むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

馬英九支持率ついに30%に 下落の世界記録を自己更新 8月には台湾版EDSA2か

2008-06-29 03:39:46 | 台湾政治
馬英九の支持率下落が止まらない。
ビジネス雑誌「遠見」が26日発表した馬英九政権成立1ヶ月の世論調査によると、馬英九政権の支持率37%、不支持率46%だった。同日伝えられた国民党系テレビ局実施の調査ではさらに低く、支持30%、不支持56%。いずれの数字も就任1ヶ月目に発表されたTVBS・聯合報などの数字をわずか1週間でさらに下げ、不支持が支持を上回り、支持率低下・不支持率上昇スピードの世界記録を自己更新した。

考えてみれば、わずか40日もしない間に、相次ぐ水害への対応の遅れ、閣僚や総統側近の外国永住権保持問題、ガソリン価格一挙引き上げとそれによる日用品の価格高騰、尖閣をめぐる日本との関係悪化、閣僚の相次ぐ失言、手足口病の蔓延、中国直行便を受け入れる地方空港の対応遅れ、さらに株価の連続下落と、不評だった陳水扁政権8年を上回る失政続きであり、同じように「経済復興」を掲げて政権を奪還した同じ経済保守の李明博政権とそっくりになった。いや、株価下落幅と対日関係悪化という材料が加わっている分、李明博政権よりひどいといえる。
これだけ非常識な失政が続いてばかりだと、「たった1ヶ月あまりではわからない、もっと長い目で見るべきだ」などといっていられない。「たった1ヶ月でこれだけ失政するのは珍しい、先が思いやられる」からだ。
台湾をつぶさないためにも、有権者が責任を行使する必要があるだろう。

馬英九に好意的だったTVBS56chの討論番組「全民開講」ですら27日、国民党よりの評論家たちから一斉に「この
まま行けば支持率は7%くらいになるのも早いだろう。そうなったら、どうする?謝長廷は、馬英九政権はすでに公約違反ばかりしているので、総統選のやり直しが必要だといっているが、その通りだ」という意見も飛び出した。
総統選挙で得票率58%という空前の大勝を獲得して「8年は問題ない」と思われた馬英九政権は、いまや1期4年どころか、半年ももつのかという空前の危機に陥っている。

国民党支持層すら怒らせているのは、株価下落について26日、内閣スポークスパースンである行政院新聞局長が「妙薬なし」と投げ出し、さらに27日には行政院長が「馬上好(馬英九になれば、すぐによくなる)というのはあくまでも選挙用のスローガンにすぎなかった。実際には馬上漸漸好(馬になれば少しずつよくなる)というべきだ」と言い放ったことだ。
台湾では株をやっている人間は大変多く、特に国民党支持層は株価に敏感。ところが、台湾株式市場は馬英九政権成立以来、1-2日を除いてほぼ連続して下落、5月19日の終値9295.20ポイントから6月27日の終値7548.76ポイントまで下落幅は1746ポイント、18.8%と、率では世界の株式市場の3位という最悪の記録。単純計算では投資家一人あたり一般サラリーマンの年収に匹敵する53.6万元の損失となっている。
李登輝政権初期のバブル崩壊で株価が6分の1になったり、陳水扁政権初期に株価が3分の1になったこともあったが、それらは1年以上かけての下落幅であり、40日弱という短期間でこれだけ下落したのは、台湾株式史上ほぼ初めてだろう。いや最近では世界記録かも知れない。
これに対する馬政権の言い訳は「国際的な株価下落の影響」だ。ところが、こういう言い訳が通用しないのは、民進党政権が同じ言い訳を使って選挙で敗れたことで証明済みなはず。そういう民進党政権を「言い訳は通用しない」といって追い詰めて、政権を奪回した国民党政権がわずか30日あまりで同じ言い訳を使い始めた。これでは馬英九政権の余命は長くはあるまい。
国民党勢力の多くも諦めムードだ。いや立法院の国民党議員はほとんど野党も同然で、現在国会に与党が存在しない状況だ。これでは何のために1月の選挙で国民党系に4分の3の絶対多数を有権者が与え、さらに馬英九を58%で大勝させ、「国民党の全面執政、全面責任」を付託したのか、わからない。
選挙中に打ち出した政策公約のほとんどは今は「不可能」宣言を出し、残る公約は7月4日の週末チャーター便、18日の中国観光客の増加だけとなっている。ただ、これらも経済効果は期待できず、むしろ中国からの病原菌の流入による衛生悪化、さらに治安悪化と、むしろマイナスでしかないだろう。
そして、そうしたマイナス効果がはっきり見えてくるのがちょうど北京五輪開催中で、北京五輪閉幕後には中国バブルが名実ともに崩壊し、その余波を台湾ももろに受けることになるので、8月下旬までには、エストラーダ政権を街頭運動で倒したEDSA2の台湾版が起こる可能性が高い。
いや現実主義でせっかちな台湾人だけに、その時期はさらに前倒しになる可能性もある。

笑える語学教材「CDエクスプレスチベット語」「TYS French Grammar」

2008-06-29 02:36:24 | 世界の民族・言語問題
語学教材を色々読んでいると、笑える表現に時々出くわす。
最近の傑作は「CDエクスプレスチベット語」星実千代著(白水社)で、第4課「今日は天気が良いです」の例文の日本語訳
-ほんとですねえ。あの年かさのギャルはとても面白いと思いませんか?
という死語を含んだ意味不明な文がある。面白いのは、こんな作文ができるあんたのほうだよ、って思わず突っ込みたくなるが、そもそも「年かさ」なのに「ギャル」って何だ?ギャルということば自体が死語なので、「年かさ」なのは形容矛盾にならないということだろうか?
そういえば、この著者は、娘も東外大でチベット語専門家として活躍しているようだが、こういう言語感覚だと、おそらく家にテレビがない(学者一家にありがち)、という感じじゃないだろうか?
それ以前に、この同書は、エクスプレスシリーズにしては難しすぎて、入門向けとはいいがたい。大体、第1課からして「あなたは外国からいらっしゃったのですか?」って、まあ日本語がやたらお上品なんだが、ほかのシリーズならこれは第5課くらいで出てきそうな高度だ。
それに難しいわりには、チベット語の能格言語としての特徴について詳しい説明があるわけじゃないので、言語マニアには物足りないし。設計思想はどこにあるんだろう?

