What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

コムスンから始まる介護議論

2007-07-06 22:47:59 | 介護保険
コムスンの一連の不祥事、更新凍結がマスコミに取り上げられてから、介護サービスのあり方がクローズアップされ、今なお議論されている。
これまでの議論をみていると、その論拠は大きく二通りに分けられるようだ。介護保険を経営の側面から捉え、経営理念のあり方を論じるもの。そして、介護保険のあり方事態に課題があり、その課題を浮き彫りにしようというもの。
前者のほうでは、利用者(高齢者)を数字としか見ない経営者の姿と、そこで翻弄される利用者を対比させることによって、ノルマ達成を課す営業的な仕組みを批判している。
後者では、それらの原因は介護報酬を切り下げられ、安い報酬で働かざるを得ない現在の介護保険のあり方にあるとし、今後介護報酬の適正化を求める制度論を展開している。

どちらの側面もあり、問題はそれらが絡み合ったところに存在すると私は思う。介護を保険という仕組みにし、サービスを選択するという市場原理に載せてしまった以上、経営感覚抜きでは、サービス事業所の存続は難しい。福祉は救貧から始まった背景があり、経営よりも理念からスタートしている。しかし、保険というのは収入と給付のバランスからなっており、破綻することは許されない。
そして、介護市場に制限なく事業所を参入させたことで質の確保が難しくなり、その締め付けを行うこと、また保険を破綻させないようにと介護報酬の引き締めを行ったことが、質の低下の悪循環を生み出していると思われる。

発端はどうであれ、介護の問題が前面に出て議論されることは歓迎したい。介護保険制度成立前は、大きな社会問題になった介護も、それ以降は国民的な議論がないまま今に至っている。
コムスンから始まった議論も、介護を自分のこととして考えるきっかけになり、介護保険の制度のあり方に関する議論まで深まることを期待したい。

今月末には参議院選挙が開催される。「消えた年金問題」に象徴されるように、社会保障が選挙の争点になると言われている。しかし、年金だけが社会保障ではない。医療、福祉、年金が揃っての社会保障であり、全てのバランスがないと安心した老後を過ごすことは難しくなる。
福祉(介護)が不安定な状況にある今、もう少し広い視点から社会保障を考えてみたい。

事後規制を読み解く ~コムスン騒動から~

2007-06-13 22:01:12 | 介護保険
コムスンの新規・更新申請を2011年度末まで認めないという通知を厚労省が出してから、これまでの間事態は二転三転し、結局はグッドウィルグループ内への譲渡をあきらめ、事業全体を売却する方向になったようだ。
グループ会社への譲渡に関しては、厚労省は「法的には問題ない」という見解を出していたが、首長や業界内からも多くの反発があり、厚労省も「法的には問題ないが、望ましくない」という見解に変わっている。

今回の判断は介護保険法に基づいたものであるが、平成18年4月の改正により、『事後規制』のルールが整備され、コムスンに適用されることになった。その『事後規制』を読み解いていきたい。

これまで、過去に不祥事を起こし指定を取消された事業者が、他県で指定申請をしたり、別法人で指定申請をしてきた場合には、指定拒否が法律に明文化されておらず、要件さえ満たせば指定を拒否することができなかった。
そのため、指定の欠格事由・取消事由に人員基準や設備・運営基準のほかに、申請者や法人役員、管理者が以下の状態である時も取消の対象となることにした。
○禁錮以上の刑を受けて、その執行中であるとき
○介護保険法その他保健医療福祉に関する法律により罰金刑を受け、その執行中であるとき
○指定取消から5年を経過しない者であるとき
○5年以内に介護保険サービスに監視、不当又は著しく不正な行為をした者であるとき

また、一旦指定を受けると、指定の効力に期限がないため、サービスの質を確保するために定期的に確認をするような仕組みもなかった。
それに関しては、指定の有効期間(6年)が設けられ、適切な事業運営がされていない場合や、取消処分を受けた場合には、更新が受けられない可能性が出てくるようになった。

