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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生。特定外来生物のアカボシゴマダラ。クズの花にウラギンシジミの幼虫。ザトウムシ(妻女山里山通信)

2023-09-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 久しぶりに妻女山山系へ。7月30日以来です。この猛暑で樹液バーにはなにもいませんでした。かわりにアブとクロメマトイが大発生。では昆虫たちはどこへ行ったかというと、谷筋の渓流沿いや貯水池や沼などの周辺です。ツバメも里にはいませんでした。高原に行くとたくさん見られます。昆虫の中にも標高の高い山へ移動したものがいるはずです。最高気温はまだ30度を少し超えますが、最低気温は20度を下回る日も出てきました。

 ある開けた場所でヤマトシジミ(大和小灰蝶)が大発生していました。ノボロギク(野襤褸菊)で吸蜜しています。ノボロギクは、明治初期に渡来した欧州原産の帰化植物で、野に咲くサワギクの意味です。毒草です。ヤマトシジミの複眼には瞳の様なものが見えますが、これは偽瞳孔です。

 ヤマトシジミのメス。オスは淡い青紫色をしています。

 カントウヨメナ(関東嫁菜)で花粉を食べるコアオハナムグリ。似ているノコンギクやユウガギクはまだ咲きだしていません。野菊は他にもヨメナ、シラヤマギク、ノジギク、ゴマナなどあり同定はなかなか困難です。

 コムラサキ(小紫)の緑の実が紫に染まり始めました。ムラサキシキブ(紫式部)より実は小さいのですが、数がたくさんなります。我が家の庭にもあるのですが鳥は食べに来ません。有毒ではないのですが、食べると無味に近く美味しくありません。でも庭にあるということは、何かの鳥が山から運んできたということでしょうね。誰でしょう。

 ツユクサ(露草、鴨跖草、鴨跖)。ツユクサ科ツユクサ属の一年草。朝咲いて午後にはしぼんでしまう半日花です。おひたしなどで食べられます。水で色落ちするので友禅の下絵に使われます。
 万葉集には9首詠まれています。儚い命や移ろいやすい心の例えに使われた様です。
「月草の うつろひやすく 思へかも 我が思ふ人の 言も告げ来ぬ」大伴坂上大嬢
「月草に  衣色どり 摺らめども うつろふ色と 言ふが苦しさ」詠人知らず


 堂平大塚古墳に寄ってみました。大事な山仲間だったKさんが亡くなってもう10年。彼の友人達も高齢になって手入れが行き届かなくなりました。

 陣場平へ。クロメマトイの大群に襲われました。そこら中にいます。貝母は枯れて倒れた茎だけが少し残っています。ミンミンゼミが鳴いています。あちこちにジョロウグモの巣があります。貝母(編笠百合)の里山での群生地は日本でここだけです。見頃は4月10日から20日頃。カスミザクラ、ヤマザクラ、オオヤマザクラなどが咲いてさながら桃源郷。妻女山駐車場から登って30分ぐらい。県外からもたくさん訪れます。満開の様子は去年以前の4月のアーカイブを御覧ください。

 乱れ咲くミズヒキの花。水引は、信州飯田の伝統工芸で、全国の70%を生産しています。秋を知らせる代表的な花のひとつです。

 ミズヒキ(水引)。タデ科イヌタデ属の多年草。あまりに花が小さくてかなりアップにしないと分かりません。まだつぼみですが、開くと紅白の4つの花びら(萼)に。おめでたい花なんですが、なぜか万葉集や和歌には詠われていません。

 入り口に設置したベンチにザトウムシ。節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目で日本には80種類ぐらいいます。アメリカでは足長伯父さん(Daddy Longlegs)と呼ばれています。「千と千尋の神隠し」の釜爺(かまじい)のモデルであり、また「新世紀エヴァンゲリオン」のマトリエルのモデルとなっています。8本足なんですが3本ほど欠損しています。

 クサギ(臭木)の実。染色に使えるそうです。

 イチモンジチョウ(一文字蝶)。 幼虫はウツギ・スイカズラなどの葉を食べます。

 コミスジ(小三條)。羽ばたきと滑空を繰り返し軽やかに舞うチョウ。幼虫の食草はクズ、フジ、ハギ、ニセアカシアなどのマメ科植物。冬は3齢幼虫で越冬します。人の気配に敏感です。

 サンショウ(山椒)の実が色づいてきました。

 今年はシナノガキ(信濃柿・豆柿)が豊作の様です。鈴生りになっていました。この青い実を水に浸けておくと柿渋ができます。柿渋は平安時代から使われていたそうで、防虫剤や民間薬、染料として使われました。我が家では昔、虫除けのために畳の下に染み込ませた厚い和紙を敷いていました。買うと結構いいお値段がします。

 イヌザンショウ(犬山椒)の実。山椒と違っていい香りがしないので食用にはなりません。

 センニンソウ(仙人草)が満開です。今回の目的の花なんですが樹冠に咲いていてアップで撮影できません。センニンソウは、キンポウゲ科センニンソウ属に分類されるつる性の半低木(木質の多年草)。ただ、茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起す有毒植物なので、要注意です。別名は、ウマノハオトシ(馬の歯落とし)、ウマノハコボレ(馬歯欠)、ウシクワズ(牛食わず)、ハコボレ(歯欠)、ハグサ(歯草)など。毒草ゆえの名前なのでしょう。

 特定外来生物のアカボシゴマダラ。国立環境研究所のサイトによると、「“放蝶ゲリラ”による人為的な放蝶によると考えられている。」とあります。タテハチョウ科は、植物防疫法で検疫有害動物に指定されています。ゴマダラチョウやオオムラサキと競合するので、それらの減少を招く危険性があります。

 ヨウシュヤマゴボウ(マルミノヤマゴボウ)。有毒です。繁殖力がもの凄く、妻女山では林道脇に繁茂し、在来植物を淘汰しています。オオブタクサ、セイタカアワダチソウと共に駆除すべき植物です。

 クズ(葛)の花に何かの幼虫がいました。ウラギンシジミの幼虫の様です。刺激すると触覚から花火の様なフラッシュブラシを出すそうです。触覚のある方がお尻です。

 枯れ木にシュタケ(朱茸)ヒダナシタケ目サルノコシカケ科でしょうか。けっこう肉厚です。もちろん食べられません。

 妻女山展望台裏手の四阿から望む茶臼山。右奥は虫倉山。両山とも拙書で紹介しています。北アルプスは雲の向こうです。

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本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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