むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

台湾に有利な報道に言いがかりをつける「台湾の声」は中国の回し者だ

2008-10-28 01:09:10 | 台湾その他の話題
台湾情報を伝えるというより、単なる「親台湾」を名乗る右翼圧力団体と化した「台湾の声」が、またまたトチ狂ったメディア叩きを始めた。こんなことやると逆効果で、むしろ台湾の報道が減ってしまうことがわかっていないのだろうか?実は「台湾の声」こそが中国政府の手先ではないのか?

問題は10月26日に配信された
【読者便り】NHK is misleading the 1025 demo
という題名の英語の投稿で、10月25日の反中・反馬デモを伝えるNHKの報道が「中国の有毒食品に抗議」と伝えているのは、台湾主権を訴えるデモの意味をミスリードして矮小化するもので、けしからん、NHKは昔から媚中番組をつくってきた、というものだ。

そして、それを真に受けたアホが、実際に抗議したらしいw。
【読者反響】NHKに抗議しました

ここまで来ると、ひどい言いがかりだ。台湾について好意的な報道の足を引っ張って、喜ぶのは中国ではないのか?

大体において、発端を作ったシドニー在住のティエンなる人物は自分自身の名前が北京語読みなのは、中国に洗脳されているんじゃないのかよ、って突っ込みたくなるしw、日本語がわかっていないし、日本社会の動向も知らないのだろう。

今回のデモについて「毒ミルクなど中国の有毒食品に抗議」というのは、NHKだけじゃなくて、すべての日本のメディアがそういう基調で報道している。
それはなぜかというと、日本社会においても中国の有毒食品が問題になっていて、日本国民に降らすとレーションが溜まっているのだが、日本ではこうした抗議デモの習慣がないから、隣国台湾で起こったこうした抗議デモが頼もしく見えるし、願ったりかなったりなので、「毒ミルクに抗議」を前面に出したわけである。いわば、現在の日本人の願望の投影であるわけだが、しかししょせんは日本のメディアというのは、日本人のためにあるのだから、なるべく日本人にとって身近な話題にひきつけて報道するというのは、当然のことだ。

抗議したという読者は

>1.NHKのニュース タイトルは「メラミンに抗議 台湾でデモ」で、内容も殆ど
中国の食品問題を取り上げ、欧米の新聞との読み方が全然違う、NHKの見識は世界
の笑いものになります。

というが、それこそバカだ。

中国から距離が離れている欧米では、メラミン問題は日本ほど深刻になっていないから、メラミンにクローアップされないのは当たり前。
逆に、欧米の新聞の見方のほうが何でも正しいというのは、単なる欧米崇拝でしかない立派な売国奴だよw。こんなのが国士気取りなんだから、それこそ「世界の笑いもの」だな。

それに、この人は、常駐記者を台湾においているのは、実は日本のマスコミしかないことも知らないようだし、日本のマスコミの台湾についての報道の頻度や量が、欧米の数十倍は多いことも知らんらしい。てか、こいつ英語やフランス語やアラビア語の報道を読めるのか?w

常駐している日本人の記者にとって、主権問題はある意味で常識だし、何度も書いているから、いわばテーマとしてマンネリ化している。
しかもこれまでの例でいっても、台湾の主権なんてものを前面に出しても、それこそ視聴者や読者に理解されないのは確実。
そういう意味では、今回は日本人にも理解されやすい毒ミルク問題が重要なテーマになったのだから、それを突出させたほうが、台湾にとって有利で、親切な処理の仕方というべきもの。だからこそ各紙やNHKは大きなニュースにしたんだし。
マスコミは台湾報道のためだけにあるわけではない。だから台北特派員たちは、台湾報道のためにスペースや時間を割いてもらえるよう、日頃必死な努力をしている。特派員だってせっかく派遣されている以上、その土地についてより多くより良い報道をしたいのだ。
今回のデモについても、「毒ミルク問題」をクローズアップさせたほうが、東京のデスクの受けもいいし、台湾にとっても有利だ。
それによって困るのはむしろ中国であって、中国政府が言いがかりをつけるならまだしも、それをいやしくも「台湾の声」を名乗る団体が、言いがかりをつけ、まるで台湾報道そのものを否定し、妨害するような行為はやめるべきであろう。

台湾のような小国は、日本のような大国において、それがたとえ悪い話題であっても、報道され、取り上げられることに意味がある。80年代のようにまったく言及もされないような状況こそが、台湾にとって危険なのである。

抗議したという人はまた、

>2.デモ群衆のプラカードも民進党蔡主席の呼びかけも「中国の主権侵害と馬政府の
親中」が主体なのに、報道記者の見当違いも甚だしい、素質に問題。

なんて書いているが、それこそお前、現場を見たのかよw。
現場を見た感じでは、プラカードで多かったのは、毒ミルクについて言及したものだった。
そもそも、こいつが知らない準備会議の内容も私は知っているわけだが、民進党や台湾社が国際向けに強調したかったのは、あくまでも毒ミルク問題という民生に直結するテーマであり、それゆえに、このテーマを掲げた「そごう」出発の第一部隊は、最大の動員力を誇ったのだ。
現場を見もしないで、勝手に妄想で主権問題が最大のテーマなどとでっち上げないで欲しいものだ。
大体、国民党系が多い台北市で、主権問題だけで60万人も集められるわけがない。そういう台湾の現実をこいつはわかっていない。
しかし、だからこそ、国民党政権と中国には打撃となったのである。明らかな独立派だけではない大勢の人が、中国と馬政権批判に立ち上がったのだから。

それがダメだと言いがかりをつけるこの人は、媚中報道を叩く振りをして、実は中国政府による巧妙な工作を受けた中国側の回し者ではないのか?そもそも言いだしっぺのシドニー在住者は名前も北京語なんだし、英語で書いているところも怪しい。
もし台湾人だというのであれば、台湾人のくせに大事なデモの人に台湾に帰ってきて参加もせず、シドニーなんかでテレビを見ているだけの意気地なしの人間が、こんな大それた言いがかりをつけるなんてのは、はっきりいって狂っているというものだ。

中国の有毒食品に抗議というテーマを伝えることのどこがいけないのか?理解に苦しむ。

そういう吟味もしないで、いきなりNHKバッシングを始める「台湾の声」は、実は中国に知らず知らず踊らされているのではないか?

そもそも、日本のメディアの台湾報道は、台湾に支局を置きはじめてから10年が経過し、そして私自身も微力ながら、努力してきたこともあって、台湾および台湾派陣営に好意的なものになっている。たまにおかしな報道がないとは言えないが、それははっきりいって許容範囲というべきであり、何よりも台湾のような小国は報道されること自体に意味があるわけだから、いくら独立派から厳格に見て気に入らない報道だろうが、むしろ感謝すべきものなのだ。
しかも、「台湾の声」のいけないところは、日本のメディア自体のこの数年の総体的な変化を知らず、NHK、朝日、毎日、東京あたりをすべて「媚中サヨク」と決め付けて、甫から悪意と色眼鏡であら探しをするように見ているから、NHK、朝日、毎日、東京の報道がすべて「媚中的」に見えて仕方がないのだろう。これは、前回重症のウヨクだと指摘したyauchi.netにも見られるおかしな傾向だ。
そもそも私自身が左派であり、左派であるからこそ人権と自由と反戦の立場から現在の中国覇権主義に嫌悪感を覚え、そして特に中道左派の民進党政権以降、中国なんかよりもよっぽど平等・人権・平和という意味で、本来の良い意味での社会主義の理想に近づいている台湾の変化のほうに共感を覚えているわけだ。
そしてこの4年くらいの間に、朝日、毎日あたりが急速に中国に批判的になり、台湾に好意的になりつつあるのは事実であり、それはまさに本来の「左派」として当然のことなのだ。