コムスンの場合は、株式会社のもと全国に事業所を展開していたが、そのうち1箇所でも指定取消処分を受けると、その他の全事業所が更新の際、更新を受けることができなくなってしまうことになる。そのため、不正が発覚すると、取消処分を受ける前に、自ら事業所を廃止していた。
さらに、子会社であった日本シルバーサービスとコムスンの役員が兼任していたため、事前に役員を分け欠格事由に当たらないようにし、譲渡を行いやすくしている。
サービスの質を確保するための事後規制のルールであったが、コムスンが見事に抜け穴を示したのである。

コムスンの売却が決定してから、介護事業を手がける大手株式会社が、それぞれの持論を展開し、買取に名乗りを上げている。
その様子は、まさに介護がビジネスであることを物語っている。経営感覚は否定しないが、福祉はそもそも施しから始まっている経緯がある。介護保険は福祉ではなく、保険サービスであるという言われ方もしているが、金儲けを前提にした福祉・介護は本来の役割・あるべき姿を曇らせてしまう。
「大儀」あってこその福祉や介護であるべきだ。

要介護認定見直しなるか?

2007-02-25 12:05:24 | 介護保険
平成18年4月から新たに要支援1・2という区分ができ、全部で7段階になった要介護認定を、全面的に見直す方針を厚労省が固めた。

制度開始から、さまざまな問題点が浮き彫りになってきた要介護認定をここに来て見直すという。これまでの82項目の質問項目に、心身の状態をきめ細かく把握するため、洗濯を一人でできるかといった日常活動や損得の判断力といった認識機能などを問う項目を追加し、調査票を試作した。
試作票の追加質問は、100項目を超えることになる。炊事や掃除、ゴミ捨てなどの日常活動、人間関係を構築できるか、日中はどのように過ごしているかなど多岐にわたっている。
介護保険サービスを障害者へ拡大することも視野に、早ければ2009年度から新認定制度を導入したいようだ。

認定調査項目は、研究者が介護における負担を「1分間タイムスタディ」で計測し、綿密な計算のもと作成されている。しかし、対象者が施設における高齢者であったことも影響してか、身体状況については反映されやすいが、認知症などの精神面の症状や、それに伴う生活の状況は反映されにくいことが指摘されていた。
そこにきて、自立支援法との統合となると、知的障害者や精神障害者の状態を正しく把握する調査票ができるのか、大きな不安が残る。特に精神障害については、人のより症状も千差万別で、質問項目という枠組みを作ってしまうことで、そこから漏れてしまう可能性も考えられる。

また、現行では要支援2と要介護1の判別は、審査会による二次判定で審査されているが、審査会の作業の手間がかかり過ぎるとして、その他の区分と同様に一次判定で割り切れるように、手続きを簡素化する方向でも検討している。
要支援2と要介護1の判別に関しては、厚労省が当初から言っていた要介護1の7~8割が要支援2になるという数値に加え、各保険者の要介護認定を低く抑えたいという思惑が重なり、審査会の判断を偏らせてしまう危険性もある。現段階では、要介護1と要支援2の判別の仕方が一定ではなく、基準があいまいなままだ。手続きの簡素化だけではなく、そういった不具合も是正したいのだおう。

認知症が反映されにくいというのも、そもそも30分程度の短い訪問調査の間で、認知症や生活の実態をどこまで調査できるか大きな課題が残る。訪問調査員の技術や経験にも大きく左右されてしまう。
一方、かかりつけ医による認知症についての正しい理解と適切な鑑別がなければ、主治医の意見書にも認知症であることが記載されなくなってしまう。
新たに調査項目が追加されることで、少しでもその人の状態が正しく判断されることを願うばかりである。

『介護支援ボランティア』が与える影響とは

2007-01-31 19:08:18 | 介護保険
東京都稲城市が提案する『介護支援ボランティア控除』という制度がある。
これは、元気な高齢者が、他の高齢者のために介護支援ボランティアを行い、地域社会で互いに助け合う高齢者の社会参加・地域貢献を奨励するというねらいがある。
介護支援ボランティアをした高齢者は、申請をすると年額5,000円の介護保険料控除を受けることができる。稲城市と千代田区は厚労省に対して平成17年8月制度創設を要望したが、今回の制度改正では見送られた経緯がある。

そこで、稲城市では「「介護支援ボランティア特区」の提案を内閣府に提案している。
介護予防の取り組みにも力を入れている稲城市が、何を意図して介護支援ボランティア制度を提案したのか。内容を一部紹介していきたい。

