久しぶりに7日、8日と立て続けで映画を3本見てきました。米国のSFファンタジー「ファウンテン、The Fountain、真愛永恆」、フランスのオムニバス「パリ・ジュテーム、Paris, Je t'aime、巴黎我愛 」、アイルランド独立運動を描いた「大麦をゆらす風、The Wind That Shakes the Barley、吹動大麥的風」(日本語、原語、中国語題名の順)。
ファンタジー好きで、最近おフランス語にも凝っていて、小国の独立問題にも関心がある私としては、立て続けに趣味を満たすものが上映されていて、なかなか良いタイミングだ。
◆ファウンテン
http://www.imdb.com/title/tt0414993/
The Fountain (2006)
Directed by Darren Aronofsky
Runtime: 96 min
Country: USA
Language: Maya / English
これは、へんてこりんな映画だった。
永遠の命、永遠の愛をテーマに愛する女性を救うため、16世紀、現代、26世紀の3つの時代を生きる男が、苦悩に直面しながら真実の愛を探す。
三つの時代を多重構造で、切り張りパズル方式で描いて本質の部分を見せるという手法のようだ。
主人公は現在を生きる医学者で、妻の脳腫瘍を治そうとして猿を実験台にして無理な研究を日夜重ねている。16世紀(妻の小説という設定)の部分では騎士となって、異端審問官に陥れられそうになっているスペイン女王を救うために不死の秘薬を探す。さらに26世紀の未来では宇宙飛行士として、千年間考えてきたミステリーの答えを出そうとして、マヤ族が支配する地下世界で戦う。
言語にマヤ語とあるのは、まさに未来部分で出てくるマヤ族の族長シバルバが話す場面で数フレーズが出てくる。
未来パートでは、最後のほうになって、スキンヘッド姿で座禅をして瞑想している姿が出てきて、なんだかインド哲学風だが、結局、三つの時代の多重構造があまり脈絡なく出てきて、今ひとつわかりにくい映画だった。
というかちょっと逝っちゃってるって感じだ。まあ、それはそれで面白かったし、ヒロイン役のレーチェル・ワイズが綺麗だったから良しとしよう。
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◆パリ・ジュテーム
http://www.imdb.com/title/tt0401711/
Paris, je t'aime (2006)
Directed by
Olivier Assayas (segment "Quartier des Enfants Rouges")
Fre'de'ric Auburtin (segment "Quartier Latin") (transitions)
Emmanuel Benbihy (transitions)
Gurinder Chadha (segment "Quais de Seine")
Sylvain Chomet (segment "Tour Eiffel")
Ethan Coen (segment "Tuileries")
Joel Coen (segment "Tuileries")
Isabel Coixet (segment "Bastille")
Wes Craven (segment "Pe`re-Lachaise")
Alfonso Cuaro'n (segment "Parc Monceau")
Ge'rard Depardieu (segment "Quartier Latin")
Christopher Doyle (segment "Porte de Choisy")
Richard LaGravenese (segment "Pigalle")
Vincenzo Natali (segment "Quartier de la Madeleine")
Alexander Payne (segment "14th arrondissement")
Bruno Podalyde`s (segment "Montmartre")
Walter Salles (segment "Loin du 16e`me")
Oliver Schmitz (segment "Place des Fe^tes")
Nobuhiro Suwa (segment "Place des Victoires")
Daniela Thomas (segment "Loin du 16e`me")
Tom Tykwer (segment "Faubourg Saint-Denis")
Gus Van Sant (segment "Le Marais")
Runtime: Canada:116 min (Toronto International Film Festival) / France:120 min
Country: Liechtenstein / Switzerland / Germany / France
Language: English / French
これはパリの18区それぞれを舞台にして展開される愛と人間模様を描いた短編オムニバス作品(1編あたり5分程度)で、日本からは諏訪敦彦監督が参加している。英語も多い。
