27日、立法院において総統罷免案の採決が行われた。9時から採決が始まり、開票結果が11時10分に出た。罷免案成立には現有総数の3分の2、つまり148票の賛成が必要だが、罷免に賛成した国民党・親民党、それらに近い無党団結聯盟などを合わせても119票で、罷免案は成立しなかった。民進党88人は絶対反対の立場を示すとして議場での採決に加わらず、台連12人と無所属2人の計14票は「罷免には理由がないが、陳総統にも問題がある」として採決に参加したが無効票を入れた。
立法院の外では、緑、青の両陣営がそれぞれ集会を開いて気勢を上げた。
青陣営は立法院の南側の済南路で集会を開き、2000人が参加。緑陣営は立法院北側の青島東路で集会を開き、2万人が集まった。
事前に青陣営系の暴力団が介入して暴動や乱闘沙汰になると心配されたが、蓋を開けてみると、小競り合いは発生したが、大きな混乱は発生しなかった。
というのも、この日は朝から晴れ渡ったこともあって、7時半にはすでに30度を超え、開票結果が出るころには35度近くと、前日と比べてもきわめて暑い日だった。暑さに慣れている台湾人もさすがにへばったのだろう。乱闘する余裕がなかったのではないか。
私も朝から一応緑側の手伝いに行っていたが、この茹だるような暑さでは、はっきりいって早く終わってほしい、といった気持ちだった。終わったら、一目散にコンビニに走ってアイスクリームを食べたのはいうまでもない。
陳水扁は罷免騒動を切り抜けたように見えるが、実際には逆で、これでレームダックは確定となったといえるだろう。なるほど罷免案は理由はなかった。娘婿のインサイダー疑惑も1ヶ月以上も拘束しておいて何の証拠も挙がらず、取りざたされた夫人の商品券を使った贈収賄疑惑についても関係者の証言が矛盾するなど根拠はまったくないからだ。
しかし問題は、こうした「疑惑」が野党側の悪意から出てきたときに、それに対して迅速に説明や釈明もできず、別の政策イシューを打ち出して巧みに危機を回避することができなかった陳総統自身にも指導力および政治的手腕の欠如が、誰の目にも明らかになったことである。
民進党は罷免案反対で自らの総統への義理を果たしたが、これを機に、党内における陳総統の地位は低下、08年総統レースに向けた主導権争いが激化するだろう。
しかも、台連の動きとスタンスも興味深い。当初は罷免案に反対するとみられた台連が棄権に回ったこと、李登輝が前日に「罷免は理由がないが、陳水扁も成果がなく、本土意識も偽者だ」とこっぴどく批判したこともあいまって、意味深長である。
これも07年の立法委員選挙をきっかけに、国民党本土派の大分裂が起こり、政界再編が進むことを睨んで、民進党との関係で、含みを残したものということができる。
私は07年立法委員選挙を機に、08年の総統選挙までには、大きな政界再編が起こると予想する。立法委員選挙は小選挙区にくわえて定数半減という厳しい戦いになる。こうなると、現職どうしでの争いが激しくなり、とりわけ地方派閥に依存している国民党には不利に作用する。というのも、小選挙区で、定数が半減にもなれば、国民党はこれまで中選挙区で恩恵に浴していた「同一選挙区における地方派閥共存」が成立せず、公認漏れする「派閥領袖」が発生する。公認漏れした領袖は、自力で無所属で出馬しようとするか、党を割って別の新党を作るか、いっそのこと民進党か台連に移ろうとするだろう。
だとしたら、国民党が大きく分裂するのは間違いない。もともと小選挙区・定数半減という選挙制度改革案は、民進党側が提出したものだった。民進党としても単に純粋に改革を目指したわけでなく、国民党に打撃を与える意図があったものである。実際、国民党のお家事情を見る限り、07年選挙は国民党には不利であろう。次回選挙は国民党にとって厳しいものとなることがわかっているからこそ、今回、「罷免が成立しなければ倒閣運動を進める」と宋楚瑜がぶち上げ、馬英九が同調しそうになったとき、国民党内部の現職議員から反対の声が相次いだのである。国民党自身は、制度改革以降の選挙では戦えないことがわかっているのである。
かといって、民進党も今の形のままで安泰だとは思えない。青陣営による陳水扁攻撃で、民進党のイメージにも相当の傷が残ったことは事実だからだ。民進党こそ唯一力のある本土派政党という今の図式が続くのであれば、08年選挙は必ずしも楽観はできない。
かといって、国民の多くは、国民党は民進党よりももっと悪いことを知っている。ここに、最近李登輝らが力説している第三勢力が浮上する余地と原因がある。国民党が大分裂し、本土派を中心に第三勢力ができる。そうなれば、台連はそこと合流するだろうし、民進党の中でも新潮流に批判的な人たちも合わさるかもしれない。
また、青陣営でも、宋楚瑜と王金平の動きも微妙である。この二人は、馬英九にとって最大の政敵であり目の上のたんこぶだから、もし08年に馬英九が総統になったとしたら、馬周辺によって政治生命を絶たれる立場にある。それは本人たちも承知しているので、最近の両者の動きを見ると、宋はより強硬な外省人・深い青の立場を打ち出して、少数ながらも確実な勢力をつかもうとしているし、王も民進党内非新潮流系とパイプを強めたりしている。それに対して、馬英九は明らかに無能すぎる。