朝日や毎日など旧来のサヨクマスコミが、中国マンセーのままであると思ったら大間違いなのだ。時代は確実に変化しているのだから。

つまり、イマドキの日本の左派は80年代までの左派と異なり、人権や環境をまともに考え、そして中国に批判の目を向けるようになっているし、軍拡路線に狂奔する中国を賛美することは左派の中では恥と見做されるようになっているのだ。
その変化に、ウヨクどもは気づいていないらしい。
それは90年代以降勢いを強めて、いまや体制になってしまったウヨクのほうが、主流というパワーの座に安住する中で、思考が硬直的になっている証拠である。そういうわけで、冷戦崩壊後に反共主義で説得力を持ってきたウヨクの時代ももはや終焉に向かいつつあると、私は思う。

それから、「台湾の声」についていうなら、これの主要な編集者は現在、台湾に住んでいない。従って台湾社会の実感や皮膚感覚がまるでわかっていない。まして日本のマスコミの特派員との付き合いや宣伝の努力もしたことがないのだ。
だから、「台湾の声」は、日本のマスコミ、特に左派とされたマスコミのここ最近の総体的な変化がまったくわかっていないし、日本にいる抽象的で頭でっかちの独立建国派が夢想する方向とは異なる形で(民主化推進勢力の主流が中道左派であるという点も含めて)独立台湾が存在しているという現実もわかっていないのだ。

中国映画の巨匠・謝晋氏死去

2008-10-28 01:08:23 | 芸術・文化全般
ちょっと旧聞になるが、中国映画の巨匠・謝晋氏が18日死去したらしい。
「芙蓉鎮」(87年)は学生時代に見て、結末はややとってつけた感もあったが、なかなか感動したし、真っ赤かな革命映画「紅色娘子軍」も素朴な真剣さがあって、なかなか良いと思う。だが、日本の新聞の訃報では、なぜか「娘子軍」を挙げていないんだよね。なんでだろう。台湾の中国時報ではちゃんと挙げられていたのに。
いまや中国映画は中国共産党の走資路線、米帝追随路線とともに、往年の素晴らしさが喪失してしまったのだが、文革も経験して厳しい環境の中で良い作品を送り出した謝氏には敬意を表したい。

ちなみに以前も書いたと思うけど、「紅色娘子軍」って、名前も「好色娘っ子軍」を連想して萌えだし、冒頭あたりでまさに主人公が悪徳地主によって縛られて折檻されるシーンもあって、まるで革命映画にかこつけたSM映画みたいで、その斬新さに萌えw。意外にこの先鋭性は、その後「改革開放」でむしろ失われたというか、性の描き方が封建的に退行したのは、中国共産党自体の退行を示しているというべきか。
私は将来的には同郷の千草忠夫みたいなポルノ小説家になりたいと思っているのだが、この映画はパロディの格好の材料となりそうだ。たとえば「好色娘っ子軍」として、反動国民党を支持する悪徳地主打倒に向かって燃える主人公が結局は国民党軍につかまって調教されて髪の毛も白くなって(って、白毛女をさりげなく入れるw)好色になってしまうという反革命小説wにするとか。逆に主人公らが国民党幹部の娘たちをとッ捕まえて調教して、革命を成功させるとか。

40万人を超えたデモ、台北地区を中心に中間派や国民党系も参加、無能な馬政権に不満爆発

2008-10-26 18:57:47 | 台湾社会運動
■張銘清転倒事件が起爆剤に
25日台北市で行われた「反中国、反馬政権」デモは、前日の雨も上がり、天候に恵まれる中、台北市を中心に40万人を超える(主催者発表では60万人、警察発表で20万人)市民が集まり、馬政権の下で進む、対中傾斜、経済悪化、貧富格差増大に対する市民の強い不満が示された。
事前に台南で中国の台湾問題当局の幹部でもある張銘清が中国に抗議する群衆に取り囲まれてもみ合いの中で転倒する事件が発生、さらにスキャンダルの渦中にある陳水扁前総統が参加するということもあって、民進党など反政権勢力を何が何でも中傷したい統一派メディアや国民党保守派は、「暴力事件があったので、デモの気勢は弱まった。しかも陳水扁が参加するので、デモは深緑=民進党急進派の一部だけにとどまるだろう」という印象操作を行ったのだが、フタを開いてみると、深緑「だけ」どころか、中間派や浅藍=弱い国民党支持層も含む広範な市民が参加した。
要するにこれは市民の勝利である。統一派メディアによる情報操作など利かないことが明らかになったのだから。
(ちなみに、張銘清事件で、暴力があったのでデモの気勢がそがれるだろうみたいなことを書いた産経の長谷川記者の記事は完全に間違っていたことも明らかになった。やはり中国仕込みの長谷川記者には、台湾の民意は理解できないのだろう)

■陳水扁も過去の人と気にせず国民党系も参加
特に、中間層や国民党支持層が参加したのは、台北市東部そごう近くを出発した第一隊列。しかもこの隊列は陳水扁が率い、陳の熱狂的支持層もいたわけだから、もはや国民党系がいくら陳水扁の問題を持ち出して民進党叩きをやろうとしても、国民党自身の無能、失政、凋落を覆い隠せるものではないことが明らかになったのだ。(これは私も失敗した。陳を見るのが嫌なので、社会運動団体も集まっている第二隊列に向かったのだが、これなら第一隊列に参加するんだった)
陳水扁の問題で怒っていたり意識しているのは、むしろ長年の民進党支持層であって、陳を盲目的に支持する一部の深緑は別として、実は浅緑や中間派や浅藍は陳水扁なんて気にしていない、というか、もはや過去の人となったということだ。
しかも国民党が制定した現行法制度では、陳の選挙余剰金着服も海外送金も、違法にならないのだから、この問題で国民党系が騒げば騒ぐほど、実は公金横領やマネロンをやりたい放題にしてきた国民党が自分の首を締めることになるだろう。
国民党系の中天などは「陳水扁大復権」などとせめてもの抵抗を見せているが、実はデモの成功が悔しいのだろう。

■あまりの気勢にたじろぎ、好意的報道をする国民党系メディア
そういえば、台湾の国民党系メディアも現金なもので、中国時報などは一面に大きく群衆が総統府前広場に集結した写真を掲げたのをはじめ、聯合報もデモにわりと好意的な記事を載せているなど、デモの成功に驚愕し、狼狽し、そして新たに形成されつつある大きなうねりに阿ろうとする必死の様子がうかがえる。
それに対して、張銘清事件のころからおかしいリンゴ日報は、こうした大規模デモの時の慣行になっているように、本紙を包み込む形で特集版4面で報道しているが、トップ見出しはなんと夜の集会で焼身自殺を図ったか放火を図ったのかわからないが、とにかく下半身火達磨になった男が出現した話を持ってきている。何とか集会を矮小化、醜悪化させたい意図がミエミエ。
狼狽といえば、通例ならデモ参加者数をすぐに発表する警察が、遅々として発表せずに、やっと午後9時半になって「20万人」と発表する有様だった。
ただ警察や国家安全系統を通じて、国民党支持層も多く参加したという情報が伝わったのだろう、わざわざデモを避けるようにして新竹に逃げていた馬英九や南部に逃げていた劉兆玄は「施政に不十分な点があった」と初めて誤りを認めた。しかも南部に逃げていた劉は、やはり市民から「辞めろ」と抗議を受ける始末だった。
民進党政権の8年を経た台湾は、すっかり市民の力が強くなったことを示している。まだまだ「独裁を復活させて中国と統一を進めたい」という古臭い思想モードにある馬政権は、もはや狼狽を隠せなくなっている。こんな状態では、政権を投げ出すのは時間の問題だろう。

