とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

道路交通法のローカルルール

2005-08-24 02:04:18 | Weblog
 22日の日経新聞朝刊の「まなび再考」というコラムは,お茶の水女子大学の耳塚寛明教授が,「地方独自の交通ルール 合理的でも感心せず」という題で執筆している。いわく,信州松本では,特殊松本的右折車優先の交通ルールが成立しているとのことである。一般的には,右折車と対向直進車では直進優先だから,ルールが逆転しているが,その理由は,松本は道が細く,法律通りでは右折車が道をふさいで渋滞が生じるからだろうとしている。

 その上で,筆者は,「郷に入っては郷に従えというが,普遍的ルールを体で覚えた異邦人にとっては,学ぶことが容易ではない。地方分権が賛美される時代,いくら合理性があるとはいえ,こういう独自性を褒める気にはなれない。」と結んでいる。


 法的にいえば,道路交通は法律事項で,国の専権事項であるから,法律を改正しない限り,右折車優先というルールがローカルルールとなることはあり得ない。だから,いくら地方分権を賛美しても,こと道路交通に関する限りは,ローカルルールはありえないことになる。

 日本では,地方分権といっても,基本的に地方が何でもできるというものではなく,法律によって地方公共団体の事務とされたものを処理することとされているので(地方自治法2条2項),これは致し方ないところである。アメリカの州と連邦の関係は,これと逆で,連邦の事務が憲法によって限定されるという構造になっているとのことらしい。


 しかし,そういえば,一時赤外線よけのナンバープレートカバーなるものが,それをつけるとオービスを逃れられるということで,流行したということがあった。そのときに,その規制を地方公共団体単位でやったというような報道があったのを思い出した。これはちょっとおかしいのでは,と思って,調べてみた。

 すると,都道府県の公安委員会規則がひっかかってきた。例えば,青森県道路交通規則(平成10年9月30日青森県公安委員会規則第7号)によると,こうなっている。

(運転者の遵守事項)
第16条 法第71条第6号の規定により車両の運転者が守らなければならない事項は、次の各号に掲げるものとする。
八 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)による自動車登録番号標又は車両番号標に、赤外線を吸収し、若しくは反射するための物を取り付け、又は付着させて、大型自動車、普通自動車(原動機の大きさが、総排気量0.050リットル以下、定格出力については0.60キロワット以下のものを除く。)又は大型特殊自動車を運転しないこと。

 その元となった道路交通法は,
(運転者の遵守事項)
第71条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
6 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項

 なるほどね,法律も,こういう方法でローカルルールを作ることを認めているのか,というところである。

 しかし,この公安委員会規則は,なかなか難しい。この条文にある総排気量0.05リットルとか,定格出力0.6キロワットとは,道路交通施行規則第7条の7のミニカーの定義と同じである。なるほど,ではあるが,これが分かるまでに何回も検索をかけることになった。正直なところ,最初は,原付が除かれるのか,と思ったのだが,普通自動車と原動機付自転車は道路交通法では別物扱いなので,おかしい,ならなんだ?,ということでまた検索を繰り返すことになった(電子データの条文があるので,検索も楽だが,これを紙ベースでやらされたらたまったものではない。)。

 法令の理解は簡単ではない。これだから,法律は敷居が高いということになってしまう。


 あと,この青森県道路交通規則16条を見ていると,「げた類若しくは木製サンダルをはいて」の運転の禁止も,この規則の中にある(2号)。二輪の自動車の同乗者の横乗り禁止(「前向きにまたがらせること」とある。3号),傘をさしての自転車運転の禁止(4号)も,ここに規定されている。そうか,傘をさして自転車に乗ると罰金5万円以下になるのか・・・・。

 原付や自動二輪のナンバープレートの折り曲げ禁止もここにある(7号)。

 面白いのが,「ぎょ者台の設備がない牛馬車又はブレーキ及び警音器がないか、若しくはこれらの機能が不完全な牛馬車に乗車して進行しないこと」(6号)という規定。牛や馬に乗って行くだけならブレーキは要らないが(当たり前),車を引かせるとブレーキと警音器の両方が必要ということになっている。


 というようなことで,昨日から今日にかけて,とんだ時間潰しをしてしまった。こんなことも知らなかったのか,というところではあるが。



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