照りもせずくもりもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき(新古今和歌集)
ふかき夜のあはれも空にしられけりおぼろにかすむ春の月かげ(宝治百首)
飽かず見る花のにほひもふかき夜の雲ゐにかすむ春の月かげ(新拾遺和歌集)
春されば木がくれ多き夕月夜(ゆふづ くよ)おぼつかなしも花かげにして(後撰和歌集)
木の間もる月さへ影のかをるかな花の軒ばの朧夜の空(伏見院御集)
月かげにむかしの春を思ひ出でてわが身ひとつと誰れながむらん(続後撰和歌集)
ながむとも同じこころに誰れか見む思ひぐまなき春の夜の月(風葉和歌集)
よそにても同じ心にありあけの月を見るとや誰れに問はまし(万代集)