数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

RNA、DNAとは? 三重・四重らせん構造もある?RNAワールド、タンパク質ワールド?

2023-06-10 14:46:42 | 核酸、ゲノム
 最先端の医薬品は、タンパク質の記号構造的な解析と最新のバイオテクノロジーにより作られた人工的な物質(拮抗剤など)によるものだと思っていましたが、どうもその先を行っているようです。

 
 それは、人工的に作られたRNAをベクター(脂質ナノ粒子など)で包み、直接細胞に送り込んで治療効果のあるタンパク質を細胞のリボソームで作ってしまおうというものらしいです。これは何かコロナワクチンとそっくりの手法のようにも思えますが、こういった創薬が主流になろうとしているようです。
 また人工的なRNAを使って、細胞のDNAを書き換える(治療用タンパク質のコードを挿入する)方法もあるようです。

核酸医薬 - Wikipedia
「核酸医薬(英: oligonucleotide therapeutics)とは天然型ヌクレオチドまたは化学修飾型ヌクレオチドを基本骨格とする薬物であり、遺伝子発現を介さずに直接生体に作用し、化学合成により製造されることを特徴とする。代表的な核酸医薬にはアンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、アプタマー、デコイなどがあげられる。核酸医薬は化学合成により製造された核酸が遺伝子発現を介さずに直接生体に作用するのに対して、遺伝子治療薬は特定のDNA遺伝子から遺伝子発現させ、何らかの機能をもつ蛋白質を産出させる点が異なる。核酸医薬は高い特異性に加えて、従来の医薬品では狙えないmRNAやnon-coding RNAなど細胞内の標的分子を創薬ターゲットにすることが可能であり、一度プラットフォームが完成すれば比較的短時間で規格化しやすいという特徴がある。そのため核酸医薬は低分子医薬、抗体医薬に次ぐ次世代医薬であり癌や遺伝性疾患に対する革新的医薬品としての発展が期待されている。」

 まあ医薬が進んでいるというか、一歩間違えると大変なリスクにもなると思えますが。

 そのRNA、DNAとは、そもそもどんなものでしょうか?

1.核酸(RNA、DNA)とは
 核酸(RNA、DNA)は、「核酸塩基(Baseと呼ばれる)」、「リン酸」と「糖」から組み立てられています。


 RNAでは「糖」がリボース(上記の5角形のところ)になっていますが、DNAではリボースの2位のOHがH(水素基)に置換されたれています(2-デオキシリボース)。RNAはリボースのOHが加水分解されてしまうので、反応性が高く、不安定になります。

●リボ核酸(RNA)⇒糖(リボース)+リン酸+核酸塩基
●デオキシリボ核酸(DNA)⇒糖(2-デオキシリボース)+リン酸+核酸塩基

 糖と核酸塩基が結合した1単位のものをヌクレオシド、ヌクレオシドにリン酸が結合したもの1単位のものをヌクレオチドといいます。
 このヌクレオチドは核酸以外にも、例えば体内エネルギー通貨であるATP(アデノシン三リン酸 )などでも使われています。どうも生命の基本骨格(記号)であり、RNA起源の研究でも注目を集めているようです。

「原始環境を模倣してヌクレオシド5'-トリリン酸を原料としてRNAが生成するかどうかを調べた.しかし,RNAは生成しなかった.過去にも調べた研究者もあったが,生成しないので論文としもほとんど報告されていない.オーゲルは活性化ヌクレオチドとして,リン酸基3コの代わりに,1コのリン酸基にイミダゾールがついた物質を活性化ヌクレオチドとして使えば,鋳型ポリヌクレオチドが存在すればRNAが生成することをみいだした.しかし,この反応では,ポリシチジル酸鋳型存在下でオリゴグアニル酸が生成するが,鋳型と活性化ヌクレオチドの種類を入れ替えると進まない.またアデニンとウラシルとの組み合わせでも反応は進まない. 
…オーゲルがみつけた活性化ヌクレオチドを使うと,粘土鉱物を触媒とすれば15鎖長ぐらいのRNAが生成する.この反応のメカニズムを解析した.粘土はマイナスに帯電しているがそこにヌクレオチドがマグネシウムイオンを介して結合する.(引用終わり)」

