数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

強欲の帝国、腐敗撲滅戦争が必要なのは米国か?

2015-04-10 20:03:31 | 経済金融
『強欲の帝国』チャールズ・ファーガソン著 早川書房を読了しました。
 
 サブプライムローン問題は詐欺的なものとは思っていましたが、ここまで、米国の金融機関、政府、監督官庁、大学の教授など含めて腐敗しているとは思いもよりませんでした。中国も自壊寸前で腐敗撲滅戦争を始めたようですが、米国も開始しないと自壊するかもしれません。
 
※サブプライムローン問題については、以前『ユーリ・バンダジェフスキーが見たもの』の中で、私の理解していた範囲で簡単に説明しました。

「リスクを計算するには、ある「リスクモデル」が必要になります。しかし、その前提となるデータ(危険率など)をどのように選択するかについては、やや人為的な影響を受けると思います(時として政治経済的な思惑も影響すると思います)。
 「米国のサブプライムローン問題」の時には、統計的に想定されたサブプライムローン(信用率の低い人向けの貸付、金利は高い)の危険率が実態より過小評価されていました(実際の危険率ははるかに高かった・デタラメだった)。
 その原因は、まったく支払能力がないような人達に詐欺的な方法により借入れさせて、債権化し、大量に高利回り商品を作ったことによるものです。
 格付会社もそのデタラメを見抜けませんでした(というか見逃していた??)。
 支払い能力のない人たちが次々にデフォルトしたため、サブプライム商品の価値は急落し、それを取り込んだポートフォリオ商品の価格も急落しました。世界中の金融機関・投資会社・運用会社が「サブプライム関連商品」を資産として持っていたため、資産価値の急落→債務超過・デフォルト、信用不安による貸出縮小、ついには金融システムの崩壊を引き起こし、「経済大恐慌」寸前までに至りました。
 つまりポートフォリオ理論による計算をする前提の、基のデータ(サブプライム債権)の危険率が間違っていた(詐欺的・デタラメだった)のです。
 間違った(詐欺的な)危険率を基に数学的なポートフォリオ計算をしても、そのポートフォリオ計算(数式)そのものは正しいですが、最終的な想定リスク(危険率)は間違ったものになります。(引用終わり)」
 
 サブプライムローン問題は、一部の倫理観のない会社などが詐欺的な商品開発・販売に関わり、それが不動産価格の長期に亘る上昇、金融工学への過信(基データの詐欺性がポートフォリオ組成により隠蔽された)などとも相まって、バブルの宴のようになり、(米国内外の)多くの金融機関や機関投資家などが巻き込まれてしまったものだと思っていました。

 しかし、特に投資銀行と言われる金融機関は、サブプライムローン(ポートフォリオ商品、それをリスクヘッジする様々な商品など含め)が「クズ商品・クソ商品」であることを十分理解していながら、顧客に「適格な投資商品」であると(嘘をついて)勧め、大量に販売していたようです。
 民間会社である格付け会社は、その手数料を発行会社からもらっているため、どんなにクズ・クソ商品でも、AAAなどの適格な各付けをしていたようです(これは詐欺的行為の幇助、いや詐欺的行為そのものだと思います)。
 また投資銀行は、クズ・クソ商品を大量販売しただけでなく、バブル崩壊に近づくと、その「顧客に販売した商品」の空売りも大量に行い、またその「販売した顧客の会社自身」の空売りも行っていたようです(クズ・クソ商品まみれで倒産確実なため)。もはや「利益相反」の極みとも言えるようなことを平然とやっていたようです。
 
 そして、各金融機関では、クズ・クソ商品を大量に販売し合いながら未曾有の利益を上げていたようですが、その利益の多くを会社幹部やトレーダーらの高額なインセンティブとして「現金配当」していたようです。
 要するに、会社がクズ・クソ商品まみれになって倒産してしまうおうが、その前に多額の(数億から数百億円の現金)ボーナスをもらってしまうので、まったく関心などないようです。リーマンショックにより数十兆円の血税が大手金融機関などに注ぎ込まれたようですが、その会社幹部の高額の退職金やボーナスなどは、まったく制約がなく、満額支払われたようです。
 
