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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

妻女山陣場平の貝母が満開。見頃です。キブシ、カタクリ、アオイスミレ。人知れず積石塚古墳(妻女山里山通信)

2019-04-18 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今週は、陣場平の貝母群生地の手入れをしています。ノイバラやヤマフジの除去。次に大きな山桜の落枝の除去。群生地にある灌木の剪定と忙しい毎日でした。毎日、貝母を目当てにたくさんの方が訪れてくれました。亡き父に集落の皆に許可を得てもらって除伐作業をし、仲間が手伝ってくれてヨシやノイバラを地下茎まで除去した話をすると、皆さん驚かれます。それはもう大変でした。そこに蒔いた種や球根からも発芽しています。たった四畳半の貝母を発見してからここまでの群生地にするのに10年かかりました。夏には帰化植物の除去もしないといけません。里山は毎年保全をしないとすぐに荒れてしまいます。

 茎の先端にまだつぼみが残っていますが、満開といっていいでしょう。葉先も丸まってきました。4月の茶花で慎ましいその姿が人気です。モンキチョウに春型のキアゲハ、越冬したルリタテハやヒオドシチョウも舞っています。

 2009年のゴールデンウィークに藪の中で見つけたときは四畳半ほどでした。そのままなら数年で絶滅していたかもしれません。仲間の協力で、ここまで増えました。といってもどこまでも増えていくわけではなく、昔畑だったところだけです。周囲とは土質が異なるのです。奈良時代に入ってきたともいわれる貝母ですが、万葉集に一首読まれているともいわれています。二つ前の記事を御覧ください。昔は全国に薬草畑があったようですが、これほどの群生地はここだけかもしれません。

 カタクリがそろそろ咲いているだろうと林道を1キロほど歩いて群生地へ。途中で咲いていたキブシ(木五倍子)。キブシの髄はスポンジ状で、昔は灯芯などにも使われたようです。髄を取り出すと中空になるので、酒樽の呑み口にも使われたとか。また、江戸時代には既婚の女性はお歯黒にする習慣がありましたが、キブシの実も利用されました。釘や鉄粉を食酢につけて酸化した液に、ヌルデの実、五倍子(ごばいし)やキブシの実の粉末をつけて、歯につけると黒く染まるそうです。

 カタクリが咲いていました。猛毒のヤマトリカブトの中に咲くカタクリも。
「もののふの 八十(やそ)乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」大伴家持(万葉集)
 当維持29歳の大伴家持が、赴任先の越中国府の伏木(現在の富山県高岡市伏木に5年間赴任)で、寺井の井戸(井泉の跡と歌碑がある)の周りにたくさん咲くカタクリを宮中の乙女になぞらえ、都を懐かしんで詠んだ歌だといいます。そう思うと写真のカタクリが、美しい乙女に見えてくるから不思議です。
 もののふとは、宮廷に仕える文武の官のことで、物部と書きます。八十(たくさんという意味)にかかる枕詞ですが、数が多い氏と発音の同じ宇治川の宇治から、宇治川を導く枕詞となったということの様です。昔もやたらと役人が多かったのでしょうか。もののふとは、後に武士そのものを指す言葉に変化します。右のカットは、猛毒のヤマトリカブトの中に咲くカタクリです。山菜のニリンソウと似ているので要注意です。毒草は閾値(しきいち)以下であれば薬草になります。それが閾値のない放射能との決定的な違いです。

 十人平(じゅうにんびら)と呼ばれる場所にある積石塚古墳。馬産を伝えたツングース系の高句麗の人々の墓だそうです。大室古墳群と同様に故郷の方角、北を向いています。ここに至る道がないので、地元でも知る人はわずかです。

 林道脇に小さな小さなスミレ。本当に小さいです。アオイスミレだと思います。葉が徳川の家紋である葵(あおい)に似ていることによります。

(左)コナラの巨樹にからみつくヤマフジ(山藤)。根本は直径が50センチぐらいあります。山藤は一日8センチも成長します。さて、どうやってあんな高いところまでたどり着いたのでしょうか。考えてみてください。(右)貝母の群生地に戻って山蕗を採取。こんな大きな蕗は食べられないと思うでしょうが、これが絶品です。花や葉を取り除いて茎を食べます。塩茹でしてお浸しに。柔らかく苦味と旨味が絶妙です。採ってすぐなら茹でこぼす必要もありません。

4月21日(日)に、松代夢空間のハイキング「妻女山 花と歴史のハイキング」を行います。満開の貝母の群生地(上杉謙信陣城跡)や、斎場山(旧妻女山・上杉謙信本陣跡)などを案内します。私がインタープリターをし、自然や歴史について時に面白おかしくお話しながらハイキングをします。参加費2000円で、下山後は「はなや」さんでのあんず御膳もつきます。非常にリーズナブルだと思います。参加希望の方は、松代夢空間にお問い合わせください。拙書の販売も行います。 ℡026-278-1277
松城夢空間ホームページ
GWの前半は、山菜採りと松代夢空間のハイキングと春爛漫の髻山へ(妻女山里山通信)

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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