むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

映画「ファウンテン」「パリ・ジュテーム」「大麦をゆらす風」

2006-12-11 02:31:32 | 芸術・文化全般
久しぶりに7日、8日と立て続けで映画を3本見てきました。米国のSFファンタジー「ファウンテン、The Fountain、真愛永恆」、フランスのオムニバス「パリ・ジュテーム、Paris, Je t'aime、巴黎我愛 」、アイルランド独立運動を描いた「大麦をゆらす風、The Wind That Shakes the Barley、吹動大麥的風」(日本語、原語、中国語題名の順)。
ファンタジー好きで、最近おフランス語にも凝っていて、小国の独立問題にも関心がある私としては、立て続けに趣味を満たすものが上映されていて、なかなか良いタイミングだ。

◆ファウンテン

http://www.imdb.com/title/tt0414993/

The Fountain (2006)

Directed by Darren Aronofsky
Runtime: 96 min
Country: USA
Language: Maya / English

これは、へんてこりんな映画だった。
永遠の命、永遠の愛をテーマに愛する女性を救うため、16世紀、現代、26世紀の3つの時代を生きる男が、苦悩に直面しながら真実の愛を探す。
三つの時代を多重構造で、切り張りパズル方式で描いて本質の部分を見せるという手法のようだ。
主人公は現在を生きる医学者で、妻の脳腫瘍を治そうとして猿を実験台にして無理な研究を日夜重ねている。16世紀(妻の小説という設定)の部分では騎士となって、異端審問官に陥れられそうになっているスペイン女王を救うために不死の秘薬を探す。さらに26世紀の未来では宇宙飛行士として、千年間考えてきたミステリーの答えを出そうとして、マヤ族が支配する地下世界で戦う。
言語にマヤ語とあるのは、まさに未来部分で出てくるマヤ族の族長シバルバが話す場面で数フレーズが出てくる。
未来パートでは、最後のほうになって、スキンヘッド姿で座禅をして瞑想している姿が出てきて、なんだかインド哲学風だが、結局、三つの時代の多重構造があまり脈絡なく出てきて、今ひとつわかりにくい映画だった。
というかちょっと逝っちゃってるって感じだ。まあ、それはそれで面白かったし、ヒロイン役のレーチェル・ワイズが綺麗だったから良しとしよう。

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◆パリ・ジュテーム

http://www.imdb.com/title/tt0401711/

Paris, je t'aime (2006)

Directed by
Olivier Assayas (segment "Quartier des Enfants Rouges")
Fre'de'ric Auburtin (segment "Quartier Latin") (transitions)
Emmanuel Benbihy (transitions)
Gurinder Chadha (segment "Quais de Seine")
Sylvain Chomet (segment "Tour Eiffel")
Ethan Coen (segment "Tuileries")
Joel Coen (segment "Tuileries")
Isabel Coixet (segment "Bastille")
Wes Craven (segment "Pe`re-Lachaise")
Alfonso Cuaro'n (segment "Parc Monceau")
Ge'rard Depardieu (segment "Quartier Latin")
Christopher Doyle (segment "Porte de Choisy")
Richard LaGravenese (segment "Pigalle")
Vincenzo Natali (segment "Quartier de la Madeleine")
Alexander Payne (segment "14th arrondissement")
Bruno Podalyde`s (segment "Montmartre")
Walter Salles (segment "Loin du 16e`me")
Oliver Schmitz (segment "Place des Fe^tes")
Nobuhiro Suwa (segment "Place des Victoires")
Daniela Thomas (segment "Loin du 16e`me")
Tom Tykwer (segment "Faubourg Saint-Denis")
Gus Van Sant (segment "Le Marais")

Runtime: Canada:116 min (Toronto International Film Festival) / France:120 min
Country: Liechtenstein / Switzerland / Germany / France
Language: English / French

これはパリの18区それぞれを舞台にして展開される愛と人間模様を描いた短編オムニバス作品(1編あたり5分程度)で、日本からは諏訪敦彦監督が参加している。英語も多い。
のっけから、ヒジャーブつけたムスリマが出てくる。パリにおけるアラブ人のプレゼンスを反映するものだろう。
それから多くの場面では米国人や英国人がフランス人と英語で話すシーンも出てくる。最近はフランス人も英語うまいからな。
それから、笑ったのが中華街を訪ねた人が通行人に階段で道を聞くと、相手のシナ人老女がいきなり怒り出したり、訪ねたエステサロン?では、乱暴な対応を受けたりするところ。フランス語辞典を見ると、chinoisには「こうるさい」「ややこしい」という意味もあるらしいので、まさにその通りという感じだ。欧州人の中には最近台頭する中国への幻想と期待が大きいように見受けられるが(特にドイツがアホみたいに幻想をもっているしw)、フランス人は割りとシナ人のことを正しく認識しているというべきか。もちろん異国趣味への幻想もところどころに見受けられたが。
また、サン・ドニを舞台に、ナタリー・ポートマンが演ずるへんてこりんな女優志望の米国人と、盲目の学生を主人公に描く切ないラブストーリー。イスラエル・ユダヤ嫌いの私でも、ナタリー・ポートマンは例外的に好きで、レオンとかスターウォーズでけっこうしびれた口だが(とくにエピソード3で泣き顔になるところは良かった)、ナタリーもけっこう老けたな。最初見たときは気づかなかったよw。
へんてこりんな役どころは、本人もけっこうへんてこりんな人らしいので、ハマリ役だったというべきか。
最後の短編は、パリに旅行にきた米国の郵便局員が、ヘタなフランス語でパリのよさを説明する「14区」で、なかなか心温まるもの。

