モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

色づき始めた鏡台山へ。深まる秋に寂寥感を想うまもなくキノコが大収穫(妻女山里山通信)

2015-10-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 旧埴科郡の中心で、観月の山として有名な姨捨山から見る鏡台山の月は、安藤(歌川)広重が江戸時代後期に描いた『信濃 更科田毎月 鏡台山』にも描かれています。この場合の姨捨山は冠着山のことではなく、姥岩と棚田のある長楽寺付近から描かれたものです。近くにはJR篠ノ井線の姨捨駅と長野自動車道の姨捨SAがあります。「雪降りしきる冬の姨捨駅と長楽寺」。鏡台山と冠着山(姨捨山)も拙書ではコースをたくさん紹介しています。冠着山(1252.2m)の方が、飯山方面からの北風が直接吹き付けるため、鏡台山(1269.1m)よりも冬の訪れが若干早めです。

 今回は林道芝平樽滝線の三滝沢上部から出発(左)標高850m。更埴ジャンクションの辺りが見えています。西山はまだ雲の中。色づき始めた林道から登山道へ(中)。森の中からキノコ狩りの鈴の音が聞こえてきましたが、雨が降っていないのでこの標高ではほとんど出ていないでしょう。登山道脇にも毒キノコさえありません。再び林道に出て、林道終点へ。この辺りで標高1120mぐらい(右)。この辺だと朝晩霧に覆われるので、ポツポツキノコも見られます。ここから道を外れ、正面の暗い植林帯に突入します。熊の生息地のまっただ中なので警戒しながら。

 クリタケとトキイロラッパタケを発見(左)。トキイロラッパタケは、バターの香りで、乾燥するとチーズの香りといわれますが、今年その美味しさに初めて魅了されました。このクリタケは間違いありませんが、今回猛毒のニガクリタケに見えるクリタケがたくさんありました。その都度噛んで確認。嫌な苦味のあるニガクリタケも中にはありました。うっかり間違えたでは済まない死亡例もある毒キノコです。
 赤松の倒木に生えた多孔菌類の一種(中)。針葉樹なのでツガサルノコシカケの幼菌でしょうか。ゼリー状の水滴が美しく、まるで宝石の様でした。笹ヤブに見つけたキノコ(右)。おそらく食菌のカヤタケだと思うのですが、ドクササコだったら大変です。手足の先や性器が赤く腫れ、激痛が1ヶ月以上続くという恐ろしいキノコ。薬はありません。結局採りませんでした。今回はキノコ狩りはついでで、珍しいキノコの撮影に来たのですが、なかなか出合えません。

 標識のある正規の登山道の一本上の作業道を進みます(左)。途中の檜林で、チャナメツムタケとクリタケをたくさん採取しました。ヤナギ科のヤマナラシの黄葉(中)。ヤマナラシはその樹皮の模様が特徴的で、すぐに見分けがつきます(右)。

 笹薮を抜け、正規の登山道に出て北峰へ登ります(左)。ハウチワカエデや大きなホウノキの葉も染まっています。北峰にあるシラカバ(中)。落葉松の黄葉も始まりチリチリと落葉しています。大正時代に旧埴科郡下の小学校高学年が集まってキャンプと運動会をした記述の看板(右)。

 北峰から鞍部へ下り、笹の道を南峰へ向かいます(左)。10分足らずで鏡台山山頂(中)。ズミの熟した真っ赤な実が鈴生り(右)。山頂には一足早くトレランで有明山から来た男性が。これから鞍骨山経由で斎場山、薬師山へ走るというので、ちょうど持っていた拙書の地図を見せました。安曇野在住で、このコースは初めてらしいので、スマホで撮影させてくださいと。これで迷わないでしょう。本を買ってくださいねと言って、お仲間にもとパンフをたくさん渡しました。この本は、トレランの人やサイクリストなども使える様に、ループコースやロングコース、林道の紹介もしています。五一山脈と鏡台山と斎場山の地図をつなげると、約20キロのトレランコースが設定できます。健脚には、米子大瀑布からの四阿山カルデラ周回コースをお勧めします。

 彼が走り去った後、昼食をしてから撮影。以前、ここで昼食中に熊に遭遇したので、鈴が鳴らない昼食中は時々ホイッスルを鳴らします。左に冠着山(姨捨山)。右に聖山。山頂はもう少し右。冠着山の右奥には、京ヶ倉と大城のシルエットが見えます。そしてその奥には北アルプスのスカイライン。槍ヶ岳の尖った穂先がはっきりと見えました。

 上のカットの右手。アンテナのあるのが聖山。その右奥に続く峰には、気象庁の丸いアンテナのあるタララ山も。手前に霞んでいるのは、姨捨辺り。
鏡台山からの北アルプス山座同定は、こちらをご覧ください。鏡台山から富士山が見えると看板があるのですが、私も2度かすかに見ただけです。その貴重なカット。Mt.FUJIの矢印の下を見てください。微かに富士山のシルエットが!

 帰路で撮影したカメバヒキオコシの残花(左)。赤紫は花ではなく、青い花が散った後の萼片です。モミジガサの残花(中)。この他には、猛毒のヤマトリカブトも。黄葉が逆光に映えるサワグルミ。

 車に戻り、林道芝平樽滝線を沢山方面へ。まず縄文の名水を汲み、沢山峠方面へ。女陰の滝に寄りました(左)。「この滝の名称は女性の神秘をただよわせていることから生まれた」とあり、滝に打たれ身を清めると恋人が現れ結ばれる「ロマンの滝」だそうです。ちょっと滝行するには、肌寒い季節です。夏にしましょう。沢山峠手前から、さっきまでいた鏡台山山頂(中)。沢山峠から和平高原へ。黒柏木(くろかしゃぎ)登山口を目指しますが、広い舗装路が突然この様なススキの畑道に(右)。信州ではよくあることです。

 そこから振り返って拙書にも載せている蓼科山(左)。左の八ヶ岳連峰の左裾に見えているのは富士山でしょうか。蓼科山の手前は、これも拙書で取り上げている上田市の虚空蔵山。里山ですが、大変厳しい山です。しかし、歴史の詰まった面白い山でもあります。

 沢山峠へ戻り、あんずの里森の観龍寺へ。里の紅葉は、まだです。杏の木もまだ青々としています。足元にはマルバルコウソウの群生。拙書では、同じ位置からのあんずの花が満開のカットを載せています。見比べると面白いです。観龍寺は、山陰にあったため信玄の兵火に焼かれずに残ったという古刹です。

 マルバルコウソウは、熱帯アメリカ原産で、江戸時代、観賞用として持ち込まれ野生化したヒルガオ科のツル性植物なんですが、意外なところに群生地があります(左)。拙書では、松代の奇妙山で紹介しています。今回の収穫(右)。チャナメツムタケ、クリタケなど、大袋いっぱい採れました。どちらも放射性物質に汚染されやすいので、除染を念入りにします。濃い目の塩湯に浸けて一晩。その後茹でこぼして洗い、小分けして冷凍します。もちろん高汚染地のものは食べるべきではありません。県のホームページに野生キノコの汚染状況が出ているので確認してください。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。その山の名前の由来や歴史をまず書いているので、歴史マニアにもお勧めします。
 本の概要は、こちらの記事を御覧ください
お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。

にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 佐久間象山の縁巡りと松代城... | トップ | 錦秋の米子大瀑布へ。瀑布の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アウトドア・ネイチャーフォト」カテゴリの最新記事