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むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

今回中東に行っていた---収穫豊富

2011-06-27 18:31:40 | 中東
今回中東に行っていた---収穫豊富

6月7日夜に台北を出発して24日夜に台北に戻るまで、中東を旅してきた。
今回はカタール航空を使ってレバノン、チュニジア、カタールの3カ国を回った。
今回で4度目となるレバノン滞在が一番長く10日間(6月8日から17日)、チュニジアが5日間(6月17日から21日)、カタールが2日間(6月21日から23日)。

詳しくは追々ブログでレポートするが、要点だけをあげておくと。

★総評

*中東民主化ドミノ情勢取材が主目的だったが、非常に収穫が多かった。

*日本の津波と原発事故への関心と同情が強かった。やはりアラブ人は親日的。しかも地震のインパクトからか、日本人への認知が進んだようで、旅先で以前のように「中国人?」といわれるケースは減り、最初から「日本人?」といってくれることのほうが多かった。

*日本アニメ導入は一時代遅れ、欧州経由で時間差?ワンピース、ナルト、ブリーチの3大定番どまりで、2006年以降のヲタク系は入っていない。ただしレバノンではフェアリーテイル、黒執事あたりも入っている模様。レバノンは中東の情報センターなので、ここでアニメをもっと宣伝すれば中東全体に広がると思う。

*アラブ人はアラブ人に対して対応悪い(チュニス空港でレバノン人旅行客へ)

*wifiあったが、速度遅い

*ケータイって、飛行機で使っていいの?着陸前に使うチュニジア人、着陸するやいなや電源入れるレバノン人

*レバノン出国とチュニジア入国時に、また例の同姓同名の国際指名手配犯と間違われた。

*中国人観光客けっこう見た、台湾人皆無(この辺が外交に反映、単なる中国政府の策謀ばかりではない、台湾人の自助努力不足、90年代は台湾人はもっとがんばっていた)

*中国が格差社会で、資源を求めてがめついことをやっていることは知っているが、中東に来ている中国人が紳士的で、対米対決的な外交だから、一定の好感を持っている様子(このへんが、アラブ人の甘いところか)。なので、今後台湾と日本は、中国についてはムスリムを弾圧している無神論国家であり、イスラエルと仲がよく、ネオリベでは米国と連携している、本質的にはアラブとイスラームにとって敵国であることを宣伝していく必要があると思う。

*チュニジアは太陽光発電推進、日本も参画、ただし他の中東は原発に傾斜(イスラエル、イラン、トルコが建設、ヨルダン、UAE、シリア、エジプト、サウジなども構想)

★民主化

*やはり日本などで流れている中東民主革命関連の情報とイメージは、米国の英語メディアに歪曲されていて、実態と違っていた(完全に間違っているわけではないが)。

*フランス語メディア情報はマシ(チュニジアやレバノンはフランス語が流通)

*中東の市民社会運動は、人権運動が主体で、環境保護運動は少ない。

*1987台湾よりも韓国、インドネシアに近い、東欧を意識、東欧の団体と連携深い、イスラーム民主化のインドネシアも今後脚光浴びる?

*秘密警察など旧体制勢力がどう動いているのか不透明

*チュニジアとレバノンには、無神論やゲイの人権を堂々と主張する人がいた。

*イエメン、リビア、シリアの民主化は困難。シリアは世俗化・都市化しているが、イスラエルに近すぎる点がネックとなる。イエメンとリビアは部族社会の色が濃い。ただしイエメンは意外に社会運動が活発(特に女性人権運動)。

*各国で革命や運動の主体になっている若者は、世俗的で、自由と尊厳とパンを掲げている。むしろイスラーム原理主義は退潮しつつある。

*アラブ民主化要求側は、欧米は石油のために独裁体制を支援してきて、本質的にはアラブ民主化を支援したくはないと見ている(この点はアジアとは異なる、地政学的問題)。イスラエル問題も大きい。そのためアラブ民主化陣営は、独裁体制とともに、欧米とくに米国との対決することになる。

*アラブ民主革命の意味は大きい。欧米の研究者はこれまで中東では起こらないと思い込んでいたが、起こったからだ。

*一連の動きの本質は、尊厳と社会正義・公平を求めたもの。ネオリベの格差不公平社会への不満の爆発。したがって、この動きは欧米にも拡散する可能性が高い。民主的な社会主義的なシステムを求めている。

*アラブ民主化は、ネット、テレビ、それから伝統的口コミの3者連携プレーであって、ネットだけの力ではない。ただネットがなければ、シディブジドでのモハメド・ブアジジの焼身自殺の動きは知られることはなかった。ただ基本はアルジャジーラと口コミ。アルジャジーラは旧体制のチュニジアでは表向きは禁止だったが、衛星などで見れた。

*レバノン、チュニジア、エジプトなどの民主化運動では、国旗が振られ、ナショナルな意識が前面に出ている。

*チュニジア(場合によってはエジプトも)は現在新たな国づくりにある。

*チュニジアは、少なくとも表面的には自由な感じがした。

*チュニジアでは、今回の民主化の発端となった焼身自殺があった中部の町・スィーディーブーズィード(Sidi BouZid)(シディブジッド)に行ってきた。失業率が40%超える町だという話だったが、それほど殺伐とした雰囲気ではなかった。

*チュニジアで焼身自殺したムハンマド・アル=ブーアズィーズィー(モハメド・ブアジジ)の実家を見たが、小さく風呂などもなさそうな貧しい家だった。しかし民主化以降、政府の援助で母親はチュニス近郊の高級住宅地マルサーに住居を提供され、引っ越したらしい。

*チュニジアでは焼身自殺はこれまでも何例かあったが、今回臨界点を超えていたから爆発した。イスラームでは自殺、しかも焼身は異常なことで、それだけ尊厳が傷つけられたと受け止められた。

*チュニジアでは人権団体や学生などに話を聞いた。ビン・アリー(ベンアリ)が去った後も旧体制組織が動いていて、不透明な部分はある。しかし市民社会も相当に強く、憲法制定や過去清算などの委員会に市民団体が参与するなど先進的・肯定的な側面が強い。その意味でもまさに革命。東欧、アジアの民主化と比較するといろいろと面白いものがある。

*チュニジアの場合は、大学を出たのに就職先がないことが、不満になった。この点は他のアラブと若干異なる。

*チュニジアでは、民主革命関連のアラビア語、フランス語書籍がたくさん出ていた。

*チュニジアを代表する歌手ラティーファは、ベンアリと親しく最後まで革命を支持しなかったことで不人気。CDショップ(ほとんど海賊版)でもCDは売られておらず、名前を出すと店主は嫌な顔をしたw。レバノンでMVをよくみたことから、レバノンに「亡命」したのかも?