この映画はパリの各地区の風景も描かれていて、なかなか面白かった。恥ずかしながら、まだパリは行ったことがないが、是非とも来年には行きたいと思ったくらいだ。

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◆大麦をゆらす風

http://www.imdb.com/title/tt0460989/

The Wind That Shakes the Barley (2006)

Directed by Ken Loach
Runtime: UK:127 min
Country: Germany / Italy / Spain / France / Ireland / UK
Language: English / Gaelic

1920年代アイルランドにおける対英独立闘争および「アイルランド自由国」成立後の独立派どうしの内戦を描いたもの。英語が主だが、高齢者役はゲール語を話す場面も出てくる。
1920年のアイルランドの村。英国の植民地支配が続き、英国治安部隊が我が物顔でアイルランド人に横暴を働く。ある日、主人公の医学生デミアンは、同じ村に住む17歳のミホールとともに英国の治安部隊の尋問を受けるが、アイルランド人意識が強いミホールは「マイケル」という英語名を名乗ることを拒否、ゲール語でアイルランド名を言ったばかりに、治安部隊の暴行を受け、殺されてしまう。
それを目にしたデミアンは、兄が地元部隊の一隊長となっている独立派ゲリラ、アイルランド共和国軍の一員に参加する。ゲリラ闘争を展開していたある日、英国との間でアイルランドの自治・事実上の独立を認める協定が結ばれ、アイルランド自由国の成立が決まった。ようやく独立し、英国の治安部隊も撤退するが、英国王への忠誠などを条件に含む「事実上の独立」を容認するかどうかをめぐり、独立派の間に亀裂が入り、内戦が起こる。
監督のねらいは、20年代のアイルランドをダシにして、今日のイラク戦争の不当性を浮き彫りにすることらしいが、英国で微妙な問題であるアイルランド独立、シンフェイン党を肯定的に描いたことで、英国では議論を呼んだらしい。なんと保守系論者は「英国の植民地支配は建設など恩恵も与えた」という論調で監督の狙いを非難したというが、侵略の弁護をするときの右派の主張って、いずこの国も同じなのねw。日本や中国や米国でもまったく同じw。てか、みんな英国のあり方をまねしたんだろうけどw。

それはそうと、この映画の内容は、言語使用の問題を含めて、台湾の歴史にもよく似た経験をしていることもあって、今日の台湾独立建国派にとって他人事ではない。上映館に張り出された映画の背景説明のポスターでは、民進党の林濁水氏が立法委員を辞職するきっかけはこの映画を見たことだった、と書かれていた。
てか、亀裂が入ることへの警告のはずが、亀裂をつくる方向に行ったのが、何のためにこの映画を見たのかわからんが、まあそういうことらしい。

この作品は、筋としては悪くはないんだが、登場人物がちょっとごちゃごちゃした描き方になっていて(だって白人の顔の区別って、私は苦手なんだもんw)、ちょっとわかりにくいし、やや優等生的な説教くささもあって、今ひとつ感情移入できなかった。同じアイルランド独立ものなら、1996年になぜか台湾で見た「マイケル・コリンズ、Michael Collins、豪情本色」のほうがわかりやすかったし、躍動感があってよかったと思う(しかもこの映画の中国語の字幕も奮っていた。独立建国とか外来政権という文字に思い入れが込められいた。字幕訳者はおそらく台湾独立派だったのだろう)。
それから、アイルランド英語て、やっぱりなれないからか、聞き取りにくかった。
ああ、でもアイルランドも近いうちに行ってみたいところだ。

直轄市選挙で国民党は事実上の敗北、民進党は復調

2006-12-10 02:41:59 | 台湾政治
◆国民党は事実上敗北、大中国派は衰退
9日投開票が実施された台北・高雄両市の市長と議員選挙で、ほぼ事前の予想とおりの得票率で、台北市長は国民党公認のカク(赤におおざと)龍斌、高雄市長には民進党公認の陳菊がそれぞれ当選した。台北市長は本党公認候補謝長廷氏は惜しくも敗れたものの、得票率では40.9%獲得、前回2002年の35.9%から伸ばすなど、民進党の基盤が弱い台北市の選挙としては善戦した。
この半年以上、国民党とそれに追随する主流のマスコミによるバッシングキャンペーンによって民進党が低迷状態にあったことを考えれば、この結果は事実上民進党の勝利といえる。「敵失」によって有利だと見られていた国民党は、馬英九が前日にも高雄市に乗り込んで盛り上げを図ったにもかかわらず、僅差とはいえ高雄市長をもぎ取ることができず、しかもお膝元の台北市長でもやっと過半数を上回る低調ぶり。馬英九の能力の低さを改めて見せ付けるとともに、国民党がこの半年行ってきた民進党バッシングが決して国民党の支持を増やすものとならず、逆効果になったことを示した。国民党の事実上の敗北である。馬英九には能力がないことがまた改めて証明されてしまった。
さらに、台北市長に無所属(親民党主席を一時「休職」の形)で出馬し、個人人気で馬英九の足元を脅かすことを狙った宋楚瑜は、得票率にしてわずか4%強と見るも無残な結果となり、政治生命は完全に絶たれた格好となった。宋は政界からの引退を宣言した。
つまり、馬英九の無能、宋楚瑜の政治生命終了という結果が明らかになった今回の選挙は、台湾政治正常化に向けた一里塚になるといるのかもしれない。宋の引退、馬の無力はきわめて象徴的だ。
(市長の候補、議員の各党の得票状況は記事末尾に)

