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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

「猫の子が 手でおとす也 耳の雪」小林一茶(妻女山里山通信)

2010-02-08 | 歴史・地理・雑学
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 新年早々に小林一茶の句が見つかったというニュースを目にしました。「これがまあ 終の棲家か 雪五尺」という句は有名ですが、今年は雪が少ないなと思っていたら、この大雪です。発見された句は、小布施の旧家の屏風に貼られていた手紙に記されていたものです。一茶は、52歳で結婚してから猫を飼い始めたようで、300余りの猫の句を詠んでいます。
 発見された句は…。

「猫の子が 手でおとす也 耳の雪」
 この句は耳に積もった雪を足で払おうとする子猫の仕草を詠んだものということですが、猫は雪の日に外に出たりはしませんからね。ましてや耳に積もるまで出歩くなど考えられません。おそらく雪が止んだ晴れ間に外に出たら、樹上か藁葺き屋根から小さな雪の塊が落ちてきて子猫の頭に乗ったのを、前足であわてて掻き落としたということなのではないでしょうか。

 他にも一茶が猫を詠んだ句を挙げてみます。

「猫の子の かくれんぼする 萩の花 」
 この萩は、低木の山萩ではなく、地を這う多年草の猫萩でしょうか。ネコハギ(猫萩)は、マメ科ハギ属。夏に小さなマメ科特有の形をした花を咲かせます。全体に軟毛があるので猫萩と呼んだのか。それとも、同じような花を咲かせる落葉低木のイヌハギ(犬萩)に対して、それよりも小さな萩ということで猫萩と呼んだのか。いずれにしても、草陰で子猫のじゃれ廻る様が浮かびます。

「嗅で見て よしにする也 猫の恋」
 猫のことを知っているとよく分かる句です。とりあえず雌猫のあそこを嗅いでみて、こいつはよしておこうという句です。好みの匂いというよりも、充分に発情しているかということでしょうか。一茶はよく観ています。止しにするなんでしょうけど、好にするもあるし、良しにするもあるのですが、やはり止しにするでしょうね。

「鼻先に 飯粒つけて 猫の恋」
 説明することもないでしょう。情景が目に浮かびます。

「梅咲や せうじに猫の 影法師」
まだ寒い信州の早春にもやっと梅が咲き、暖かい陽を受けて猫が障子の向こうを歩いてどこかへいく。

「 紅梅に ほしておく也 洗ひ猫」
 泥まみれにでもなった猫を洗って紅梅の木の枝にのせて乾かしている様でしょうか。
「猫洗ふ ざぶざぶ川や 春の雨」
 猫は洗われるのが大嫌いですが、一茶は猫を洗うのが好きだったのでしょう。
「虫干に 猫もほされて 居たりけり」

「陽炎や 猫にもたかる 歩行(あるき)神」
 【歩き神】 人をそぞろ歩きや旅にさそう神。春雨後に急に気温が上がった陽炎の立つ日は、猫も遠出をしたくなるのでしょう。
「陽炎に ぐいぐい猫の 鼾(いびき)かな」
 一茶は、オノマトペ(擬声音語・擬音語・擬態語)の使い方が巧みです。

「恥入って ひらたくなるや どろぼ猫」
「春雨や 猫におどりを おしえる子」
「なの花も 猫の通いじ 吹きとじよ」
「蒲公英(たんぽぽ)の 天窓はりつつ 猫の恋」
「垣の梅 猫の通ひ路 咲とじよ」
「梅さくや ごまめちらばふ 猫の墓」
「火の上を 上手にとぶは うかれ猫」
「うかれ猫 奇妙に焦れて 参りけり」
「うかれきて 鶏追いまくる 男猫哉」
「寝て起きて 大欠伸して 猫の恋」
「鳴猫に 赤ン目をして 手まり哉」
「綿くりや ひよろりと猫の 影法師」
「蝶々を 尻尾でなぶる 子猫哉」
「なりふりも 親そっくりの 子猫哉」
「猫の子や 秤にかかり つつざれる」
「猫の子が 蚤すりつける 榎かな」
「猫の子が ちよいと押へる おち葉かな」
「猫の子の くるくる舞や ちる木のは」
「猫の子の ほどく手つきや 笹粽(ささちまき)」
「猫の子の 十が十色の 毛なみ哉」
「大猫の 尻尾でじゃらす 小てう(蝶)哉」
「大猫も 同坐して寝る 雛哉」
「大猫が 尿かくす也 花の雪」
「塗盆に 猫の寝にけり 夏座敷」
「猫の目や 氷の下に 狂ふ魚」
「猫の飯 相伴するや 雀の子」
「恋猫の ぬからぬ顔で もどりけり」
「恋猫や 答へる声は 川むかふ」
「恋猫が 犬の鼻先 通りけり」
「恋猫や 口なめづりを して逃る」
「恋猫や きき耳立て また眠る」
「さし足や ぬき足や猫も 忍ぶ恋」
「夜すがらや 猫も人目を 忍ぶ恋」
「猫鳴や 塀をへだてて あはぬ恋」
「妻乞や 一角とれし のらの猫」
「通路も 花の上也 やまと猫」
「つぐらから 猫が面出す いろり哉」
「冬の蝿 逃せば猫に とられけり」

 キリがないのでこの辺で…。「猫なでの 声に見とれて 糞を踏む」林風

 尚、「一茶記念館」では、3月まで一茶と猫の展示をしているそうです。以前は猫館長がいたらしいのですが、ある日旅に出たまま戻らないそうです。きっと放浪の旅に出たのでしょう。
 掲載の写真、本当は雪と猫を撮りたかったのですが、この寒空に猫に歩き神がつくはずもなく、仕方がないので以前深大寺近くの野川で撮影したものを使いました。この後、土竜は無事に逃走しました。

★猫の写真は、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】の[動物]をご覧ください。他にキノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。
★猫ではないのですが、放浪の旅は、【AMAZON.JP-アマゾンひとり旅-】をご覧ください。

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