のっけから、ヒジャーブつけたムスリマが出てくる。パリにおけるアラブ人のプレゼンスを反映するものだろう。
それから多くの場面では米国人や英国人がフランス人と英語で話すシーンも出てくる。最近はフランス人も英語うまいからな。
それから、笑ったのが中華街を訪ねた人が通行人に階段で道を聞くと、相手のシナ人老女がいきなり怒り出したり、訪ねたエステサロン?では、乱暴な対応を受けたりするところ。フランス語辞典を見ると、chinoisには「こうるさい」「ややこしい」という意味もあるらしいので、まさにその通りという感じだ。欧州人の中には最近台頭する中国への幻想と期待が大きいように見受けられるが(特にドイツがアホみたいに幻想をもっているしw)、フランス人は割りとシナ人のことを正しく認識しているというべきか。もちろん異国趣味への幻想もところどころに見受けられたが。
また、サン・ドニを舞台に、ナタリー・ポートマンが演ずるへんてこりんな女優志望の米国人と、盲目の学生を主人公に描く切ないラブストーリー。イスラエル・ユダヤ嫌いの私でも、ナタリー・ポートマンは例外的に好きで、レオンとかスターウォーズでけっこうしびれた口だが(とくにエピソード3で泣き顔になるところは良かった)、ナタリーもけっこう老けたな。最初見たときは気づかなかったよw。
へんてこりんな役どころは、本人もけっこうへんてこりんな人らしいので、ハマリ役だったというべきか。
最後の短編は、パリに旅行にきた米国の郵便局員が、ヘタなフランス語でパリのよさを説明する「14区」で、なかなか心温まるもの。
この映画はパリの各地区の風景も描かれていて、なかなか面白かった。恥ずかしながら、まだパリは行ったことがないが、是非とも来年には行きたいと思ったくらいだ。
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◆大麦をゆらす風
http://www.imdb.com/title/tt0460989/
The Wind That Shakes the Barley (2006)
Directed by Ken Loach
Runtime: UK:127 min
Country: Germany / Italy / Spain / France / Ireland / UK
Language: English / Gaelic
1920年代アイルランドにおける対英独立闘争および「アイルランド自由国」成立後の独立派どうしの内戦を描いたもの。英語が主だが、高齢者役はゲール語を話す場面も出てくる。
1920年のアイルランドの村。英国の植民地支配が続き、英国治安部隊が我が物顔でアイルランド人に横暴を働く。ある日、主人公の医学生デミアンは、同じ村に住む17歳のミホールとともに英国の治安部隊の尋問を受けるが、アイルランド人意識が強いミホールは「マイケル」という英語名を名乗ることを拒否、ゲール語でアイルランド名を言ったばかりに、治安部隊の暴行を受け、殺されてしまう。
それを目にしたデミアンは、兄が地元部隊の一隊長となっている独立派ゲリラ、アイルランド共和国軍の一員に参加する。ゲリラ闘争を展開していたある日、英国との間でアイルランドの自治・事実上の独立を認める協定が結ばれ、アイルランド自由国の成立が決まった。ようやく独立し、英国の治安部隊も撤退するが、英国王への忠誠などを条件に含む「事実上の独立」を容認するかどうかをめぐり、独立派の間に亀裂が入り、内戦が起こる。
監督のねらいは、20年代のアイルランドをダシにして、今日のイラク戦争の不当性を浮き彫りにすることらしいが、英国で微妙な問題であるアイルランド独立、シンフェイン党を肯定的に描いたことで、英国では議論を呼んだらしい。なんと保守系論者は「英国の植民地支配は建設など恩恵も与えた」という論調で監督の狙いを非難したというが、侵略の弁護をするときの右派の主張って、いずこの国も同じなのねw。日本や中国や米国でもまったく同じw。てか、みんな英国のあり方をまねしたんだろうけどw。
それはそうと、この映画の内容は、言語使用の問題を含めて、台湾の歴史にもよく似た経験をしていることもあって、今日の台湾独立建国派にとって他人事ではない。上映館に張り出された映画の背景説明のポスターでは、民進党の林濁水氏が立法委員を辞職するきっかけはこの映画を見たことだった、と書かれていた。
てか、亀裂が入ることへの警告のはずが、亀裂をつくる方向に行ったのが、何のためにこの映画を見たのかわからんが、まあそういうことらしい。
この作品は、筋としては悪くはないんだが、登場人物がちょっとごちゃごちゃした描き方になっていて(だって白人の顔の区別って、私は苦手なんだもんw)、ちょっとわかりにくいし、やや優等生的な説教くささもあって、今ひとつ感情移入できなかった。同じアイルランド独立ものなら、1996年になぜか台湾で見た「マイケル・コリンズ、Michael Collins、豪情本色」のほうがわかりやすかったし、躍動感があってよかったと思う(しかもこの映画の中国語の字幕も奮っていた。独立建国とか外来政権という文字に思い入れが込められいた。字幕訳者はおそらく台湾独立派だったのだろう)。