◆驕れる者は嫌われるという台湾選挙の法則
国民党が彼ら自身の事前の「期待」ほどの結果を出せなかったことは、ちょど2004年末の立法委員選挙で「台連とあわせて過半数」とぶち上げて期待とは程遠い結果となった民進党の状況ときわめて似ている。あのとき民進党は陳水扁再選、国民党の低迷でのぼり竜状態で、イケイケドンドンだった。ところが、その傲慢な姿勢が選挙民に嫌われた。民進党は得票率や議席数ではその前よりは若干伸びたものの、「単独で100以上、台連とあわせて113の過半数」とうそぶいていた事前の予測に達せず「敗北」と認定された。
今回国民党も民進党と陳水扁にまつわるスキャンダルを根拠もなく「暴露」して追い詰めボロボロにしたうえで、馬英九の個人人気も高いと勘違いして、国民党に有利だと判断したが、それは選挙民から傲慢だと判断されたわけだ。たしかに国民党は市議員では議席が増えるなど一見すると「馬英九効果」で強くなったように見える。しかし、国民党が議員の部分で増えたのは、親民党が凋落した分が戻っただけであって、国民党自身の基盤はまったく増えていない。まして、「有利」だと自他ともに考えていた目論見からは大きく外れたことで、国民党は今回、2004年の民進党と同じ過ちを犯したといえるだろう。
今後少なくとも2年は国民党と馬英九が転げ落ちる番となろう。
そういう点では、台湾社会と民主主義はさらに一段と成熟した、高い段階に進歩したといえるかもしれない。

◆相変わらず偏狭でおかしな外省人だが、健全化の傾向も
もちろん、手放しでそう評価できない問題=ボトルネックは見られる。
特に外省人の問題である。台北市長はどうみても魅力も迫力も欠けたカク龍斌が、外省人だからというだけで、外省人が多い(今年はじめの時点では人口の46%と推計される)台北市において、難の問題もなく当選してしまうことを考えれば、台湾の選挙ではいまだに「外省人は外省人にいれるが、本省人はあまり族群にこだわらない」片翼だけの族群政治は健在だった。明らかに能力も政見も謝長廷に分があり、族群を考慮せずにまともに選ぶなら謝が7割とって圧勝してもおかしくなかった。それが4割程度で落選というのは、要するに台北市民はまともに政策で判断するのではなく、単に「外省人」が外省人というだけで外省人にいれるという非理性的な族群・宗派的政治が残っているということだ。
しかし、それでも前回やそれ以前に比べれば、若干弱まってきた気配はある。前回は馬英九が64%も獲得して明らかに狂っているとしかいいようがなかったが、今回は国民党のタマがハンサムでもなく迫力もないこともあって、53%というショボイ数字にとどまった。
これは、台北市における国民党の実力としては、基本盤にも届かない、ショボさである。あまりにもショボすぎる。そういう点では、国民党は事実上敗北している。
この原因としては、外省人といっても、台湾人意識が強い若い世代が増えていること、特に若者はタマを見て選ぶ傾向が出てきたことを意味している。
区ごとの得票状況を見ると、もともと民進党が強い大同区と士林区だけは謝が上回ったが、他はカクが多かった。しかし、外省人の牙城である信義区、大安区、文山区あたりでも前回よりも熱狂度が減っているように見えるので、これはやはり外省人であっても若い層はちゃんと政策を見て謝に流れたことが類推できる。