 これらは、詐欺的な取引などではなく、「ポンジ・スキーム」のような「詐欺商法そのもの」だと著者(ファーガソン氏)は言っています。要するに、サブプライムローン問題は、犯罪者が架空の財産(サブプライムローン債権)をあたかも価値があるように見せかけて、次から次へと世界中から資金を巻き上げていった「組織犯罪」であり、商取引的な行為などは欠片もないということのようです。

 しかし、上記のような「犯罪的な取引」⇒「組織犯罪」は、まったく取り締まられなかったようです。実刑が科され、その損害をすべてを賠償(又は懲罰的な賠償)させるようなことはまったくなかったようです。もっとも悪質な投資銀行も、少々の和解金を払って、始末書のようなものを出して、一件落着となってしまったようです。
 レーガン、クリントン、ブッシュ、オバマ政権では、「回転ドア人事」という政府と特に金融機関との人事交流により、「取り締まられる業界の幹部」と「取り締まる側の官庁の幹部」が仲間内の人事になり、様々な規制が骨抜きになってしまったようです。そして政権の幹部として規制緩和⇒取締り規制の骨抜き(犯罪的行為がし易い環境作り)をすると、退任後にその恩恵を受ける業界に入った場合、ご褒美として多額な報酬を得ることができるようです。
 共和党も民主党も、この金融機関との癒着関係があり、政策は右と左で違いますが、政治家のインセンティブに対する獰猛さは同じようです。日本での55年体制と同じく、適当にガス抜きしながら、しっかり両党とも利権を拡大してきたということでしょうか。

 また有名大学の経済関係の教授は、金融機関から多額の報酬を得て、この詐欺商法を擁護する論文なり講演を行っていたようです。「規制緩和」「金融工学」は自由競争に必要だと思いますが、取締り規制・監督規制を骨抜きにしてしまえば、強欲な犯罪行為があちこちで野放しになってしまうのは明白なことだと思われます。

 また証券アナリストや様々な調査会社も、この詐欺商法を幇助していたようです(詐欺商法が円滑に進むための宣伝行為)。日本のアナリストは提灯付け(証券会社の推奨銘柄の宣伝行為)が多いようですが、米国のアナリストも詐欺商法の幇助者だったようです。
 
 そして現在でも、上記の犯罪行為はまったく裁かれていないようです。

 中国は物凄い腐敗により、市民革命か民主改革(どちらも共産党が潰れる、断罪される、さらし首にされる)が必須とみられ、起死回生の習近平氏の大改革(腐敗撲滅戦争)が行われています。
 
 米国もこのままでは、市民革命か民主改革(どちらも既存の共和・民主党は潰れる、政党・金融機関幹部は断罪される、さらし首になるかもしれない)が必須なのではないでしょうか。ロシアの情報誌などでは、アメリカの市民革命云々の話が時々出ることがありますが、単なる謀略的な情報ではなく、本当に爆発寸前なのかもしれません。そういう意味では、「腐敗撲滅戦争」は米国にも必須なようです。

 中国のアジアインフラ投資銀行構想にヨーロッパの国々(米国の同盟国なども)や発展途上国などの多くのうに国々が参加を表明しているようです。上記のような米国の金融詐欺行為(犯罪行為)がまったく裁かれないで、犯罪首謀者たちが涼しい顔をして未だに主要な地位にいるのを見ていたら、そのような素性の人たちと一緒にやるのは御免だ、中国の下心も見え見えだが、腐敗撲滅戦争を遂行している習近平に賭けてみても良いのではないか、少なくとも保険はかけても良いと思っている国は多いと思います。

 
 また、上記の同盟国の反乱は、欧州の覇権回復を目指した戦略とも見れるようです。
パワーシフト~欧州が米国を捨て、中国についた日』北野幸伯 [国際関係アナリスト]ダイヤモンドオンライン

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