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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

登山道や林道の管理と自然保護。蝶の食草を切らないで!(妻女山里山通信)

2011-07-06 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨が明けようかというころになると、里山のあちこちで除草や除伐が行われます。登山道や林道のための除草が行われるのもこの頃です。この間も茶臼山へ行った折にハイキングコースがきれいに除草されていました。それはいいのですが、棚田の方へ下りて行き、蝶や昆虫がたくさん群がり産卵もするイボタノキのある場所へ行って愕然としました。そのイボタノキが跡形もなく全て切られているのです。

 少しハイキングコースの道にはみ出ていたのと、蝶だけでなく蜂も集まるので危ないと思って切ったのでしょうか。恐らくその木が、ある蝶の唯一の食草であることを、整備する人達は知らなかったのでしょう。しかし、知らないとはいえ数百、あるいは千を越えるかもしれない卵が一瞬で消えたのです。
 同様に、妻女山山系も長野市や千曲市が除伐したり林道脇の除草をしますが、草刈り機で一様に切って行ってしまうので、蝶の食草も希少な植物(野生ランなど)もすべて刈り取られてしまうのです。除伐もそうですね。有用材しか残さない。そんな訳でブナは切られてしまったわけですし、今は、例えばオオムラサキの食草であるエノキなども切られてしまいます。除草前に詳しい人に切って欲しくないない木にマーキングをしてもらえればいいのですが・・。

 週末、妻女山の奥で、蝶の卵の定点観測を続けているTさんと久しぶりに邂逅したので、今年の蝶の状況などを聞きながら、天城山の奥までご一緒しました。途中、色々な蝶の食草を見ながら、また教えてもらいながら林道の終点まで歩きました。途中には蝶や昆虫の採取を禁ずという標識が立っています。終点まで行くと、千曲市の林道整備の老人達がいました。Tさんの捕虫網を見ると、なんだか不審者を見るような目つきです(笑)。やはりハイキングコースの整備に来たようです。

 この人達に限らないのですが、どうも昆虫採取が悪い事の様に思っている人達が増えているようで困ります。教育現場でもそういう風に思われていた時期がある様です。自然保護と昆虫採取は二律背反のものではありません。昆虫採取は、適切に行われている限り、それが原因で絶滅することはありません。それは、こちらを読んでもらうと分かると思います。「蝶の保護について
 確かに、蝶の食草ごと卵をごっそり盗掘したり、減らせば自分の持っているものの価値が上がるとばかりにとんでもない破壊行為をする人がいるようですが、これは犯罪者であり、一般の昆虫マニアとは一線を画する極一部の者です。
 一般的な昆虫採取よりも大規模な森林破壊やダムなどの人工物、林道建設などの方が自然に与える影響はずっと大きいのです。鹿の大量移動に奥山まで網の目の様に建設された林道が使われているなどは、そのいい例です。また、一般車が入れるところは売買目的の盗掘や、意図しない帰化植物の持ち込みなどが起こります。

 当然絶滅危惧種など禁止されているものを捕獲することは厳禁ですし、合法的であっても欲張ってはいけません。しかし、産卵された食草を切ってしまうことのほうが、捕獲よりもはるかに大きな減少につながるということを、行政やハイキングクラブなどの人達には知ってもらいたいのです。むしろ、昆虫採取を禁止したり悪者扱いすることで、子供達が自然と遊び学ぶ機会を奪うこととなっていることを知るべきだと思うのです。
 子供の遊びで命を奪われる昆虫が可哀想だというなら、極言すれば人類は何も生物を食べずに生きろということになります。命を奪う事で知る命の重みというのもあるわけです。カブトムシが死んだら「電池を交換して」などという子供が出ることが正常とはとても思えません。「実際の生き物に触れなければ、そこから先の関心や問題意識が生まれるはずはない」(wiki)。リアリズムは必要です。但し強制はいけませんが。

 昔夜店で売られていた赤と青の溶液がついた注射器とメス、ピンセットつきの昆虫採取セットの溶液が、防腐剤でもなんでもなく、ただの色付きの水だと知ったときにはぶっ飛びましたが・・。それにしても、「夏休み」に麦わら帽子に捕虫網の子供は、田舎でも見なくなりましたね。それこそ絶滅危惧種です。昔も熊は出たのですが、それでも子供達は山へ遊びに行っていたものでした。

 というわけで、そのようなことをTさんと話しながら時には熊も出るようなポイントを回ったわけですが、彼曰く蜂はともかく(CCDなどもあるので)、蝶については経年変化の値が非常に乱高下するので、増減の原因は種によっても違うし特定はできないということでした。捕獲して採卵し成長を観察して放つこともしているそうです。妻女山山系は特に珍しい種がいたり大量に発生する地域ではなく、いたって普通の信州の里山ですが、だからこそ大切なのです。Tさんも雑木林が手入れされずに荒れて暗くなり生育環境が悪くなっていると心配していました。

 梅雨明けが近くなって梅雨前線が北上してくると、今までは空梅雨気味だった信州がすこしジメジメしてきます。先日行った湘南は既に海開き。放射能を心配してか、さすがに海に入っている人は少なめですが・・。ライブカメラは見られるのですが、潮の香りと波の音がありません。夏といえばしょっちゅう湘南へ行っていた頃を思い出して、無性にあの人と海が見たくなる今日この頃です。

*掲載の写真は、記事とは直接関係ありません。あちこちの山で撮影したものです。

★ネイチャーフォト・ギャラリー【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】に200点余りの写真を追加しました。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。樹木、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真(3に虫倉山と京ヶ倉から)などを追加。粘菌の写真はこちらにたくさんあります。

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2 コメント

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Tさんからのメール(同意します) (モリモリ)
2011-07-08 19:50:37
よく親の中にも”虫を採ったらかわいそうだから逃がそうね”ということを言っている現場を目撃する事があります。 蝶は綺麗ではかないのでかわいそう、だけどケムシは害虫としか見ていないので、皆殺しにしているのもその人たちでしょう。(知識が無いので無理もないのですが・・・)しかしその様な現実を無視できないことは事実。
行政にしても変な偽善事を教え込む事の無意味さを自覚してもらう必要があります。常に虫と採る人間は完全に悪人とされてきていますが、それは何も出来ない行政のスケープゴートにされているに過ぎないと感じています。実際いくら採集禁止にしても生息地の開発・伐採は継続して行われ、ミヤマシロチョウの様に採集されていなくとも絶滅寸前にまで追いやられている事実を知るべきだと思うのです。
返信する
チョウの種類 (モリモリ)
2011-07-09 08:07:50
掲載の写真(上から順に)
ウラゴマダラシジミ
その卵(イボタノキ)
ウラゴマダラシジミ
クスサンの幼虫
ミドリヒョウモンのメス(Tさんのメールより)
オオムラサキ
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