◆謝長廷が民進党と本土派全体の盟主に?
謝長廷の落選を受けた演説は感動的だった。謝の魅力と賢さがにじみ出ていた。支持者の間からは「次は総統に」と、1998年に陳水扁が市長選に落選した際と同じ声が出てきた。実際、謝長廷はこれで2008年総統選挙(あればの話だが)に民進党候補として出馬する可能性はきわめて高まったといえるだろう。しかも、台北市は国民党、高雄市は民進党という現状維持の結果だったから、民進党の行政院長と党主席のポストは「引責辞任」という問題は発生しない。だから、蘇貞昌は行政院長として身動きが取れないし、その基盤である新潮流も含めた最近の言動で支持層の信頼を大きく落としている。フリーハンドのある謝長廷が「行政院長経験者が格下の台北市長候補となるという屈辱を党の発展のためにあえてしのんで、落選したものの善戦した」という実績、しかも市長選挙を上手に戦ったことで支持層の人気を固めたことを基盤にして、総統候補あるいは本土派陣営全体の次の盟主となることは、かなり確実なものとなったといえるだろう。
実際、謝長廷の「母鶏効果」(市長選挙を主軸として盛り上げることで、議員など下の部分にも波及効果が及んで結果を出すこと)があって、民進党は、台北市議員選挙で18議席、高雄市議員選挙で15議席と、それぞれ前回よりも1議席増やした。
ただし、若干疑問がないとはいえない。
というのも、区別の得票を見ると、カクより得票が多かった区は、士林、大同の2区にとどまったが、本来なら民進党が強い萬華、中山、北投の3区では僅差とはいえカクに負けた。
また、事前には40%前後だと見られていて、それを果たしたとはいえ、謝長廷の本来の実力からすれば、42%か、あるいは44%も夢ではなかったはずである。
実際44%くらいとって、さらにカクとの差を縮め、カクを過半数割れに追い込むくらいにしていれば、謝長廷の地位は不動のものとなっただろう。
しかも、選挙戦では謝長廷ははじめから勝利はあまり考えず、「手を抜いているような感じがした」(謝長廷にも近い民進党支持のある中小企業主)ところもあった。この印象が選挙後に強まるようだと、マイナス要因になりかねない。
とはいえ、先にも指摘したように、今回の選挙戦の過程で、巧みな戦略と演説もあって、民進党支持層における謝長廷の名声は確実に高まった。しかも謝の強みは、その支持や人脈は民進党だけにとどまらず、李登輝、台連、国民党本土派の多くにも幅広い人脈もあるところにある。
他の4大天王(ポスト陳水扁の有力者4人)はどうかというと、最有望といわれてきた蘇貞昌を推す声は、メディアによく流れているが、それはあくまでも国民党系メディアの話であって、民進党支持層や台連、国民党本土派には蘇を推す意見はあまりないのが現実だ。游錫コンは市民運動圏では人気があり、しかも庶民性に最も近い政治家としての魅力はあるのだが、民進党や運動圏を超えた国民党側への支持の広がりには限界がある。呂秀蓮はあまりにも自己顕示欲に満ちた性格と不規則発言・放言があってとっくに支持層からもそっぽを向かれている。
そういう意味では謝長廷はかなり有利になったといえる。ただ、民進党あるいは本土派陣営全体が2008年の総統候補あるいは内閣制以降後のビジョンを決めるのは、来年7月ごろだから、それまで何があるかわからないが。

◆陳菊の僅差は新潮流の限界だが、陳菊の能力には大いに期待する
高雄市長には陳菊が1114票という本当に僅かな差で、ほとんど開票終了時になって当選を決めた。民進党内ではこれは新潮流の限界があったという見方が有力だ。陳菊自身は新潮流に属している。とはいえ、新潮流ができるずっと前から民主化運動の闘士として歩んできて、しかも親しみやすく温かみに満ちた人道的な性格・精神もあって、陳菊自身には新潮流を超えた幅広い支持者やシンパがいることは事実だ。
しかし、やはり新潮流のメンバーであり、民進党政権成立以降に新潮流があらゆる政府ポストを独占しようとしてきたことを見れば、新潮流系が高雄市長となることに懸念を持った人が、民進党の反新潮流系や台連、国民党本土派にいたとしても不思議ではない。まして、11月になってから、新潮流の林濁水らが立法委員を辞職する騒ぎを起こしたり、最近は新潮流に近づいている羅文嘉がかつてのボスだった陳水扁を米国で批判したりと、新潮流が民進党の足をひっぱっているような印象しかない行動が目立ったこともあって、もともと新潮流に良い感情をもっていない民進党の元正義・福利国系や台連系がそっぽを向いたとしても不思議ではない。
もっとも、高雄市は大都市といっても、典型的な南部の田舎の部分も残していて、地方派閥が複雑である。その中で、謝長廷が成果を挙げたとはいえ、人がかわって、陳菊が新たに出てくる場合には、謝が持っていた支持をすべて継承することはできない。国民党候補の黄俊英も本土意識が強く台連とも親しい関係にあって、そういう意味では「本土派」どうしの戦いとなって、差別化は難しい。台連の保守層(独立にそれほどこだわらない層)や国民党本土派は謝長廷には入れたかもしれないが、今回は黄俊英に流れることは予想できた。
そうした背景もあって、陳菊が楽勝ということではもともとなかったが、それでも新潮流であること、その新潮流系統が直前に妙な動きを示したことに、民進党支持層にも反発を生んだ可能性は高い。
たしかに高雄市は南部であり、民進党のほうが多い。04年総統選挙、04年立法委員選挙を見ても、高雄市の民進党の得票は55%前後なので、陳菊も55%そのままは無理でも、52%くらい取っても理論上はおかしくはない。しかし、地方派閥、新潮流の要因がからみ、陳菊は結果的にかなり苦戦した。私は陳菊をよく知っており、きわめてすばらしい人だと思うので、陳菊の当選はうれしいし、当然だと思う。しかし、陳菊は当選したからには今後は人事で新潮流だけを重用せず、民進党の他の系統、それから台連から国民党本土派にも目配りして、本当の意味で台湾本土派全体の立場で市政運営してほしいと思う。
陳菊がそれに成功すれば、市政は円滑に運営できるだろう。まして、謝長廷の遺産と実績という良好な基盤と環境も用意されているわけだから、1998年に謝が高雄市長に民進党としてはじめて当選した時点よりははるかに恵まれている。それに陳菊の魅力と以前から定評のある行政手腕が加われば、今後4年の高雄市は良い成果が残せないはずがない。
そしてそうなれば次回は陳菊は楽勝できるだろう。