Teach Yourselfシリーズ、Robin Adamson & Brigitte Edelston著の French Grammar。「シチュエーション別」に文法事項を説明するというスタイルはよく考えられているし、説明も良いんだが、例文がけっこう不自然なところが玉に瑕。
たとえば、Unit 13 pp.174で
L'avion vient de decoller, quand un passenger se lever, sort un pistolet, et commence a menacer l'hotesse.
(アクサン記号は省略)
とある。ヲイヲイという感じの例文だ。


ファンタジー大作「ナルニア2」と台湾語映画「蝴蝶」

2008-06-29 02:35:04 | 芸術・文化全般
6月3日に封切されたファンタジー大作「納尼亞傳奇2賈思潘王子(ナルニア国物語2・カスピアン王子の角笛)」、13日に封切された台湾語映画「胡蝶」をようやく24日に見た。

ナルニア2は、「ナルニア1ライオンと魔女」から2年ぶりで、4人兄弟姉妹の役は同じだが、内容的には1よりもスリルがあって、面白かったと思う。10点満点で7点か。しかし1の時も思ったんだが、兄弟姉妹役はいずれも演技はぴか一なんだが、兄弟はイケメンなのに、姉妹はブスというのはどういう意図なんだろうか?そういえば姉スーザン役の俳優って、祖父が判事、父が弁護士で、本人もオクスフォード大に通っている典型的な英国の中の上の階級ということで、映画に出てくる兄弟姉妹の階級設定と同じだからなのか。

蝴蝶は、張作驥監督作品。実は2005年秋のクランクイン前に私にも出演要請も来たことがあるが、05年秋に長期旅行に出たり何かとバタバタしていたこともあって、結局出演はできなかったものだ。宜蘭の漁村・南方澳を舞台にヤクザ一家の愛憎を描いたもの。言語はほとんどが台湾語で、主人公の日本人養父が日本語の大阪弁、それから若干北京語とセデック語?が出てくる。そもそも胡蝶の副題にsoul of a demonとあるのは、セデック族?の言い伝えで、蝶は「悪魔の魂」という見方があることからとったもの。ただこの手の映画によくありがちで、人が無意味に殺されていくところが、何とも。割と社会が健全な台湾では現実感がないからかも知れないが、今の日本では上映できないな、これは。無意味に人が殺されていくのと、いまいち筋がわからんかったという意味で、評価は5点かな。
台湾語を基軸にして、セデック語?も出しているところは評価できるけど。
言葉といえば、日本人の俳優は私もよく知っている人だが、さすが大阪弁がネーティブだけに、大阪弁の台詞回しはよかった。この人、ドラマなどで標準語の役だとどうしても硬くなるんだよね。今後は大阪弁の役柄をオファーしたらいいかもしれない。こういう点を見ても、母語って重要だな、と思う。

映画「バンテージ・ポイント」その他

2008-06-29 02:31:23 | 芸術・文化全般
5月下旬に同僚からタダ券をもらって「刺殺據點 Vantage Point」を見た。テロリストによる大統領暗殺の真相を8つの地点、8人の人間の観点から、迫っていくサスペンスアクション。
映画の前半で、大統領替え玉の暗殺にいたる20分間を別の視点で8回巻戻して流す手法は、新鮮で良かったと思うが、さすがに8回も続くとちょっとくどすぎって感じだった。例によって無意味によく笑う台湾の観客からは笑いが漏れていたが。
また最後のオチが、米国映画らしく「正義の米国は勝ち、テロリストは敗れる」という勧善懲悪ものに終わったのも、途中の面白さを半減させた。
とはいえ、発想の良さから、全体としては10点満点で7点。割と良かったと思う。

ところで、このところ、ケーブルのほうでも映画をよく見ているが、
話題になった「達文西密碼(ダヴィンチ・コード)」は、はっきりいってトンデモ映画で、タダで見るならともかく、レンタルや劇場で見る価値がないと思った。もちろん私もキリスト者ながら、不謹慎にも?イエスとマグダラのマリアには恋愛関係にあったと思うし、オプスデイが怪しい団体だという点には同意するが、原作と映画が主張するようにそれに子供がいただの、またシオン修道会とオプスデイを結びつけるのは無理がありすぎだと思った。こんな三流トンデモ作品だが、ヴァチカンが目くじらを立てたために話題になったようなものだ。カトリックといえば、レバノンのマロン派教徒と親交があるのと、マリア崇敬の教義にも惹かれるものがあるが、それでも、カトリックに改心する気になれないのは、ヴァチカンのこうした大人げなさが好きになれないからだ。

好かったのは2006年ダニエル・クレイグ版「007首部曲 皇家夜總會(007カジノロワイヤル)」だ。これまでの007と違って、完璧な人間ではなく、ドジを踏んだり、カジノで負けたりするところが新鮮だったし、ボンドガールのエヴァ・グレーンも妖しげな色気があって、一癖も二癖ありそうで、好かった。で、このグレーンって、「キングダムオブヘブン」のシビーユ王女役と「黄金の羅針盤」の魔女役だったんだね。007のほうが光っていて好かったと思う。ちなみに性格占いの八字だと、グレーンはイザベル・アジャーニと同じタイプ。そういえば、どことなく雰囲気と顔付きが似ていると思う。劇場で見るべきだったと悔やまれる。

ウガンダの独裁者イディ・アミンと架空のスコットランド人医師を描いた「最後的蘇格蘭王(ラストキング・オブ・スコットランド)」もよかった。バンテージ・ポイントでも観光客役で出てくるフォレスト・ウィテカーが主人公のアミンを熱演、ウガンダ人をして「本人を彷彿とさせる」と恐怖に陥れたといわれるだけあって、確かに迫真の演技と展開だった。