 核酸のヌクレオチドがホスホジエステル結合(リン酸を介しての糖と糖との結合)により多数重合したものをリボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)といいます。
 そしてそれらが二次・三次・四次構造化して高次の機能を持つものになります。 
 三次構造化は二重螺旋構造などが有名ですが、三重・四重螺旋構造も取ることができるようです。
「近年、三重鎖RNAの生物学的機能の研究が多くなされている。三重鎖RNAの生物学的役割としては安定性や翻訳の増大、リガンドの結合や触媒への影響などがある。三重らせんによってリガンドの結合が影響を受ける例としては、SAM-IIリボスイッチがある。SAM-IIリボスイッチでは、三重らせんによってS-アデノシルメチオニンの結合部位が形成される。テロメア(DNAの末端)の複製を担うリボヌクレオタンパク質複合体であるテロメラーゼには三重鎖RNA構造が含まれ、テロメラーゼの適切な機能に必要であると考えられている。MALAT1やカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(英語版)のPAN RNAなどの長鎖ノンコーディングRNAの3'末端に位置する三重らせんは、ポリアデニル化テールを脱アデニル化から保護してRNAを安定化し、ヒトでの複数のがんやウイルスの病原性における機能に影響を与える。さらに、RNA三重鎖はポリアデニル化テールの3'末端の結合ポケットを形成することでmRNAを安定化する。」 
 どうも遺伝子制御はタンパク質(クロマチンなど)だけではなく、mRNA自身でも行っているようです。
「…この四重らせん構造は、細胞の分裂期など、必要とされるときだけに形成されることがわかりました。
すなわちガン細胞のような一部の調節能力が失われた細胞では、常に四重らせんである一方で、通常の細胞では活動期以外は二重らせん構造に収まっているようなのです。
…四重らせん構造はタンパク質の増産を予約する一方で、メチル化(抑制)の標的部位であることが判明しました。 
…実はヒトの遺伝子数が2万個である一方で、全DNA内部で四重らせん構造をとる部位は70万カ所も存在することが知られています。
ヒトのDNAは思った以上に、四本らせん構造の制御を受けているのでしょう。」
 どうも四重螺旋DNAは細胞の分裂促進などに使われるようで、その生成はエピジェネテックスな方法により制御されているようです。


 そして四次構造化は、核酸タンパク質複合体であるリボソームクロマチンなどの構造体になります。生命にとって極めて重要な機能(タンパク質生産や遺伝子制御)を果たすものになります。

核酸 - Wikipedia
「核酸(かくさん、英: nucleic acid)は、リボ核酸 (RNA)とデオキシリボ核酸 (DNA)の総称で、塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドがホスホジエステル結合で連なった生体高分子である。糖の部分がリボースであるものがRNA、リボースの2'位の水酸基が水素基に置換された2-デオキシリボースであるものがDNAである。RNAは2'位が水酸基であるため、加水分解を受けることにより、DNAよりも反応性が高く、熱力学的に不安定である。糖の 1'位には塩基(核酸塩基)が結合している。さらに糖の 3'位と隣の糖の 5'位はリン酸エステル構造で結合しており、その結合が繰り返されて長い鎖状になる。転写や翻訳は 5'位から 3'位への方向へ進む。

一次構造
 核酸の一次構造とは、(デオキシ)ヌクレオシド成分がホスホジエステル結合によって、連続的に連結され、枝分かれのない、ポリヌクレオチド(ヌクレオチドの重合体。核酸と区別して、20程度の短いものを指すことがある)鎖を形成させるような(デオキシ)ヌクレオシド配列である。
二次構造
 核酸の二次構造とは、一本鎖の主にホモポリヌクレオチド(塩基成分が同一のヌクレオチド重合体)の場合には、塩基間の相互作用によって規定されるヌクレオシド成分の空間的配置をさす。2本の相補鎖の場合には、同一の鎖の隣接塩基間の相互作用と、互いに平行している鎖の対向塩基間の水素結合により安定化された規則的な二重螺旋(DNAには三重、四重螺旋も存在する)を意味する。
三次構造
 核酸の三次構造は、固定化された二重螺旋とそれ以外のタイプの配列で形成される。
四次構造
 核酸の四次構造は、リボソームやヌクレオソームのような核蛋白質と相互作用している高分子の空間的配置を意味する。特に、ポリヌクレオチドとポリペプチドの相互依存による高分子構造を指す(引用終わり)」