中央選挙委員会による両市長選挙各候補の得票率:

台北市長(投票率約64.03%)
カク龍斌 男 692,085 (53.81%) 中国国民党
謝長廷 男 525,869 (40.89%) 民主進歩党
宋楚瑜 男 53,281 (4.14%)
李敖 男 7,795 (0.61%)
柯賜海 男 3,687 (0.29%)
周玉寇; 女 3,372 (0.26%)

前回と比較すると、カクの得票率は馬英九の64.1%に比べて10ポイント強も落としている。謝長廷は陣営の事前予測だった40%を若干上回った。

高雄市長(投票率約67.34%)
陳 菊 女 379,417 (49.41%) 民主進歩党
黄俊英 男 378,303 (49.27%) 中国国民党
羅志明 男 6,599 (0.86%) 台湾団結聯盟
林景元 男 1,803 (0.23%)
林志昇 男 1,746 (0.23%) 保護台湾大聯盟

前回は二期目に挑戦する謝長廷が50.0%で、国民党は今回と同じ黄俊英が46.8%で3ポイント強差があったが、今回は差が縮まった。理由は前記のとおり。
区別では陳菊は緑陣営の支持基盤である鹽テイ(土偏に呈)、三民、旗津、新興、前鎮、小港各区で勝利、黄俊英は左營、楠梓、前金、苓雅各区で勝った。


また、市議員の各党獲得議席、得票率:

台北市議員
国民党24(前回比4増)、43.64%(+11.65P)
民進党18(前回比1増)、30.77%(+2.23P)
新党  4(前回比1減)、 5.87%(-3.17P)
親民党 2(前回比6減)  6.98%(-10.63P)
台連  2(前回比2増)、 5.12%(+1.41P)
無所属 2(前回比同じ)、 7.14%
緑の党 0

高雄市議員
国民党17(前回比5増)、35.95%
民進党15(前回比1増)、30.49%
親民党 4(前回比3減)、 6.78%
台連  1(前回比1減)、 5.74%
無所属 9(前回比2増)、19.78%

最終日に盛り上がった謝長廷候補の選挙集会

2006-12-09 04:20:25 | 台湾政治
台湾の行政院直轄市(台北と高雄)の市長と議員選挙が9日に実施される。
実は今回の選挙、あまり盛り上がっていないし、私自身もそんなに興味を引かないのが実情だった。ただ、選挙戦最終日の8日は、義理もあって、民進党公認の謝長廷陣営が台北市の圓山公園で開いた造勢晩会(応援する集い)に行ってきた。
あまり期待していなかったのだが、最後の夜の集会は、なかなかの盛り上がりで、ちょっぴり感動した。
今回の選挙戦では最終日にして初めての本格的な盛り上がりだった。特に今回は昨日まであまり見なかった若者の姿がたくさんみられた。
前日の7日に台北小巨蛋白(小ドーム)であった「斬新な趣向」との鳴り物入りの集会にも顔を出したが、それは確かに面白かったが、それほどの盛り上がりは感じられなかったので、最終日の盛り上がりは良かった。
ひょっとしたら民進党支持層をはじめとした本土派層の「鬱卒」が溜まりに溜まっていたのが、謝長廷の戦略の巧みさもあって、ようやく頭を持ち上げてきたということだろう。

だからといって謝長廷が当選するとはいえないだろう。
民進党内では期待する意見も多いが、私は台北市民の水準を信じない。台北の選挙民の質は、前回2002年末の市長選挙で馬英九のような人物が64%も得票したことを見てもわかるように、はっきりいって台湾で最も低いことがはっきりしているからである。つまり、行政能力や実績がどうこうよりも、外省人だから外省人にいれるという「族群意識」ばりばりの、偏狭な外省人が多い(40%を超える)台北市では、候補者をまっとうに吟味・判断して投票することは期待できない。だから私は、謝長廷が勝つ見込みはほとんどないといえる。
ただ、謝長廷自身はもともと勝つつもりで出ているのではなく、今回はある意味でポスト陳水扁の本土派陣営の盟主としての地位を確立するのが狙いのようなので、終盤になっての盛り上がりは御の字ということだろう。もちろん、得票率が40%を下回るようだと将来性に暗雲が漂うことになるだろうが、一般的には42-43%くらい取ると見られているので、そうなると謝長廷の計画・戦略通りということになるだろう。