*チュニジアとエジプトの民主化は、韓国・台湾などと同じで、ある程度の時間がかかりそう。チュニジアは近代化・都市化・世俗化が進んでいて、米国の妙な影響も少ない分、民主化が有望。だがエジプトは複雑、不透明で、逆戻りの可能性もある。エジプトの現在の軍事政権はあくまでも暫定で、それ事態は心配することはない。エジプト軍部は兵器近代化のおかげでそれほど政治に関心があるわけではない(韓国などとの類似?)。

*チュニジアではヒズブ・ッタハリールなど数個のイスラーム過激政党は非合法、穏健派政党が最有力

*チュニジアの民主化が進めば、レバノンは、アラブで唯一の自由な社会ではなくなる。イスラエルのアドバンテージもなくなる。

★レバノン

*レバノンでは昔から念願だったLBC放映のオーディション番組Star Academy 8のスタジオ生中継を見ることができた。

*やはりレバノン女性は一番綺麗、スターアカデミーのスタジオにもたくさんの高校生から大学生風の女の子がいたが、みんな綺麗だった。その夜、ナンパする夢を見たくらいだったw。

*レバノンは4度目。物価はアラブ一高い(台湾より高いくらい)が、やはり魅力的でわくわくするところ。

*2005年のレバノンの杉の革命が、アラブ民主化の発端になったかどうかは、評価が分かれる。あるNGOの幹部は否定的だった。

*バックパッカーが多いTalal、評判が二極に分かれるが、私は良いと思う。ただ対応はアラブ的なゆとりが必要。

★チュニジア

*チュニジア全体情勢は、今のところ平穏で、治安も一部を除いて良好。中南部のガフサの治安はよくないらしい。

*チュニジア行きで、私個人としては初めてのアフリカ大陸入り。

*チュニジア女性も、世界平均よりは綺麗なんだろうが、レバノンと比べるとやはり見劣りした。

*チュニジアの物価は、レバノンの半分か3分の1.でも平均月収は3万円程度だから苦しいかも。

*チュニジアは、カルタゴなど世界遺産による観光立国だが、スンニ派が主体のためか、宗教宗派が多様なレバノンに比べるとやはり面白みに欠けた。女性の顔面偏差値も考えると、チュニジアは今後何回も行きたいとは思わなかった。

*チュニスのブルギバ通り周辺は完全にパリ10区といったところ。料理はイタリア化している。トルココーヒーすらあまりない。ただしメディーナはアラブそのものが残る。

*カルタゴの遺跡は、ほとんどはローマ以降のもので、フェニキア人のものはほとんどない(あまり意味はない)。ローマ遺跡なら、レバノンなどでもごろごろしているので、あまり目新しくはない。

*ベンアリに比べて、初代大統領のブールギーバ(ブルギバ)の評価は高い。独裁者だったが、教育普及などシステム整備に尽力したことが評価の対象となっている。

*チュニジアでよく聞かれているアラブポップスは、レバノンのもの。というか、チュニジアはフェニキア、フランス植民地つながりで、レバノンへの親近感が強い。

*チュニジア人はリビアのカダフィが嫌い。

*チュニジア人は、思った以上にフランス語ができた。特に高齢者ほど達者。若者には英語を話せる人もいる。イタリア語もできる人も少なくない。

*チュニジアの新聞は、中道リベラルなものが多い。

*チュニジア航空の便一度キャンセル、そして遅延、機内あまりよくない、本当に観光立国か?

*Sidi Bou Zidに「中国人」医師在住とか。

*チュニジア太陽光発電事業へ、日本も参画、砂漠地帯に太陽光発電は絶好
(ただしヨルダンは原発計画)

*チュニスのホテルCommodore、安いわりに、良かった。ただし英語は通じにくいが。

★カタール

*カタールは意外に物価は高くない。チュニジアと同じか、若干高い程度。これが今回不満が爆発していない原因?

*カタールはアルジャジーラに行き、旧知の人にいろいろ案内してもらった。民主化を研究する研究所を開設したり、テレビ局に人権担当デスクをおいたりして、アラブ民主化バックアップ態勢を強めている。

*アルジャジーラで知り合った人は、どういうわけかチュニジア人が多かった。

*アルジャジーラのチュニジア人キャスター、ムハンマド・クリシャーンはチュニジア民主革命を「ジャスミン革命」と呼ぶのは観光的で、むしろ「自由と尊厳のための革命」と呼ぶべきだとしていた。

*カタールは、やはり暑い。なので、ほとんどはホテルやショッピングモールですごした。


★パレスチナ問題

*カタールで、パレスチナを扱ったトルコ映画(Kurtlar Vadisi: Filistin)を見た。昨年からトルコとイスラエルの関係が大幅に悪化したこともあってか、パレスチナ寄りの映画。イスラエル人がパレスチナ人を人間として扱わず、殺しまくっている一方、パレスチナ人はユダヤ人全体を敵視するわけではないことを描いていた。それにしてもイスラエルって、あそこまでして何を守ろうとしているのだろうか?

*イスラエルは中国と同じ。かつて自分たちが侵略の被害者だったことを盾にして、いまだにそれを言い立てて、現在のより悪質な蛮行を正当化し、侵略加害者になっている点。しかも批判者をナチス、日本軍国主義の再来などと罵倒する点も同じ。昔の被害を言い立てるのは、現在の加害を正当化したいだけ。シナ人とユダヤ人ははっきりいって悪辣。

*アラブ諸国の書店で必ず見かけるのが、ヒトラーの「わが闘争」のアラビア語やフランス語や英語の翻訳本。レバノン発行のものが多い。

大国批判は立派だったが、自分を批判する自国民を虐殺しまくるカダフィの醜悪

2011-02-27 16:55:18 | 中東
リビアのカダフィ大佐、大国が支配する国連批判、米国への抵抗、中国の圧力に屈しないなど、大国に対する姿勢は立派だった。
しかしジャスミン革命にはじまった中東世界における独裁体制打倒の民衆的反抗がリビアでも起こると、狂ったように反対派に爆撃を加えるその姿勢は、もはや独裁者の傲慢と狂気と醜態しか見えない。これでカダフィも終わったな。

ギリシャは欧州じゃなくて、中東だろ!

2010-07-04 22:20:10 | 中東
デスピナ・ヴァンディのライブ場面についても指摘したように、ギリシャは欧州じゃなくて、中東だろう。
コンサートの雰囲気といい、音楽の曲調・好みといい、ほとんど中東である。
実際、youtubeで再生回数をクリックすると出てくる地域別視聴状況やコメント欄を見ると、ヴァンディはトルコやエジプトでもよく見られている。

ギリシャ発のユーロ危機が指摘されているが、そもそもギリシャをユーロやEUに入れたのはおかしい。ギリシャを入れるなら、トルコやレバノンを入れないといけないはずで、トルコを入れないなら、ギリシャも入れるべきではなかった。
昨日3日もNHKスペシャルでも指摘されていたが、ギリシャのユーロ加盟は書類偽造・帳簿操作の末のものだったようだ。

別にギリシャや中東を蔑視しているわけではない。逆だ。オスマン文化に発すると思われる現代中東文化や中東そのものはそれなりにすばらしいものがあるし、私自身中東文化は大好きだ。
もともと「欧州」ではないのに、欧州崇拝から欧州に加わりたい一身で詐称までしなくても、中東という位置づけでそのなかでの発展とか協同を目指したほうが、うまくいったような気がする。
別に欧州だけがすべてじゃないんだし。