リボ核酸 - Wikipedia
「リボ核酸(RNA: Ribonucleic acid)は、リボースを糖成分とする核酸である。リボヌクレオチドが多数重合したもので、一本鎖をなし、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシルの四種の塩基を含む。 一般にDNA(デオキシリボ核酸)を鋳型として合成され、その遺伝情報の伝達やタンパク質の合成を行う。 」

「DNAはデオキシリボース(五炭糖)とリン酸、塩基 から構成される核酸である。塩基はプリン塩基であるアデニン(A)とグアニン(G)、ピリミジン塩基であるシトシン(C)とチミン(T)の4種類がある。2-デオキシリボースの1'位に塩基が結合したものをデオキシヌクレオシド、このヌクレオシドのデオキシリボースの5'位にリン酸が結合したものをデオキシヌクレオチドと呼ぶ。 」

2.核酸の構成要素
(1)リボース
「リボース(ribose)は、単糖の1種で、炭素鎖の長さが5つのアルドースである。 」  
 単糖とは、それ以上加水分解されない糖類で、一番基本となる記号単位です。この単糖が多数連結するとデンプンなどになります。
 糖質とは、炭水化物のことです。つまり炭素(C)と水(H₂O)だけからなる物質です。この単純な元素の組み合わせによる糖の種類は多様であり、生命の重要な「基本記号体系」(動物のエネルギー産生の源)になっています。
 
 「アルドース (aldose) は糖質をその構造により分類する際に用いられる化学の用語で、鎖の末端にホルミル基を1つ持ち、CnH2nOn (n ≥ 3) の化学式を持つ単糖類を指す。 」
 ホルミル基とは終端にアルデヒド基が付くものです。
 
「糖鎖(とうさ、英語: glycan)とは、各種の糖がグリコシド結合によってつながりあった一群の化合物を指す。結合した糖の数は2つから数万まで様々であり、10個程度までのものをオリゴ糖とも呼ぶ。 」

(2)リン酸
 リン酸はエネルギーの蓄積・放出、核酸の結合などに用いられていて、生命にとって重要な物質です。
「リン酸(リンさん、燐酸、英: phosphoric acid)は、リンのオキソ酸の一種
で、化学式 H3PO4 の無機酸である。 
 …ATPのリン酸基の加水分解や転位反応は、正味の自由エネルギーの減少を伴うエネルギー放出反応であり、あたかもATPのリン酸基同士の結合の切断が生体内の化学反応の実質的な推進力であるかのように見えるため、この意味において、この結合は「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれており、これはリン原子が3つ繋がった状態である。」 
「オキソ酸(オキソさん、Oxoacid)とは、何らかの原子にヒドロキシ基 (-OH) とオキソ基 (=O) が結合しており、かつ、そのヒドロキシ基がプロトンを供与できる化合物を指す。」
 リン酸はヌクレオシド(糖と核酸塩基の1単位)の間を結合(ホスホジエステル結合)して重合させます。



 生態学ではこのリン化合物の量が生物の現存量を制御しているとのことです。
「生態学において、リンの化合物 (phosphate) は環境における重要な制御因子とみなされている。生物のエネルギー代謝に不可欠なATPやDNAは、リン酸を分子の一部に含むヌクレオチドからできており、生物の現存量(バイオマス)は環境中から得られるリン酸の量から大きく制約を受けている。 」
 そしてリン肥料の原料のリン鉱石は今枯渇しつつあるとのことです。
「人類が紀元前3000年の頃から始めた農業の歴史上、不足し続けているのがリン酸である。その原料のリン鉱石の枯渇がいま心配されている。リン鉱石の80%が肥料用に使用されており、イギリス硫黄誌 (British Sulphur Publishing) によると、最悪のシナリオとして、過去の消費から年3%の伸びを見込むと、消費量は2060年代には現在の約5倍になり、経済的に採掘可能なリン鉱石は枯渇してしまう。 」
 植物は菌類と共生してリンを獲得しているようです。

