22日に改正介護保険法が成立した。これまで何度も話題になってきた介護保険法の改正が、これでひとつの山場を越えたことになる。まだまだ決まっていないことも多く、話し合いの余地は残されているが、方向性は明確になった。
今回の改正は、“筋トレ”というキーワードに象徴されるように、「介護予防サービス」が重要なポイントになっている。介護保険がスタートして5年が経ち、利用者が急速に増えたことにより、財源不足が深刻な問題となっていた。そのため、今後制度の適切な運用を主眼に置き、これまで介護保険法の中で位置づけられてはいたが機能していなかった介護予防に焦点を当て、制度を見直したのが今回の改正法である。
改正の方向性は納得できるが、具体的なことが決まっておらず不透明だったことと、“筋トレ”という一瞬高齢者にはそぐわないように思える言葉が先行してしまい、不安の声と反対論が多かったし、現在も状況はあまり変わっていない。
不安な点として挙げられているのが、新しく創設された「介護予防サービス(新予防給付)」に該当する高齢者。これまでの要支援(要支援1に相当)に該当する人と、要介護1の中から要支援2になる人は、これまでの「介護給付」から「新予防給付」に切り替えられることになる。その数は全国で約200万人程度といわれ、要介護認定を受けている人(約400万人)の半数にのぼる。その人たちが、これまでのケアプランセンターなどから地域包括支援センターに移行することになる。今回の改正で新たに創設される地域包括支援センターに、それだけの人数が移行したところで大きな混乱が予想されるのは必至である。また、これまでのケアマネとの関係性は途切れ、新たに地域包括支援センターに常駐する保健師と主任ケアマネージャーの手に委ねられることにもなる。これでは、利用者が不安に思うのも当然といえる。
ただ、現実的には、それだけの人数を地域包括支援センターで受け持つのは不可能に近いため、これまでのケアマネと協力しながら進めていくことになるだろう。
また、利用者によっては、これまでのサービスが受けられなくなってしまうのではないか、という不安が多くあるが、これに対しても、無理矢理筋トレや予防ホームヘルパーのサービスに移行することはない、と厚労省も回答している。当然といえば当然である。では、地域包括支援センターの役割とは何であろうか。
“介護保険制度のお目付け役”と表現できるのではないだろうか。つまり、これまで問題とされてきたケアマネの質や新たな介護予防がきちんと運営されるかどうかを、監視・サポートしていく役割を大きく求められることになるだろう。地域包括支援センターは市町村が運営することになっている。実際ほとんどがこれまでの在宅介護支援センターのように委託し、市町村が運営協議会を設置し運営に当たることになる。そこで、介護予防を受け持つということは、介護予防は市町村で責任を持つということである。これまで多くの民間事業者が参入してきたが、5年経った今、もう一度市町村が責任をもち、介護保険の運営に力を注ごうということなのである。
地域包括支援センターには、新たな役目も具体的に任されることになっている。それは、高齢者の虐待防止や成年後見制度などの権利擁護事業である。近く議員立法で提出される高齢者虐待防止法案には、発見者の通報義務や市町村の立ち入り調査権などが盛り込まれる見通しだが、成立すると地域包括支援センターが児童相談所のような役割も担うことになるかもしれない。どうなるにしても課題は山積である。期待が大きいだけに、負担も増大することが考えられる。
しかし、改正法が成立した今、不透明な部分は残っているとはいえ、いかに運用していくかは各市町村の手に委ねられたといっても過言ではない。「介護予防サービス」は来年の4月から準備の整った市町村から順次始まり、08年度には全市町村で利用できるようになる。カウントダウンは始まっている。これからの数年間は、市町村の意識の差によって大きな差が出ることにもなるだろう。私たち高齢者福祉に携わる者は、利用者の代弁者として、市町村の動向に目を光らせるとともに、必要なら一定の働きかけをすることが求められてくるのではないだろうか。
今回の改正は、“筋トレ”というキーワードに象徴されるように、「介護予防サービス」が重要なポイントになっている。介護保険がスタートして5年が経ち、利用者が急速に増えたことにより、財源不足が深刻な問題となっていた。そのため、今後制度の適切な運用を主眼に置き、これまで介護保険法の中で位置づけられてはいたが機能していなかった介護予防に焦点を当て、制度を見直したのが今回の改正法である。
改正の方向性は納得できるが、具体的なことが決まっておらず不透明だったことと、“筋トレ”という一瞬高齢者にはそぐわないように思える言葉が先行してしまい、不安の声と反対論が多かったし、現在も状況はあまり変わっていない。
不安な点として挙げられているのが、新しく創設された「介護予防サービス(新予防給付)」に該当する高齢者。これまでの要支援(要支援1に相当)に該当する人と、要介護1の中から要支援2になる人は、これまでの「介護給付」から「新予防給付」に切り替えられることになる。その数は全国で約200万人程度といわれ、要介護認定を受けている人(約400万人)の半数にのぼる。その人たちが、これまでのケアプランセンターなどから地域包括支援センターに移行することになる。今回の改正で新たに創設される地域包括支援センターに、それだけの人数が移行したところで大きな混乱が予想されるのは必至である。また、これまでのケアマネとの関係性は途切れ、新たに地域包括支援センターに常駐する保健師と主任ケアマネージャーの手に委ねられることにもなる。これでは、利用者が不安に思うのも当然といえる。
ただ、現実的には、それだけの人数を地域包括支援センターで受け持つのは不可能に近いため、これまでのケアマネと協力しながら進めていくことになるだろう。
また、利用者によっては、これまでのサービスが受けられなくなってしまうのではないか、という不安が多くあるが、これに対しても、無理矢理筋トレや予防ホームヘルパーのサービスに移行することはない、と厚労省も回答している。当然といえば当然である。では、地域包括支援センターの役割とは何であろうか。
“介護保険制度のお目付け役”と表現できるのではないだろうか。つまり、これまで問題とされてきたケアマネの質や新たな介護予防がきちんと運営されるかどうかを、監視・サポートしていく役割を大きく求められることになるだろう。地域包括支援センターは市町村が運営することになっている。実際ほとんどがこれまでの在宅介護支援センターのように委託し、市町村が運営協議会を設置し運営に当たることになる。そこで、介護予防を受け持つということは、介護予防は市町村で責任を持つということである。これまで多くの民間事業者が参入してきたが、5年経った今、もう一度市町村が責任をもち、介護保険の運営に力を注ごうということなのである。
地域包括支援センターには、新たな役目も具体的に任されることになっている。それは、高齢者の虐待防止や成年後見制度などの権利擁護事業である。近く議員立法で提出される高齢者虐待防止法案には、発見者の通報義務や市町村の立ち入り調査権などが盛り込まれる見通しだが、成立すると地域包括支援センターが児童相談所のような役割も担うことになるかもしれない。どうなるにしても課題は山積である。期待が大きいだけに、負担も増大することが考えられる。
しかし、改正法が成立した今、不透明な部分は残っているとはいえ、いかに運用していくかは各市町村の手に委ねられたといっても過言ではない。「介護予防サービス」は来年の4月から準備の整った市町村から順次始まり、08年度には全市町村で利用できるようになる。カウントダウンは始まっている。これからの数年間は、市町村の意識の差によって大きな差が出ることにもなるだろう。私たち高齢者福祉に携わる者は、利用者の代弁者として、市町村の動向に目を光らせるとともに、必要なら一定の働きかけをすることが求められてくるのではないだろうか。