先日、日本時代の台湾人の画家・彫刻家の生涯を描いた映画の試写会があったので、同僚らと見に行った。
題名は「南方紀事之浮世光影」。
あらすじは次のとおり:画家・彫刻家の名前は黄清呈。彼の回顧展が台北の画廊で開かれるという話から過去に戻り、黄の生涯をたどる。まず生まれ故郷の澎湖諸島で幼いころから暇さえあれば絵を描く天性の画家だったことから始まり、長じてから当時の日本内地に留学し、芸術の腕を磨いたり、台湾人留学生仲間と哲学を論じたり、ピアニストの恋人桂香と交際するなど、充実した東京生活を描く。31歳になって当時の中国北平(北京)の芸術専門学校の教師として招聘されることになり、いったん故郷の台湾に戻ることになり、やや関係が冷えていた桂香とともに高千穂丸に乗りこむが、船が台湾に到着する直前になって米軍の魚雷攻撃を受け、船は沈没。一部の乗客は助かったが、黄を含めた1000人以上が遭難した、というもの。
言語は日本時代のシーンは台湾語と日本語で、現代のシーンは北京語だが、全体として台湾語が8割くらい。およそ90分で、10月から上映開始予定。
配役は主役の黃清呈にヘビメタバンドシンガーのFreddy Lin(彼は昨年11月、李登輝学校の卒業生で台湾大学政治学科学生の謝易宏とともに、李登輝を囲んで「魁!男塾」のコスプレで有名になった)、恋人の桂香役に舞台女優の張鈞、黄の兄、黃清順役にやはり舞台俳優の林鴻翔、現代のシーンで美術館キュレーター?の役にアイドルの徐懷 (Yuki Shu) 、その恋人・國鈞役に舞台俳優の何豪傑を配した。
公式サイトは
http://www.easternpond.com.tw/。ただし、7月22日現在まだ工事中。
クランクインの際は「南方紀事」という名前だったが、一画家の生涯だけでちょっと大げさということから、「南方紀事之浮世光影」に変えたという。
試写会では感想などを書いて謝礼として100元もらった。
しかし、一言でいって、つまらない映画だった。この制作は多くの友人が関わっているので、前から聞いていたし、台湾日報もよく記事にしていたので期待していたのだが、映画のつくりが素人すぎて、お粗末。
もちろん、題材そのものは良い。これまで台湾では国民党教育によって、台湾自体の歴史的人物が顧みられなかったこともあって、日本時代の台湾人で名を挙げた人を顕彰し、知らせようという試みそのものは買う。しかし、脚本がつまらなく、撮影も異様に下手なのである。
全般的にいって、シーンのつながりが悪い。色合いも単調でコントラストがない。そもそも主役のフレディはのっぺりした顔なのだから、コントラストが悪いと余計画面映りが冴えなくなるのだ。
大体、現代に回顧展が開かれるシーンから始まる必然性がないし、そこから過去に戻る際に、台湾人によくあるパターンでまったく脈絡がなく連携が悪い。だから現代と過去がばらばらで唐突かつ牽強付会に結びついている格好だった。
とくに試写会参加者の間で不評だったのが、現代のシーンのボーイフレンド國鈞は「いらねえ」という声がもっぱらだった。徐懷 (Yuki Shu)については賛否両論となった。わたしは良いと思う。徐懷自身は外省人芸能人ながら熱烈な陳水扁支持として有名だし、この映画に出演することは彼女が陳水扁をミーハー的に支持しただけでなく、台湾意識にもとづいていることが示されたといえるわけで、若い世代の外省人の台湾本土化、台湾意識への傾斜のシンボルともいえるからである。
また、船が海を進むシーンと蛍が舞うシーンの動画が、北朝鮮映画並みのちゃちなつくりになっていた(制作側は、これはベータ版であって、後で手直しするといっていたが)のも萎えた。
それに、わざわざ日本に行ってロケをしたらしいが、日本だと気づかないようなもので、別に日本にわざわざ行って撮影するほどでもない。なんだか無駄な金の使い方をしている。
せりふの一部で使われていた日本語についてだが、全体的には言語そのものの考証は比較的力を入れていたようで、日本語は当時の語法をなるべく意識したものになっていた。ところが内容的におかしなところがあって、日本地理の授業のシーンで、「東京の南にあるのが、名古屋、さらに南が四国だ」などといっていた。日本人の一般感覚では名古屋も四国も東京の南じゃなくて、西というのが普通だろう。大体緯度はそんなに違わないのだから。台湾は南北別だからそれを当てはめがちだが、日本は東と西の区別がまずある。
しかも四国を「日本で三番目に大きな島だ」といっていたのもおかしい。当時の日本の領土でいえば、四国は6番目になるはず。本州、北海道、樺太、九州、台湾、四国の順だ。理科年表で確かめたらよい。日本統治時代といっているわりには、台湾人はこういう具体的な舞台設定で現在の感覚をもってきて「当時の台湾は日本の外地だった」ことを忘れてしまうところが、まあ台湾人らしい詰めの甘さといえようか。
また、日本語で「ここにこれを置かせていただきたい」みたいな言い回しを使っていたが、浄土真宗起源の「~させていただく」形が一般的に広まったのは戦後であって、当時は一般的ではなかったはず。
ただし、日本語ということでいえば、主役のフレディは、日本語がまったくできないのに、哲学論争など難しくて長い日本語のせりふを比較的流暢にこなしており、この点では評価できる。わたし自身の経験では、台湾の俳優はこういうときに日本語のせりふをちゃんと覚えようとしないが、フレディはちゃんとこなしていたのは良い。そこは音楽家だからか。
また、台湾語は澎湖方言(泉州系が強いもの)を比較的忠実に考証して使っているほか、台湾語の語りは台湾語運動もやっている陳豊恵(語研「台湾語基本単語2000」の吹込みをした人でもある)が担当しているので、この点では良い。
しかしながら、やはり全体的に企画設計が良くない。それには理由があって、そもそもこれが台湾聯通網という組織が関わっているためかもしれない。試写会もその事務所で行われた。台湾聯通網は、台湾独立建国聯盟が中心となって台湾ではじめて専門のインターネットラジオを2002年に作り、台湾意識を広めようとして作られた組織だ。インターネット映像ソフトを作ったりする業務を行っている。わたし自身も実はその設立準備段階から一枚かんでいて、開局後半年間番組をもったこともある。しかし、そこの経営陣が無能で、ラジオをライブで聴いているのは最大で数十人という程度。海外の独立支持台湾人などからも金を集めて鳴り物入りで作ったわりには、これでは効果はほとんど無きに等しい。そこで、半年してから、準備に関わった人間と経営を握っていた人間が衝突、準備に関わっていた人間がわたしも含めていっせいに手を引いたのだ。
そのときの経営者が今回の企画に入っている。これでは、駄目なのも当然だろう。センスが悪すぎる。「無米楽」とは大違いだ。
映画の紹介については、筆者が個人的に受け取ったメール案内から(中英文:
◎試映會地點:台北市南京東路二段95號十一樓
◎試映會流程:7月18日到7月22日19:30到21:30(擇一場參加)
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*【浮世光影】簡介*