劇場でも見たことがある「明天過後(デイアフタートゥモロー)」も再び見た。主人公の高校生の恋人役が「オペラ座の怪人」でクリスティーヌ役だったエミリー・ロッサムだったのを後で知ったが、劇場のときにはエミリーの印象が薄かったので見直したわけだ。確かに印象薄い役だ。しかしオペラ座と違って、デイアフターのほうでは口を半開きにして「アホの子」みたいになっていないんだねw。それから、出だしでわざとらしく東京の場面が出てくるのは好いと思う。この部分、日本のネット批評では「東京らしくない」などと不評なんだけど、私自身、会社にいた時代は新橋やゴールデン街でよく飲んだ関係で別に違和感はなかった。東京といってもこぎれいなところばかりじゃないんでね。これを「東京じゃない」というのも、東京を知らないだけじゃないのか?もちろん、千代田区という設定なのはずれているけど。

ジョージ・オーウェルの小説の実写映画版「動物農荘(動物農場)」もケーブルで見た。原作に忠実なんだが、オーウェルの原作が小説としてはいまいち(政治風刺としては好い)ので、忠実にしすぎると単なる「お子様向け」になってしまうってことが、実感できた。

馬英九政権にまだ台湾人が我慢できている理由

2008-06-21 17:45:55 | 台湾政治
支持率が世界記録の下落を続けている馬英九政権だが、それでもまだ台湾人が韓国人と違って我慢しているのは、(1)外来政権慣れしている台湾人は、不満をぎりぎりになるまで我慢する癖がある、(2)それに関連して、メンツを重んじる台湾文化(中国的なメンツとは方向性が違う)から、政権発足まもなくはご祝儀=蜜月心理が働いていて、積極的に批判するのを控えている、(3)7月以降の中国との直行便拡大で経済効果が見込まれるという政権の主張に一縷の望み(実はそれほど信じていないが)をつないでいることと、ためだと思われる。

台湾の巷では蜜月心理はないという指摘が多いがそれは違うと思う。蜜月心理があるからこそ、まだ支持率が40%を保っているのであって、それがなくなれば、李明博政権以上に底割れして、支持率が一桁になるだろう。
不満爆発の先延ばし要因としては(3)が大きいと思うが、実際には台湾人の多くは中国との関係改善で台湾人の生活が向上するなんて信じている向きも少ないから、実際に7月を迎えて、中国との直行便増加によって中国観光客がわんさか押し寄せることになったら、その結果による治安悪化、衛生・サービスの低下と、ただでさえ尖閣問題で日本人が遠のくようになった経済的マイナス効果もあいまって、「やっぱり思ったとおりダメじゃないか」ということになって、不満が爆発するのは時間の問題だろう。

そして爆発した時点で、手遅れなのである。2006年秋の陳水扁打倒運動がそうだった。「宅男」(お宅が語源だが台湾では引きこもりの意味になっている)の馬英九政権はいまだに危機に気づいていないようだが、自分自身が煽った陳水扁打倒運動でわかるように台湾人は爆発した時点で手遅れなのだから、いまだに気づかないとしたら崩壊するしかないだろう。

台湾人は目に見える効果をすぐに期待する商売人気質だから、7月以降は秒読みといったところだろう。
まして、北京五輪閉幕後は、馬英九政権が唯一頼みにしている中国経済も減速・崩壊へと向かうとみられていることから、台湾人はもう我慢できない。

馬英九政権の支持率、発足僅か1ヶ月で41%に急落、世界記録達成!

2008-06-21 17:38:06 | 台湾政治
馬英九氏は対中交渉で「総統と呼ばず先生(氏)でもよい」と自ら総統であることを否定し、すでに総統ではないのだが、馬氏が率いる政権の支持率は発足からわずか1ヶ月の19日行われた各種世論調査結果では、最低値で41%(TVBS)と、支持率急落の世界記録を達成した。
これまで支持率急落の世界記録なのは李明博・韓国大統領だが、李氏ですら就任から一ヶ月の3月26日に世論調査会社リアルミーターが実施した調査結果では51.1%、ほぼ2ヶ月目の4月23日の49.2%と、かろうじて50%前後を保っていたから、これは驚くべき不人気、無能ぶりである。

なまじ「経済振興」を掲げて幻想を与えて大差で当選しただけに、発足直後からガソリン価格引き上げで庶民や漁民に不満を高め、さらに物価高騰に無策、6月上旬に南部で起こった水害に現場にも行かず、閣僚が「損失はたった2千万元だけ」などと失言、閣僚や総統府側近の外国永住権問題も対応が後手後手に回り、その矛先逸らし?で騒いだ尖閣諸島問題でも錯乱した対応を見せ、対日関係もぶち壊してこれまた大失敗。つまり、内政・経済も外交もボロボロなのだ。

TVBS調査は16-17日実施(97年06月17日馬英九就職一個月滿意度民調 http://www.tvbs.com.tw/FILE_DB/DL_DB/even/200806/even-20080620165917.pdf)、馬英九政権の満足度(支持率)41%、不支持率37%で、2000年同時期の陳水扁の支持率が77%あったのと比べて大幅に低い。選挙で馬に投票した人の中ですら28%が不支持。
テーマ別では、両岸関係進展については60%が満足(26%が不満)を表明しているものの。物価高騰に対しては58%が不満で31%が満足、尖閣問題について45%が不満、38%が満足、危機管理能力について51%が良くない、36%が良い、選挙当時の期待に比べて現在は悪いが42%、期待通りが41%などと、両岸関係進展以外はすべて厳しい評価を下している。

聯合報が18ー19日に実施、20日付け紙面で伝えた調査(http://udn.com/NEWS/NATIONAL/NATS5/4392595.shtml、民調》馬總統降為50% 劉揆43%)では、馬英九総統の満足度(支持率)は50%と、就任した5月20日の66%に比べて16ポイントも低下する一方で、不満度(不支持率)は10%から30%に急増した。劉行政院長については支持、不支持が42%、33%、内閣全体が42%、35%とわずか一ヶ月にしては不支持が多い。同じ時期の安倍、福田内閣を超えているだろう。

民進党が5-6日実施、10日に発表した調査で、馬英九総統の支持率は50.8%。
さらに、17-18日実施19日発表の調査で馬政権の評価は平均で100点満点の59.6点と不合格(民進党HPから右上ボタンで日本語を選び、メニューからニュース→ニュースで6月10日と19日のニュースを選ぶ)。
劉行政院長は支持率が47.5%に対して不支持率が44.4%と誤差範囲内で拮抗している。
テーマ別の不満度は経済振興策については53.8%、物価対策は63.3%、社会福祉については44.1%、外国永住権所持問題について53.7%、水害対策について59.7%となって、経済民生分野で不満が高い。
閣僚で評判が悪いのは対日強硬発言など不穏当発言が目立つ外交部長歐鴻錬、国防部長陳肇敏と、対日強硬路線に国民がノーを突きつけた形だ。