というか、当人たちはとても嫌がることだが、トルコとギリシャって、人種も文化もほとんど一体でしょ?どこも違いはないじゃん。
ギリシャとトルコが反発しあうことが多いのは近親憎悪というべきもの。傍から見ていると、ほとんど違いはない。
「ギリシャ」というけど、古代ギリシャを人種的にも文化的にも継承しているんじゃなくて、その後はスラブも入っていれば、近世以降のオスマン支配によるトルコ・アラブ・ペルシャ系文化の受容はかなりのもの。それが音楽にも現れている。
また、ギリシャとトルコは宗教的には違うように見える。しかし、ギリシャ正教は実はトルコ以外の中東全域にひろがっているし(特にレバノンに信者は多い)、イスラームとギリシャ正教は似たところが多い。また、ギリシャは反イスラエル・親パレスチナの気風も強いようだ。

youtubeのコメント欄を見ると、トルコにもヴァンディのファンは多いようで、しかも賞賛を惜しまない。音楽が両国の憎悪を超越させているといえるかもしれない。
だとしたら、ギリシャはとっとと文化的近似性から、中東にアンデンティファイしたほうがいい。トルコが嫌なら、レバノンやエジプトと結びついてもいいではないか。
これはやはり問題になっているスペイン、イタリア南部、あるいはキプロス、それから言語的にはアラビア語の方言に違いないマルタについてもいえるだろう。

ギリシャはどうみても中東だ。欧州ではない。

エジプトのリベラル系野党が台湾来訪

2010-04-29 16:44:10 | 中東
先週米国共和党系の手引きで、エジプトのリベラル系野党と人権団体の幹部が台湾を訪問していた。国民党、政治大学世論調査センター、公民国会監督聯盟、立法院、民進党などを訪問して、突っ込んだ意見交換をした。
訪問した政党・団体は、新ワフド党から分かれたリベラル政党ガド(明日)党と、与党から分かれたリベラル政党民主戦線党、それから人権擁護の市民団体などだ。
ガドは数年前に党首が大統領侮辱の罪などで逮捕・投獄されているが、活動は続いており、台湾を訪問したのも幹事長だ。

それにしても中東政治の匙加減がいまいちわからない。
フリーダムハウスなどの統計では、エジプトの自由度は、7段階で5と1980年代半ばの台湾や韓国と同じレベル。その通りなら、もっと彼らは緊張していてしかるべきだ。
ところが、彼らについてきたアラビア語と英語のエジプト人通訳も、「政治のことは良く知らない」と用心していたが、帰ってから弾圧されないのか聞いたところ、「合法政党だし、単なるビジネスだからかまわない」とぜんぜん臆するところがなかった。
いくら野党党首が逮捕されたりしているとはいえ、ナンバー2の出入国が自由に出来ていて、それについてくる通訳もさばさばしているなんて、実はフリーダムハウスの数字よりははるかに自由というべきだろう。
また彼らに聞いたところでは、ネットに対する検閲や統制は皆無らしい。
そういえば、シリアもネットはそれほど規制されていないように見えた。

中東というところは、匙加減がよくわからない。
ただ、少なくとも欧米の自由度調査機関の数字が、中東、アラブ諸国とイランに不当に厳しすぎて、宛にならないことだけは確実だろう。

そういえば、米国共和党の斡旋で来た彼らだったら、パレスチナ問題について聞いたら、米国の裏をかくかのように、「当然パレスチナ解放闘争を支持する。それはアラブ人としては当然だ」という立場では、一致していた。わりと親米の色彩が強いはずのガドですらそうだった。
そのあたりが、アラブ人のたくましさだといえる。いくら米国の斡旋で来ていても、魂まで売らないということか。

しかし見ていたところ、エジプト人と台湾人の間はいまいちのように見えた。エジプトに限らずアラブ人は、台湾と中国を明確に区別する立場を持っているのに、台湾人は米国崇拝が強いためかどうもアラブ人に内心偏見があるのだろうか、あまり積極的に話そうとしておらず、もったいないと思った。
そういうところが、やっぱり台湾人は駄目だと思った。

カダフィ大佐はやはり素晴らしい、国連で「安保理は核保有国が特権を持つテロ組織!」と正論

2009-09-24 18:18:32 | 中東
リビアの最高指導者カダフィ大佐(フスハーで読めばムアンマル・ル=カッザーフィー、リビア方言ではモアンマル・アル・ガッダーフィー)が、国連一般討論初日の23日、国連憲章には加盟国の平等がうたわれていながら、安保理は一部、しかも核保有国の特権だけがまかり通っており、不正義なテロ組織だ!と指摘した。(下の毎日新聞の記事参照)

まったくもってその通り。

しかし、共同通信の報道 「カダフィ節」さく裂 国連一般討論演説で では最後に「カダフィ氏は、かねて欧米諸国の痛烈な批判で知られ、かつては「中東の狂犬」の異名を取っていた。」などといらんこと書いている。

この指摘は狂人ではなく、正論でしょうが!
まあ、こんなこと書いているから、共同通信は経営が駄目なんだよね。共同通信はシステムに構造的問題があるので、そのうちつぶれるだろうけど。(早く辞めてよかったw)

それに、核を持った常任理事国が国連を牛耳っている体制に問題があるというのは、確かに「まともな政治家」なら言わないのかもしれないが、それは政治家としての常識であっても、人間としてはまともではない。

アラファトが死んで、フィデルが倒れてから、世界に骨太な指導者がいなくなっていたが、カダフィだけは健在だ。

カダフィといえば、2006年5月に陳水扁のりビア訪問を受け入れた際にも、中国からの横槍に対して「お前らはアラブの敵のイスラエルと仲良くしているくせに、アラブに口出しするな!」と一喝して黙らせたこともある。そして陳水扁に対しても「アフリカ諸国と改善を図るなら側面援助する」といって、かなり台湾にシンパシーを寄せていた。(もっともこの部分、米中しか眼中にない視野狭窄の国民党政権になったおかげで、リビアとの関係は冷えているのは残念だ)

カダフィも最近は欧米との融和路線に転換したとはいえ、しかしなかなか硬骨な部分は失われていないようだ。
米国にも中国にも噛み付いて物申す指導者は、世界にはそうそういないだろう。
普通は米国に噛み付くやつは中国に擦り寄る、中国に噛み付くやつは米国に擦り寄るからだ。

その点でもカダフィは私の中のヒーローだ。チャベスなんてぜんぜん小物w。

台湾の陳水扁も実はがんばって日本と近づき、中東や中米と接近しつつ、反中と抗米を同時にやろうとしたのだが、悲しいかな台湾の民度が低いのと米国の影響力が強すぎるために失敗してしまった。これは残念だ。
いま台湾人が陳水扁を叩いているのは、米国に洗脳されているからだ。
馬英九はもっとKYで、米国の影響力を無視して対中傾斜を図っているが、こんなことやっているようでは政権の寿命は長くないだろう。そもそも中国なんて頼れる相手ではないからね(大体総人口とGDPの実数すら把握できないような中国がまともな国であるはずがない)。