まず、最も賛否を分けているのが、ボランティアの対価として保険料控除を上げているところである。稲城市がボランティア関係者(105人)を対象に行ったアンケート調査にも、「本来のボランティア精神に反する」という意見が寄せられている。また、ボランティア控除で減額される分、ボランティアに参加していない人がこれまでより多く保険料を負担する必要があるのではないか、ということを危惧する声もある。
それに対して稲城市としては、現状から鑑みてボランティアに参加する人数は50~100人程度(高齢人口比0.5~1.0%)であり、大きな影響はないとしている。
また、控除は申請する必要があり、単純にボランティアの対価とはなりにくいという見解を示している。

具体的には、市が指定する高齢者施設や地域支援事業において、一定回数・期間ボランティアを行い、スタンプ帳に証明スタンプを押してもらう必要がある。
ボランティアの内容も決まっており、レクリエーションの指導や参加支援、食堂内の配膳・下膳の補助、外出等の補助、話し相手、洗濯物整理やシーツ交換等の補助的な活動などがある。
在宅の介護支援ボランティアは対象となっていない。

この特区申請が認められるかは分からないが、実施に至ればこれまでのボランティアのあり方や介護保険制度のあり方に対しても一石を投じる取り組みになるだろう。
現在、各市区町村は介護予防事業や地域支援事業として、特定高齢者や一般高齢者を対象として、筋力アップ教室や栄養改善教室、口腔機能向上教室などを取り組んでいる。
しかし、現実はその教室を担う人材が少なく、またサポートできる人材も不足している状態である。そこでサポート役にボランティアを募り、ともに運営していく取り組みはなされているが、多く集まらないという声も聞かれている。

保険料控除があるということは、当然介護支援ボランティアを自治体が主導で行うということになる。現在、各地域の社会福祉協議会ではボランティアセンターがあり、ボランティアのコーディネートをしているが、社会福祉協議会の役割が多様化しているなか、どれだけ実働性があるのか疑問の声もある。
社会福祉協議会の業務には、自治体が委託している業務も多く、その運営には一定の責任もあるが、実際は丸投げしていたり、打開策がない状態もあるだろう。
自治体が介護支援ボランティアの運営をすることにより、そこに生まれる相互作用も期待したい。

ボランティアに対する対価的な性格があるという批判もあるようだが、そもそもボランティアとは何かという定義は一律に括れないところがあり、ボランティアをしている人たちがよければ、それを外野からとやかく言う問題ではないと考える。
ただ、残念なのは、在宅を支援するボランティアが控除の対象にならないことである。それを証明する人がいないというのが理由なのだろうが、本人や家族が証明者となれるような工夫をすることで、活動の幅が広がることを期待している。

特養・老健の機能見直しの先には…

2006-11-27 23:14:14 | 介護保険
特別養護老人ホーム(以下、特養)と老人保健施設(以下、老健)のあり方が見直され始めている。
厚労省は社会保障審議会に「介護施設の在り方委員会」を設置し、それぞれの機能のあり方を議論することにしている。介護保険で受けられる医療サービスの適用範囲や医師、看護師の配置基準見直しなどが重要課題となる。

特養と老健が見直される背景には、介護型療養病床の廃止・医療型療養病床の縮小がある。現在の約38万床が、2011年には15万床まで縮小されることになっている。残りは、ケアハウスや有料老人ホームに転換するような方向性は示されているが、その際の補助金などの金銭的な支援は明らかにされていない。
医療報酬、介護報酬の削減が本来の目的であることを考えると、金銭的な支援が今後期待できるかも分からない状態だ。

そのような中、これまで療養病床において比較的医療ニーズが高かった利用者が、特養や老健で対応ができるようにすることが今回のあり方検討のねらいである。
現在、常勤医師のいない特養においてはできる医療行為はほとんどない。常勤医師が一人の老健でも、療養病床で行っている超音波検査やエックス線診断などはできず、医療行為は限られている。
このため、特養、老健が受け皿となっていくためには、看護師を含めた医療スタッフの拡大が必要との指摘があるが、社会保障費の抑制圧力が続くなか、介護報酬を増加することは考えにくい。厚労省としては、外部の医療機関や往診、訪問看護といった「外部サービス」を導入したいというのが本音のようだ。

