モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ナルコユリの提灯が揺れる。小林一茶も愛飲した黄精酒はナルコユリやアマドコロの根っこが原料(妻女山里山通信)

2014-05-25 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ウスバシロチョウの撮影と帰化植物の除草のために妻女山へ。蜂が本格的に営巣する前に、一通り除草をしておこうというわけです。二回目は梅雨明け頃にします。この時は、ムモンホソアシナガバチが草叢(くさむら)のあちこちに巣を作っているので大変危険なのです。除草作業の際に毎年必ず刺されています。一年に4回刺されたことも・・。すぐにポイズンリムーバーで毒を吸い取るので、大事には至っていませんが、アナフィラキシーショックはやはり怖いです。

 倒木の横たわる獣道を抜けると、森の中の広いギャップに出ます。十数頭のウスバシロチョウが陽光を浴びて舞っています。まずここのオオブタクサを除草しました。花粉症を引き起こすなかなか厄介な帰化植物です。除草は、一時間ほどで終了。帰りの別のギャップでは、ヨウシュヤマゴボウを10本ほど除草。これも放っておくと2mにもなり厄介な帰化植物です。駐車場の縁や道路脇には、カモガヤが。信州の小学生の花粉症の多くは、これが原因だとも言われています。通学道路沿いに多くあるからです。これも除草の対象。

 アマドコロ。アマドコロの根茎は生薬の玉竹なんですが、アマドコロは、ナルコユリと非常に似ています。見分け方は茎。触ってみて茎が筋張っていたら間違いなくアマドコロです。民間薬では混同して使われており、本来中国産のカギクルマバナルコユリの根茎を指す黄精も、アマドコロの根っこを指して売られている場合もあります。黄精酒は強壮剤で、あの小林一茶も愛飲していたそうです。50歳を過ぎて28歳の嫁を娶り、3男1女をもうけます。62歳で2番目の妻を迎え、64歳で3番目の妻との間に1女をもうけています。小林一茶は俳句と同じくらい、営みの回数を記した『交合記』が有名ですが、黄精酒はそんなに効くのでしょうか。と書いたのですが、これはナルコユリでした。花の付け根に緑色の少し膨らんだ部分が見えます。妻女山山系にはアマドコロはありませんでした。菅平とかもう少し高地にあり、草丈も高くもっと大型です。
 刺なしハリエンジュ(刺なしニセアカシア)が満開です。花は天ぷらで食べられます。養蜂家にとっては大切な木なんですが、全国の河川敷や里山で異常繁殖している帰化植物。我々妻女山里山デザイン・プロジェクトでも、千曲川河川敷で2回ほど伐採作業をしました。
 風が吹くと、桐の花がポタポタと落ちる様になりました。林道を歩いていると、足下に一面紫色の桐の花の絨毯。見上げると桐の大木がありました。

 後日、いくつかの群生地から掘り出したアマドコロの根っこ。抗癌作用のあるコフキサルノコシカケカワラタケマンネンタケマタタビ、桂皮、ナツメ、アマゾンのガラナなどと共に焼酎に漬けて私オリジナルの薬酒を作ります。砂糖は入れません。毒ですから。
 右は菅平高原のアマドコロ。妻女山山系のものに比べると茎も太く、草全体が大型です。妻女山山系のものは、ずっと小さく茎も細く、赤茶色をしています。同じアマドコロでも少し種類が異なるのでしょう。

 森の奥で、今まで知らなかったギンラン(銀欄)の群生地を見つけました。高さは15センチぐらい。花も7ミリぐらいしかないので、知らないと見過ごすような、けれどもとても希少な野草です。共生関係にある外生菌根菌は、特殊な土壌にのみ生息するもので、持ち帰ってもまず育ちません。売られていることもありますが、間違いなく枯れます。やはり山に置けギンラン。
 オオアマナの群生が一気に咲きました。これも帰化植物なのですが、なぜこの山中に群生地があるのか不思議です。別名はベツレヘムの星。フラフラとクサカゲロウ(草陽炎)が舞って来て留りました。いかにも儚げですが、卵は優曇華(うどんげ)と呼ばれます。こちらはなんと長男の車のバンパーに産みつけられ、100キロを旅して来たウスバカゲロウの優曇華。幼虫は、あのあり地獄。

 ウスバシロチョウは、ハルジオンが咲き始めたので、吸蜜行動も活発です。蝶の研究家のTさんによると、妻女山山系のウスバシロチョウは増えているそうです。私も実感でそう思います。幼虫の食草のムラサキケマン(紫華鬘)が増えたのと、吸蜜するハルジオン(春紫苑)が増えたのが要因でしょう。ユーミンの歌に『ハルジョオン ヒメジョオン』という歌がありますが、ハルジョオン(春女苑)は、間違いというわけでもなく、ハルジオンの別名です。ヒメジョオンと韻を踏んだのでしょう。

 てんとう虫の仲間のナミテントウ。ナミテントウは、違った紋同士が後尾するため、体の模様の変異が大きいのです。春蟬が激しく鳴いています。クマバチが盛んにホバリングしながらメスが来るのを待っています。クマバチには、あの大きな体にあの小さい翅では、航空力学的に飛べないと不本意なレッテルを貼られていた哀しい過去があります。レイノルズ数(空気の粘度)の法則でやっと、こんな大きな体に小さな翅でも飛べることが証明されたのですが・・。人間にとって空気はサラサラですが、小さなクマバチにとっては結構粘度のある物質なわけで、ちょうど人間が水中を泳ぐ感じなのかもしれません。クマバチは羽音が大きいのでびっくりしますが、オスは針がないので刺しません。メスもいじめない限り人を刺すことはありません。
 斎場山の西に、非常に大きなイノシシのヌタ場(泥浴び場)があります。雨が多いと大きな池になるのですが、今回はちょうど三つの露天風呂という感じになっていました。昼は警戒して入ることはありません。きっと風流に月見風呂なんぞしているのでしょう。

 斎場山(旧妻女山)の頂上は、大きな円墳で、上杉謙信が本陣を設けた場所として有名ですが、この尾根が除伐されました。獣害対策のためです。といっても除伐してもイノシシは普通に歩いていますけどね。より警戒心は強くなるでしょうけど。写真でも分かると思いますが、斎場山古墳から西へ向かって七基の塚が並んでいます。通称旗塚などと呼ばれますが、おそらく古墳時代が終わった後の、県司か郡司の墓ではないかと思われます。

 最後に、依然アップし忘れた赤松の切り株に発生した変形菌(粘菌)の、マツノスミホコリを載せておきます。触ると簡単に崩れます。中は墨状の粉で、それが胞子なのだろうと思います。変形菌は、これから梅雨になると雨上がりに大量発生するようになります。




 
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