■聯合報とリンゴ日報の立場が逆転?
そういえば面白かったのは、26日付けの聯合報の投書で、ある教員が日本で「空気を読む」という言葉があることを取り上げて安倍首相がKY首相と呼ばれて退陣を余儀なくされたことをあげて、馬英九に対しても「空気を読め」と訴えている(馬總統 請「閲讀空氣」)。
これ、馬英九が個人的に憎悪している日本を例に出しているところも皮肉が利いていて、GJといったところ。しかも聯合報がこういうのを載せるのも、それこそ聯合報の編集者が社会の空気を読んでいる証拠だ。というか、10月以降に関していえば、聯合報と聯合晩報は悪くない。経済問題に関して馬政権の失政をよく指摘しているし、むしろ逆に中間派を気取ってきたリンゴ日報が深藍化というか紅化の本性をむき出しにしつつあるのと比べて、聯合報は割りとまとも。中国時報は社説と投書欄はまずまずだが、最近記事を読むところがない。自由時報は情報が一方的なんだけど、これだけ馬政権の無能と媚中ぶりが明らかになっている時期だから、一番説得力はあるわな。だからコンビニでも自由時報が最近一番早く売り切れる。

■つまらなかった夜の集会と現在の民進党の限界
とはいえ、盛り上がったのは、昼間のデモだけ。午後4時から総統府前広場で開かれた集会は、総統府前広場が入りきれず、めちゃ混みになっていたこともあって、徐々に人が離れていったのだが、集会のプログラムがつまらなかったので、さらに人の引きかたに拍車がかかっていった。午後8時を超えるころには広場の人は数千人規模になり、一部はいきなり立法院前に移って、国民投票法の改正を求めて勝手に座り込みを始める、という始末だった。
集会のプログラムがつまらないというのは、民進党の政治家が出てきて演説をするという、をいをい、何年前のパターンだよ?と問いたくなるほどアナクロなパターンだったからだ。
しかも、どうせ政治家を出すなら、張銘清事件の英雄、王定宇を出せばいいのに、そんなことをしないで、統一派から罵倒されることを気にしているのは、意気地がないというか、本当の意味で民意がわかっていない証拠だろう。
それに欲をいえば、民視か三立の討論番組を公開番組としてやれば、もっと盛り上がったはずだ。
張銘清事件で、台湾人の多くは内心では快哉を叫んでいるのである。リンゴ日報などにかかるとそれを歪曲するから、文字を読むのが大好きなインテリ主体の指導部は、リンゴ日報を信じこみ、王定宇や大話新聞を避けたのだろう。
馬英九政権の対中傾斜、および国民党全体の無能ぶりに愛想を尽かしている市民は多いのに、民進党がいまひとつそれを掬いきれず、支持率がドラスティックに上がっているわけではないのは、妙に嗅覚が鈍い点にある。
国民党が90年代前半の思考から、民進党もまた2000-04年の成功体験から離脱できていないというところか。
問題は現在新潮流が党本部を牛耳っていて、広範な社会運動や市民勢力との連携が出てきてない点にあるのだろう。口先では市民社会と連携を強めるといっているが、インテリ層主体の現行指導体制では難しい。

それだけ台湾の市民社会の発展は急速なのである。民主化主導勢力の民進党もいつの間にか市民に乗り越えられてしまった。

■馬を打倒して自分が総統にと夢想するより制度を変えるべし
そもそも現在の問題は、半大統領制という政治体制そのものに起因している。半大統領制は韓国もそうであるように、冷戦反共権威主義体制で、軍事と経済建設に総動員が必要だった時代の歴史的遺物なのだ。確かに総統民選は民主的な制度のように見えるが、行政権を務める首相をおいて、大統領は三権に超然とする形になっている半大統領制ははっきりいって単なる独裁の制度なのである。だから、エジプトと旧ソ連(バルト三国を除く)などを見ればわかるように、半大統領制は独裁と表裏一体なのである。だから、欧州の成熟した民主国家(フィンランド、アイスランド、アイルランド、オーストリア)は、本来の制度設計では大統領民選の半大統領制であっても、いつの間にか責任内閣制、議院内閣制に移行している。
ところが、現在の民進党と国民党本土派も含めた反馬派の問題は、馬を引きずりおろしていずれは自分が権限の強い大統領になろうという野望を抱いている点にある。だから、ダメなんだろう。

デモと集会では、陳水扁や蔡英文や民進党所属県市長らが「馬英九辞任」を叫んだが、こないだまで政権にあった勢力がこれを叫ぶのは本来なら妙なことだ。特に前総統が現総統に辞めろというのは異常である。もちろん、私も馬はやめるべき、あるいは任期をまっとうできずに辞めるだろうと思っているし、そもそも「ダメな総統は任期途中でも辞めるべき」というのは、2006年に赤シャツ隊が陳水扁辞任を叫んだ意趣返しであり、赤シャツ隊が前例をつくったわけだから、もともと国民党に非があるわけだが、問題はその後をどうするかにある。
馬辞任を叫んだ民進党の上層部は、馬が辞めて自分が総統になる、と夢想しているとしか思えない。しかし、それなら、どうせここ数年は良くなるはずがない経済状況の中で、次に総統になった人が引き摺り下ろされるだけなのである。
問題は今の台湾市民社会の発展ぶりにはもはや適していない、時代や社会の動きの速さについていけない(任期が4年というのは明らかに長すぎる)半大統領制にあるのだから、馬を辞めさせるためにも、その問題も考えておかないといけないはずである。
そして議院内閣制にするならするで、体制内でのチェックバランスは必要になるので、二院制にするとか、比例代表部分の比率を多く、定数も増やす必要も出てくるだろう。

反馬勢力のひとつである国民党本土派も一つにまとまった勢力ではないうえ、結局、民進党が強くならないと浮上できない情けない連中だから、民進党がインテリ主体で市民社会と遊離している現状では、国民党本土派も力を持てない。
ただし、民進党が広範な反馬勢力をまとめあげる求心力になりきれない状態も来年までには解決されるだろう。というのも、台湾経済は年末から来年春にかけてのっぴきならない状態になるだろうからである。そうなると民進党もガラガラポンにならざるをえない。
それまで政権側も凋落の一途だが、受け皿の民進党も受け皿になりきれないどっちづかずが続くだろう。

韓国でも25日に進歩・改革勢力が結集して民主主義と民生守護を訴える大規模集会

2008-10-24 00:11:33 | 韓国・北朝鮮
台湾で在野民主勢力が結集して、民生と主権を軽視する政権への抗議活動が行われる25日、台湾とパラレルなことが多い韓国でもやはり民主主義と民生守護を訴えて進歩・改革派が結集、大規模集会が開かれる。題して「1%の強者・富者のための政権に対して、99%の国民が希望を持てるようにするためのチャンドルフェスティバル」で、今後も運動を継続していくための連帯機構「民生・民主国民会議」の準備委員会の結成式も同日行う予定だ。活動時間は午後2時から午後6時半まで、場所はソウル市の清渓広場など同市内各地で。

活動掲示板カフェダウムにおける公告:http://cafe.daum.net/FestivalOfDemocracy

19日の事前集会と25日の予定を伝えるハンギョレ新聞の記事:http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/316901.html