そもそも、特養や老健のあり方を見直す議論は、療養病床縮小の受け皿の一面だけしか捉えていない。
未だに多くの人が待機している両施設に、療養病床からの退院者が優先して入居できることは難しい。その人たちの行き先はどこになるのか。
在宅療養支援診療所は、受け皿の一つである自宅での生活を支える制度として、今年度から始まったが、実際に動き出しているところはまだ少ないというのが実感だ。24時間の訪問というのは、かなりハードルが高い。
前述したように、療養病床からケアハウス、有料老人ホームへ転換する際の金銭的な補助はまだ示されていない。そのような中で、移行していくのはかなり難しいだろう。

日本における施設は、外国と比較しても少なくないというデータがある。しかし、介護が必要となる前に住み替え用としての高齢者住宅は圧倒的に不足している。これは、日本人にあまり住み替えの意識がなかったこともあるし、まずは特養や老健などの介護保険施設の整備が急務であったからだろう。
しかし、これからは高齢者住宅の整備に力を入れていくことになるだろう。その手始めとして始まっているのが、公営住宅の建替えである。現在、古くなってきた兼営住宅や市営住宅を建て直す際に、1階部分にデイサービスやヘルパーステーション、配食サービスなどの介護保険サービスの拠点を整備し、社会福祉法人等に運営を委託するケースがみられ始めている。
住居の何割かは単身独居の高齢者住宅とし、見守り体制を作っていくことになる。こうすることで入居している高齢者は安心を買うことができるし、安易に施設に入居することなく、自宅での生活を継続することができる。

このような高齢者住宅は、これから高齢者となる世代にはさほど違和感なく受け入れられるのではないだろうか。選択の幅を制限するだけではなく、私たちの選択の幅が広がるように整備をしてもらいたい。

改正介護保険 6ヶ月

2006-10-03 19:08:54 | 介護保険
介護保険法が改正され、この10月で6ヶ月が経ったことになる。
今回はまさに抜本的と言ってもよいほどの改正で、各自治体は準備も含め対応に追われた半年だったことだろう。
地域包括支援センターの設置、地域密着型サービスの創設、それに伴う指定・育成業務の市町村への移譲、予防給付(要支援1・2)の創設・・・。
市町村への宿題が多く、そして重い制度改正であったことを改めて感じる行政職員も多かったに違いない。

地域包括支援センターにおいては、高齢者虐待防止・養護者支援法の施行と共に、高齢者虐待の相談・対応窓口としての役割を受けることになったし、介護予防のプランを作成する中心機関として『介護予防プランセンター』と皮肉交じりに呼ばれたりもしている。
居宅介護支援事業所のケアマネジャー、が予防給付のプランを受け持つ上限が8件までという8件問題の期限は今年度いっぱいまで延長はしたが、根本的な解決には至っていない。
また、要支援1・2と要介護1の人の福祉用具貸与が制限される延長期間も9月いっぱいで終了となっている。今月以降は、各保険者(自治体や広域連合)は福祉用具販売・貸与の事業所に調査をすることになるだろう。

地域密着型サービスの中でも、特に小規模多機能型居宅介護施設が新たに創設され、自治体により整備状況に大きく差が出始めている。当初より懸念されてはいたが、自治体の取り組む姿勢によって、地域のサービスに差が出始める結果となった。
自治体が指定・育成することになった、地域密着型サービスの質も自治体の能力、やる気によって左右される時代になったのである。

改正介護保険がスタートして6ヶ月経ったが、どの取り組みも軌道には乗っておららず、むしろ課題がより鮮明に見えてくる結果になったのではないだろうか。
これからの下半期をどのように乗り切るかで、次に見えてくる山の大きさが変わってくるだろう。

あなたの勤める、もしくは住んでいる行政職員は燃えているだろうか。地方が声高に叫んでいる地方分権は福祉の世界ではすでに始まっている。自分たちの地域をよくする絶好のチャンスを逃しはしていないだろうか。
あなたの街の政治家は福祉に対して言及しているだろうか。今行っていることは、5年10年先のことだけではなく、30年50年先に影響を与えることかもしれない。
ぜひ、自分の街の行政・政治家にも目を向けて欲しい。

