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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 春 花見・桜狩

2013年03月08日 | 日本古典文学-春

後冷泉院の御とき皇后宮歌合、さくらをよめる 堀河右大臣
春雨にぬれてたつねむ山桜雲のかへしの(イ雲のかへしに)あらしもそふく
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

弘安元年百首歌奉ける時 入道二品親王性助
春雨の日数ふるのゝ桜かりぬれてそかへる花染の袖
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす よみ人しらす
桜かり雨はふりきぬおなしくはぬるとも花のかけにかくれむ
(拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

五十首歌よませ給ける中に 後鳥羽院御製
都人そこともいはすうちむれて花にやとかる志賀の山こえ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

二月晦方に、物に詣づる道なる法住寺の桜見んとて、入りたれば、花もまだ咲かざりけり、知りたりし僧のありし、問はするもなし
咲きぬらん桜がりとて来(き)つれどもこの木のもとの主(ぬし)だにもなし
同じ道なりし所に入りて見れば、そこのもまだしかりければ、柱に書きつく
それまでの命たへたる物ならばかならず花の折に又来(こ)ん
(和泉式部続集~岩波文庫)

さらにまた霞にくるゝ山路かな花をたづぬるはるのあけぼの
(山家集~バージニア大学HPより)

三月はかりに、人々あまたともなひて花見て帰り侍けるに 祭主輔親
行めくりみれともあかす山さくらわれのみならはかへらましやは
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

けふもまたあかぬなかめにくれはてぬあはれたちうきはなのかけかな
(正治初度百首~日文研HPより)

ワキツレ三人「桜花咲きにけらしな足びきの。山のかひより見えしまゝ。此木の本に立ち寄れば。
ワキ「我は又心ことなる花の本に。飛花落葉を観じつゝ独り心を澄ますところに。
ワキツレ「貴賎群集の色々に。心の花も盛にて。ワキ「昔の春にかへる有様。ワキツレ「かくれ所の山といへども。
ワキ「さながら花の。
ワキツレ「都なれば。
地歌「捨人も。花には何と隠家の。花には何と隠家の。処は嵯峨の奥なれども。春には訪はれて山までも浮世の嵯峨になるものを。実にや捨てゝだに。此世の外はなきものを何くか終の。住家なる何くか終の住家なる。
ワキ詞「いかに面々。是まで遥々来り給ふ志。返す返すも優しうこそ候へさりながら。捨てゝ住む世の友とては。花独なる木の本に。身には待たれぬ花の友。少し心の外なれば。花見んと群れつゝ人の来るのみぞ。あたら桜の。とがには有りける。
地「あたら桜の蔭暮れて。月になる夜の木の本に。家路忘れて諸共に。今宵は花の下臥して。夜と共にながめ明かさん。
(謡曲・西行桜~謡曲三百五十番集)

源氏信かあとに二もとの桜あり、名高き花なるによりて、人々さそひて見侍けるに、程なくくれて月出にける後、をのをの歌よみ侍ける時 平貞時朝臣
ふたもとの花のひかりをそへんとやかすまて出る春の夜の月
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

花見にまかりて読侍ける よみ人しらす
あかすともけふはかへりて山桜花さかりをや人につけまし
(続後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

前大納言為世、人々いさなひて法性寺に花見にまかりて、十首歌よみ侍ける中に 民部卿為明
家つとに折つる花もいたつらにかへさわするゝ山さくらかな
(新拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

後冷泉院東宮と申ける時、殿上のをのことも花見んとて雲林院にまかれりけるによみてつかはしける 良暹法師
うら山し春の宮人打むれてをのかものとや花を見るらん
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

二月はかり良暹法師のもとにありやとをとつれて侍けれは、人ひとくして花見になんいてぬ〔る〕ときゝて、つねはいさなふものをとおもひて尋てつかはしける 藤原孝善
春かすみへたつる山の麓まておもひもしらすゆく心かな
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

高倉院御時、内裏より女房あまたいさなひて、上達部殿上人花見侍けるに、右京大夫、折ふし風の気ありとてともなひ侍らさりけれは、花の枝につけてつかはしける 小侍従
さそはれぬ心の程はつらけれとひとり見るへき花の色かは
返し 建礼門院右京大夫
風をいとふ花のあたりはいかゝとてよそなからこそ思ひやりつれ
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