これは囚人のジレンマというより、ダブルバインドになっている。焦って、両者を叩こうとすれば、両者の離反が早まるだけである。かといって何もしなかったら、両者の独自の動きを止められない。
いろんな意味で、今後台湾の政界は一気に流動化するだろう。
立法院の外では、緑、青の両陣営がそれぞれ集会を開いて気勢を上げた。
青陣営は立法院の南側の済南路で集会を開き、2000人が参加。緑陣営は立法院北側の青島東路で集会を開き、2万人が集まった。
事前に青陣営系の暴力団が介入して暴動や乱闘沙汰になると心配されたが、蓋を開けてみると、小競り合いは発生したが、大きな混乱は発生しなかった。
というのも、この日は朝から晴れ渡ったこともあって、7時半にはすでに30度を超え、開票結果が出るころには35度近くと、前日と比べてもきわめて暑い日だった。暑さに慣れている台湾人もさすがにへばったのだろう。乱闘する余裕がなかったのではないか。
私も朝から一応緑側の手伝いに行っていたが、この茹だるような暑さでは、はっきりいって早く終わってほしい、といった気持ちだった。終わったら、一目散にコンビニに走ってアイスクリームを食べたのはいうまでもない。
陳水扁は罷免騒動を切り抜けたように見えるが、実際には逆で、これでレームダックは確定となったといえるだろう。なるほど罷免案は理由はなかった。娘婿のインサイダー疑惑も1ヶ月以上も拘束しておいて何の証拠も挙がらず、取りざたされた夫人の商品券を使った贈収賄疑惑についても関係者の証言が矛盾するなど根拠はまったくないからだ。
しかし問題は、こうした「疑惑」が野党側の悪意から出てきたときに、それに対して迅速に説明や釈明もできず、別の政策イシューを打ち出して巧みに危機を回避することができなかった陳総統自身にも指導力および政治的手腕の欠如が、誰の目にも明らかになったことである。
民進党は罷免案反対で自らの総統への義理を果たしたが、これを機に、党内における陳総統の地位は低下、08年総統レースに向けた主導権争いが激化するだろう。
しかも、台連の動きとスタンスも興味深い。当初は罷免案に反対するとみられた台連が棄権に回ったこと、李登輝が前日に「罷免は理由がないが、陳水扁も成果がなく、本土意識も偽者だ」とこっぴどく批判したこともあいまって、意味深長である。
これも07年の立法委員選挙をきっかけに、国民党本土派の大分裂が起こり、政界再編が進むことを睨んで、民進党との関係で、含みを残したものということができる。
私は07年立法委員選挙を機に、08年の総統選挙までには、大きな政界再編が起こると予想する。立法委員選挙は小選挙区にくわえて定数半減という厳しい戦いになる。こうなると、現職どうしでの争いが激しくなり、とりわけ地方派閥に依存している国民党には不利に作用する。というのも、小選挙区で、定数が半減にもなれば、国民党はこれまで中選挙区で恩恵に浴していた「同一選挙区における地方派閥共存」が成立せず、公認漏れする「派閥領袖」が発生する。公認漏れした領袖は、自力で無所属で出馬しようとするか、党を割って別の新党を作るか、いっそのこと民進党か台連に移ろうとするだろう。
だとしたら、国民党が大きく分裂するのは間違いない。もともと小選挙区・定数半減という選挙制度改革案は、民進党側が提出したものだった。民進党としても単に純粋に改革を目指したわけでなく、国民党に打撃を与える意図があったものである。実際、国民党のお家事情を見る限り、07年選挙は国民党には不利であろう。次回選挙は国民党にとって厳しいものとなることがわかっているからこそ、今回、「罷免が成立しなければ倒閣運動を進める」と宋楚瑜がぶち上げ、馬英九が同調しそうになったとき、国民党内部の現職議員から反対の声が相次いだのである。国民党自身は、制度改革以降の選挙では戦えないことがわかっているのである。
かといって、民進党も今の形のままで安泰だとは思えない。青陣営による陳水扁攻撃で、民進党のイメージにも相当の傷が残ったことは事実だからだ。民進党こそ唯一力のある本土派政党という今の図式が続くのであれば、08年選挙は必ずしも楽観はできない。
かといって、国民の多くは、国民党は民進党よりももっと悪いことを知っている。ここに、最近李登輝らが力説している第三勢力が浮上する余地と原因がある。国民党が大分裂し、本土派を中心に第三勢力ができる。そうなれば、台連はそこと合流するだろうし、民進党の中でも新潮流に批判的な人たちも合わさるかもしれない。
また、青陣営でも、宋楚瑜と王金平の動きも微妙である。この二人は、馬英九にとって最大の政敵であり目の上のたんこぶだから、もし08年に馬英九が総統になったとしたら、馬周辺によって政治生命を絶たれる立場にある。それは本人たちも承知しているので、最近の両者の動きを見ると、宋はより強硬な外省人・深い青の立場を打ち出して、少数ながらも確実な勢力をつかもうとしているし、王も民進党内非新潮流系とパイプを強めたりしている。それに対して、馬英九は明らかに無能すぎる。
これは囚人のジレンマというより、ダブルバインドになっている。焦って、両者を叩こうとすれば、両者の離反が早まるだけである。かといって何もしなかったら、両者の独自の動きを止められない。
いろんな意味で、今後台湾の政界は一気に流動化するだろう。