「負担増」で退所0.4%

2006-09-14 21:01:58 | 介護保険
昨年10月に介護保険施設(特養、老健、療養病床)の食費と居住費が自己負担になったことにより、「負担増」を理由に施設を退所した人が全国で少なくとも1000人以上いることが、厚生労働省の調査で明らかになった。

調査は、都道府県と全国の市区町村に、これまでに各自治体が把握した退所者数の報告を求め、24県44市区町から回答を得たもの。
それによると、退所者数は1267人で、調査した施設の入所者に占める割合は0.4%であった。利用者の所得段階では、低所得者ではない一般の所得層が大半を占めたという。
退所者のほとんどが、在宅サービスの利用などにより自宅での生活が可能な人や、より居住費の安い相部屋や他の施設に移った人ということで、厚労省は問題にはならないとしている。

低所得者でないとはいえ、「負担増」を苦にしたことには変わりない。介護保険施設においては、負担が増えたとはいえ、全体の費用は年金額から払えないほどにはならないのが現状だ。
数が少ないことと、深刻な状況が少ないことで、厚労省も問題視していないのかもしれない。しかし、療養病床23万床が整理されることになる6年後に、同じように暢気なことを言うことができるだろうか。

療養病床の転換先は有料老人ホームである。
有料老人ホームの利用料は、安くて1ヶ月13万円からである。上を見ればきりがない。そのような値段になったときに、「負担増」を苦に退所せざるを得ない人がどれほど出てくるのか。
今回の調査結果を違った角度から見ると、近い将来の深刻さが滲み出してくるようである。

そもそも国のねらいは、より介護報酬が低い在宅サービスへの移行である。
厚労省の調査結果では、入院患者のうちの何割かが在宅での生活が可能だとしているが、果たしてそうだろうか。
療養病床では長期入院患者が多く、家を長く空けている人も多いだろう。また、障害を持った状態で生活できるような環境(内も外も含め)ではないかもしれない。
そのような人が在宅に戻るためには、適切なケアマネジメントが欠かせない。また、家族や地域の見守りの目も必要になってくるだろう。認知症があればなおさらである。
そして何より、本人が家で「生活をしたい」という意欲が欠かせない。生活がない入院生活を長く経た後、意欲を取り戻すことができるのか。家は患者を暖かく迎え入れてくれるのか。乗り越えるべき壁は多い。

以前も書いた通り、療養病床が転換されること自体は賛成できる。しかし、お金がなければ施設に入所したり、病院に入院することができない社会は反対だ。

介護保険料払うのは20歳から?

2006-03-14 22:08:45 | 介護保険
改正介護保険制度のスタートを目前に控えて、介護保険制度の被保険者・受給者範囲に関する有識者会議が3月6日に始まった。
今後、定期的に会議を開催し、何らかの報告をすることになる。

被保険者・受給者の範囲の問題については、介護保険成立前から議論の争点になっていた経緯がある。当初から20歳から保険料を集めようとする案や、65歳から保険料を集めるとう案があるなかで、結局40歳に落ち着くことになった。
その理由は、介護保険という新しい制度において、20歳から保険料を集めることは抵抗が大きいことがあった。親に介護が必要となる40歳くらいからなら、保険料を集めることに抵抗が少ないだろう、という理由から現行の40歳からになってたのである。

今回の改正時にも、保険料徴収の年齢を引き下げるかどうかが議論されたのは記憶に新しいだろう。この時期に議論することは、当初から決まっていたことであった。障害者の支援費制度が始まったばかりということもあって注目もされたが、いくら支援費制度が介護保険制度に障害者を組み込むための制度とはいえ、早急すぎるということで今回の改正でも見送られている。

そうこうしている間に、障害者自立支援法が制定され、ますます障害者施策と高齢者施策が同じ制度で運用される日が近づいてきている。
そのような状況の中で、介護保険料の改定がおこなわれる平成21年もしくは平成24年をめどに年齢の引き下げ、給付範囲の拡大をおこなうことをめざすための有識者会議なのである。

今回の案としては保険料徴収を20歳からにし、受給範囲を0歳からにするというものが主になっているようである。この年齢設定は、諸外国において年齢で範囲を区別していないという実績からきている。
また、障害者自立支援制度により、介護保険同様、給付が拡大することが見込まれていることにも大きな影響を受けているだろう。国としては、税金を増やすことはできないが、保険料なら聴取しやすいという背景もある。しかし、使い道がしっかりしている保険料だからこそ、自分と関係ないと思っている世代からの徴収は困難になることも予想される。
20歳からになると、医療保険料に上乗せして徴収するため、今まで以上に未払いが増えることが予想されているのである。