ちなみに、今回は本ブログでは議員選挙も含めた具体的な選挙予測は特に書かないことにする。昨年は、民進党の内部評価やその他青・緑双方のメディアや関係者の話を元にした情報をもとに書いていたが、それが少しでも外れていると(大枠ではあっていても)、ケチをつける心無い読者がいるようなので、書かないことにする。
そもそも完全にぴったりになる予測なんて、人間である以上はできるわけがない。ただ、その予測の元になるまでの情報や取材など過程には、面白いものがあるわけだから、賢明な人間ならそこを汲み取るべきなのだが、世の中はアホが95%いるようだから、今後は書かない。
賢い人なら、書かなくても、意図は汲み取るだろうし、あえて書く必要はなかろう。
私の立場は日本人としては唯一かつ貴重なものなのだから、賢明な人はその部分を忖度・理解するだろうし、理解できないのはそれだけでアホウだということを意味しているのだから。

若手を登用するなら台湾語能力を見るべきだ

2006-12-02 18:22:25 | 台湾言語・族群
民進党政権になってからの台湾を見てもう一つ思ったことがある。民進党政権は若手を積極的に登用するのが活力を生み出す原因になってきたのは否定できない。それは少なくとも私が台湾に住もうと思った34歳の時点では、老害が目立つ日本人からみてうらやましくもあった部分だ。ところが、何事も行き過ぎは良くない。
もっとも、年季があれば重厚なわけではないことは、60代の施明徳のケースを見ればわかることだが、やはり社会の一線でどれだけ揉まれたかは登用のポイントだろう。若手ですぐに落下傘式に抜擢されると、底が浅い人間になる。
最近の民進党政権の人材登用を見ていると、若手ばかり、しかもそれもよく訓練や教育もせずに登用しているケースが目立つ。だから、いざというときに転び、戦力にならないばかりか、足を引っ張られる原因にもなる。
羅氏が浅薄なことばかりいっているのを見ると、ちゃんと民進党の綱領すら読んでいないのではないかと、思う。
若手を登用するのもいいが、それならもっと社会でみっちり苦労してきた人間を登用すべきだろう。はじめから政治だけを志した人間にはロクなのがいない。

それを避けて、ちゃんとした骨のある人間を抜擢するにはどうするか?
そのメルクマールのひとつは台湾語の流暢さだろう。

勉強ばかりしてきたか、台北の政治・メディア圏だけで育つと、北京語しかできず、台湾語がロクにできない人間が育つ。これは族群に関係ない。というか、いまや言語と族群は関係ない。台湾語ができないホーロー人、台湾語のほうがうまい外省人や客家人はザラにいる。

確かに陳水扁二期目の台湾では、本土化、台湾人意識が強まる一方で、言語面では北京語が優勢になりつつあるが、それでも社会の一線ではいまだに台湾語が主流だ。台湾語がヘタだということは、台湾という社会で揉まれてこなかったことの一つの証でもある。
これは別に台湾語を強制するとかそういった話ではない。というか、台湾語を話すべきだというと、「台湾語の強制」などと話を摩り替えるアホウな言説が、特に台北の知識層に多いが、それこそまさに台北の知識層の傲慢であり、知識層が労働や生活の現場を蔑視している証でもあるのだ。

台湾語が族群を超えた生活・労働の共通言語になっていることは、普通に夜市や伝統的市場やブルーカラーの作業現場や商売の価格交渉の現場に行けば、明らかなことだ。これは強制だとかそういう問題ではなくて、現実である。
客家人だろうが、外省人だろうが、原住民だろうが、タイ人やフィリピン人やベトナム人だろうが、社会の一線で働いている「働くおじさん・おばさん」は族群や出身地に関係なく、台湾語を日常言語にしているのだから。
そもそも今の台湾では言語と族群あるいはアイデンティティはあまり関係がない。台湾語を日常的に使っている人でも、北京語を排除することはないし、客家語だっていまどき「わけわからん言葉を話すな」などという人はめったにいない(時たまアホウはいるが)。
だから「台湾語で話す能力を政治家に求める」ことは、別にホーロー・ショービニズムではない。いまどき台北の勉強ばかりできる子供には、ホーロー人といえども。台湾語がまったくできないヤツだっているし、逆に外省人の2,3世で台湾語のほうが流暢なヤツだってたくさんいる。
だから、いまや言語と族群も関係がない。台湾語をホーロー人、北京語を外省人、客家語を客家人とだけ結び付けるのは無理があるのだ。
そうじゃなくて、社会的機能や場面で言語の使い分けを見るべきである。

もちろん台湾語が流暢でも骨がない人間もいる。だから言語は必要条件であっても、十分条件ではない。しかし、台湾語が流暢であれば少なくとも政治以外の社会の一線や苦労を知っているだけまだしもマシであり、そこで足切りをして、さらにその中から選べばよいだけのことだろう。

今年の台湾は人材の淘汰が激しいな

2006-12-02 18:19:47 | 台湾政治
陳水扁総統の長年の子飼いの部下といわれてきた羅文嘉氏(立法委員、客家委員会主任委員など歴任)が11月28日米国で講演したが、その中で陳総統を「いっていることが出鱈目で信用できない」などと最大限の表現を使って罵倒したことで、民進党支持層や本土派全体から反発を受けている。

