昨年の10月のことになるが,アメリカで,銃による犯罪の犠牲者等が銃器メーカーや販売店を相手方として損害賠償の訴訟を起こすことを禁止する法律が制定されたとのことである。
この法律の成立は,当時,日本でも少し報じられたので,アメリカのニュース等を検索してみたが,英語を読むのが大変で,しばらく放っていたのを,やっとの思いで読んでみた。
*****
この法律は,アメリカで,銃器規制を主張する政治勢力が背景にあって,銃器犯罪の犠牲者の遺族から銃器メーカーや販売店を相手に損害賠償の訴訟を多数提起していたこと(そのねらいは,銃器メーカーや販売店を倒産させて間接的に銃器規制を実現しようとするものらしい)に対して,銃器メーカ側の政治勢力が,共和党に働きかけて立法にこぎつけたものとのことであり,同様の法案が最初に議会に提出されてから4年という長期間を要したという。
法案は,すでに7月に上院を通過しており,10月に下院で採決が行われて,283対144で可決されたとのことであるが,民主党からも59名,無所属から1名の賛成者があり,共和党からは4名の反対者が出たとのことである。
☆☆☆☆☆
この法律が,訴権自体を制限するものであるのか,銃器メーカー側に免責を与えるものかは,私の読んだ限りでは,今ひとつ明確でなかったが,どうも訴権自体を制限するもののように感じられる。
銃器メーカー側の言い分は,適法にして欠陥のない銃を製造・販売したことによって責任を問われる理由は何もないというところにある。もちろん,その背景には,憲法上保障された(修正2条)銃器を保有する権利がある。
これに対して,銃器規制を主張する側からは,特定者の利益を擁護する法律であって,目に余るとか恥知らずだとかの批判がなされている。特に,今回の法律が,すでに提起されている訴訟にまで遡及的に適用される点に,強い批判がされているようで,不法行為法の基本的前提を破るものだとの批判が出ている。まずは,この点が裁判所の違憲審査にかかるようである。
△△△△△
この法律では,銃器メーカーに対しては銃器の設計上の欠陥を理由とする訴訟,販売店に対しては銃器が違法に用いられることを知って販売したことを理由とする訴訟を禁止していないとのことであるが,それでも,現在係属している訴訟の相当数が,この法律によって不適法(?)にされるようである。
その中には,銃器メーカーの従業員が銃を盗み出して犯罪に及んだという事案もあるようで,こういう訴訟までが,今回の法律によって不適法になるというのであれば,相当の批判を免れないところと思われる。
▽▽▽▽▽
私の力では,これ以上,あれこれ論じることはできないが,2つほど感想を述べてみたい。
まず,アメリカでは,訴権の制限という形での立法が可能である(私の理解が正しければ)というのが,驚きである。日本では,民事事件(行政事件ではないという意味での)で訴権の制限という形での立法はまず不可能と思われる。
それから,銃器犯罪を原因とする損害賠償訴訟は,遺族が提起するものだけではなく,地方自治体からもかなり提起されているとのことである。詳しいことは分からないが,このあたりは司法制度自体がアメリカと日本でかなり違いがあるように思える。
◇◇◇◇◇
なお,このような立法にもかかわらず,12月には,ニューヨークの連邦地裁で,ニューヨーク市が銃器メーカー13社と販売店27社を被告として提起した訴訟で,その訴訟が「違法に用いられることを知って販売した」ことを理由とするものにあたるとして,訴訟を続行する決定がされたようである。
アメリカの銃器規制については → Brady Center
この法律の成立は,当時,日本でも少し報じられたので,アメリカのニュース等を検索してみたが,英語を読むのが大変で,しばらく放っていたのを,やっとの思いで読んでみた。
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この法律は,アメリカで,銃器規制を主張する政治勢力が背景にあって,銃器犯罪の犠牲者の遺族から銃器メーカーや販売店を相手に損害賠償の訴訟を多数提起していたこと(そのねらいは,銃器メーカーや販売店を倒産させて間接的に銃器規制を実現しようとするものらしい)に対して,銃器メーカ側の政治勢力が,共和党に働きかけて立法にこぎつけたものとのことであり,同様の法案が最初に議会に提出されてから4年という長期間を要したという。
法案は,すでに7月に上院を通過しており,10月に下院で採決が行われて,283対144で可決されたとのことであるが,民主党からも59名,無所属から1名の賛成者があり,共和党からは4名の反対者が出たとのことである。
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この法律が,訴権自体を制限するものであるのか,銃器メーカー側に免責を与えるものかは,私の読んだ限りでは,今ひとつ明確でなかったが,どうも訴権自体を制限するもののように感じられる。
銃器メーカー側の言い分は,適法にして欠陥のない銃を製造・販売したことによって責任を問われる理由は何もないというところにある。もちろん,その背景には,憲法上保障された(修正2条)銃器を保有する権利がある。
これに対して,銃器規制を主張する側からは,特定者の利益を擁護する法律であって,目に余るとか恥知らずだとかの批判がなされている。特に,今回の法律が,すでに提起されている訴訟にまで遡及的に適用される点に,強い批判がされているようで,不法行為法の基本的前提を破るものだとの批判が出ている。まずは,この点が裁判所の違憲審査にかかるようである。
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この法律では,銃器メーカーに対しては銃器の設計上の欠陥を理由とする訴訟,販売店に対しては銃器が違法に用いられることを知って販売したことを理由とする訴訟を禁止していないとのことであるが,それでも,現在係属している訴訟の相当数が,この法律によって不適法(?)にされるようである。
その中には,銃器メーカーの従業員が銃を盗み出して犯罪に及んだという事案もあるようで,こういう訴訟までが,今回の法律によって不適法になるというのであれば,相当の批判を免れないところと思われる。
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私の力では,これ以上,あれこれ論じることはできないが,2つほど感想を述べてみたい。
まず,アメリカでは,訴権の制限という形での立法が可能である(私の理解が正しければ)というのが,驚きである。日本では,民事事件(行政事件ではないという意味での)で訴権の制限という形での立法はまず不可能と思われる。
それから,銃器犯罪を原因とする損害賠償訴訟は,遺族が提起するものだけではなく,地方自治体からもかなり提起されているとのことである。詳しいことは分からないが,このあたりは司法制度自体がアメリカと日本でかなり違いがあるように思える。
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なお,このような立法にもかかわらず,12月には,ニューヨークの連邦地裁で,ニューヨーク市が銃器メーカー13社と販売店27社を被告として提起した訴訟で,その訴訟が「違法に用いられることを知って販売した」ことを理由とするものにあたるとして,訴訟を続行する決定がされたようである。
アメリカの銃器規制については → Brady Center
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