ここで注目すべきなのは、民進党調査よりも馬英九に好意的だったはずのTVBS調査での支持率が低く、民進党と聯合報が同じである点。
最近民進党の世論調査があまり当たらなくなり、今年の二つの選挙ではTVBSがかなり正確な数字を出していたことからみて、TVBSの数字は真実に近いといえるだろう。
もっとも民進党の名誉?のために付け加えるなら、10日発表の調査結果で支持層の交差分析によれば、中間選民(浮動層、中立層)の中では、当選後就任前の4月上旬に支持率が61%あったのに、6月上旬には31%に急落している。最近の台湾の輿論は中間選民の意向が重要になっているので、これが全体の真実を表しているといえるのではないか?

だとしたら、これは牛肉問題で騒ぎが大きくなって李明博支持率が急落した4月末から5月初にかけての状況と類似していることになる。
ただし、李明博は少なくとも外交的に失敗はしていない(牛肉問題の迷走で米国の信頼を失いつつあるものの、日本に矛先を逸らすことはまだやっていない)し、まして台湾は韓国よりも国際的地位が低い(韓国人は国連事務総長にもなっているが、台湾は国連加盟以前の問題)分、外交での失敗、特に日本との関係悪化は致命傷となりうる。

ところが、どういうわけか、馬英九「先生」は、元首としての自覚と責任を放棄しているためか、対日関係悪化が今後致命傷となりうるという自覚も危機感もないようだ。
しかも、国民党内部、特に立法院の台湾本土派には、与党となったうまみがないためか、積極的に政権を擁護しようという雰囲気も見られない。それは、そもそも4分の1もない民進党の議員にほとんど発言させ、それを抑えることもまったくしないし、むしろテレビ討論では民進党を援護する国民党議員や学者が多いという点にも見られる。
与党国民党は空中分裂状態、つまり、早くも政権末期という様相を呈している。
その一方では民進党の支持率はうなぎのぼりで、35%前後に達している(ひょっとして輿論調査では過去最高?)。台湾ではこのところ与野党の支持率のねじれ現象が続いていて、野党になったほうがなぜか支持が高い。

藍系の聯合晩報ですら、20日付けの一面トップで「株価8000ポイントの大台も陥落、145ポイント下落、馬政権一ヶ月で1000ポイント下落」という見出しで「馬英九総統が就任して一ヶ月の今日、台湾株式市場は本格的に8000ポイントの大台を割った」と皮肉交じりに書き、さらに別の記事で「投資家激怒、馬は陳と同じで騙している」と伝えている。聯合報は社説は相変わらず深藍だが、記事では最近馬政権批判が増えている(8千失守 台股重挫145點 馬滿月跌千餘點 http://udn.com/NEWS/STOCK/STOS1/4393005.shtml。股民怒:馬跟扁一樣 都在騙 http://udn.com/NEWS/STOCK/STOS1/4393030.shtml)
特に同じ藍系の中国時報があまりにも馬英九国民党擁護が過ぎて業績不振でついに人員整理に乗り出したのを見て、国民党べったりではダメだという危機感があるのだろう。
そういえば、テレビも中天は馬擁護的だが、TVBSは56chは馬擁護、55chは馬に批判的と割れていて、年代と東森も馬批判の色彩が強まっている。リンゴ日報は是々非々だが「脱台湾化」「対日関係悪化」については批判を強めている。

ある意味で、台湾メディアも「政権との関係」については、健全になっているといえるが(ただし尖閣問題では随分煽って、失格だが)、身内だったはずのメディアにも批判されるほど、民衆の不満が強いといえる。
選挙時に馬英九に強い反感がなかった淡緑系の友人いわく「思った以上に無能で、特に経済の不振は現実主義の台湾人には堪える。このままだと8月には大デモが起こって、馬英九は引きずりおろされるだろう」。

戦後に設定された国境線の変更は戦争をもたらす 領土に「歴史」も「固有」も関係ない

2008-06-21 17:35:41 | 世界の政治・社会情勢
私は国民国家など幻想に過ぎないと思っているが、現実にそれが機能している以上は、あくまでそれを前提にして議論すると、そもそも尖閣の領有権問題は、南千島(北方四島)、独島(竹島)と同じく、大日本帝国が大東亜戦争によって崩壊し、東アジア地域によって新たに国境線の線引きを行った結果だと考える。
だから、ここで「戦前の既得権」や「歴史的経緯」を持ち出して、「戦後の国境線」に物言いをするのは基本的にナンセンスであり、新たに戦争の火種を生む愚かな主張だと考える。
つまり、独島はもはや韓国領であり、南千島はもはやロシア領であり、尖閣諸島はもはや日本領であることは戦後確定した事実だということだ。

実際、欧州では、戦争のたびに国境線が変更された経験から、領土や国境線に「歴史的経緯」を持ち出すのはナンセンスとされている。
ところが、東アジアではまだまだ初期的かつ幼児病的民族国家主義が跳梁しているから、やたらと領土について「歴史」だの「固有性」だの「地理・地質」だのを持ち出して争いがちだ。
だから今回尖閣について台湾人は「台湾側が漁場としていた」「台湾本島と地理的にも近く、地質的にもつながっている」といい、中国は「中国の歴史地図に描かれてきたし、大陸棚にあるから、中国領だ」といい、日本の官房長官が「固有の領土」といったのだが、いずれもバカげている。
というか、「昔の漁場」「昔の地図」は「現在」の主権範囲を決める根拠にならないし(漁場というなら、それこそ漁業権問題だし)、地理的近さや地質や大陸棚は領土の根拠にならない。大陸棚を言い出したら、日本列島全体が中国領になってしまうだろう。
まして、固有性だの歴史だのを言うのであれば、いっそのこと中国は河南省だけ、台湾も台南だけ、韓国は慶州周辺だけ、日本は大和盆地だけに撤退しないといけなくなってしまう。
そして「歴史」をいうのであれば、二次大戦後に新たに確定され、それが既成事実となっているのもまた「歴史」なのだから、それを無視して、戦前までの「歴史」で停止させてしまうのは恣意的な主張に過ぎない。