韓総連による活動予定詳細:http://hcy.jinbo.net/zbxe/?document_srl=370763

参加政党は、改革(中道)派の民主党、創造韓国党、進歩(左)派の民主労働党、進歩新党、韓国社会党。市民団体は、民主労総、緑色連合、韓国環境運動聯合、参与連帯、興士団、韓国女性団体連合など。
経済危機がささやかれ、政権による公営言論機関掌握・統制など、反動化が進んでいることもあって、5-6月にあったキャンドルデモを上回る広範な改革・進歩勢力が結集するものとなる。

細かな内容は違うものの、東アジアで同時期に民主化し、同じようにリベラル政権とその敗北を経験した韓国と台湾が、奇しくも同じ日に同じようなテーマで進歩民主勢力が結集して活動が開かれるということに注目したい。

25日土曜日に、毒ミルク撒き散らす中国、新自由主義の馬政権への抗議行動

2008-10-24 00:09:15 | 台湾社会運動
25日には、民主進歩党、21世紀憲改聯盟、台湾環境保護聯盟、台湾社など、台湾派および進歩派の団体が結集して、毒ミルクなど有毒物質を撒き散らす中国とそれを従容する無能な馬英九政権に抗議し、台湾の主権と市民生活の確保を訴える大規模なデモ・集会が開かれる。
活動時間は午後2時から10時まで。だが、反中感情と政権批判が高まっている中だけに、午後10時を過ぎても市民による自発的集会が引き続き開かれる可能性が高い。

デモ隊列は5つの出発点に分かれて午後3時に行進を始め、午後4時から5時までに総統府前広場に集結、集会を開く。
5つの隊列のテーマ、主な参加団体、出発点、ルートは次の通り:

1.「反心商品(有毒食品反対)」:忠孝東路そごう近く出発、忠孝東路、建国南路、仁愛路を通る3.9キロ。台湾南社、客社、台湾独立建国聯盟、世界台湾人大会、台湾国家聯盟、民進党台北市。

2.「反一中教育(中国と一体化する教育政策への反対)」:台湾大学本部キャンパス正門前を出発、、中山南路を通る3.4キロ。台湾教授協会、21世紀憲改連盟、台湾環境保護聯盟、台湾基督長老教会、民進党高雄地区・中部。

3.「反掏空主權(主権の空洞化に反対する)」:龍山寺を出発し、桂林路、中華路、漢口街、重慶南路、襄陽路、常徳路、公園路、中山南路を通る3.8キロ。台湾団結聯盟、台湾心会、民進党嘉義・宜蘭地区。

4.「反一中市場(中国との市場統合に反対する)」:中山サッカー場(民族西路・中山北路)を出発し、中山北路、市民大道、林森南北路、青島東路中山南路を通る4.2キロ。台湾北社、東社、民進党台南地区。

5.「反無能政府」:三重市側中興大橋(成功路)を出発し、康定路を通り、第3チームと合流して、漢口街、重慶南路、襄陽路、常徳路、公園路、中山南路を通る4.8キロ。民進党台北県。

英閣僚が中国製ミルク飲み干し、9日後に腎臓結石で入院、というブラックジョークのような本当の話

2008-10-22 23:39:15 | 中国
最近台湾のメーリングリストにpoされていて何気に読んで大爆笑したニュースがこれ。
英国のビジネス担当大臣が、大臣就任直前に中国で開かれた会議で、中国製ミルクが安全なことを示すとうそぶいてミルクを飲み干したが、その9日後、就任当日に腎臓結石になって手術を受ける羽目になった、というもの。
しかも、ご丁寧なことに、ミルクを飲み干したときに、温家宝が「中国の現在ではなくて、未来を見てくれている」と絶賛したというおまけ付き。
確かに、中国は国中がそのうち癌やら結石で病人だらけになって社会としても崩壊するだろうから、温がいっていることは正しいんだが、温はそういうつもりではなかったところが、まさに「のらくろ」のブタの軍隊そのまんまだw。

台湾のBBSでも、これが話題になったようで、MLに転載された分だけ見ても「お、即効性か」「ワロタ」「温家宝のコメントが聞きたい」「温は容器に問題があったといっているようだ」などの書き込みがあった。
イマドキの台湾の若者が中国をいかに嫌っているかがよくわかる。

http://phtv.ifeng.com/phinfo/200809/0928_45_810365.shtml
9月28日 溫家寶:在鳳凰電視上看到曼爾森喝中國牛奶很感動
溫家寶:我在鳳凰電視看到曼爾森先生,不知道他今天在不在場,
他喝了一杯中國的牛奶,以表示他對中國產品的信心,我心
裡非常感動。
因為他看到的不是眼前,而是未來。

http://finance.ifeng.com/news/hqcj/20081008/173686.shtml
10月8日 英商務大臣曼爾森上任當天 腎結石發作接受手術
也真是難為他了.....

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※ 發信站: 批踢踢實業坊(ptt.cc)
推 cloud7515:真是即效型...
10/09 23:39
→ joe2:靠杯~~~快笑死我了XD
10/09 23:39
推 AllenHuang:請問溫家寶你的感想怎麼樣?
10/09 23:39
→ Cosmoswalker:笑了...
10/09 23:39
推 gakct:不知道該笑還是該哭...
10/09 23:39
推 best306022:XDDDDDDDDD
10/09 23:39
推 csmith:猛爆性結石???
10/09 23:39
→ evadx:淦 不是結石了嗎
10/09 23:40
推 nemooo:馬上就結石 ?
10/09 23:40
→ Jasy:Orz
10/09 23:40
→ qilar:溫家寶:容器問題
10/09 23:40

一方、日本でも、2ちゃんねるやニュース関連ブログで「さすが英国人、身をもって中国製品の毒性を示したブラックジョーク、野田聖子も見習って餅食えばよい」とか、やはり台湾人に負けず劣らず嫌中な書き込み炸裂状態となっていた。
2ちゃんねる痛いニュース “中国のミルクは安全!”と英閣僚が飲んでアピール→就任当日に腎臓結石で入院

張銘清「勝手に転倒」事件を伝える台湾と日本の報道

2008-10-22 23:38:19 | 台湾政治
張銘清が台南市でわざと転倒した事件について、台湾では21日終日大騒ぎになったのをはじめ、日本のメディアでも私がチェックできた限りでは、NHKが即時かなり大きく報道したのをはじめ、朝日新聞、産経新聞、共同通信、東京新聞などが報じた。

日本の報道では、従来「媚中派」とされてきた朝日新聞と共同通信が「毒ミルク事件による反中感情が高まっていること」が背景にあることを指摘し、朝日は陳雲林来訪にも影響が出る可能性を指摘するなど的確な記事だ。
共同は末尾に「張氏はかつて中国国務院(政府)台湾事務弁公室で報道官を務め、陳水扁前政権に厳しい発言を繰り返したことでも知られる。」と言及してもいる。
だが、かつて「親台派」といわれてきた産経新聞は「中国に急傾斜する馬英九政権を批判する野党・民主進歩党などは25日、台北で50万人規模の反政権デモを計画しているが、暴力行為への社会の見方は厳しく、事件は反政権デモにダメージを与えそうだ。」などとトンチンカンなことを書いている。
長谷川氏は、父親が人民中国の編集長になっている元共同の記者だけに、基本的にはやはり中国共産党マインドなんだよな。台湾の民意や人情というものがまったくわかっていない。