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毎日新聞カダフィ大佐:「安保理はテロ理事会だ」国連総会で初演説
 【ニューヨーク小倉孝保】国連総会の一般討論初日の23日、リビアの最高指導者、カダフィ大佐が演説した。大佐は、安全保障理事会で常任理事国だけに拒否権があることなどを批判し、「安保理はテロ理事会と呼ぶべきだ」と主張した。また、国連憲章の冊子を読み上げながら、憲章の精神が守られていないと冊子を放り投げるなど「カダフィ節」健在だった。
 大佐の国連訪問と演説は初めて。オバマ米大統領の演説を、大佐はリビアの席で最後まで聞いた後、総会議長に促されて登壇。気候変動、経済危機、食料危機など現在、国連はさまざまな挑戦に直面していると説明した。その後、国連憲章を読み上げながら、加盟国に同じ権利が保障されているはずなのに一部の国が拒否権を持っていると批判し、憲章の冊子を破ろうとした。
 また、大佐は「安保理で各国が同じ権利を有するには全理事国に拒否権を与えなければならない」と述べ、「今の安保理は核兵器を所有する国が特権を持っており、正義ではない」と主張した。
 大佐は途中、「国連が認めている武力行使は世界の平和にとって脅威になる場合に限られるのに、過去の世界の戦争のほとんどは1カ国か数カ国のために行われ、国連はそれを止めることもチェックすることもできなかった」と、安保理の機能に不満を示した。

グーグルニュースにレバノンなどアラブ主要国が加わる

2009-09-09 19:10:55 | 中東
グーグルニュースにこのほど、レバノン、エジプト、UAE,サウジといったアラブ主要国が加わった。

従来はArabic http://news.google.com/news?ned=ar_me
だけだったのが、

UAE http://news.google.com/news?ned=ar_ae
KSA http://news.google.com/news?ned=ar_sa
Lebanon http://news.google.com/news?ned=ar_lb
Egypt http://news.google.com/news?ned=ar_eg

が新たにくわわった。
しかも先進国以外ではジャンル分けは「トップニュース」「当該国」「当該国が属している地域」などの順で、「経済」などは世界経済を意味しているのに、アラブ諸国のジャンル分けは先進国と同じように「トップ」「政治」「アラブ世界」などとなっている。

人口では少ないレバノンがあるのは、この国のメディアの種類の豊富さ、自由度、活発さを考えれば当然だろう。
その意味ではサウジがあるのは「?」で、そのかわり「パレスチナ」あたりを入れてほしかった気もする。米企業には無理な望みかもしれんが。

「ハマースを批判するものは、ファタハやイスラエルの擁護者」?

2009-08-21 18:40:53 | 中東
ラマダーン・カリーム

檜原転石という無知の輩が、ハマース問題で反論してきたw。やめときゃいいのにw。
ヘナチョコ革命 「むじな@台湾よろず批評ブログ」への反論~①  というものだが、中東に行ったこともなく、中東の現地感覚も知らず、アラビア語もできずに、単に映画や新聞で得た知識だけで、あまりにも図式を単純化しすぎた浅薄な素人論を展開している。やめときゃいいのに。

>そうすると、あなたの言うところの山賊・海賊と同様なゴロツキの軍事組織が停戦条件の一つを忠実に履行したことになりますが、

中東において、そんなものを忠実に履行することは、何の賞賛の対象にもなりませんが。

>その辺に矛盾はありませんか?言うまでもなく、イスラエルは停戦条件の一つ、ガザ封鎖解除も無視―─。

だから、イスラエルというのは、そういうやつらなんですが!いまさら何をいっているのやら。

>まあしかし、この意見は「ハマースをテロ組織」とする欧米の見方とどこがどう違うのだろうか?

ハマースの軍事部門と政治部門で切り分けて、あくまでも政治の中に取り込んで交渉すべきだというのが私の主張。いずれにしても、民兵なんて物騒なものは認められないよ。

>言うまでもなく、パレスチナ人はハマースを選挙で選んだのである。

「選挙」なんてものを盲信するの?あなた米帝の手先?w
ハマースが武器で脅して支持させたんだし、ファタハの買収して票を買った。
要はハマースもファタハもまともじゃないってこと。

>欧米の大好きな民主主義も、大嫌いなはずの人種主義も、イスラエルが絡むと途端に怪しくなるのはなぜ?

選挙なるものが正しく民意を反映しているはずだというあなたのナイーブな思い込みは、それこそ米国に洗脳されていませんか?

>もっとも民主主義とやらの米国は毎日侵略戦争をしている
が・・・。

だから、戦後60年以上も戦争していない先進国は日本だけ。米国なんて立派なもんじゃないよ。

>イスラエルを始め、欧米がハマースを敵視するのは、軍事組織などによる抵抗運動のためではない。ファタハがうっちゃった原理原則をイスラーム抵抗運動ハマースがゆずらないからだ。

現地事情を知らないから、白か黒かのあまりに単純化した議論に逃げ込むしかないわけねw。

問題は、米帝、シオニスト、ハマース、ファタハ、いずれもまともじゃないし、実は敵対的依存関係にあるってこと。
ハマースだって半分くらいはシオニストと裏取引しているよ。

>それは米国さえも賛成した安保理決議242(占領地からの撤退)を基本とするものだ。

安保理決議を盾に取るなら、ハマースみたいな民兵組織が存在する余地はありませんがね。すべて国連軍が仕切ればいいだけ。あんたこそ、いっていること矛盾だらけ。
国連なんて機能していないから、民兵が登場するんだろうにw。

>もしパレスチナ側がその原理原則で大団結するなら、イスラエルは必死でそれを阻止するだろう。

あ、いっとくけど、アラブ人は団結なんてできないよ。数では圧倒的多数のアラブ人が60年たっても、イスラエルを殲滅できないのはなぜか考えてみよう。
そもそも、アラブ人のいう「パレスチナ支援」なんて口先だけですから。

アラブ人は愛すべき人たちだけど、いっていることはいい加減だよ。
それを盲信する君は、なんともw。

>要するに、あなたがハマースを嫌う理由は

それはハマースが男尊女卑の極右原理主義好戦組織だから。
イスラエルでいえば、カハ並の右翼。日本でいえば「幸福実現党」「維新政党新風」かw。あなた、新風みたいなのが好きなんだねw。やっぱり右翼じゃんw。

>イスラエルにとっては問題外で、ファタハ並に妥協的ならどんなハマースでも可ということです。

「ハマースでなければ、ファタハ」という君のその単純なオツムは何とかならないか?

>だって元もと「分断して統治!」の常套手段としてイスラエルが育てのがハマースです。

その通り。 それがわかっているなら、以下の君のハマース弁護は無意味。
ハマースはイスラエルにとって都合のよい道具。そんなものを支持するあなたこそ、イスラエルの罠にはまっているだけ。
問題は、ハマースもファタハもどっちも意味がないし、選挙もまがいもの、ってこと。

>よってこれを十分理解した左翼が、ガザ大虐殺でハマースの非を言う馬鹿がいなかったとすれば、それは左翼がまだまだ利口だということです。さてあなたはどうなのでしょう?