国境線というのはある契機で、何の因果か、偶然に確定されるわけだが、その契機はアフリカや中東や東欧では植民地・衛星国時代の地域境界線にもとづく独立、東アジアでは二第次大戦後である。それ以外の契機での国境線変更や領土主張は基本的に禁じ手というべきだろう。

台湾一部反日勢力による尖閣騒動がもたらした思わぬ効果

2008-06-21 17:35:03 | 台湾政治
今回台湾の一部反日勢力による尖閣騒動で、思わぬ効果がもたらされた。
今回の騒動は、最初から台湾にとって不利でしかないと私は直感していたのだが、予想以上に馬英九政権と外省人反日勢力の知能が低かったことで、台湾・台湾人と日本人にはマイナスだけがもたらされ、プラスになったのは日本政府だけ、という惨憺たる結果に終わった。
煽った当人たちは騒いだほうが日本も振り向いて交渉しやすくなると考えているようだが、一般人が妄動して政府の外交力が低下するだけだから、日本がこれで交渉に応じる可能性はさらに低下したというべきだろう。要するに、「騒げば勝ち」というのは狂ったショービニストの勝手な妄想に過ぎない。
そもそも騒ぎは一部の外省人が起こしただけで、大方の台湾人は尖閣問題には無関心で、むしろこの問題で日本との関係を悪化させるのは得策ではないと考えていた。そういう点では台湾市民社会は全体的には成熟している。
もちろん馬英九政権を選んだのは台湾人自身であり、その責任は負う必要があるとはいえ、馬英九の反日や外交を選んだわけではないのだから、今回台湾人に多くの不利益がもたらされたことは台湾人には気の毒だろう。

(1)戦争一方手前の外交手段を何の覚悟もなくもてあそんだことで、台湾が主権国家であることを自ら否定し、北朝鮮、あるいはヒズボラなど「ちゃんとしたテロ集団」にも及ばない、単なる海賊集団でしかないという印象を国際的に与えた。
(2)まして日中間で東シナ海ガス田共同開発の話が妥結し、韓国も内政の危機を外交に向けておらず、北朝鮮も最近はおとなしい中で、台湾だけが「突出」して狂っていたから、「台湾はまともな国家ではない、国家ですらない」というイメージが突出してしまった。そして、そうした東アジア国際情勢の空気も読めずに騒いだ馬英九政権と反日勢力の幼稚さ、知能の低さも突出していた。
(3)馬英九「先生」がこれを「主権問題」と言い張るなら、主権問題の交渉権は政府、外交部にあるのだから、一部暴徒の勝手な行動を政府が抑制すべきなのに(日本では尖閣に勝手に上陸した右翼団体を逮捕しているし、一般の漁船も勝手に操業できない、北方四島や竹島についてはなおさら)、それを放棄した時点で、馬英九政権の統治能力、外交能力の欠如を自ら証明した。
(4)台湾の対日外交の強力な窓口であった許世楷代表、日本事務会の蔡明耀、を更迭したり日本事務会を廃止したりするなど、みずから交渉のパイプを切ってしまって交渉力を低下させてしまった(戦前の日本と似ている)。
(5)「主権」を声高に主張するわりに、台湾の法令でも違法であるところの遊魚船の違法を最初に指摘しなかった。法律も守らないで、主権を主張できまい。
(6)日本に対して「主権」を声高に主張しながら、同時に行われた「両岸会談」では中国に対して「主権問題の棚上げ」を主張するという一貫性のなさ。しかも陳水扁政権が台湾主権を強く主張したことを批判して成立した途端に、主権を主張する矛盾。これで台湾国民の多くがそっぽを向いた。
(7)本来台湾の漁民が漁場としてきたことから、漁業権の問題であるところを、無意味に「主権」を強調して騒ぎすぎたため、日本政府が警戒して一帯の警備と防衛は強まる。そうなるとこれまで黙認状態だった漁業行為が規制され、実際に困るのは台湾漁民だろう。活動家は困らないだろうが。
(8)台湾在住日本人と台湾に関心や好意を持ってきた日本人が不快な気分にさせられた。しかも外省人のやり方は、どういうわけか日本人の不快のツボを刺激するやり方なだけに、不快感だけが残った。
(9)日本世論を反発させた結果、最近は世論で左右される傾向もある日本外交が、台湾に対して厳しくなることが予想される。最悪の場合、ノービザ廃止、それも台湾人には中国人以上に厳しくなる可能性もある。
(10)日本政府とくに海保と海自がこの件を奇貨として、予算増額の口実を獲得し、これまで慎重論が多かった尖閣周辺の警備と防衛の強化、これまで出てこなかった海自の参入も可能となるだろう。ましてこれまで尖閣をめぐって台湾との対立を望まなかった右派保守派もこの件で態度を硬化させている一方、親中の色彩が強い左派の多くは台湾相手には防衛強化も反対しない以上、日本でこの動きを阻止する世論はなくなった。
(11)本来主権問題を棚上げして実務的に漁業権交渉してきたものがストップし、ますます交渉がやりづらくなる。

ただ、今回の件で、それまで漠然と「尖閣は台湾領なのに日本が不当に占領している」と考えていた台湾人の多くが、日本領であるという事実を認識したという効果はある。それに、反日の煽動が、台湾では結果的に効果をもたらさないということもはっきりした(というか、日本と一戦を交えて、日本と戦う台湾人なんて5%もいないだろう、戦わずにあっさり投降して日本人になりたいと言い出しそうだw)。
これは将来的に尖閣の漁業権をめぐる交渉が再開された暁には、台湾側が漁業権に限定するしかなくなったという意味で、長期的には日本と台湾双方にとってプラスだろう。

私が同じ反日でも韓国の左翼は許せても台湾外省的反日が嫌いな理由

2008-06-21 17:34:30 | 台湾政治
10日未明に台湾の遊漁船が日本の海上保安庁(11菅所属)巡視船と衝突・沈没した事故で、台湾の一部政治家とマスコミが騒いで反日運動となってしまった。しかしこの経過を見て、私自身はそれほどナショナリストだと思わないし、これまで同じ「反日」であっても韓国の左翼とは仲良くしてきたが、台湾の外省人の一部にみられる「反日・仇日」には強い不快感を持ってきた理由が、はっきりした。
それは韓国左翼や今回最後になって介入してきた香港左翼の「反日」活動家が、それなりに手順を踏んだり、自国の不義や米帝にも反抗している一貫性と意気込みを感じるのに、台湾外省的「反日」とは、