それから、アイルランド英語て、やっぱりなれないからか、聞き取りにくかった。
ああ、でもアイルランドも近いうちに行ってみたいところだ。
ファンタジー好きで、最近おフランス語にも凝っていて、小国の独立問題にも関心がある私としては、立て続けに趣味を満たすものが上映されていて、なかなか良いタイミングだ。
◆ファウンテン
http://www.imdb.com/title/tt0414993/
The Fountain (2006)
Directed by Darren Aronofsky
Runtime: 96 min
Country: USA
Language: Maya / English
これは、へんてこりんな映画だった。
永遠の命、永遠の愛をテーマに愛する女性を救うため、16世紀、現代、26世紀の3つの時代を生きる男が、苦悩に直面しながら真実の愛を探す。
三つの時代を多重構造で、切り張りパズル方式で描いて本質の部分を見せるという手法のようだ。
主人公は現在を生きる医学者で、妻の脳腫瘍を治そうとして猿を実験台にして無理な研究を日夜重ねている。16世紀(妻の小説という設定)の部分では騎士となって、異端審問官に陥れられそうになっているスペイン女王を救うために不死の秘薬を探す。さらに26世紀の未来では宇宙飛行士として、千年間考えてきたミステリーの答えを出そうとして、マヤ族が支配する地下世界で戦う。
言語にマヤ語とあるのは、まさに未来部分で出てくるマヤ族の族長シバルバが話す場面で数フレーズが出てくる。
未来パートでは、最後のほうになって、スキンヘッド姿で座禅をして瞑想している姿が出てきて、なんだかインド哲学風だが、結局、三つの時代の多重構造があまり脈絡なく出てきて、今ひとつわかりにくい映画だった。
というかちょっと逝っちゃってるって感じだ。まあ、それはそれで面白かったし、ヒロイン役のレーチェル・ワイズが綺麗だったから良しとしよう。
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◆パリ・ジュテーム
http://www.imdb.com/title/tt0401711/
Paris, je t'aime (2006)
Directed by
Olivier Assayas (segment "Quartier des Enfants Rouges")
Fre'de'ric Auburtin (segment "Quartier Latin") (transitions)
Emmanuel Benbihy (transitions)
Gurinder Chadha (segment "Quais de Seine")
Sylvain Chomet (segment "Tour Eiffel")
Ethan Coen (segment "Tuileries")
Joel Coen (segment "Tuileries")
Isabel Coixet (segment "Bastille")
Wes Craven (segment "Pe`re-Lachaise")
Alfonso Cuaro'n (segment "Parc Monceau")
Ge'rard Depardieu (segment "Quartier Latin")
Christopher Doyle (segment "Porte de Choisy")
Richard LaGravenese (segment "Pigalle")
Vincenzo Natali (segment "Quartier de la Madeleine")
Alexander Payne (segment "14th arrondissement")
Bruno Podalyde`s (segment "Montmartre")
Walter Salles (segment "Loin du 16e`me")
Oliver Schmitz (segment "Place des Fe^tes")
Nobuhiro Suwa (segment "Place des Victoires")
Daniela Thomas (segment "Loin du 16e`me")
Tom Tykwer (segment "Faubourg Saint-Denis")
Gus Van Sant (segment "Le Marais")
Runtime: Canada:116 min (Toronto International Film Festival) / France:120 min
Country: Liechtenstein / Switzerland / Germany / France
Language: English / French
これはパリの18区それぞれを舞台にして展開される愛と人間模様を描いた短編オムニバス作品(1編あたり5分程度)で、日本からは諏訪敦彦監督が参加している。英語も多い。
のっけから、ヒジャーブつけたムスリマが出てくる。パリにおけるアラブ人のプレゼンスを反映するものだろう。