左翼と自任する?人間が、男尊女卑の部族意識にそまった極右復古主義団体を支持するなんて滑稽のきわみだ。それこそイスラエルの罠にはまっているわけだ。
それなのに「利口」などと自惚れているのは、君が中東の複雑さをわかろうともしないからだろう。

>追記1:非暴力の理想の抵抗運動を夢見るのは勝手だが、あの危急の時に、ハマースの暴力を持ち出して、イスラエルを利する「どっちもどっち」の見解を垂れ流すのは根本的に間違っている。占領・都市封鎖、それ自体が巨大な暴力である。

日本の軍部は、ABCD包囲網を持ち出して、「日本は弱者で包囲されているから、自分たちの戦争は正義の神聖な反撃だ」といっていましたが、同じリクツですねw。
戦争当事者は、誰もが自分たちこそが正当だと主張するものですよ。
「こちらがやらなければやられる」という殺気走った君の思想は、単なる好戦主義右翼のものです。

>追記2:映画『アルジェの戦い』は暴力論の題材には格好の映画だろう。フランス人が集うカフェで爆弾が仕掛けられ爆発する。そこでは乳児のあどけない顔さえ描かれる。・・・もちろんこれにより抵抗の戦士の苦悩にまで問題は波及し、そして非暴力の抵抗運動は果たして可能なのか?そして明確な成果をあげられるのか?と身悶えする議論が続く・・・

それは、君が戦争というものを「映画」でしか見たことがなく、現実味を持っていないからだ。
実際に戦争の跡や武力戦闘の現場を目撃したら、そんなバカげたことは言わないだろう。戦争は弱者を踏みにじり、「強い男」が支配する暴力の世界。それを賛美する君は、基本的に右翼的な心情を持っているだけ。

>追記3:ハマースはともかく、イスラエルや米国に支援されるファタハの(私設)軍事組織はどう評価されるのかな?

ハマースでなければ、ファタハという、その白黒二元論は、どうにかならないか?サイードのサの字も出てこない時点で、君はモグリだし、それこそ君がパレスチナ情勢をまったくわかっていないことになる。
あとイスラエルについても、アミーラ・ハスの存在はどう考える?

君の世界観はあまりにも単純すぎる。世の中、そんな単純じゃないぞ。

>追記4:欧米のコソボ政府の承認を見ると、あなたの意見など雲散霧消しそうですが・・・。犯罪組織からの横すべりでしょ?人身売買なんかも有名・・・。

コソボ政府を犯罪組織の横滑りだと見破れるなら、どうしてハマースの恐怖政治は見過ごすんだろうね?

>追記5:爆弾闘争に参加して、刑務所で強かんなどの拷問を受けたパレスチナ人女性が登場する映画がある。

また映画かよw。君にとって、戦争や強姦や刑務所は、映画の中の仮想、空想ってわけだ。
私は少なくともゲリラの戦闘行為も、中東の刑務所の中も知っているぞ。

>私には爆弾闘争云々を言う気も起こらない。・・・それはともかく、その映画監督が言うには、イスラエルには「行政拘留」という制度があり、パレスチナ人ならいつでも刑務所に拘留できるという。

あのね、そんな制度は、一部先進国を除いた世界170カ国には、普通に存在するよ。
フランスやドイツにすら存在するわけだし。

いっとくけど、私は絶対にイスラエルは支持しないし、認めない。だから、イスラエルに入国するつもりもない。しかし、君が勾留制度を問題にするのは、君が世界に無知だということを示している。

イスラエルの問題は、ホロコーストの罪とは関係ないパレスチナ人を追い出して居座っていること。ユダヤ人差別の原罪を負った欧米がユダヤ人に土地を割譲せずに、アラブ人に犠牲を強いたこと。
これに尽きる。
その他の問題は、アラブ諸国自身にとってもっと不利な材料になるから、指摘するのは、野暮というものだ。予防拘束制度や民族差別なんて、アラブの中でも比較的マシなパレスチナ、ヨルダン、レバノンですらどんな実態か、少しはわかったうえで、モノをいったほうがいいと思うぞ。

ヨルダン映画「キャプテン・アブ・ラエド(カーブティン・アブー・ラーイド)」

2009-06-06 02:13:04 | 中東
Taipei Timesを何気に見ていたら、5日から台北の映画館「真善美」でヨルダン映画の「Captain Abu Raed」が上映されるとのことなので早速最初の上映回で見てきた。まあ、最後のツメはちょっと甘いと思ったが、心温まる話で、総じて面白かったといえるだろう。アラブ圏ではエジプト、レバノン、それからシリアあたりが映画制作の定番で、ヨルダン映画というのも珍しい。
كابتن ابو رائد (カーブティン・アブー・ラーイド)。しかし中文題名は「愛無盡 夢飛翔」って何か変。
102分で全編アラビア語ヨルダン方言。一部挨拶程度で英語やフランス語も出てくるが。
監督のアミーン・マタールカ Amin Matalqa أمين مطالقة は、IMDBによると、1976年生まれって若いじゃん!13歳で米国に移住し、米国の映画学科の卒業作品らしいが、卒業作品と考えればきわめて出来が良い。

映画のあらすじはこうだ。
主人公アブー・ラーイドはアンマン国際空港の清掃員で、やさしい性格の持ち主。
ある日ゴミ箱からパイロット帽を拾って、被りながら帰宅するところを近所(アンマン郊外の比較的貧しい地区)の子どもからパイロットだと思われてしまう。翌朝、ドアを開けると近所の子どもたちがラーイドに「キャプテン!」と呼びかけ、世界の話をしてほしいとせがむ。優しい性格のラーイドは仕方なく好きな本から得た知識や空港でパイロットから聞いた話を元に子どもたちに世界の話を聞かせる。しかしラーイドの隣に住む、家庭不和の子供ムラード(Murad)がラーイドの正体を清掃員だとばらしてしまう。
一方ラーイドは、フランス人が置き忘れた旅行かばんを持ち主に届けて、カタコトのフランス語で会話して別れたところ、近くにいた女性パイロットのヌール(Nour)に興味を持たれ、それからヌールと親しくなる。ヌールは上流階級の出身で豪邸に住んでおり、父親から建築士との縁談を進められるが断り、ラーイドの家を訪ねるなど、ラーイドに惹かれていく。
親から学校に行かせてもらえずお菓子を売る近所の貧しい子どもから、たびたび箱ごと菓子を買い取ったり、優しさを見せる。
そういう姿を見るにつけ、最初はラーイドを「パイロットだと嘘をついている」などと嫌っていたムラードも次第に惹かれていく。ムラードの父親は仕事がうまくいかないため、アル中になり、妻を殴るなど家庭内暴力をするようになる。ムラードも父親に火で熱したスプーンを手に押し付けられ、やけどさせられ、表に出てないていたところを、ラーイドに手当てをされる。ラーイドから家庭内暴力の話を聞いたラーイドは、ラーイドの父親が外で泥酔して倒れていたところを一度石で殺そうとするが、思いとどまる。しかし後日、ヌールとかけあい、ヌールにムラードと母と弟を引き取ってもらうことにして、ムラードらを逃がす。ライードはムラードの家でムラードの父の帰りを待ち、家族がいなくなってことを知り激情したムラードの父にバットで殺されてしまう。ムラード一家はヌールの家に引き取られた。その後何年かたちムラードはパイロットになった。