(1)手順を踏まない:日本に抗議するうえでただ感情的に幼稚に極論をいったり直接行動したりして騒いでいるだけ。
(2)一貫性と心意気のなさ:かつての蒋介石ファッショ独裁体制の申し子であって、自国の独裁や不義にはまったく声を挙げないどころか、民主化運動を妨害してきたり、米国には何の抵抗もしないのに、日本だけ甘く見て「抗議」するだけ。

だから、結果的に日本人を不快にさせただけで、そのくせ自国にとっても何の成果も利益も生んでいない、という、どうしょうもない状態になってしまった。
まさにサミュエル・ジョンソンの名言「愛国主義とは、ならず者どもの最後の逃げ場である」を地で行っているのだ。

今回の騒動にしても、馬英九政権が陰に陽に煽ったことは明らか。しかも駐日代表(大使)を召還して、行政院長(首相)や国防部長(国防相)や軍系立法委員らが「一戦も辞さない」などとして、さらに立法委員の一部が18日にフリゲート艦を出動させて交戦も辞さない、という戦争の一歩手前まで進んだ。
ところが世論の多くが「やりすぎだ」となったり、極め付きに米国が「平和的解決」を求めて介入したことから、それまでの威勢の良さはどこへやら、フリゲート艦出動も土壇場になって撤回してしまった。
これは北朝鮮ですら有り得ない、幼稚かつ野蛮なやり方だ。というか北朝鮮が外交官召還までやって、軍の出動を命じたら、本当に腹を決めて戦争をやるということだ。韓国左翼や香港左翼なら、米帝が出てきたら、ますます闘志を燃やして、矛先は米帝に向かうだけだろう。
ところが、こいつら(台湾の一部反日分子ども)ときたら、米帝が出てくることまで計算に入れていなかったのか、米帝が介入した途端、いきなり弱腰になってしまった。やっぱり日本をなめているんだろう。そもそも最初から覚悟がなかったのだろう。
尖閣問題で騒げば、2004年9月26日に米国国務省副報道官が「尖閣諸島(しかも日本名を使ってだ)は日米安保の適用対象」と発言しているように、米国は尖閣を日本領だという前提で、しかもいざというときには介入することを明言しているのだから、軍系国会議員や国防部長らがこれを知らないで騒いでいたとすれば単なるバカだし、知っていたのなら、米帝に言われようがとことんやって、「米国の同盟国どうしの初めての戦争」をすれば良い。実は台湾人親日派の一部は、むしろ開戦を望んだくらいだ(互いの装備を考えれば、台湾側がすぐに降参して日本に占領されるから)。
これは、戦前戦中の漫画「のらくろ」に出てくる山猿の軍隊そのものだ。山猿の軍隊は蒋介石軍をモデルにしているから、昔から国民党の体質は変わっていないといえる。

その点では、私が付き合いがある韓国の左翼は、かつて軍事政権時代には非合法労働団体を組織して何度も逮捕されたり、今回も米国牛肉輸入解禁反対デモを積極的に組織したりしていると同時に。従軍慰安婦や親日派追及もやっているのだから、単なる「反日」ではなく、強者に反抗するという一貫性を持っているといえる。だから尊敬をもって付き合えるし、相手もこちらが日本人だからといって排除したりはしない。
香港の保釣運動の連中にしても(台湾で「尖閣は中国領」と叫んだのはアレだが)、同じメンツが6・4天安門記念日で中国共産党に抗議している。中華人民共和国の主権下にある香港で、中共にも反抗して、地下放送局をつくったりして、たびたび起訴されたりしている勇気は敬服できるものがある。これも単なる反日ではない。

しかし、台湾外省人の反日分子は、日本人というだけで排斥したがる、盲目的反日ショービニズムであって、その意図は国民党中国を正当化したいだけのこと。そのわりには、日本を帝国主義と見立てて、強者帝国主義全般に抵抗するという意味も意気込みもない。だから、私はそんな輩は、何よりも軽蔑する。

軍事大国・米英中は世界三悪

2008-06-10 18:27:16 | 世界の政治・社会情勢
共同通信の記事から:
「軍事費:中国が仏抜き3位 1位は米、ブッシュ政権で急増」
だそうだ。

(記事本文引用)
 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が9日に発表した08年版の年鑑によると、07年の世界の軍事費総額は前年比実質6%増の推定1兆3390億ドル(約140兆円)に達した。中国の軍事費は583億ドルで、フランスを抜いて世界3位に浮上し、2位の英国に肉薄した。
 1位は米国で、世界の4割以上を占める5470億ドル。第二次大戦後、最大になった。01年に比べ59%増とブッシュ政権下で急拡大。年鑑は「アフガニスタンとイラクでの軍事作戦が主要因」と分析した。
 中国の軍事費は過去10年で実質3倍増と極めて高い伸びを示したが、年鑑は「経済の急速な拡大により、軍事支出は国内総生産(GDP)の2.1%と穏当なものになっている」とした。
 07年世界2位の英国は597億ドル、4位のフランスは536億ドル。日本は5位で、以下ドイツ、ロシア、サウジアラビア、イタリア、インドと続いた。(共同)
(引用終わり)

何の意味もないイラク戦争を展開している米国、それに追随してきた英国、それからそうした米国と軍事競争を展開する中国。この三つが、世界と人類にとって三悪だということが明らかになった(てか、日本も含めて、上位10位までロクな国がないよな。そういえば小国だからかイスラエルの名前が見当たらないが、ここもロクでもない)。

しかし日本のサヨクはこうした現実を見ても、中国にはまだ反感を抱かないとは、どうかしていると思う。

米国と日本の軍拡についてはあれほど敏感なのに、中国となると弱腰になるのは、日本には本当の意味での人権と軍縮を考える骨太の左翼がいない証拠だろう。
しかも最近の地震で、日本のサヨクは似非人道主義から、またぞろ中国カワイソウの擁護論を展開する始末。