そのようなことを心配している国を見ていると、早く20歳代の就労支援に力を入れたり、正社員を減らしパート雇用を多くしている企業に改善を求めたり、することはいっぱいあるだろうに、と考えてしまう。
国民が納得するときは、並びたてられた言い分けではなく、今後のビジョンを明確にした行動をしている国の姿を見たときであろう。

介護予防のゆくえ

2006-03-06 22:17:41 | 介護保険
ついに、改正介護保険制度が来月から始まる。
これまでさまざまなメディアで議論されてきたが、今回は抜本的な見直しとなっている。いくつかの中心的な柱がある中で、象徴的な存在はやはり“介護予防”だろう。
これまでも要支援においては、介護予防という名称は使われていたが実際は名称に伴わない部分が多く見受けられた。4月からは、名実共に介護予防が実施されることになる。

現在では新予防給付といわれている、要支援1・2に該当する制度のおいて、これまで厚生労働省から出された資料からは今後の意図や方向性が見え隠れしている。まずは、おさらいの意味も含めて制度の背景と概要を改めてみておこう。

介護保険制度が開始され6年が経とうとしているが、その利用者数は現在約400万人で、当初の2倍以上の数になっている。それにつれて、介護給付の額も跳ね上がり、このまま行くと介護保険財政が破綻しかねない状況になってしまった。
これまでの介護保険利用者の特徴としては、要支援と要介護1の利用者が全体の約半分を占め、また重度化する確立が高いことがデータとして残っている。また、介護給付の占める介護保険施設の割合が5割になるなど、在宅と施設の格差も明確になってきていた。そのため、施設給付の見直し(居住費、食費の自己負担)が先行して昨年の10月から始まっている。
これまでの運用をみてみると、介護度が上がれば施設に入所する確立も上がり、当然介護給付が増すことになる。そのため、介護保険制度が今後も安定して運用されることを目的に、介護予防を重視した制度が開始されることになったのである。

介護予防と共に改めて見直されたのがケアマネジメントである。これまでケアマネジメントについてもさまざまな議論がされてきたが、その多くがケアマネージャーの質を問うものや、課題を提起するものがほとんどであった。
確かに、介護保険制度が開始してからのこの数年でケアマネージャーの質には大きな差が出てきている。サービスありきのプラン作成や、必要のないサービスを事業所の利益のために使ったり、併設事業所のサービスばかりを使い、サービス事業所の営業部と化しているといった問題がこれまで報告されている。
厚労省もこれらの問題を重く見ているが、そもそもこのような制度にしてしまったのは、厚労省に他ならない。ケアマネージャーや居宅介護支援事業所ばかりを悪く言うのはフェアではないだろう。

介護予防マネジメントにおいては、アセスメントやプランの様式がこれまでと大きく変わる。そして何より介護予防マネジメントをおこなう主体が、新たに創設される地域包括支援センターという機関になる。
地域包括支援センターは市町村が責任を持って設営をすることになっている。当初は、そこに配属される保健師が介護予防プランを作成することとされていた。しかし、地域包括支援センターでは、要支援1・2の新予防給付からその前段階の特定高齢者までのプランを作成しなければならないため、その業務の一部をケアマネ1人あたり8人までという制約はあるが、居宅介護支援事業所に委託してもよいとされている。また最近では、介護予防プランの作成は保健師だけではなく、ケアマネや社会福祉士、経験のある社会福祉主事など地域包括支援センターに配属される専門職であれば、誰が作成してもよいという通知が出ている。