ヨルダンは4年前にアンマンを中心に3泊4日しか滞在したことがないが、映画でもアラブ・イスラームの中ではレバノンのついで開放的で世俗的なところ、また、ラーイドや近所の人びととの暖かいふれあいがあるところは、イスラーム圏の良さが出ていて、懐かしかった。
ただこれを鑑賞した日本人一部のブログで「イスラーム的な部分はない」みたいなことを書いていたが、挨拶では随所に「アルハムドリッラー」が出てくるし、部屋にもクルアーンの聖句の置物がアップで写されたりするなど、当たり前だが、イスラームは随所に出てくる。
また、ヌールがせっかくライードの家を訪れて、一緒にテラスに寝そべったりしながら、セックスシーンにならなかったのも、ヨルダンがいかに開放的だとはいえ、イスラーム国のゆえんかもしれない。
それから、設定ではライードの住む地区は貧しい地区となっていたが、私が見たところでは中の下か下の上といったところ。ヨルダンの本当の貧しい人たちは、あんなものではない。まあ、あまり極端な貧困を描くのは、ヨルダンの今の表現の自由度から見たらタブーだからか。ただ家庭内暴力という社会問題も描いているが。

参考:
英語公式サイト
IMDB
Captain Abu Raed - English Wikipedia
おそらく全編が見られるものに:كابتن ابو رائد
日本では2008年7月に SKIPシティ国際Dシネマ映画祭(川口市) で上映されたらしい。

映画基本データ
Directed by Amin Matalqa
Written by Amin Matalqa
Music by Austin Wintory
Release date(s) 6 February 2008
Running time 102 min
Country Jordan
Language Arabic
Cast
* Nadim Sawalha - Abu Raed
* Rana Sultan - Nour
* Hussein Al-Sous - Murad
* Udey Al-Qiddissi - Tareq
* Ghandi Saber - Abu Murad
* Dina Ra’ad-Yaghnam - Um Murad

レバノン内戦を題材にしたドキュメンタリアニメ「バシールとワルツを」

2009-03-10 03:08:20 | 中東
アカデミー賞にノミネートされたイスラエルのドキュメンタリアニメ Waltz with Bashir(直訳すれば「バシールとワルツを」、中文名「與巴席爾跳華爾茲」) が台北・西門町の真善美で2月27日から上映されているが、あまり客の入りも良くなく、そろそろフェードアウトしそうなので9日夜見に行った。
レバノン内戦中にイスラエルが、キリスト教右派カターイブ(ファランヘ)に肩入れしてレバノンに侵攻した際、従軍した人にインタビューし、さまざまな記憶を引き出しながら、戦争の悲惨さを訴えるドキュメンタリータッチのアニメだ。時間は90分。
バシールは、就任直後に殺害されたカターイブ所属の大統領バシール・ジェマイエルのことで、アニメの中でカターイブの民兵が市街戦で、ワルツを踊るかのように狂ったように機関銃を撃ちつづける場面からとったものだ。
アニメでは、イスラエル軍が見守る中、カターイブによるパレスチナ人難民キャンプでの蛮行についても言及され、「まるでナチスのワルシャワ攻撃のようだ」とユダヤ人らしい描写を加えているところが、圧巻だ。またイスラエル軍がパレスチナ人虐殺の共犯であるという告発も行っている。
イスラエル映画基金の協力でつくられたようだが、イスラエルが一定の言論の自由があるからこそ描けたものだろう。

とはいえ、そこはイスラエルだからか限界とご都合主義がある。

というのも、今年のガザ攻撃に見られるように、イスラエルはパレスチナ人虐殺について、「共犯」どころか、直接の下手人、首謀者、主犯、主体である例は多々あるのに、それらを題材にすることなく、そしてパレスチナ人と同じアラブ人のカターイブを直接の悪者に仕立てて、それを隠れ蓑にした「共同従犯」という形での批判になっているところが、ご都合主義というべきだろう。

もっとも、そうしたご都合主義を超えて、戦争そのものの悲惨さと、パレスチナ人の悲劇を前面に出そうとしているところは多としたい。そしてナチスによる虐殺と重ねあわせた批判を行っているところも、シオニストの多くがこれまでパレスチナ人虐殺について指弾する人間をナチスの同調者とする情報操作を行っていたことからすれば、大きな進歩であろう。

この監督の立場は、限界も考えれば、シオニスト左派であるが、ポストシオニストに近い立場だといえるのかもしれない。

事実、「当事者」レバノンでも、イスラエル製作のソフトの閲覧が禁止されている中でも、闇でこのDVDが流通し、「レバノン人自身がこの問題を総括していない中で、敵であるイスラエルが先に自らの問題に取り組んだ点ではすごい」という評価が出回っているらしい。

そういう意味では今後、レバノン人がこの問題について映像作品をつくることを期待したい。もちろん宗派対立という微妙な問題にかかわることで、描きにくいとは思うが。

レバノンやアラブ関係の本も書き入れ時かもしれない

2009-03-07 05:03:15 | 中東
一時帰国の際、レバノンやアラブ関係の本も出ていた。
■青山弘之、末近浩太 「現代シリア・レバノンの政治構造」(アジア経済研究所叢書5)岩波書店
■菅瀬 晶子「イスラエルのアラブ人キリスト教徒―その社会とアイデンティティ」溪水社

ほかにも、アラブ経済ビジネス本、そのなかでもイスラム金融に焦点を当てたものはあまた出ている。
レバノン、あるいはアラブ全体に広げても、あまり需要がないと思っていたが、世界経済危機のなかでも相対的に強い中東、アラブ、イスラーム世界が脚光を浴びつつあるようだ。

こないだ日本で購入した Courier Internationale に紹介されていた記事によると、実際レバノンは金融危機の中で好況らしいし。

レバノン英字紙Daily Starと旅行ガイドLonely Planetがしょぼくなっていた

2009-01-24 17:13:33 | 中東
2年半ぶりのレバノン行で気づいたことは、読み応えある英字紙として定評があったThe Daily Starが以前はバンディングしていたInternational Heral Tribuneとの契約も打ち切ったたしく別に売られるようになったと同時に、前回までいた記者のほとんどが辞めてしまったこともあってか、内容もかなり薄くなっていて、あまり読むべきものがない新聞になっていたことだ。
以前いた記者に電話で聞いたら、経営上問題があったということだが、その記者には会えなかったため詳しくはわからない。
ただAn-NaharのNaharnetが以前よりも充実してきたので、レバノン在住外国人の多くはネットのそれを見ているようだ。それもDSの凋落を促進しているのだろうか。

ただ、Naharのフランス語版にあたるL'Orient Le Jourのほうはまだまだ健在。
なので、私が滞在中の情報源は主にロリアンを参照にしていたくらいだ。

しょぼくなったといえば、旅行ガイドとして有名な豪州発行のLonely PlanetのSyria & Lebanon。最新版にあたる3rd editionが昨年夏に出たばかりなのだが、これもまた内容が薄くなったし、嘘の情報が多い。
2004年夏に出た2nd editionのほうがはるかに良い。