しかしたいした人口がいない僻地の地震で、村全体が壊滅して、数万人も死者が出るような国は、ろくでもないということ。軍事費に回す金があったら、死者が出ないように、インフラを整備すればよい。もっとも、震源地や被災地は、蜀道難でも「青天に上るより難しい」といわれた、もともと中国ではなかったところ。
無駄に軍拡して、侵略している中国は、ろくな未来は待っていないだろう。

米国もそうだけど。ただ米国の場合は、国内に常に3割くらい本当にまともな良識派がいて、イラク戦争だって懸命に阻止反対運動を展開してきた。中国はそういう良識派さえもいないところが問題だ。

韓国・燭光集会、「源泉封鎖」なるも決行へ

2008-06-10 18:18:28 | 韓国・北朝鮮
10日午後6時半からソウル市庁広場前で計画されている政府に抗議する「燭光集会」は、韓国警察当局が「源泉封鎖」をめざして世宗路にコンテナを2層に積み上げて溶接して道をふさいだ(http://hani.co.kr/arti/society/society_general/292459.html、写真は同記事から、しかし記事にもあるけど「そこまでやるか」って感じ)。
「総動員令」をかけている野党・統合民主党の知り合いに先ほど電話で聞いたところ、「源泉封鎖でも、防げない。だから決行する」といっていた。
ただ、一部で出ている「李明博政権打倒」の強硬論については、「国民の間では牛肉問題に焦点があって、大統領の辞任まで求める段階には達していない」とも指摘していた。

台湾の大型書店が軒並み売り場縮小の鬱

2008-06-10 01:20:06 | 台湾その他の話題
先々週と先週の土曜日(5月31日と6月7日)、久しぶりに信義区の大型書店である「誠品書店信義旗艦店」、101にあるシンガポール系の「PAGEONE」、新光三越A8棟地下2階にあるフランス系「FNAC」、それから台湾大学本校舎前の「誠品書店台大店」をのぞいたが、本が売れないからか、軒並み売り場を小さくしてやんの。トホホ;;。
特にPAGEONEに関しては洋書と簡体字本売り場が大幅に縮小されていて、全体で以前の半分になっている有様。誠品信義もせっかく2年前に旗艦店と銘打って鳴り物入りでオープンしたのに、3階の売り場が3分の2ほどになってイベントホールが作られ、語学書売り場が4階に移されていた。4階の簡体字本売り場も3分の2くらいになって、残りが芸術書になっていた。ただ3階の雑誌だけは縮小していなかったどころかむしろ若干広がっていた。
台大店も同じで、1階の半分がバッグ売り場になっていた。

世界的に本離れが強まっているが(出版大国のフランスはパリのPUFの小売り店もつぶれちゃったくらいだし)、台湾はもともと本を読む人がただでさえ少なかったから、輪をかけて減っているんだろうな。本好きとしては悲しいことだ。

まあ、最近はネットで買う人も多いんだろうな。でも題名だけでネットで注文するとはずす場合も多いし、ノイズ情報じゃないけど、棚にある類似の本を探す楽しみもある。しかも台湾の場合、日本と違って、英米書と中国書の場合は販売価格が安い(ほとんど原価と同じ)なのも助かるんだけど。だから、書棚にある本が少なくなると、困るんだよね。

もっとも、簡体字本は値段が安いからか、それ専門の重慶南路・天龍書店(だっけ?)、上海書店、問津堂などは縮小されていないけど。これは台湾にとって幸いといえるのかどうか知らんが。まあ私は個人的には役に立っているが。
あと、重慶南路の語学教材専門店「皇家語言帯」も、固定客があるからか、健在だ。
皇家は時々のぞくが、台湾にしては珍しく、比較的マイナー言語の教材もあることもあって、面白い。こないだ行ったら、なんと!アイルランドゲール語のDVD付き教材があった(買わなかったけど、それにしても誰が買うんだろう??)。私の友人はここでアラビア語ガルフやイエメン方言の教材を買ったらしい。
ちなみに、天龍と皇家は店の性質からいうと、外省系なのかと思いきや、実はバリバリの(おそらく政治的にも緑の)台湾人がやっていて、見知りの客とは台湾語でしゃべっている。

韓国ネオリベ政権支持率ついに16.9%まで下落!進歩勢力10日から断続的に大規模デモ予定

2008-06-10 01:19:10 | 韓国・北朝鮮
韓国李明博大統領の支持率下落が止まらない。ハンギョレ新聞(ネットニュース)が7日報道したリアルミーター4日実施の調査によると、ついにこれまでの最低値の16.9%まで下がった(ハンギョレ6月7日 李大統領支持率16.9%「翼のない墜落」
http://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/292017.html)。聯合通信などが実施して2日報道された数値では17.1%だったが、さらに下がった。もちろん盧武鉉大統領の後期の2006年12月の12.6%、あるいは金泳三大統領末期1997年末の8.7%に比べるとまだマージンがあるがw、盧武鉉も金泳三も最低値はいずれも政権末期に近い時期だ。政権発足から3ヶ月ちょっとでそれと肩を並べる?くらいに下落するというのは、異常で異例である。
今回の16.9%は、与党支持層や保守的な50代でも支持が離れたことが大きく響いた。

そもそもこの不人気は、李明博および内閣が学者や経営者などからなる素人集団で、エリートや富裕層特有の独善的思考から国政を壟断し、国民の声に耳を傾けなかったことにある。もともと独裁政権の後継政党であるネオリベ化した保守・ハンナラ党が本質的に持っている独善・閉鎖・官僚体質がそれに輪をかけている面もあろう。しかも、大統領府はそのハンナラ党とくに朴槿恵系統とすらしっくりいっておらず、同じ与党ながら大統領府が国会+党本部と対立しているというお粗末ぶりである。
そうした運営に対する不満が、米国産牛肉解禁決定を導火線に爆発しただけで、本来は李明博・ハンナラ党そのものの体質と思想に問題があるのだ。
しかも、李明博しかりハンナラ党しかり、「盧武鉉と逆のことをやる」ことに汲々として、盧武鉉を「経済失政」だと攻撃してきて、経済成長ばかり強調してきただけに、経済公約747はすぐに撤回、景況感悪化、所得減少、二極化増大、物価高騰と経済的に盧武鉉時代どころの騒ぎではないくらい悪化しているだけに、国民の怒りと失望がすぐに爆発したのである。
だから、いまさら謝罪したり、更迭人事を行ったところで無意味。牛肉はあくまでも表象に過ぎないのだから。
実際、米国産牛肉の解禁を延期し米国も了承を発表しても、抗議行動はやまず、さらにエスカレートするばかり。