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***預告片:http://voiceoftaiwan3.streamguys.com/tvnet/pond/PondPartTrial3*
其他資料:
http://groups.msn.com/taiping/
general.msnw?action=get_message&mview=0&ID_Message=146&LastModified=4675514755452685863
〝生命是如此美好,值得吾人為之奮鬥;我同意這句話的後半段〞
---海明威
"The world is a fine place, and worth fighting for.' I believe in the second
part."
Ernest Hemingway
日據時代知名雕刻家及畫家黃清埕從日本學成歸國,他與相伴多年的鋼琴家女友桂香搭乘由神戶啟程往基隆的巨輪--高千穗丸,準備回鄉探望親人後赴北平藝專教書,未料,船抵基隆港外,竟遭美國潛艇魚雷擊中,
當時船上僅有兩艘救生艇駛回基隆港,船上一千多名乘客多不幸罹難。這段堪稱世界第三大船難,也是台灣歷史中的重要紀事,不僅沒有得到應有的感懷,還遭受到 官方禁論及打壓,大時代下的悲劇,因此伴隨著高千穗丸的沉寂逐漸被遺忘,而黃清埕這位有可能是台灣有史以來最具天份的藝術家,也隨之殞落,藝術成就鮮少為 人所提及。
多年後,修復專家透過一次美術展認識了黃清埕的畫作,也因修畫及採訪的緣故,對於黃清埕作品和高千穗丸事件產生了好奇,
逐漸發現每幅畫中人物,背後都有一段感人故事,其中「衣婦人」像和「桂香頭像」,似乎又別具某種浪漫糾纏的關係,在
一路尋訪、修補過程中,一步步受到黃清埕對藝術生命與價值的感召,因而引發對自我的強烈衝擊與定位,並為長年隱藏在身體中的病痛找到了出路……
紀事也就此展開。
* *
*"**The world is a fine place, and worth fighting for.' I believe in the
second part."*
Ernest Hemingway
The year is 1943, and Taiwan is under Japanese colonization. After
finishing his studies in Japan, famed Taiwanese sculptor and painter
Ching-Cheng
Huang receives an offer to teach in Beiping Art School. He decides to visit
friends and family back home before leaving for China. He boards the
passenger liner Takachiho Maru in Kobe, Japan, with his girlfriend, a piano
player.Tragically, the luxurious liner is torpedoed by an American submarine
and sinks off the coast of Keelung, Taiwan.
More than 1000 lives were claimed, and only a few survivors were rescued
from two lifeboats. This, the third most disastrous shipwreck in world
history, should have been remembered as important episode in Taiwanese
history. However, instead of commemorating the tragedy, discussions and
inquiries about the incident were forbidden by the island's Japanese
colonial governor. As a result, the story of Takachiho Maru sunk with the
liner and its passengers. Ching-Cheng Huang, perhaps one of the most
talented artists Taiwan had ever produced, was forgotten as well.
Many years later, Shou-shou, a fine art restorer with a crippling illness,
finds one of Huang's paintings in an exhibition. In order to restore the
painting, Shou-shou learns about the artist, the stories behind his work,
and his death at sea. She recreates the story of the painting's "Woman in
Black", and romantically imagines the ways the artist painted his
girlfriend. The more she studies, the more inspired she becomes. Restoring
Huang's painting thus becomes Shou-shou's way of restoring herself.
映画の紹介については、ほかに次のサイト
http://www.pcdvd.com.tw/showthread.php?t=440438
http://www.taiwanus.net/forum/read.php?id=2741
予告編は
mms://voiceoftaiwan3.streamguys.com/tvnet/pond/PondPartTrial.wmv
を参照してください。
フレディとコスプレについては、
http://www.anti-china.net/
http://tw.search.yahoo.com/search/images?p=
%E9%AD%81%E7%94%B7%E5%A1%BE+%E6%9D%8E%E7%99%BB%E8%BC%9D&ei=UTF-8&fl=
0&meta=vc%3D&fr=fp-tab-web-t
(長いので改行、直リンクにしませんでした)
などを参照。写真の向かって左、つまり李登輝の右側の人がフレディ。
コスプレ当時の記事は、
http://news.chinatimes.com/Chinatimes/newslist/newslist-content
/0,3546,130101+132004111600780,00.html
これも長いので改行しました。