そういえば、これについて、台湾の新聞ネット版を翻訳して論評しているブログでyauchi.netというのがあるが、この人は国民党には批判的なのはいいのだが、右系だからか朝日や共同を読むときに色眼鏡になっているようで、朝日が「私人としての訪問」としていることなど重箱の隅をほじくって批判しているが、朝日が見だしに「反中感情高まり」と明記していることはすっ飛ばしているのは、痛い。
朝日だからといって色眼鏡で見ちゃいかんよ。
まあこの人、かなり重症のウヨクのようで、民進党のフェミニズム傾向についても「電波」などと言いがかりをつけているし、台湾民主化運動の基本をまったくわかっていないんだよなあ。日本ではフェミニズムというと確かにブスの僻みみたいなのがやっているのに対して、台湾では環境とともに民主化の軸になっただけあって、綺麗なおねえちゃんも多いし、広範な基盤がある。そうした「彼我の違い」というか、台湾が外国であるという点をすっぽり見落として、日本のウヨクの目で断罪されてもなあ。台湾に住んでもいないようだし、失礼だよな。この手の勘違いした「親台湾右翼」って「親中サヨク」と同じように多いから、困るんだけど。

本題に戻すと、この事件に関する朝日と共同の報道は良くて、産経はひどすぎ、ということ。

で、台湾のマスコミの報道はどうかというと、中国絡みの突発事件が起こると、本質が丸見えになった感が強い。

日頃は、中立的振る舞いをしているリンゴ日報が、一面トップで「恥!台湾の国際イメージを傷つけた」なんて、日本やアラブのアルジャジーラやAPなどが抗議側に比較的好意的に報道していることをまるで無視して勝手に「国際社会」をもちだして民進党攻撃に走っている。さすが香港系。中共とも対立していても、イザとなったら、やっぱり中国の肩をもつんだよね、気をつけよう。
聯合報と中国時報はもともと深藍系なので、明らかに中国人の肩をもって民進党を批判する記事と投書のオンパレード。
それに対して、自由時報は張のこれまでの無礼な発言と警備体制の不備を指摘し、中国側こそ台湾に謝罪すべきだという記事や投書が多い。台湾時報もたぶんそうだろうが、今日のは見ていない。
いずれにしても、主要新聞では自由時報だけが、この問題では多数の民意を反映している。
テレビでは、民視と三立が張や国民党の言い分も伝えながら、張の問題点も指摘している。自由時報みたいに一辺倒ではなく、ある程度バランスも取りながら指摘もしているところが良い。
中天は国民党べったり、中国べったり。TVBSと東森も国民党よりだが、TVBSは55チャンネルは比較的バランスを取ろうとしているし、東森もキャスターによってはバランスをとろうとしている。年代は比較的バランスをとっている。

こうした立場性の色分けは、リンゴ日報以外は、日常の報道でもそのまま現れている。
リンゴは日頃は中立的なポーズを取っているし、社説は若干緑寄りの趣すらあるが、こういう突発事件になると、やっぱり中国寄りになるのが曲者だ。

最近注目すべきなのは年代テレビの変化だ。年代は従来は国民党より、中国寄りだったが、ここ数ヶ月の傾向を見ると、中立的にするように努力している感じだ。その目安は今回の事件もさることながら、陳水扁一家の「マネロン疑惑」に関する報道の分量だろう。
テレビでは中天が一番陳水扁叩きに熱心で、TVBSがそれに続き、東森は生ニュースではそれほど多くは報じないが、討論番組ではこればかり論じている。
それに対して、民視と三立は報道するが、討論番組などでは証拠がない点を指摘している。
年代は陳の疑惑にそれほど多くの時間を割いていないが、特段弁護もしない、という感じだ(これが一番良識的だろう)。

そういう意味では、以前はそれほどぱっとしなかった年代は、最近は割りと安心して見られる。私はもちろん基本的には緑だが、かといって民視や三立の一部にある極度のバイアスも時々辟易することがあるので、最近、わりと年代も見ている。
バイアスといえば、自由時報は民視や三立よりもひどい。紙面づくりそのものからして、一方的な見方やソースだけを提供するのもどうかと思う。これじゃ、統一派メディアとして親中バイアスがひどい中天や中国時報と一緒じゃないか。
まあ、今は民進党が野党だからいいようなものの、また近々民進党が政権に復帰したら、自由時報は今のままじゃダメだろう(2000年から2006年までは民進党べったりでも価値はあったが)。かといって聯合報や中国時報やリンゴ日報は問題外。メディアの使命は在野精神だが、それは国民党が野党だった時代に国民党に擦り寄るという類ではなくて、はっきりと左というか社会正義の立場に立つべきなのだ。
その点で台湾では主だったマスコミが基本的に右系しかないのが、メディアとしてはダメダメだ。
リンゴ日報だってリベラルな顔していて、社会的にはある程度リベラルだけど、経済的には結局、新自由主義マンセーの経済右派だし。
自由時報と台湾時報も、民進党寄りなのは、台湾独立の部分だけで、はっきりいって右すぎ。かつてあった台湾日報だけは比較的まともな中道左派系だったが、なくなったのは残念だ。

身の程知らずで傲慢な中国の高官、台南で抗議デモに遭遇、勝手に転倒

2008-10-22 23:36:26 | 台湾政治

中国側で台湾との交流を担当する半官機関の海峡両岸関係協会(海協会)副会長も務めるアモイ大学副学長の張銘清が学術交流を名目に台湾南部を訪問した。ところが、これを知った台湾意識が強い市民に至るところで抗議に遭い、結局予定を切り上げ、ほうほうの体で22日中国に逃げ帰った。
最初に抗議に見舞われたのは、20日、台南芸術大学での講演で、講演が始まると、同じ台南にある成功大学の複数の学生が、「台湾は中国の一部などではない!」などと書かれた垂れ幕を掲げてシュプレヒコール。これはすぐに排除されたが、翌21日午前には張が台南市の孔子廟を歩いていたところ、民進党所属の台南市議員とその支持者に取り囲まれ、「中国の高官は、毒ミルク事件や台湾への武力威嚇を謝罪しろ」と抗議を受けている途中、張が転倒するという事件が発生した。
これを台湾の国民党系メディアや国民党保守派=親中派勢力は「民進党系が暴力を振るった」と騒いだ。

しかし中天など国民党系テレビで何度もくだんの画面を放映していたのを見ると、どうも市議員が振り返りざまにちょっと張に当たっただけで、普通の大人の体力なら倒れないところを張がわざと転倒したように見えた。
しかも、不自然なのは、一応「来賓」として招かれていて中国高官の身分ももつ張の回りには、警護の警官の姿が、転倒時には見当たらなかったことである。
自由時報の報道では「張が前日の抗議事件で、予定を変更したので、警備の配置が間に合わなかった」とされているが、これは警備の常識からいっておかしい。警備は場所もあるが、その対象の人物に何人も専属で配置するものなのだから、予定が変更されようが、関係ない。もっとも、台南市警察だから、やる気がなくわざと手薄にしていたのかも知れないが。
ただし、総統府は慌てて「今後は国家安全局マターで責任を持って警護する」と発表したことが怪しい。そもそもこれは国家安全局マターのはず。
だから、民進党の一部では、「馬政権側がわざと警備を手薄になるようにアレンジして、暴力事件をしくんで、民進党を悪者にしようとしたのではないか」という陰謀論もささやかれている。

そういえば、張はどうみてもわざと倒れたように見えるのだが、あれが演技じゃなくて、本当に「殴られたため倒れた」というなら、それはそれで足腰が弱い証拠で、責任ある仕事を任されている公人としては恥ずかしい話であろう。そんな泣き言を言う前に、まず登山でもなんでもいいから、足腰鍛えろ、っていいたい。