ところが、例によって国民党系メディアは「最も愛した部下までが離反した。やはり陳水扁は駄目だ」などとはやし立てて、羅氏が主張している「新民進党運動」を持ち上げたが、さすがはシナ人メディア、水に落ちた犬を叩き、集団リンチを加える。酷薄である。
しかし、羅文嘉も羅文嘉だ。そんな批判があったなら、陳水扁が絶頂だったときに諫言、建策しろよ。今、陳水扁がレームダック化して困っているときに、国民党系と一緒になって叩くなんて、どうしょうもない。部下ならちゃんとボスを弁護しろよ(これは民進党にいながら国民党に媚びた発言も多い沈富雄すらそう指摘している)。
まあ、羅氏は以前から、シナ人メディアへの露出も多く、統一派政党の新党にも近いとも言われていたが、こんなところでシナ人が乗り移っていたのかな。
いずれにしても、これで羅氏も民進党だけでなく、本土派陣営全体での将来は終わったも同然だ。政治で生き残るには、これまで妙なことを妙なタイミングで発言して、民進党や本土派から総すかんを食らって国民党に走った鄭麗文や陳文茜の顰にならうしかないだろう。それも将来はあまり明るくないが。

これに限らず、今年は、陳水扁周辺の「疑惑」をめぐって、その人物が道理や哲学がしっかりした筋金入りだったのか、単にメディアに踊らされるだけの軽薄で底の浅い人間だったのかの分かれ目がはっきりとした年だったといえるだろう。

緑陣営ながら、根拠のないメディアの宣伝に踊らされて、陳水扁総統をクロだと誤認して、辞任を求めてきた人たち--7月の「親緑学者」の署名に参加した人、9月の「倒扁運動」に参加した人、それからその前後にも声明なりいろんな形で陳水扁辞任を求めてきた緑系の人たちは、もうこれで政治に対する影響力はなくなり、将来はないだろう。もはや淘汰された。今回、羅氏もその一人だ。
もちろん、こうした現象はこれまでも、存在してきた。いや、それは台湾だけでなく、日本だってどこだって政治の世界ではそうである。しかし、今年の台湾についてはその展開の速さと人数の多さは、特筆すべきというか異常である。
羅氏も私と同じ年の同じ月の生まれだし、学生時代から知っていたし、私の以前の妻の結婚披露宴にも来てくれたこともあって、個人的には同世代としての一種の革命感情(シンパシー)を感じていた。しかし客観的にみて、今の羅氏のやり方はどう見ても道理からの逸脱である。
そもそも彼の主張する「新民進党運動」なるものの中身もはっきりしない。政策的に本土・多文化主義や社会福祉や環境保護を重視するのかしないのか。まったくはっきりしない。単に「クリーンな政治を」などと口先だけのスローガンで、スタイルばかり求めているきらいがある。「新」を自称すればそれだけで良さそうなものに違いないというコケオドシを狙ったとすればあまりにも浅薄だし、台湾の選挙民をナメているとしか思えない。
大体、民進党の今日の混迷は、政権を握ってから財団(財閥)と近づきすぎて、結党当初の弱者重視の中道左派的理念を多くの部分で見失い、犠牲にしてきたツケなのだから、民進党は「新」ではなく、それこそ結党時の理念に立ち戻るべきであり、しかしながら、戦術面では当時とは条件が変わったことを踏まえて修正を加える(デモばかりやっとるようだでは、いかん)「温故知新」が必要なのだ。今の民進党はすぐ何かあるとデモをやるという癖が抜けず戦略面で調整しないまま、理念を見失いつつあるところが問題なのだから。
そういう点では、民進党はここで踏ん張って、反原発、環境、社会福祉などの本来の中道左派の理念を重視した進歩政党として訴えていくべきなのだ。「本土」というだけでは国民党本土派と区別がつかないのだから、左右の社会政策を軸に据えるべきなのだ。
もちろん、これまでも書いてきたように台湾社会の民意の主流は本土派かつ保守派(中道右派)である。そういう点では中道左派を前面に出すことはリスクはある。
ところが、だ。本土保守をある意味で代表するはずの国民党本土派は、いまだに「中国国民党」なる旧勢力の枠内にとどまり、新勢力として形を現していない。だとすれば、今だからこそ政策や理念面で、機先を制してアジェンダセッティングをリードすれば、いかに本土保守派が社会の主流だとはいえども、今ならいくらでも主導権を握ることは可能だ。
ちょうど新自由主義グローバリズムの下で、新自由主義中国への磁場効果もあって、貧富格差が拡大しやすい状況にあって、実際、民進党の基盤である南部の農民や労働者には民進党の本来の福祉路線に期待する向きは強い。国民党本土派がぐずぐずしている今ならチャンスは大きい。
ところが、そうした政策的中身がなく、いたずらに「新」だけを求めるのは、軽薄である、というか、それなら自分でそれこそ「新」たな政党を作ればよい。てか、羅氏は民進党の綱領も読んでいないのだろうか?