それから多くの場面では米国人や英国人がフランス人と英語で話すシーンも出てくる。最近はフランス人も英語うまいからな。
それから、笑ったのが中華街を訪ねた人が通行人に階段で道を聞くと、相手のシナ人老女がいきなり怒り出したり、訪ねたエステサロン?では、乱暴な対応を受けたりするところ。フランス語辞典を見ると、chinoisには「こうるさい」「ややこしい」という意味もあるらしいので、まさにその通りという感じだ。欧州人の中には最近台頭する中国への幻想と期待が大きいように見受けられるが(特にドイツがアホみたいに幻想をもっているしw)、フランス人は割りとシナ人のことを正しく認識しているというべきか。もちろん異国趣味への幻想もところどころに見受けられたが。
また、サン・ドニを舞台に、ナタリー・ポートマンが演ずるへんてこりんな女優志望の米国人と、盲目の学生を主人公に描く切ないラブストーリー。イスラエル・ユダヤ嫌いの私でも、ナタリー・ポートマンは例外的に好きで、レオンとかスターウォーズでけっこうしびれた口だが(とくにエピソード3で泣き顔になるところは良かった)、ナタリーもけっこう老けたな。最初見たときは気づかなかったよw。
へんてこりんな役どころは、本人もけっこうへんてこりんな人らしいので、ハマリ役だったというべきか。
最後の短編は、パリに旅行にきた米国の郵便局員が、ヘタなフランス語でパリのよさを説明する「14区」で、なかなか心温まるもの。
この映画はパリの各地区の風景も描かれていて、なかなか面白かった。恥ずかしながら、まだパリは行ったことがないが、是非とも来年には行きたいと思ったくらいだ。
===================================================================
◆大麦をゆらす風
http://www.imdb.com/title/tt0460989/
The Wind That Shakes the Barley (2006)
Directed by Ken Loach
Runtime: UK:127 min
Country: Germany / Italy / Spain / France / Ireland / UK
Language: English / Gaelic
1920年代アイルランドにおける対英独立闘争および「アイルランド自由国」成立後の独立派どうしの内戦を描いたもの。英語が主だが、高齢者役はゲール語を話す場面も出てくる。
1920年のアイルランドの村。英国の植民地支配が続き、英国治安部隊が我が物顔でアイルランド人に横暴を働く。ある日、主人公の医学生デミアンは、同じ村に住む17歳のミホールとともに英国の治安部隊の尋問を受けるが、アイルランド人意識が強いミホールは「マイケル」という英語名を名乗ることを拒否、ゲール語でアイルランド名を言ったばかりに、治安部隊の暴行を受け、殺されてしまう。
それを目にしたデミアンは、兄が地元部隊の一隊長となっている独立派ゲリラ、アイルランド共和国軍の一員に参加する。ゲリラ闘争を展開していたある日、英国との間でアイルランドの自治・事実上の独立を認める協定が結ばれ、アイルランド自由国の成立が決まった。ようやく独立し、英国の治安部隊も撤退するが、英国王への忠誠などを条件に含む「事実上の独立」を容認するかどうかをめぐり、独立派の間に亀裂が入り、内戦が起こる。
監督のねらいは、20年代のアイルランドをダシにして、今日のイラク戦争の不当性を浮き彫りにすることらしいが、英国で微妙な問題であるアイルランド独立、シンフェイン党を肯定的に描いたことで、英国では議論を呼んだらしい。なんと保守系論者は「英国の植民地支配は建設など恩恵も与えた」という論調で監督の狙いを非難したというが、侵略の弁護をするときの右派の主張って、いずこの国も同じなのねw。日本や中国や米国でもまったく同じw。てか、みんな英国のあり方をまねしたんだろうけどw。
それはそうと、この映画の内容は、言語使用の問題を含めて、台湾の歴史にもよく似た経験をしていることもあって、今日の台湾独立建国派にとって他人事ではない。上映館に張り出された映画の背景説明のポスターでは、民進党の林濁水氏が立法委員を辞職するきっかけはこの映画を見たことだった、と書かれていた。
てか、亀裂が入ることへの警告のはずが、亀裂をつくる方向に行ったのが、何のためにこの映画を見たのかわからんが、まあそういうことらしい。
この作品は、筋としては悪くはないんだが、登場人物がちょっとごちゃごちゃした描き方になっていて(だって白人の顔の区別って、私は苦手なんだもんw)、ちょっとわかりにくいし、やや優等生的な説教くささもあって、今ひとつ感情移入できなかった。同じアイルランド独立ものなら、1996年になぜか台湾で見た「マイケル・コリンズ、Michael Collins、豪情本色」のほうがわかりやすかったし、躍動感があってよかったと思う(しかもこの映画の中国語の字幕も奮っていた。独立建国とか外来政権という文字に思い入れが込められいた。字幕訳者はおそらく台湾独立派だったのだろう)。
それから、アイルランド英語て、やっぱりなれないからか、聞き取りにくかった。
ああ、でもアイルランドも近いうちに行ってみたいところだ。