(3)核酸塩基
 窒素塩基としても呼ばれ、 次の5つのものがある。
 ●アデニン(A)
「アデニン (adenine) は核酸を構成する5種類の主な塩基のうちのひとつで、生体内に広く分布する有機化合物である。
 プリン骨格は糖ともアミノ酸とも異なる独特の形状をしているにもかかわらず、アデニン、グアニンの他、コーヒーや茶に含まれるカフェイン、ココアに含まれるテオブロミン、緑茶に含まれるテオフィリンなどを構成し、また最近ではプリン体をカットしたビールなども販売されるほどありふれた有機物である。アデニンはシアン化水素とアンモニアを混合して加熱するだけで合成されるため、原始の地球でもありふれた有機物であったと考えられる。」
 糖のリボースと結合したものをアデノシン 、2-デオキシリボースと結合したものをデオキシアデノシン といいます。
 ●シトシン(C)
   糖のリボースと結合したものをシチジン、2-デオキシリボースと結合したものをデオキシシチジンといいます。
 ●グアニン(G)
 糖のリボースと結合したものをグアノシン、2-デオキシリボースと結合したものをデオキシシチジンといいます。
 ●チミン(T)
 糖のリボースと結合したものを5‐メチルウリジン 、2-デオキシリボースと結合したものをチミジンといいます。
 ●ウラシル(U)
 糖のリボースと結合したものをウリジン  、2-デオキシリボースと結合したものをデオキシウリジンといいます。

 そしてこの核酸塩基のA、C、G、T、Uを組み合わせる「暗号体系」が我々生命の源(タンパク質を作るアミノ酸の記号)を形作っています。そしてDNAの二重螺旋構造(データ保管庫のようなもの?)では、A-TとG-C が相補的に結合していて安定な構造になっています。

 

「核酸塩基(かくさんえんき、英: nucleobase)はヌクレオシドを形成する窒素含有生体分子で、窒素塩基としても知られ、多くの場合単に塩基(base)と呼ばれる。ヌクレオシドはヌクレオチドの構成要素であり、ヌクレオチドは核酸の基本的な構成単位である。塩基対を形成し、互いに積み重なる(スタッキング)核酸塩基の性質は、リボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA)などの長鎖らせん構造をもたらす。
アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)の5つの核酸塩基が主要な(primary)または標準的な(canonical)核酸塩基と呼ばれる。これらは遺伝暗号の基礎的な単位として機能し、DNAではA、G、C、Tがみられ、RNAではA、G、C、Uがみられる。チミンとウラシルは、Uに存在しないメチル基がTに存在する点を除いて同一である。
 アデニンとグアニンはプリンに由来する縮合環構造を持ち、そのためプリン塩基と呼ばれる。プリン塩基は、アデニンの場合C6位に、グアニンの場合C2位に1つのアミノ基を持つことで特徴づけられる。同様に、シトシン、ウラシル、チミンはピリミジンに由来する単環構造を持ち、そのためピリミジン塩基と呼ばれる。典型的なDNA二重らせんの塩基対はプリンとトピリミジンによって構成され、AはTと対合し、CはGと対合する。これらのプリン-ピリミジン対は相補的な塩基対と呼ばれ、二重らせんの2つの鎖をつないでおり、はしごの段によく例えられる。プリンとピリミジンの対合はDNAらせんに寸法上の制約を課し、それらの組み合わせによって一定の幅を持つDNAらせんの幾何学的形状が可能となる。A-TとG-Cの対合は、相補的な塩基のアミンとカルボニル基の間で2つまたは3つの水素結合を形成するように機能する。」 

プリン塩基 - Wikipedia
「プリン塩基(プリンえんき、英: purine base)は、プリン骨格を持った核酸塩基である。つまり、プリン環を基本骨格とする生体物質で核酸あるいはアルカロイドの塩基性物質である。プリン体(プリンたい)とも総称される。
核酸塩基であるアデニン(図1.2)、グアニン(図1.3)などヌクレオシド/ヌクレオチド以外にもNADやFADの成分として、あるいはプリンアルカロイドのカフェイン(図1.7)、テオブロミン(図1.6)などが知られている。」