もっとも、張が中国人であることから、やはりわざと転倒したのだろうと推測する。自分で勝手に転倒しておいて、その場にいる他人のせいにして、賠償をふんだくる、というのは、中国に限らず、大陸国家ではありがちな話だからだ。だから、シナ人やロシア人はタチが悪い。

で、台湾の一般の反応はどうかというと、「台湾を圧迫してきて、それに詫びも入れない中国の高官なんて、もっとぼこぼこにしてやれば良い」という声が圧倒的多数だ。
25日には、馬英九政権の無能と対中傾斜、海協会会長の陳雲林の来訪に抗議する大規模デモと集会が予定されているが、刺激促進材料となったのは間違いない。

ところが、台湾のマスコミの多くは国民党系なので、こうした民意はいわば声なき声になってしまって、表に出てくるのは、みな「暴力を非難する」という話になってしまう。
まあ、そうやってミスリードされた情報をもとに馬政権は運営され、国民党も動いているから、だから、ダメなんだけどね。「のらくろ」に出ているブタの軍隊(国府軍)と今の国民党は本質的に何も変わっていないんだよな。

その国民党系の主張で笑えるのが「相手は客なんだから、そのような無礼な振る舞いをするべきではない」というもの。
だが、この「客人」ときたら、台湾に来て置いて「台湾独立がいなければ戦争はない」と発言しているし、これが抗議運動のきっかけにもなっているんだけどね。しかも「暴行を受けた」後は、「ごく少数の台湾独立極端分子の仕業」と、いまや多数派になっている台湾独立志向派を矮小化する無礼な捨て台詞をする始末。
「客だから大事にしよう」というなら、その前に、客人としての礼儀や「しおらしさ」を求めるのが筋だろう。
日本のウヨクが南京訪れて、「南京虐殺なんてなかったんだよ!」なんて口走ったら、国民党系中国人は平気でいられるんだろうか?
これだから国民党はダメなんだよ。礼儀というものの意味がわかっていない!

また、面白いのは、張が台湾の検察にこの事件の捜査を依頼したことだ。これには当事者だった民進党市議員が「張は中華民国システムを認めるんだな!」といっていた。日頃中華民国を否定しているくせに、自分が困ると泣き付くなんて、まさにシナ人らしいw。
これだから、日本が中国侵略したときに、シナ人で日本軍になびく奴が続出したんだろうなw。
てか、中華民国の制度に頼る張銘清、中国に帰ったら、「反党分子」として銃殺にすべきだろw。

中国毒ミルク事件で、反中感情が再び台頭する台湾社会

2008-10-12 19:32:00 | 台湾その他の話題
政権は「親中派」なのに、市民社会次元ではやはり反中という、なにやら能天気に天邪鬼な選択をしてしまう台湾人。
「85度C」というそんなにおいしくないコーヒー+ケーキチェーンショップがあるんだが、うちの近くの系列店には最近、「本社のすべての乳製品には直接的にも間接的にも中国製品を使用しておりません」という注意の垂れ幕がかかっていた。しかも中国のことは台湾で、特に国民党陣営では一般的な「大陸」と呼ばず、「中國製商品」となっている。
85度の経営者が緑系なのかは知らないが、緑系じゃなかったとしても、もはやあえて「大陸」とは呼ばず、「中国」と明記し、それがないことが売りになる時点で、台湾社会における対中感情の悪さが示されているといえるだろう

日本領台初期の客家人を描いた映画「1895」一般公開は11月7日から

2008-10-12 19:29:37 | 台湾言語・族群
私自身も日本語指導などで携わった映画「1895」が11月7日から台湾全国の映画館で封切られる予定だ。先立って封切一ヶ月前にあたる10月8日、関係者向けの試写会があった。私は5月に字幕をつける前の内部審査用長尺版(2時間半以上)は見たことはあるが、完成されたものの鑑賞ははじめてだ。長尺版はさすがに長すぎて余分な場面も多くて飽きたので、上映版はどうなるかひやひやしたが、ちゃんと整理されていて、緊張感もみなぎっていて、面白くなっていた。ただ惜しむらくは、在台日本人俳優が読み間違えた漢字が編集で直っていなかったが。

公式サイト:http://www.1895.com.tw

映画のテーマは、台湾が日本に割譲されたときに、郷土を守るため台湾中部彰化の八卦山に立てこもって武装抗争を展開した客家人リーダー呉湯興(Ng thong-hin)と妻・黄賢妹(Vong hien-moi)中心に、抗争に加わったホーロー人やサイシャット族、台湾征服を指揮した北白川宮能久親王と若き日の森鴎外こと森林太郎もからませながら、それぞれが自分たちの属する共同体を守るために戦うが、同時に戦争の悲惨さも認識する、というもの。客家人が主体となった抗争で、客家語が主体だが、ホーロー人や原住民族もからませたのは「族群融合」という点を意識したから?長尺版ではその点がわざとらしく感じたが、上映版では自然な形になっていて違和感はなかったし、ホーロー語を話す山賊のユーモラスさ(つまりは演劇でいうところのフールfoolの役だ)に、ホーロー人も見せる気をおこさせ、観客もなごませる効果も与えているといえる。
清朝式教育で育った読書人である呉が最終的には辮髪を自ら切り、清朝との決別と台湾人独自の抗争を誓う場面や、ホーロー人の山賊のボスが、唐景ら清朝官僚が中国に帰属意識を持ち「敵前逃亡」したことを揶揄する台詞が圧巻。これって、見ようによっては馬へのあてつけといえるw。
また抗日闘争が主題ではあるものの、台湾人制作だけに、日本人を悪く描くこともせず、「当時の日本人も領土となる台湾を祖国愛の延長で考え、軍人や住民の生死もいたわりながら占領したこと」を淡々と描いているところも特色だ。おそらく中国では上映できまい。
「海角7号}(これについては後日興行収入が4億元超えた時点で再度言及したい)が起こした台湾本土映画ブームもあって、試写会直後からこの映画も評判になっており、三立テレビの「大話新聞」の司会鄭弘儀は毎日言及しているし、新聞の識者の投書でも言及されている。個人的に関係深い映画でもあり、海角7号以上の評価を受けることを期待している。

ポニョって駄作だな

2008-10-12 19:28:22 | 芸術・文化全般
日本でこの夏話題になった宮崎駿アニメ「崖の上のポニョ」、あるところで見たのだが、はっきりいって駄作だ!はっきりいって子供受けを狙おうとして、気をてらいすぎて、それが空回りしているとしかいいようがない。宮崎作品は「カリオストロの城」から「となりのトトロ」まで、とくに「天空の城ラピュタ」が最高だったと思うし(私自身、これと「風の谷のナウシカ」は、台湾語吹き替えバージョンなども含めて10回以上は見たし、何度見ても飽きない)、最近のでは「千と千尋の神隠し」(これも3回は見た)が独自の世界観を描いてよかったと思うが、「ハウルの動く城」といい、「ポニョ」といい駄作もいいところだ。ハウルとポニョと比べたら、まだしも駿自身が酷評して世評も悪かったハヤオ2世の「ゲド戦記」のほうがマシなくらいだよ。てか、ハウルだのポニョだの作っといて、ゲドを酷評する資格なんかないよ、今のパヤオには。
これで引退という話もあるが、駄作続きだから、もう芸術家としての才能は枯渇しているんだと思う。千と千尋で止めておけばよかったのでは?

