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★手品師さんの今日
飛行機から降り、師匠とスタッフに挨拶をすると、手品師さんはタクシーに乗って、自分のマンションに向かった。ふう。深いため息が口から出る。
世界は、広かった。自分を驚かせることのできるマジシャンが、あれほどにもいるとは思わなかった。手品師さんの心には、自分が演じた舞台よりも、ほかのマジシャンが演じた舞台の方が強く印象に残っている。
彼は真剣な目で、ほかのマジシャンの手つきや目線や、その裏を見ていた。簡単にタネを見破れる技は多かった。けれど、自分にはどうしてもわからないことをする人もいる。
「おもしろいな。世界は」手品師さんはつぶやく。そして彼の胸の中で、もう一つの夢が動き始めていた。
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
ふと、詩人さんの詩の一節が頭に浮かんだ。
夜のとばりに描いた夢を
小さく語るのは 星が呟いた虹の光だ
君はそれに情熱する
世界はぼくのものだと
叫ぶのは誰だと
空が君を目指して 叫ぶ
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
知らなかったろう!君は今まで
遠く夢に見ていた銀河の花が
君の目の中に炎のように咲いていたことを
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
手品師さんは懐から携帯を出した。
指は自然に番号を押す。
「はい、利根です」
聞き覚えのある声が聞こえた。
(つづく)
★手品師さんの今日
飛行機から降り、師匠とスタッフに挨拶をすると、手品師さんはタクシーに乗って、自分のマンションに向かった。ふう。深いため息が口から出る。
世界は、広かった。自分を驚かせることのできるマジシャンが、あれほどにもいるとは思わなかった。手品師さんの心には、自分が演じた舞台よりも、ほかのマジシャンが演じた舞台の方が強く印象に残っている。
彼は真剣な目で、ほかのマジシャンの手つきや目線や、その裏を見ていた。簡単にタネを見破れる技は多かった。けれど、自分にはどうしてもわからないことをする人もいる。
「おもしろいな。世界は」手品師さんはつぶやく。そして彼の胸の中で、もう一つの夢が動き始めていた。
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
ふと、詩人さんの詩の一節が頭に浮かんだ。
夜のとばりに描いた夢を
小さく語るのは 星が呟いた虹の光だ
君はそれに情熱する
世界はぼくのものだと
叫ぶのは誰だと
空が君を目指して 叫ぶ
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
知らなかったろう!君は今まで
遠く夢に見ていた銀河の花が
君の目の中に炎のように咲いていたことを
あかつきの悲しみは 空を見る
あかつきの喜びは 星を見る
手品師さんは懐から携帯を出した。
指は自然に番号を押す。
「はい、利根です」
聞き覚えのある声が聞こえた。
(つづく)