雲林院に花見にまかるとてさそひ侍けるに、斎院の女房又ちかひて白河の花にともなはんと申をくり侍けるに、いてぬるよし申けれはいひつかはしける よみ人しらす
さそへとも君もこすゑの花見にとひとりそまよふ春の日くらし
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

保安五年にや侍りけむ。きさらぎにうるう月侍りし年、白河の花御らんぜさせ給ふとて、みゆきせさせ給ひしこそ、世にたぐひなきことには侍りしか。(略)法勝寺にわたらせ給ひて、花御らんじめぐりて、白河殿にわたらせ給ひて、御あそびありて、かんだちめのざに、御かはらけたびたびすゝめさせ給ひて、おのおの哥たてまつられ侍りける。序は花ぞのゝおとゞぞかき給ひけるとなんうけ給はり侍りし。新院の御製など集にいりて侍るとかや。(略)みてらの花、雪のあしたなどのやうに、さきつらなりたるうへに、わざとかねてほかのをもちらして、庭にしかれたりけるにや、うしのつめもかくれ車のあともいるほどに花つもりたるに、こずゑの花も、雪のさかりにふるやうにぞ侍りけるとぞ、つたへうけ給はりしだに、おもひやられ侍りき。まいてみ給へりけん人こそおもひやられ侍れ。
(今鏡~六合館書店「今鏡読本」)

 堀川院の御時、内の女房、車あまた、色々のきぬいだしこぼして、花見に花山へむかはれけり。さるべき上達部・殿上人、馬・車をつらねてあひしたがふ。女官少々馬にのりてさぶらひけり。栗栖野の辺にて、車あまた有。花を折て簾(す)にさしたり。是を見て東ざまにはせうたれぬ。この人びとの府生行高(ゆきたか)があるをつかはして、「たれぞ」ととはれければ、行高はせつきてとへば、車よりあふぎのつまをゝりて、歌をかきてたびたりければ、これをとりてかへりまいれり。此車なる肥後の君、返歌せられけり。
 花山にゆきつきて、人々まづまり(鞠)をあげて、みぎりのもとにたゝみ(畳)しきて、管絃ありけり。蔵人広房、題をいだし序をかく。盃酌たびたびありて、俊頼朝臣連歌に
  けふをまちける山ざくら哉
師時朝臣つけていはく、
  むれてくる大宮人やかざすとて
内へかへりまいりてうたをかう(講)じけり。
 さてもみちなりつる車をたづねきけば、中宮の女房なりけり。いみじき事にぞ世の人のいひける。
(「續古事談」おうふう)

白河の花見の御幸に 新院御製
たつねつる我をや風も(イ我をや花も)まちつらんけふそ盛に匂ひましける
太政大臣 
白川のなかれ久しき宿なれは花のにほひものとけかりけり
待賢門院兵衛
万代のためしと見ゆる花の色をうつしとゝめよ白川の水
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
白川院花見の御幸の時よみ侍ける 大宮前太政大臣
あすもこんけふも日くらしみつれともあかぬは花の匂ひ也けり
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
鳥羽院位おりさせ給ふて後、白川に御幸ありて花御らんしける日、よみ侍ける 花薗左大臣
かけきよき花の鏡と見ゆるかな長閑にすめる白川の水
徳大寺左大臣
万世の花のためしやけふならむ昔もかかる春しなけれは
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

十九日 (辛亥。晴。)将軍家、御遊覧ノ為ニ、三崎ノ礒ニ出御シタマフ。山ノ桜花尤モ盛リナリ。仍テ領主駿河ノ前司、殊ナル御儲ヲ以テ、案内ヲ申ス。相州、武州以下、参ラル。六浦ノ津ヨリ、御船ニ召サレ、海上ニテ管絃有リ。〈若宮ノ児童。〉連歌有リ。両国司、并ニ廷尉、基綱、散位親行、平ノ胤行等、各秀句ヲ献ゼラルト〈云云〉。
(吾妻鏡【寛喜二年三月十九日】条~国文学研究資料館HPより)