そういえばラピュタといえば、エンディングテーマ「きみをのせて」は「ととろ」のテーマや「さんぽ」を歌った井上杏美(現在あずみ)こと宮崎緑って、実は私の同郷人で、しかも高校演劇県大会で会ったこともあって(向こうはもう覚えていないだろうが)、同級生が一時付き合っていたこともあることもあって、特に印象深いんだが、それはともかく、テレビで放映されるたびに話題になり、有名な「バルス!」のシーンで、2ちゃんねるの書き込みが一分間に1600になったとかいう話もあるが、世の中飢えて死んでいく子供もいるというのに、一体、日本の引きこもりとかヲタクって何を考えているんだと思う。

日本の大物芸能人も続々と台湾に、台湾語学習する芸能人も増加

2008-10-12 19:27:54 | 台湾言語・族群
そういえば、馬政権になってからも、台湾市民社会の親日度は退行するどころか、ますます深まっているといえる。何か政権の反日ぶりに反発しているかのように。「海角7号」ブームもそうだし(同映画は日本人もホーロー人も客家人も原住民も出てくるのに、外省人だけ出てこないのだ)、しかも日本の芸能人の台湾訪問も、最近は「旬が過ぎて日本では暇なのでアジアに来る」というより、わりと旬な人間が来るようになっている。
大塚愛が10月初め、嵐が今現在来ている。
別に大塚愛は好きでも嫌いでもないし、嵐はそんなに好きではないのだが、面白いのは中国時報が6日付け芸能面で報じた話:

苦練中文 誠意十足 大塚愛國台語開唱催涙
〔 2008.10.06 中國時報 〕

中国語で一部挨拶したり歌詞の一部を歌ったほか、歌詞のut-chutという部分を台湾語で発音したという。

そういえば、「海角7号」に出た小林千絵も最近台湾語を学習しているようだし、随分前に台湾語ドラマにも出たことがある麻衣(佐藤麻衣)も今は台湾語を聴いてわかるようになっているらしいし、これは良い現象だ。

私が来年出せるであろう台湾語入門書の追い風にもなるしな。

ところが、意外に台湾語運動グループがこれに注目しようとしないのは、アンテナの感度が鈍いというか、センスがないというか。

馬英九なんて失敗作をトップに選んでしまった台湾政治システムははっきりいって失敗。どうせこれからは無能な人間ばかり登場するだろうから(日本と同じ)、これから期待できるのは、芸能や文化方面だと思っているので、台湾語運動の方向性もそういう風に切り替えないと台湾語の伝承の将来は暗いと思う。

権威主義の臍の緒をつけた馬英九と李明博、メディア支配でも共謀?

2008-10-12 19:27:20 | 台湾政治
韓国で李明博・ハンナラ党政権は、前政権時代にリベラル化した公営テレビのKBSとMBCを再び支配して保守化させようとして、KBS人事などに介入しているが、台湾でも馬英九・国民党政権は中立化もしくはリベラル化した政府系メディアを再び支配して右傾化させようと躍起になっている。
対外放送を担っていた政府外郭団体、中央広播電台(中央ラジオ)に言いがかりをつけて理事陣を辞職に追い込み、今度は同じく外郭団体の中央通訊社(中央通信社)の役員人事に着手している。今後は公共広視集団(公共ラジオテレビグループ、公共電視のほか、中華テレビ、客家テレビ、原住民族テレビも傘下にある)にも手を伸ばし、メディア支配とメディアを通じた洗脳支配を狙っているとみられる。

しかも、手口もきわめてそっくり。さすがは冷戦時代には「盟友」を誇り、1980年に国民を大虐殺した集団の後継者ハンナラ党と、1947年に3万人近く虐殺した集団である国民党だけのことはある。都合よく両者が同じ時期に政権に復帰したこともあり、まさか共謀しているのでは?

そういえば、かつて1980年ごろ台湾で反体制雑誌として有名だった「美麗島」は、日本の左派系学者の韓国経済悲観論の論文を翻訳して載せたことで、当時中華民国駐在の韓国大使館が国民党政権に圧力をかけて、それが元で停刊になってしまった経緯もある。いまでもハンナラ党と国民党はお互いの党首選出などのたびに祝電を送りあう仲でもある。しかもハンナラ党も国民党も世界の保守政党の集まりではなく、中国共産党と唯一の姉妹提携関係を結んでいる点でも共通している。

つまり、中共ともども、はっきりいって嫌なやつらなのだ>国民党+ハンナラ党!

しかし、1990年代前半までならともかく、これだけ市民社会や情報社会が発達した台湾と韓国で、いまだに政府系メディアを支配して、国民を洗脳して長期支配が可能になると妄想しているところが、すごく痛すぎる。時代遅れのこうした妄想が実は自分たちの死期を早めることに気がついていないところもまた痛い。いずれにしても、馬英九と李明博は長くはもたないだろう。

三百代言気質が止らない陳水扁と盧武鉉

2008-10-12 19:26:50 | 台湾政治
陳水扁と盧武鉉、基本的に東アジアの民主化リベラル勢力を代表して大統領を経験した人間に対して、あまり悪口を言いたくはないのだが、しかし最近の両者の言動を見ていると、やはり似たもの同士というか、黙っていられない三百代言気質というか、言動の暴走が止らないので、ちょっと嫌味を言いたくなった。
両者とも、少しは黙っていれば、大統領経験者として重みも増して、株が上がろうというものなのに、やれやれである。
盧武鉉のほうは「民主主義2.0」というサイトを立ち上げて、自身でも1日に2-3回長文の書き込みをするなどして、「躁」状態、言いたい放題になっていて、次期大統領選にも意欲満々のようだが、陳水扁も同じように、最近国民党政権が行っている陳水扁海外マネロン疑惑を逆手にとって、毎日支持基盤の中南部に下っては放言連発、10月3日には「今の政権は主権を売り渡し、私を逮捕しようとしている。これは台湾人に対する政治迫害であり、私は政治犯になる」などといった挙句、「tai5-oan5-lang5 pian3 chiah8-sai2--e5,goa7-seng2-lang5 si7 chiah8-png7--e5」文字通り訳すと台湾人は糞を食い、外省人は飯を食う、つまり、台湾人が辛酸をなめているのに、外省人は悠々としている、という意味の発言を行うなど、こちらも盧武鉉以上に躁状態だ。
この発言、リンゴ日報の4日付けあたりは問題にしていたが、私もアホだと思う。確かに今の馬政権はまさに時代遅れの外省人バリバリの発想で政権運営しているといえるが、ここ十数年来の本土化の成果から、外省人と台湾人を区別して、外省人だけが良い思いをしている、という指摘は的外れといっていい。
というか、外省人の中でも、馬英九みたいな人ははっきりいっていまや稀少動物であって、馬英九一人のせいで外省人全体も悪いみたいな言い方は止めたほうがいいと思う。

しかも、陳水扁は最近になって急進独立派受けを狙っているのか、やたらと南部に行き、台湾語でこうした罵倒語を連発しているが、これを見ているとどうも不愉快でならない。そんなに台湾語を愛し、「外省人」を憎み、独立建国を望んでいたのであれば、どうして2002年年頭に中国との「統合論」を打ち出す一方で、母語教育のほうは遅々として進めようとしなったのか?
要するに、陳水扁は自分が危うくなったときだけ、「独立派」と「台湾人」を騙って、族群対立を煽っているだけなのである。

