むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

NHK『アジアの“一等国”』を見た在台日本人および中青年の親日台湾人の感想

2009-05-03 01:32:14 | 台湾言語・族群
NHK『アジアの“一等国”』について、日本にいてたまに台湾に遊びに来るだけの自称「親台湾派」のウヨクは、この番組のこと媚中左翼などと決め付けているが、では台湾に長年住んでいて言語と歴史にある程度通じている在台日本人や、中青年の親日台湾人はどう感じたか?

台湾在住期間が十数年以上で北京語達者、さらに台湾語と客家語もできる日本人(もちろん政治的には緑寄りで馬政権は嫌い)は一様に「細かい点をいえばいくらでもいえるが、日本で騒がれているような意味での違和感はほとんど感じなかった」と口をそろえる。

まず在台歴長い日本人
U氏
*台湾人のあの世代でも、日本語が達者なエリートと、教育を受けなった層では、日本に対する親近感が圧倒的にちがう。日本語ができる人たちは、日本語への親近感もあるし、いろいろなことを言える。しかし教育受けなかった層にとっては、日本も国民党も同じ威張っていた外来者。もちろん国民党のほうが悪いから、相対的に日本への評価は高いが、それは戦後日本が発展したことへの評価がある。別に支配当時の記憶はそんなにいいものではない。日本にいる一部の人は、台湾人に甘い期待を抱きすぎ。
*日本語ができるエリート層の日本びいきも、最初十数年前に聞いたときは新鮮でうれしかったが、いまも同じトーンで、同じ話しかしないから、いい加減聞き飽きた観がある。日本で騒いでいる人は、十数年前にまだまだ台湾経験が薄くウブだった当時の私の感覚と同じ。台湾人とあまり深い接触をしていないだけだろう。
*(むじなも言うとおり)台湾人は台湾語(あるいは客家語)、北京語、日本語で話すとき、話す内容がぜんぜん違う。日本語で話したとき日本統治を賛美したからといって、その人がそれしか思っていないと思い込むのは、ウブすぎ。

T氏
*日本語世代といっても、日本統治時代には批判もある。そこがクローズアップされたからといって、がたがた騒ぐのは、台湾に対する度量がなさすぎると思う。騒ぐことで、台湾の歴史に目を向けさせるという効果は認めるとしても、日本をほめてほしいだけというのは、独りよがり。批判部分も受け止めることが必要。

別のT氏
*台湾人でしかも当時一握りだったエリート層からしてみたら、NHKに出られたこと自体が勲章で、特に「怒っている」わけじゃないと思う。それに、あれくらいのエリートなら、サービス精神旺盛で相手に合わせて言い方を変えて当然だし、台湾人はすべての人に良い顔をしたがる。

日本語が上級程度できる台湾人中年以下の人
K氏
沖縄との関連性にも言及していて、むしろ良い構成だったと思う。私自身は日本は大好きで、中共に支配されるなら、日本に統治されたほうがいいと思っているくらいだが、それでも、日本統治時代に台湾人に不満や批判がなかったとは思わない。あのくらいの批判は当然。しかしそれでも台湾人は親日なのは変わらない。批判されて反日だと思うほうがおかしいと思う。私が知るかぎり、日本人はもっと謙虚に他者の批判を受け入れるし、だからこそ発展できたと思うから。

H氏
私は日本が大好きだが、あの番組を見て、特に反日的な描き方だと思わなかった。逆に台湾の歴史について取り上げたことは、NHKとしては快挙だし、感謝したいくらいだ。
文句はあっていいが、台湾人としては、たとえ問題があったとしても、取り上げてくれるだけでもありがたい。むしろ文句をいわれて今後取り上げられなくなることを恐れる。

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要するに、台湾滞在歴が長くて、日本の親台ウヨクなんかよりも台湾の歴史と文化を知っている人間、もしくは「当の台湾人」の若手親日世代、しかもいずれも政治的には緑系で馬が大嫌いな人たちも、一様に番組が「媚中左翼的」であることは否定している。

というか、私がここでも述べているように、これが現在の台湾の普通の感覚。
日本統治だって今の日本人自体が戦前に戻りたくないわけだから、台湾人がそれを批判的にとらえて、「反日」になるわけがない。

というか、何よりも台湾人が親日的なのは、

一義的には、戦後日本が平和で民主的に経済的に繁栄した国になったことへの畏敬と羨望の念が第一にある。そして発展すればするほど、それを鼻にかけず謙虚に対応する一人一人としては善良な日本人の観光客やビジネスマンの姿がある。これは世界の多くの国に共通してみられる日本像だ。つまり先進国だから好まれるのだ。

二義的には、戦後の中国国民党の統治が、日本よりもタチが悪く、低劣だったから、日本が相対的にプラスに見られたに過ぎない。同じことは、オランダ統治との比較で株を上げたインドネシアにおける日本軍政、日本統治を経て戦後中国共産党に支配された旧満州地域の朝鮮族などにも見られる。「相対的親日」という現象だ。つまり、そこでわかることは日本が絶対的に良かったのではなくて、オランダや中国のほうがひどかった、ということだ。特に日本の後で中国が入ったところはそうなるのは、中国人がよっぽどひどいということなわけ。だからといって、日本が絶対良いことにならない。それは日本の前後が米国だったフィリピン、日本の後が米軍政だった韓国では、戦後一時期反日に流れたことでもわかる。米国>日本>中国・オランダということが概して言えるということ。日本は米国には劣る。

また特に台湾の場合は、韓国と違って、今にいたるまで「自分の国」を持ったことはなく、常に外来植民地体制だったから、その中で相対的に一番マシだったのが日本だということもある。民進党政権も8年の短命で終わり、「自分の国を持つ」という契機を自らつぶしてしまったのだから、映画「海角7号」で見られたように、今だにやっぱり日本が一番マシという結果になっているわけ。

そうした点を考えないで、また日本語世代エリートだけに特殊な「日本語への愛着」という点を度外視して(同じ世代で日本語ができない大多数の庶民の感情に触れないで)、ただただ台湾人は、諸手をあげて日本統治を賛美していると思っていたら、それこそ勘違いもはなはだしい。

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