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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

ガラスのたまご・16

2015-02-17 07:13:53 | 瑠璃の小部屋
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★手品師さんの今日

飛行機から降り、師匠とスタッフに挨拶をすると、手品師さんはタクシーに乗って、自分のマンションに向かった。ふう。深いため息が口から出る。

世界は、広かった。自分を驚かせることのできるマジシャンが、あれほどにもいるとは思わなかった。手品師さんの心には、自分が演じた舞台よりも、ほかのマジシャンが演じた舞台の方が強く印象に残っている。

彼は真剣な目で、ほかのマジシャンの手つきや目線や、その裏を見ていた。簡単にタネを見破れる技は多かった。けれど、自分にはどうしてもわからないことをする人もいる。

「おもしろいな。世界は」手品師さんはつぶやく。そして彼の胸の中で、もう一つの夢が動き始めていた。

あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る

ふと、詩人さんの詩の一節が頭に浮かんだ。

夜のとばりに描いた夢を
小さく語るのは 星が呟いた虹の光だ
君はそれに情熱する
世界はぼくのものだと
叫ぶのは誰だと
空が君を目指して 叫ぶ

あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る

知らなかったろう!君は今まで
遠く夢に見ていた銀河の花が
君の目の中に炎のように咲いていたことを

あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る

手品師さんは懐から携帯を出した。
指は自然に番号を押す。

「はい、利根です」
聞き覚えのある声が聞こえた。

(つづく)




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