そもそも陳水扁が、陳のいう外省人特権層、さらに財界を含めた既得権益層に嫌われていたとは思えない。民進党の主流や多くが、経済的にも中道左派志向であるのに、陳水扁自身はもともと中道右派的で、実際に経済政策は大幅に新自由主義を採用してしまった(もちろん民進党の本来の路線によって、福祉政策も進められたのも事実だが、それは陳水扁が望んだものではない)。それが中国との過度な接近と貧富格差を増大させた。
その一方で、困ったときだけは「愛台湾」を訴える戦術をたびたびとった。
3月の総統選挙は、馬英九が58%も獲得したわけだが、もともと国民党のコアな支持なんて3割くらいしかないのに、その倍も馬が得票できたのは、ひとえに「アンチ陳水扁」が馬に結集しただけなのだが、そのアンチ陳感情を生み、3割近くが民進党から離反した原因は、陳水扁が本土派として一貫せず、さらに民進党の理念であるリベラル中道左派からも遊離した政策をとったことに、多くの本土派やリベラル派が失望したからに他ならない。実際私が接触した南部の国民党本土派の人間はすごく陳水扁を嫌っていた。馬英九も好きではなかったけど、陳嫌いがそれを上回っていた。(逆にいえば馬の支持基盤などモロイものなのだ)
それなのに、またぞろ「困ったときの独立派ポーズ、社会正義の人気取り」では、大勢の支持を得ることは無理だろうし、はっきりいってすべての本土派にとって迷惑極まりない。

三百代言って、長期的計算をせずにその場限りの「法廷闘争」をしがちだからダメなんだよな。

他者の任期を尊重しないものは、自らの任期も保障されない 新興民主主義の制度的脆弱さ

2008-10-09 03:47:30 | 台湾政治
「ラジオ・タイワン・インターナショナル」という名称で、国際放送を運営する台湾政府外郭財団法人・中央廣播電台(中央ラジオ)だが、任期をまだ1年残して民進党政権時代に就任した役員が集団辞職する騒ぎになっている。
9月30日自由時報が1面トップで報じたことから明るみに出たのだが、同報道によると、発端は馬政権になってから新聞局など監督政府機関が「中国批判をあまりしないように」と圧力を加えたことだという。
同放送局は台湾語や華語の番組に何度が出演したことがあるし、役員や内部の人は何人も知り合いがいるので、ちょっと書きにくいところもある。
わたしが現場関係者から聞いたところでは自由時報の報道も一面的、一方的のきらいはある。内部職員には放送業務を知らない政治任命の役員への不満もあったらしいし、政府系放送なのに現政権を声高に批判する番組もあったから、必ずしも馬政権だけに非があるわけでもないようだ。とはいえ、馬政権が「中国批判をあまりするな」といって圧力をかけたのは事実であり、この問題は馬政権の媚中体質を物語るものとして、根が深く、禍根を残すことになるだろう。

禍根といえば、制度的に任期が保障されているはずの政府外郭団体で、任期まで1年以上を残して、次々に馬政権からの圧力で民進党時代に就任した役員が辞めさせられているという問題がある。

もともと台湾の制度やシステムなるものは、あまり信用に値しないところがある。とはいえ、これまで概して守られていた制度が、こうやって政治的な圧力でいとも簡単に覆されてしまうのは、問題であろう。いや、そうやって簡単に制度を反古にしてしまうということは、その矛先は必ず自らにも向かってくるということだ。
制度というものは、信頼に立脚している。その信頼を自ら破れば、その人も信頼されないから、その人(総統)の任期もまた制度的に保障されないことになる。
まして、中華民国憲法は憲法本文のうち3分の2が空文化している意味のない、欠陥だらけの憲法だ(そもそも国家の成立要件たる国土すら、憲法では明確でない)。それが総統の任期を4年だと規定していても、その総統自身が憲法によって制定された法令が保障する他の制度を平気でふみにじった以上は、憲法による総統任期の制度的保障もまた空文化したといえるだろう。
まして国民党勢力は2006年に当時の陳水扁総統の国務機密費横領疑惑で確たる証拠もなしに「問題がある総統は辞めるべきだ」と総統任期は保障されないものだというロジックを自ら展開した前科がある。
当時の国民党はよもや2年後に政権を奪回すると思ってもみなかったからそんな主張をしたのだろうが、「問題がある総統は、民選にもかかわらず辞めるべきだ」という主張、それから今回の憲法の下にある法令で決められた外郭団体役員任期を否定する行動は、中華民国総統なるものの任期が実は不確定で、不安定であることを示しているわけだ。
いや、新興民主主義国家では概して「制度」なるものは未熟で不安定である。最近南アフリカでも大統領が任期を半年近く残して辞任を迫られたように。南アフリカの場合は、半大統領制ではなく、大統領制であり、かつ議会から選出されるので、事実上多数派の与党による任命となるから、台湾とは事情が異なるとはいえ、新興民主主義国家では「任期などの制度」なるものが、不安定であることの証明になる。

そもそも半(準)大統領制なるものは、フランスで定式化し成功したことを除けば、いずれも独裁に傾斜しやすく(そもそも大統領は三権の上にあり、議会に責任を負わないわけだから、独裁制に傾いて当然だ)、民主主義、ましては成熟した市民社会にはなじまない制度である。半大統領制でありながら民主主義国家だったところは、いずれも議院内閣制に移行した(フィンランド、リトアニア、アイルランドなど)。まだ残っているのは韓国と台湾だけだが、いずれも冷戦反共独裁時代のいわば歴史の遺物であり、韓国でも台湾でも無能な大統領を選んでしまったばかりに、制度として破綻が明らかになっている。
そういう意味では、台湾も早晩、議院内閣制、責任内閣制への移行が不可避だろう。もちろんそのためには二院制にして、さらに下院=衆議院の比例代表部分を大幅に増やしたうえで、現在の議会を改選する必要があるだろうが。

その時期は意外に早く来るかもしれない。馬政権は、国民党自身にとっては愚かだが、民進党や市民社会にとっては都合が良いことに、まったく反省能力も検討能力もなく、現在の超不人気な内閣をそのまま温存し、誤った政策を継続させるつもりらしいから。これは自らの破局するまで泥舟に乗って突っ走るということなのである。

3月の総統選挙の結果を見て、私は一瞬台湾人は学習能力もなく、まったくバカな選択をしたものだと思った。腐敗堕落無能の代名詞でしかない国民党を議会の絶対多数派にしたうえ政権に復帰させ、無能であることをみんなが知っていた馬英九を総統に選ぶというのは、どうみても愚かだと思った。
ところが、実はそうではないのかもしれない。わたしが「したたかな隣人」と呼んだように、数々の外来勢力に支配されてきた台湾人は、おそらく本人たちは無意識なのだろうし、それほど深く考えていないようだが、実は後から見て深謀遠慮ともいえる結果を選択することが実は多いからだ。

勝ちすぎた国民党と馬英九、その政権獲得と同時にタイミングよく発生した世界金融危機と中国経済の暴落。もちろん台湾人自身は自覚的ではなかっただろうが、これは実は国民党と馬英九に対して仕掛けられた、巧みなトラップなのだろう。
民進党がいくら党産や歴史問題を持ち出して叩いても壊れなかった国民党。それなら逆に勝たせるだけ勝たせることで、すべての責任と負担がかかるようにすれば、むしろ崩壊を早めることにもなる。ちょうど国民党が命綱にしてきた米国と中国の没落も起こったことだし、勝ちすぎた国民党と馬英九は勝ちすぎたことによって自滅するのである。
過ぎたるは及ばざるが如し、あるいは塞翁が馬の故事はそのあたりをよく示している。
落馬して骨折した子供が1年後の戦争で従軍せずに済み、命拾いしたことになるだろうから。塞翁が馬の故事でもその期間が1年になっているのも意味深長だ。