いずれにしても、2006年の台湾。人材の淘汰が激しかったことは間違いない。

台北も冬に突入!

2006-12-02 18:16:10 | 台湾その他の話題
冬型の気圧配置になっているせいで、台湾でも12月に入ったとたん、気温が急降下、本格的な冬を迎えた。といってもやっと最高気温が20度を切ったくらいで、日本的な感覚ではちょうどいいんだが、台湾の体感に慣れてきた私にとってはもう寒い!って感じ。台湾人もセーターとか、中にはオーバーを着込んでいるオーバーな人間もいるので、やっぱり台湾的には寒いのだ。
台湾人は22度くらいからセーターを着だして、18度以下になるとダウンジャケットを着込むやつもいる。13度以下なら完全武装(手袋、マフラーとか)になる。
だから、私が台湾に来た当初は11月だったが、その年は暖冬だったこともって、20度くらいの陽気で歩くと汗ばむくらいだったので、アイスクリーム食べながら歩いていたら、セーター着ている通行人が怪訝そうに見ていたんだよな。

地下鉄台北駅のホームに柵を設置&新幹線開通式延期

2006-12-02 18:15:34 | 台湾その他の話題
台北捷運(MRT、都市交通システム)台北車站(台北駅)で藍線・紅線それぞれのホームに10月から建設が進められていたホーム側ドアが完成し、12月1日から供用されている。
中国語では「月台門・隔音牆」といって、直訳すればホーム扉、防音壁だが、実際には転落防止用の「柵」(←日本語をあまり使っていないので適切な日本語が浮かばない)。
参照:中国語wikinews:臺北捷運提升安全防護 月臺門與隔音牆完工 今日正式啓用 http://zh.wikinews.org/wiki/Wikinews:2006%E5%B9%B4/12%E6%9C%88/1%E6%97%A5
写真はhttp://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/c8/MRT_ZhongxiaoFuxingStation-GateDoorSignal.jpg/120px-MRT_ZhongxiaoFuxingStation-GateDoorSignal.jpg
上越新幹線ホームとか、東京地下鉄南北線などに設置されているあれだが、台湾の場合は日本と違って、高さが中途半端で、普通の大人だったら頭は出てしまう程度の高さ。費用をケチったのか、もともと中途半端なことが好きだからか知らないが、とにかく中途半端な高さだ。だから防音壁というのはウソで、やっぱり転落防止なのだろう。転落事故多かったからな。しかもそれは不注意の場合もあったが、ホームから走り去る列車が起こす風に煽られて転倒した人もいるからな。
でも、なんだかそのうちホーム側のドアがそこかしこで自動で開かなくなって、電車への乗り降りができなくなりそうな予感(笑)。

★★

そういえば、同じ列車の話題といえば、12月7日に開通式をやることを「決めた」といっていた台湾高鉄(台湾新幹線)だが、予想通り=案の定、開通式の延期が決まった。
交通部(交通省)は高鉄による脱輪など度重なる事故を受けて11月28日、営業許可の発布を少なくとも1カ月凍結すると決めた。それを受けて台湾高鉄公司が29日延期を決めた。
最初は昨年10月、次に今年10月末、それから12月7日と延びてきたが、やっぱりまた延びた。
私の前々からの予想では最も延びて来年10月、うまくいって来年の過年(いわゆる春節)明けだろうと見ているのだが、そうなりそう。しかもいずれにしても、板橋・左営間で、台北・高雄までの延伸は後になると思う。

まあ、台湾って、計画性ないから、MRTの最初の路線、木柵線の開通が当初予定より3年くらい遅れたこともあるし、大体、当初計画通りに行かない。
もっとも、これは逆にいえば日本以外の国では普通のこと。昔、大英博物館内にあった大英図書館がセントパンクラス駅に新たなビルを建設していたとき、地図では1995年開館となっていたその年にはぜんぜん工事が進んでなくて、結局、実際開いたのは1998年。
英国にしてからがそうだから、他のもともとチンタラ、のんびり、いい加減な気質のある世界180カ国くらいではもっとそうなる。
アテネ五輪だって、「本当に開催できるのかよ」みたいなチンタラ、のんびりした準備過程を見せ付けられたし。
また、今回アジア大会が開かれるカタールに今年5-6月に立ち寄ったときに、空港拡張やホテルの建設ラッシュだったが、あの感じだと、どれも間に合わなかったりして(笑)。大会終わってから完成!てことになりそう。
そういえば、尼崎線の脱線事故の原因になったものを説明すると、日本人以外は理解できない。「90秒の遅れを取り戻すために焦って脱線した」というと、台湾人やレバノン人は「90分じゃないの?」、ウガンダ人は「90時間じゃないの?」といっていたから。

そういうことで、日本人だけが異常に計画性に厳しくて、いわば世界標準からズレているんだが、それでも世界標準が理解できないのは日本人の恒。今回もいろんなVIPに招待状送っているんだろうが、式の一週間前になって「延期になりました」では、日本以外の多くの人は「ま、そんなもんか」と納得するんだろうが、日本人と、一部ユダヤ人だけは激怒しそう(笑)。どうなるんだか。