その一方で、フランスの旅行ガイドシリーズのPetit FutéのLibanも最新版が同じく昨年夏に最新版の6e éditionを出ているが、こちらは前回2005/2006 éditionよりもよくなっている。
かつてはフランス語人の間では、Petit FutéのLibanは不評で、フランス人もロンプラを見ていたのだが、今回に限ってはプティ・フュテのほうに軍配が上がりそうだ。といっても、いずれも完璧ではないが。

一番使えないのが、日本の「地球の歩き方」。ヨルダン、シリアと一まとめで、レバノンの記述はほとんどない。とはいえ、日本人に必要な情報があるのはこれだけだが。

というわけで、レバノン旅行では、ロンプラ、フュテ、歩き方の三冊がいずれも必要という非常に困った状態になっている。
そういう意味でも、今年中に私が出すレバノン紹介本は、旅行ガイドではないが、少なくとも歩き方の不足を補い、日本人にはロンプラやフュテが不要になるようにしたい。

台湾でおなじみの釈迦頭、レバノンではqashTahという

2009-01-18 18:52:38 | 中東
台湾では2-3月ごろに八百屋の店頭によく並んでいる釈迦頭(シャカトウ、台湾語ではsek-khiaまたはsek-kia-thau5)ことシュガーアップル。これが何とレバノンでも今回よく売られていた。
台湾とは旬が微妙にずれているのか?
アラビア語ではqashTah(Tは重音のトァー)、レバノン方言だとqが落ちるからアシュタ。

また、バナナもレバノン南部で栽培されているようで、よく売られていた。
ただ、台湾と比べるとわりと小ぶりで、皮が黒ずんでへたっている、熟した状態で店頭に並んでいる場合が多い。

値段はいずれも台湾よりも若干安めか。所得水準考えると、そんなものかも。

いい加減に人を拘引するレバノンは、20分前チェックインOK、荷物も29kgまでOK!

2009-01-18 18:52:04 | 中東
出国時にもいい加減に足止めを食らったいい加減なレバノンだが、チェックインもいい加減だったので、安心した。
というのも、国際線で出発20分前なんて、日本では確実にチェックインできないのだが、レバノンはぜんぜんOKだった。それどころか、もう一人ムスリマのおばはんがカウンター0にいて「私もこの便なのよ」といって、のんびりチェックインをしていたのだ!
しかも、エコノミーの預け荷物の20kg制限も、日本だと1kg超えただけでもぎゃあぎゃあうるさいが、レバノンの場合は他の乗客のを見ていたら、何と29kg
までOK。生年月日じゃなくて、生年しか見ないような国柄だから、20kgというのも、確実に20kgの意味じゃなくて、20kg台という意味らしいw。

そういう意味では、最後の最後までいい加減さのレベルが一貫していて、間抜けだった
ので、ぜんぜん憎めないレバノンでした。

レバノン入国時に指名手配犯と誤認され一時拘引!

2009-01-18 18:51:07 | 中東
今回レバノンに入国する際、とんだハプニングが起こった。それは、入国ビザが日本人などが無料になっていたのはよいとして、入国審査ブースでなにやら相談している。ちょっと待てということで、今度は米国で殺人事件を冒した国際指名手配犯と同姓同名で同じ年だということで、一時拘引されることになった。
幸いレバノン在住の日本人、大使館関係者、レバノン人弁護士などの知り合いがいたし、実際に拘引されて携帯電話を取り上げられるまで時間があったので知り合いに連絡できたので、大事には至らなかったが、それでも到着した19日の昼間は一日General Security(警察庁)のdetention centre(日本とシステムが違うが、留置場みたいなところ)に拘束されることになった。

問題の犯人とは20年前に米国LAで会社経営の父親を刺殺して逃亡していた私と同姓同名の人間。
インターポール http://www.interpol.int/public/Data/Wanted/
LA市警 http://www.lapdonline.org/most_wanted/
などの検索窓で姓もしくは名だけ入れてみてもらえばわかるが、確かに同姓同名で、生年が同じ、身長もほぼ同じなのだ。
ただ、月日は違うし、米国在住の金持ちの御曹司という点も違う。顔も違う。
だが、アラブ諸国では生まれた月日はあまり重視しない。届出がいい加減だからだ。そのかわり父親と母親の名前を重視し、最初からそれをしつこく聞いてきた。「父親と母親の名前を確認できる文書は持っているか」と。
戸籍抄本の類を携帯して海外に行くわけがない。
大体、月日が違うし、顔も違う。
ところが、アラブ人から見たら、東洋人の顔の区別はあまりできないらしく、レバノン在住日本人がロス市警のHPから印刷した写真を見ても「同じだ」といい加減なことをいう。

もっとも、不思議と腹が立たなかった。事務処理、民主化度などいろんな意味でちょうど十数年前の台湾のレベルにあると考えていたレバノンだから、こういうアホな間違いはあるだろうと思ったからだ。

アホに腹を立ててもしょうがない。
逆に、誕生日は違うとはいえ、同年生まれで同姓同名の国際指名手配犯がこの世にいるというあまりの偶然に驚き、今後の展開を面白がろうと思った。

飛行機がついたのが午前7時ごろ、小さい空港なので入管ブースはそれから10分くらいで、その後入管ブースの近辺に待機していろといわれた後、午前8時40分ごろには空港内の尋問室に手荷物を持って連れて行かれた。
フランス法体系なので、いったん捜査手続きに入ると裁判官が指揮して、途中で警察や検察の判断で手続きをやめられないらしく、午前11時には警察庁の留置施設に護送車で連れて行かれた。そこで、現金を含めて所持金を全部チェックされ、預けさせられた。
手持ちはメモ帳と小額の現金とクレジットカードだけ。

留置施設は高速道路の高架を利用した地下にあった。パレスチナ人の少年が窃盗でもして捕まったのか、手錠をかけられて連行されるのを目撃した。雑用で働いていたのはフィリピン人女性とアフリカ人男性(トーゴあたりか?黒人の国籍の区別はできないから)。貴重品預けのロッカーを見ると、手書きのアラビア文字でパレスチナ人とシリア人の分類になっていた。私の貴重品は便宜上「シリア人」の8番ロッカーに入れられた。
ここからレバノン社会の影の部分と階層構造がかいまみえた。つまり下働きの労働は貧しいアジアとアフリカからの労働者によって支えられており、犯罪を犯すのはレバノン人より貧しいパレスチナ人やシリア人と相場が決まっているようであった。
留置場の入り口のところにしばらくいた。中には牢屋がいくつか見える。私もぶち込まれるのかと思いきや、外部との連絡が奏功したのか、午後1時になって主任の部屋に呼ばれ、そこで午後6時過ぎまで判事の判定を待つことになった。
途中、警察官が入れ替わり立ち代り、「監視と観察」目的に入ってきた。

ところが、しかもやはりアホだなと思ったのは、「good?」と聞いてくるのだ。人違いで拘束しておいて、その相手に、goodも糞もないのだが、そういう状況認識能力が欠けているのは、台湾人と似ている。
やっぱり同じような温暖な気候で、海洋貿易商人として発展した共通性があるからだろうか、なんだか間抜けだった。

