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速度違反の公判,出廷まで2年半(新聞記事から)

2005-06-26 18:55:29 | Weblog
 今朝の新聞に,福岡地裁で48キロオーバーの速度違反で在宅起訴された被告人が,召喚状(呼出状)の送達ができなくて,2年半も公判に出廷せず,いろいろ手を尽くした結果,別のところに済んでいることが判明して,ポストに入っていた通知文書に気付いて,ようやく出廷し,罰金7万円の判決を受けた,という記事が出ていた。

 記事によると,裁判所は,かかった人手や経費は不明としているが,専門家(九大大学院の内田博文教授を指すらしい。)は相当な費用がかかったはず,たった罰金7万円で個々まで労力をかけなければならないのか,と指摘している,ということになっている。

 そして,記事中の内田教授のコメントによると,召喚状の送達や身柄拘束などの制度を見直さなければ,同様のケースで無駄を繰り返すことになる,とのことである。

 そもそも,この事件自体が変な事件といえる。48キロのスピード違反で罰金求刑になる事件を,略式請求もせず,簡裁ではなく地裁に公判請求したのはなぜなのか。否認していたのか,懲役求刑を相当とする事件であったのか。
 また,被告人が出廷しなかったのは,被告人の言い訳によると,起訴された当時,同居の母親と仲が悪くて,母親が召喚状を受取拒否したということなのだが,そもそもそのような言い訳自体が,相当に怪しいと感じられる。

 その辺は措くとしても,記者や内田教授が,これをコスト問題ととらえていることが,そもそもおかしい。刑事的正義を実現するのに,多大なコストがかかっていることは,洋の東西を問わず常識である。コストがかかるからといって,一旦起訴した事件の公訴を取り消したりすることになれば,刑事的正義の実現は覚束ない。手続に服した者(正直者)が損をし,適当に言い訳をして逃げた者が得をすることになる。

 この事件をコスト問題ととらえることからして,記事の在り方が誤っている。

 次に,この事件は,詳細な事情は分からないまでも,かなり特異な事件であると思われ,そのような事件にコストがかかったことをもって,一般論として,裁判のコストが,という議論をすることもおかしい。内田教授がどのような具体的な内容を考えてコメントしたのか分からないが,例えば,公判請求する被告人については,すべからく身柄を拘束して起訴せよということなのか。そうであれば,刑事司法のコストは更に増大する。召喚状の送達について,被告人本人が受け取らなくても,みなし送達ができるようにせよというのか。これも,被告人本人の出廷を義務づけている刑事訴訟法からは,あり得ない制度である。出廷しなければ,理由の如何を問わずすぐに身柄を拘束せよというのか。これも,帰ってコストを増大させるし,身柄拘束の不利益を考えると,およそ非常識としかいいようがない。

 また,仮に,直ちに身柄を拘束するような制度改正がされたとしても,この事件では,一応表向きは,被告人は通知文書に応じて任意に裁判所に連絡を取っている。住所を突き止めるまでに時間とコストがかかったというだけで,身柄を拘束するまでには,やはり同じ時間とコストがかかったということになる。どんな制度改正をしても,同じようなケースでは,やはり同じような無駄が生じることになる。

 というわけで,何とも理解のできない記事であった。


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1 コメント

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Unknown (みんなのプロフィール)
2005-07-01 04:18:13
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