 このプリン体は、痛風の原因(代謝物の乳酸が溜まる)とのことで巷では話題になっています。
「プリン (purine) は、分子式 C5H4N4、分子量 120.1 の複素環式芳香族化合物の一種である。中性の水には溶けにくく、酸性あるいはアルカリ性にすると良くとける。アルコール等の極性溶媒によく溶けるが無極性溶媒には溶けにくい。4つのアミノ酸と二酸化炭素によって生合成されるが、工業的に生産することもできる。 
…アデニンやグアニンなどの、核酸やヌクレオチドの骨格を構成する核酸塩基として広く生物中に存在する。生化学や栄養学ではアデニンやグアニンを中心とした、プリンを部分構造として持つ生合成・代謝産物を総称してプリン体と呼ぶ。
 プリン体は代謝されると尿酸となる。尿酸は強力な抗酸化物質でありヒト体内において酸素が関与する有害な反応を減弱もしくは除去する働きがある一方で、尿酸が体内で析出して結晶ができると痛風発作を誘発する。痛風患者がプリン体を過剰摂取すると病状が悪化すると言われる」

「具体的には、ピリミジン塩基はチミン,シトシン,ウラシル,5‐メチルシトシン,5‐(ヒドロキシメチル)シトシンのいずれかを指し、DNA 中ではシトシンとチミンが,RNA 中ではシトシンとウラシルが含まれる。 」
「ピリミジン (pyrimidine) は、有機化合物の一種で、ベンゼンの1,3位の炭素が窒素で置換されたものである。分子式 C4H4N2、分子量 80.09 の複素環式芳香族化合物のアミンの一種で、特有の刺激臭を持つ。窒素原子の位置が異なる構造異性体にピラジンとピリダジンがある。 」

3.DNAセントラルドクマ、RNAワールド、タンパク質ワールド
(1)DNAセントラルドクマ
 一昔前(今でも?)までは、DNAが遺伝暗号(生命の源)の主体であり、RNAはそのたんなる補助的な役割(タンパク質生産のためのmRNAtRNAなど)を行っているに過ぎないとみられていました。
(2)RNAワールド
 しかし、そもそも進化的にはまずRNAが先に出来て、後でそれを保管するためのデータ庫としてDNAが出来たのではないかと考えられるようになりました。そうすると、生命の遺伝暗号(生命の源)の主役はRNAなのであり、DNAは単なる補助的な役割(データ保管庫)でしかなとみなされるようなりました。
「RNA ワールドとは原始地球上に存在したと仮定される、RNA からなる自己複製系のこと。また、これがかつて存在し、現生生物へと進化したという仮説を RNA ワールド仮説と呼ぶ。RNAワールドという学名は1986年、ウォルター・ギルバートによって提唱された。 
…現在の生物は、酵素を触媒としてDNAやRNAといった核酸を合成し、核酸の配列を基に酵素を合成している。このどちらが起源なのかは長らくの疑問であった。
 しかし、酵素ではなくRNAでありながら自己スプライシング機能を持つリボザイムやRNAを基にDNAを合成する逆転写酵素が発見されたことで、RNAが酵素(ポリペプチド)と遺伝情報(DNA)両方の起源となりうることが証明され、RNAワールド仮説が提唱されるようになった」

(3)GADVタンパク質ワールド 
 さらにRNAより先にそもそもタンパク質のアミノ酸のコードが遺伝の役割ををしていたするもののようです。この仮説は日本人の池原健二先生が提唱されています。
「生命は遺伝子が形成されるよりも前に、GNC(グアニン、任意、シトシンからなるコドン)がコードする4つのアミノ酸(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、バリン。これらをアミノ酸の一文字記号で表したものが、それぞれG、A、D、Vである)からなるGADVタンパク質の擬似複製によって形成されたGADVタンパク質ワールドから生まれたとの仮説である。 
…GADV仮説は池原健二(当時奈良女子大学教授)によって提唱された。同じく池原健二が提唱するGNC-SNS原初遺伝暗号仮説(GNC仮説)を一つの根拠としている。
 GNC仮説では、現在の普遍遺伝暗号(標準遺伝暗号ともいう)は4つのGGC, GCC, GAC, GUC遺伝暗号がそれぞれグリシン、アラニン、アスパラギン酸、バリンをコードするGNC原初遺伝暗号を起源とし、16種の遺伝暗号が10種のアミノ酸をコードするSNS原始遺伝暗号(Sはグアニン(G)またはシトシン(C)を意味する)を経て形成されたと考える」
 
 現在、タンパク質の構造と機能の研究が加速度的に進展しているようで、タンパク質とRANやタンパク質と糖鎖の複合体の研究が注目を集めているようです。

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