しかも李明博にとって運が悪いことに、6月10日は1987年に民主化勢力が街頭運動で軍事政権を追い詰めた「6月民主抗争」開始記念日、さらに13日は反米感情に火をつけた米軍による女子中学生轢死事件の6周年記念日である。15日は金大中政権時代に南北共同宣言記念日でもある。つまり、韓国の進歩勢力にとって重要な記念日が連続して訪れる時期にあたっているのである。
進歩勢力は、李明博政権への国民の不満爆発を好機として、今後攻勢を強める予定だ。

10日には狂牛病対策国民会議が主催する「100万民衆大会」をソウル市庁前広場や全国で展開する。同時に1987年の6月抗争の導火線となった、機動隊の催涙弾にあたって死亡した李韓烈氏の追悼式も行うようだ。民主化運動の初心と熱気をもう一度、というわけだ。13日、15日にも大規模集会が予定され。いずれも最大野党の統合民主党も「あまり積極的ではない」という批判を受けて積極的に参加する見込み。
さらに、これを契機に非正規労働者の問題もあって、労働団体が「夏闘」を展開する可能性もある。

ネオリベ保守勢力は、進歩政権を「経済失政で無能だ」と攻撃してきたが、何のことはない、それ以上の失政と無能ぶりを見せ付けて、急速に墜落している。

この状況は大統領選が1年前にあったフランスで先行して進んでいるが、韓国より選挙と就任が3ヶ月ばかり遅くなっている台湾も無縁ではない。

台湾のマスコミは、国民党系と見られたテレビも連日のように李明博政権の失墜をこまめに伝え、かつての独裁勢力の後継者で、ネオリベ路線を掲げている点でまったくそっくりな馬英九政権に警告を発している。
しかし、警告は教訓とならないだろう。というのも、ハンナラ党しかり、中国国民党しかり、体質は独善、閉鎖的、官僚的、エリート主義だから、市民の声に耳を傾けるというマインドなど持っていないからだ。
それに、どんな有能だろうが、ネオリベ保守の経済政策は絶対に失敗することは、サルコジと李明博を見れば明らかだ。もともと無能であった台湾の馬英九がサルコジでも回避できなかった失墜と失敗を回避できると思えない。そもそも、フランス、韓国、台湾で、いずれも中道左派が敗退して、ネオリベ保守が選ばれた背景には、国際的な「ネオリベ幻想」連鎖が働いているといってよい。それなら、馬英九がいくら李明博政権の「前車の轍」を回避しようとしても、馬英九が当選した時点で、国際的な連鎖に組み込まれていることを示しているのだから、同じように独善的なネオリベ保守は絶対に失敗し、失墜するのである。台湾が国際的経済システムの影響をより受けやすい小国である以上、なおさらである。

そういえば、李明博も最近訪中して中国に媚を売りまくっていたね。呉伯雄と江丙坤が相次いで訪中している国民党とそういう点でもまったく同じ。

ただ民進党も国民党に対する批判の視点をそろそろ変えたほうがいいとも思う。それは、国民党が媚中姿勢をとると決まって「大中国主義」という批判を展開するんだが、それは実は的ハズレだろうと思う。
選挙によって再執権した国民党には、主観的にはおそらく大中国主義はないだろうし、台湾の主権を簡単に放棄する考えは毛頭にないだろう。
しかし、日本のトヨタ、ユニクロの経営者を見ればわかるとおり、ネオリベ功利主義者は、大企業の利益のためなら、平気で売国行動をとるのが、いまどきのネオリベ共通の問題である。しかも今どきのネオリベは、これを「グローバル化」という一見すると進歩的なオブラートで偽装しているのでタチが悪い。しかしそれは民衆のためのグローバル化ではなく、単なる一企業の短期的な利潤でしかなく、広範な民衆の幸福をもたらすものではない。

確かに、李明博・ハンナラ党に敗れたウリ党・統合民主党の盧武鉉前政権、国民党にやぶれた民進党の陳水扁前政権は、基本的には経済政策はネオリベ志向で、本来の基盤である進歩陣営を裏切ったものであった。
しかし、それでもウリ党といい民進党といい、政権時代には以前の右派独裁政権よりははるかに社会福祉を進め、分配に気を配っていた。
ただし、それが首尾一貫せず、米国などの圧力に抗して民衆の利益を守るという思想を貫けなかったために、さらなる赤裸々なネオリベ保守に政権の座を明け渡してしまったことは遺憾である。この点は多いに反省し、次に政権を奪回する際の糧とすべきだろう。

しかし問題は盧武鉉、陳水扁政権が、福祉も進めながら、ネオリベ政策を進めたという矛盾という過去のことをあげつらうことよりも、目の前で展開されているさらに悪辣かつ赤裸々なネオリベ保守政権である李明博および馬英九政権ををなんとかしないといけないという問題であろう。これは同時に、日本のネオリベ自民党政権を交代させるという問題も突きつけているのである。

P.S.
それにしても解せないのは、一部の旧式左翼ならぬサヨクが、本物のネオリベであるハンナラ党、国民党、自民党および中国共産党をあまり問題にせず、むしろ擁護する姿勢をみせ、なぜか若干でも進歩志向だった盧武鉉や特に陳水扁政権を非難する傾向があることである。なぜそんなにネオリベが嫌いなら、盧武鉉や陳水扁のような「躊躇しながらのネオリベ、しかし社会福祉も進めた中途半端な中道主義」よりも、本物のネオリベを批判しないのか?もっとも、だからこそ日本のサヨクはしょせんは政権を交代させられず、自民党の補完勢力に甘んじてきて、永遠に成長できなかったゆえんだろうが。まあ韓国でも台湾でも口先だけの頭でっかちの「サヨク」は、ハンナラ党や国民党支持に走るばか者が多かったりするが。