知られるようになってはきているが、その分さまざまな人が法を悪用するようになってきている。
代理権があることを悪用し、自らの利益になるように財産を操作したり、サラ金業者と結託し、認知症の親族からお金を騙し取ったりという事件が連日報道されている。
また、職業後見人(弁護士、司法書士、社会福祉士など)と呼ばれている人たちの数が圧倒的に不足していることも問題になっている。今後、身寄りのない人や、いても誰も面倒をみないような人が増えてくることを考えると、急務の課題である。

これからの社会において、生活を支えるための手立てはないだろうか。
金銭管理だけでみれば、地域福祉権利擁護事業の機能をより拡大・強化し、判断能力の有無に問わず、利用ができるようにすることはどうだろうか。
また、後見人が不足していることに対しては、一般市民から募集・養成した市民後見人を起用する動きはすでに始まっている。
最も有効なのは、自らが来たる時に備えておくことかもしれない。信用できる人を任意後見人にしておいたり、早めに住み換えをするなど自分たちができることはまだまだある。
制度などが分からなければ、まずは相談をすることが第一歩だろう。

改正介護保険 6ヶ月

2006-10-03 19:08:54 | 介護保険
介護保険法が改正され、この10月で6ヶ月が経ったことになる。
今回はまさに抜本的と言ってもよいほどの改正で、各自治体は準備も含め対応に追われた半年だったことだろう。
地域包括支援センターの設置、地域密着型サービスの創設、それに伴う指定・育成業務の市町村への移譲、予防給付(要支援1・2)の創設・・・。
市町村への宿題が多く、そして重い制度改正であったことを改めて感じる行政職員も多かったに違いない。

地域包括支援センターにおいては、高齢者虐待防止・養護者支援法の施行と共に、高齢者虐待の相談・対応窓口としての役割を受けることになったし、介護予防のプランを作成する中心機関として『介護予防プランセンター』と皮肉交じりに呼ばれたりもしている。
居宅介護支援事業所のケアマネジャー、が予防給付のプランを受け持つ上限が8件までという8件問題の期限は今年度いっぱいまで延長はしたが、根本的な解決には至っていない。
また、要支援1・2と要介護1の人の福祉用具貸与が制限される延長期間も9月いっぱいで終了となっている。今月以降は、各保険者(自治体や広域連合)は福祉用具販売・貸与の事業所に調査をすることになるだろう。

地域密着型サービスの中でも、特に小規模多機能型居宅介護施設が新たに創設され、自治体により整備状況に大きく差が出始めている。当初より懸念されてはいたが、自治体の取り組む姿勢によって、地域のサービスに差が出始める結果となった。
自治体が指定・育成することになった、地域密着型サービスの質も自治体の能力、やる気によって左右される時代になったのである。

改正介護保険がスタートして6ヶ月経ったが、どの取り組みも軌道には乗っておららず、むしろ課題がより鮮明に見えてくる結果になったのではないだろうか。
これからの下半期をどのように乗り切るかで、次に見えてくる山の大きさが変わってくるだろう。

あなたの勤める、もしくは住んでいる行政職員は燃えているだろうか。地方が声高に叫んでいる地方分権は福祉の世界ではすでに始まっている。自分たちの地域をよくする絶好のチャンスを逃しはしていないだろうか。
あなたの街の政治家は福祉に対して言及しているだろうか。今行っていることは、5年10年先のことだけではなく、30年50年先に影響を与えることかもしれない。
ぜひ、自分の街の行政・政治家にも目を向けて欲しい。