以上のような経過や、昨今出された介護予防の報酬みていると、今後の介護予防のゆくえがみえてくる。
おそらく、今後介護予防マネジメントの委託は認められなくなるだろう。現在、ケアマネ1人あたり8人まで委託できるとされているが、今後はその数が0人となってくるだろう。その次に新予防給付が介護保険給付からはずれることになるだろう。介護予防マネジメントを市町村でおこなうということは、以前の措置と同じ考え方である。厚労省の最大の関心は、介護保険制度が今後も安定的に運用されるかどうかであり、そのために利益とは縁遠い自治体においてプランを作成し、サービスも各自治体の予算から出す形に持っていくように思われる。介護予防給付が極端に下げられたのは、その布石ではないだろうか。各サービス事業者で大きな減収が見込まれるなか、ゆくゆくは市町村の事業となっていくのではなだろうか。
利益とは縁遠いとはいっても、苦しい市町村財政を切り詰めるためにも、各自治体は要支援1・2が増加しないように一般高齢者施策、特定高齢者施策に力を入れることになるだろう。
おそらく、それまでの間に国から地方公共団体への税源移譲がおこなわれることにはなるに違いないが・・・

これらの予想が杞憂に終わればよいが、「民営化、民営化」と叫ばれている世の中で、介護保険の世界だけが公営の方向に向いていることを考えると、取り越し苦労では済まされないように思えてくる。
今後、制度はどちらの方向に進んでいくのか、真剣に見極める必要があるだろう。そして私たちは、利用者にとって最善の方向に進むように行動を起こさなければならない日がくるかもしれない。


介護予防は“まるめ”に ~介護報酬改定~

2006-01-29 21:46:40 | 介護保険
26日の社会保障審議会において、来年度の介護報酬改定の骨子が示された。【WAM NET】
以前から言われていた通り、介護予防における介護報酬は定額制(まるめ)となった。これにより、介護保険は新たなステージに入る。

今回の介護保険の改正は、新介護保険法といってもよいほどの変わりようで、現場においても変わることが多く、各事業所はその対応に苦慮することになるだろう。
現在の要介護認定者(要支援含む)の約半数が要支援1、2になり、新予防給付の対象となる。当然、介護サービス事業所(特に通所サービスや訪問サービス)においても、利用者の半数が新予防給付となる。介護予防に対応しないということは、半数の利用者が離れてしまうことになるため、今までのサービスに介護予防の要素を取り入れたサービスに変わらざるを得ない。

ほとんどの事業所が介護予防サービスを実施することを想定して、申請・指定作業は簡略化される。現状のサービスの利用者数や時間の枠などを変更しなければ、簡単な申請をすれば、「介護予防・・・・・」という指定を得ることができる。
しかし、そのためには現状の日常生活支援の他に、運動器機能向上、栄養改善、口腔機能向上などの選択サービスをつけなければならず、利用者はそこからサービスを選ぶことになる。介護報酬はサービスを整えると、一人あたりの定額を得ることになる。つまり、サービスを全員に提供しなくても報酬は入ってくるということになる。
他にも小規模多機能介護も定額制になるため、事業所には登録人数かける定額の介護報酬が入る。

介護報酬が定額になることで考えられるのは、介護報酬だけをもらって、サービスをまったく提供しない事業所が出てくるのではないか、ということだろう。もしかしたら、あまりサービスを利用しない人ばかりを受けつけるような事業所も出てくるかもしれない。今までの流れをみていると、どうしてもデメリットばかりに目がいってしまう。
そこでケアマネージャーの存在が重要になってくる。ケアマネは、利用者に合わせてたてたケアプランにそって、サービスが提供されているかどうか、本人の望み通りにサービスが提供されているかを、これまで以上にモニタリングする必要があるだろう。

介護報酬が定額制になることのメリットは、本当に必要な人たちが必要な分だけサービスを使えることにある。新予防給付の対象者は、自分の意見を言える人たちが多い。まして、これから権利意識を強く持った高齢者が増えるなかで、自分の望み通りのサービスが提供されなければ、利用者の立場として強く訴えてくることになるだろう。サービス事業所としては、運営に直接響く意見だけに無視はできなくなってくる。
必要のある人にサービスが行き渡るということは、必要のない人には無理にサービスを使うことはなくなるということだ。所属事業所とケアマネのいびつな関係による影響も考慮に入れているのかもしれない。

ただ、事業所にとっては厳しい局面である。新たなサービスの追加のために、人の雇用を考えなければならず、かといってそれを補えるだけの報酬があるわけでもない。これだけの大きい変化を乗り越えるには、それなりの体力(資力)が必要になる。
今回の改正は、サービス事業所の格差を生むような結果になってしまうような、本末転倒な改正になりかねない危険をはらんでいる。