それはともかく、腹の中では「goodじゃねえんだよ!」と思ったが、アホに腹を立ててもしょうがないので、「OK」と笑顔で答えた。
一人英語が比較的堪能でカナダのケベックに留学過程中の若い警官が来た。
アラウィー教徒だといっていた。その人は留学もしているくらいで、わりと気が利いていたが、後の警官は英語もあまりできなかった。
ただどれも能天気で気のいいやつらだということはわかった。
そういう点でも、あまり腹は立たなかった。

そのうち警官も飽きたのか、監視に来なくなった。逃亡しようと思えばできないことのない状況だが、でも、逃亡しても意味がなかった。
逃亡しても東洋人が少ないベイルートの街角ではすぐにわかってしまうし、よしんば陸路で隣の国に逃げたとしても、もっとタチが悪いシリアとイスラエルだから、レバノンでおとなしく刑事手続きに従うほうが賢明である。

事実、この笑顔で接した雑談は効果があったようで、向こうはこれで100%違う人間で、こいつは犯罪を犯すような人間ではないという心証を持ったようだ。実際、そういっていた。
だから待遇も悪くなかった。空港の時点でもそうだったが、トルココーヒーを出してくれたし、警察ではデリバリーでシャワルマも頼めた。
だが、フランス法のタチの悪いところは、いったん手続きに入ると判事の判断を仰がないと何もできない。そういうわけで、無罪判決が出るまで、待たないといけなかった。

もっとも、フランス自体は、こんなバカな理由で拘引したりしない。
問題はレバノンの官僚機構が台湾と同じように能力が低く、捜査機関の捜査能力がきわめて低いことによる。台湾もそうだが、レバノンでも気が利いた人間は自分で商売をやって、商売人は気が利いているんだが、公務員はどうしょうもない。
台湾とレバノンはこういうところでも似ているのだ。
かといってアホに何をいっても無駄なので、適当に愛想笑いして、雑談して、よい心証を植えつけて、なるべく早く審理が進むことを願うしかなかった。

また、捜査能力が低いことがわかったので、逆にこれは勝負のし甲斐もあった。
というのも、向こうは捜査能力がほとんどないわけだから、「被告」であるこちらが積極的にこちらに有利な証拠や資料を提出し、適切に冷静に抗弁をすればいいのだ。
実際、相手もこちらの抗弁に聞く耳をもってくれた。
要するに、レバノンが台湾と同じ程度の法治レベルなので、いきなり拷問にかけるとかやらず、「被告」の言い分は聞く耳は持っているというわけだ、レバノンが中東でも最も民主的で自由な国だからだろう。
これが、民主主義ということになっているイスラエルやトルコだったら、もっとあくどくて、大変な目にあっただろうし、シリアだったら拷問にあっていたかも知れない(ただシリアがインターポールの手配に従うとは思えないが)。

心証がよかったこともあって、拘引は事実上19日の夕方で終わり、パスポートだけ預けて、その日は宿泊先の安ホテルで寝ることができた。
ただ翌日は朝から司法省に出頭して、検事尋問を受けることになった。
ところが、これもまた、ちんたらしていて終わったのは20日の夕方だった。指紋をとって終わった。
しかしこれも手続きの順番としては粗忽だ。
インターポールの手配資料には指紋があるんだから、真っ先にとっておけば、もっと時間がかからなかっただろうにね。まあ、そういう国なので、しょうがないか。

幸運だったのは、担当検事が誠実な人で、昼飯抜きで、検事調書をつくっていた。だが、案の定、他の職員がちんたらしていた。
そもそも出頭してから2時間くらい放っておかれた。そして私の前でなにやら議論している。推測するには、手続き面の基本で議論しているらしかった。
毎日やっていることなのに、刑事手続きの基本もちゃんと理解していないらしかった。
ここらへんも台湾と似ている。商売人ならやる気があるが、公務員はやる気がない、プロ意識がないのだ。

翌日21日夜に検事から連絡があって、23日朝に再び司法省に出頭してほしいとのこと。出向くと、今度は手続きは早くて、検事が判事の「別人で無罪」という判決を伝えて、即
パスポート返還、完全放免となった。

だーかーらー、初めから別人と言うとるやないかい!

ただあまり腹もたたなかった。レバノン人の陽気で間抜けな民族性とレバノンの中東の中では最も自由で民主的な部分に救われたことが大きい。
しかも、普通の旅行では絶対に見ることができない社会の影の部分を見たり、刑事手続きを知ることになった。また、自分と同姓同名で指名手配犯がいるということで、他の「いい加減な中進国」を訪問する際への警鐘となった。

それから、自分がいい加減に拘引されたことで、レバノンと似たような刑事法体系にある台湾で、陳水扁がなぜ大した証拠もなく、いい加減な扇情メディア報道だけで拘引されてしまうかの理由もよくわかった。
陳水扁が再度拘引されてから休憩時間に外に出た際に、メディアなどに笑顔で接しているのも、「アホに怒ってもしょうがない」と達観したためだろう、その心境も理解できる。
そういう意味では、得ることは大きかった。

確かに、丸2日ロスしてしまったが、そのおかげで、後日書くことにするが、イラクの元王家の女性と会うこともできたのだから、アルハムドリッラーというしかない。

*******

ちなみに、話はこれで終わらなかったところが、レバノンのアホなところ。
なんと出国時に、コンピューターから情報が消えていなくて、またまた空港で足止めされてしまったのだ。ところが、これもすぐに担当検事に連絡したりして、待っていること1時間ほどで解決。何とか予約していた飛行機には間に合った。
しかし、それがなんと出発の20分前。
入管の係官は珍しく「こちらのミスでコンピューターからデータが削除されてなかった。ごめんなさい」と謝っていた。

日本だったら、絶対に乗せてもらえないのだが、さすがに生年だけの一致で拘引してしまういい加減なレバノンなだけあって、20分前でも荷物のチェックインはOK、しかも小さい空港だから、ダッシュしたら、余裕で間に合った。

このいい加減さの一貫性は、よいぞ。
チェックイン時間だけは日本並で、刑事手続きは台湾=レバノンだったら、空港で発狂していたところだったが、このいい加減さのレベルは台湾に住んでいるとよく理解できるし、この一貫したいい加減のレベルは好感が持てたし、結果的に間に合ったのだから、万事OKということで。

寿司にひっかけてSUnniとCHIiteの和解と平和を願うSuChi運動が提唱される

2009-01-17 17:18:42 | 中東
レバノンの政争と内戦はかつてはシーア派ムスリムとマロン派キリスト教徒の間でなされていたが、現在ではムスリムのスンニ派とシーア派の対立が浮上している(というよりも実態は階層格差が根底にある外国の代理戦争で、スンニとシーアの対立も穏健派アラブとシリア+イラン連合の対立でもある)。
その中で、筆者がレバノンであったある芸能情報センターの主任は、自身がスンニ派だが、寿司ブームに引っ掛けて、スンニー派SunniのSUとシーア派Chiite(レバノンではフランス式綴りが多い)のCHIをとって、SUCHIスシ運動を繰り広げたいといっていた。
サイトはまだ準備中だが、http://suchilb.com/