水（み）こもりに葦のわか葉や萌えぬらむ玉枝の沼をあさる春駒（千載和歌集）
美豆（みづ）の江のまこもも今は生ひぬれば手馴（たな）れの駒を放ちてぞ見る（堀河百首）
春駒のいばゆる音ぞきこゆなる美豆の真菰（まこも）もつのぐみぬらし（堀河百首）
よどのなる美豆の御牧（みまき）にはなちかふ駒いばえたり春めきぬらし（万代集）
春日野の新若草（にひわかくさ）につながれて立ちもはなれずあさる春駒（夫木抄）
吹くかたや北野の野べの草ふかみ風にいばゆる春駒のこゑ（夫木抄）
なにはがた浦ふく風に波たてばつのぐむ葦の見えみ見えずみ（後拾遺和歌集）
かすみゆく難波の葦のうらわかみ水際（みぎは）の駒も春を知るらし（夫木抄）
日をへつつ美豆野（みづ の）の沢の真菰（まこも）ぐさ青めば春の駒ぞいばゆる（夫木抄）
ゆふづ くよ潮みち来（く）らし難波江の葦のわか葉をこゆるしら波（新古今和歌集）
岩が根の磯のはつ草したもえてよすればあをきこよろぎの波（夫木抄）
はるのなみの入り江にまよふ初草のはつかに見えし人ぞ恋しき（新勅撰和歌集）
津の国の難波の葦のめもはるにしげきわが恋ひと知るらめや（古今和歌集）
今よりは春になりぬとかげろふの下もえいそぐ野べのわか草（続拾遺和歌集）
あかねさす朝日に消ゆる雪まよりきざしやすらむ野べの若草（好忠集）
わがやどのかきねのくさのあさみどり降る春雨ぞ色は染めける（新勅撰和歌集）
知られじな霞にこめてかげろふの小野のわかくさ下にもゆとも（新後撰和歌集）