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公正証書遺言の無効は珍しいことではない

2010-03-05 01:01:35 | 指定なし

 記事では,公証人が作成した公正証書の効力が否定される判決は全国的にも珍しいなどとあるが,それほど珍しいことではない。


 


 判例検索をかけてみると分かるが,公刊物に登載された判例だけでも,年に1件くらいはある。ということは,公刊物に載らない判決は,その何倍もあることになる。


 


 今回の判決は,口授の要件を欠いていたという判断のようで,これは,遺言能力と並んで,公正証書遺言を無効とする判断としては,多用されている。


 


 民法969条では,遺言者が,遺言の趣旨を公証人に口授することが要件となっているが,しばしば行われるのが,遺言者に,自分に有利な遺言をしてもらいたい近親者が,公証人と打ち合わせをして,遺言の内容を決め,あとで,遺言者を公証役場に連れてきて,公証人が,こういうことか,こういうことか,と尋ねて,遺言者がそれでいいと言えば,口授があったとするやり方である。


 


 このようなやり方は,本来の「口授」とは異なっているが,今回も問題になったような,死が迫っている者が遺言をする時は,ある程度仕方がないとされる面もある。


 


 今回の遺言も,父親の遺言が,本来の相続人である息子ではなく,知人女性(という言い方からは,良くて内縁の妻,悪ければ不倫相手という推測ができる。)に,多分全財産を贈与するという内容だったと思われ,これがおかしいと思った息子が,遺言無効の裁判を起こしたということであろう。


 


 判決文をみていないので,何ともいえないが,多分,今回の遺言は,その「知人女性」が,遺言者に何らかの働きかけをして,自分に有利な遺言をさせたものと思われ,口授に限らず,そもそも,父親の真意として,そのような遺言をするつもりがあったのかどうか怪しい(遺言者は,遺言の翌日に死亡している。)というところが大きく影響しているように思われる。


 


 公証人としても,遺言者が真意でそのような遺言をしたいのであれば,それを生かしてやるというのが,務めであろうが,そのために遺言に利害を有する者と事前の打ち合わせをして,遺言の内容を決めるなどというのでは,公正証書遺言の信用性を一般的に低下させてしまうといわざるを得ず,それは自らの首を絞めることにもなりかねないことであろう。


 



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