とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

2011年を振り返って

2011-12-31 23:32:57 | Weblog
 久しぶりに記事を書こうという気になった。

 もう2011年も残りわずかになった。

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 今年もめまぐるしくて,覚えていることも既にあやふやになっているが,やはり一番の出来事は,東日本大震災であろう。

 今年の漢字が,「災」ではなく「絆」になったというのも,「災」が既に使われていたこともあろうが,余りの大災害ということから,人と人のつながりが見直されたという面が大きいように思える。

 しかし,こうなってみると,現地相談にも行っていない私には言う資格がないとはいえ,法律は,大災害に対して無力であることを強く感じる。医療者の人達が,率先して現地に赴き,自らの職分を尽くしていたことを考えると,我々が専門性を活かしてできることは本当に限られている。法律では,目の前で災害にあって苦しんでいる人達に,手を差し伸べることさえできない。

 災害の後,少し落ち着いてからは,出番もあろうが,それも,これだけの災害となれば,既にある法律では,何とも力不足である。今回,災害に関連して,多くの法律が立法されたと聞いているが,是非とも,それらが活用されることを祈りたい。

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 災害に次いで,法律を意識させられたのが,2つの上場企業の不祥事であろう。一つは,10年以上前の損失隠しを歴代の取締役が引き継いできて,それがばれそうになると,それを指摘した側の取締役を解任するという暴挙に出たことである。もう一つは,創業者社長・会長が,会社に自らの賭博の金を調達させていたことである。

 企業統治とは何か,会社は誰のためにあるのか,ということを改めて考えさせられた出来事であるとともに,法をいかに強化しても,最後は人の問題であることも再認識させられたというしかない。

 会社法は,商法の時代に比べて,会社の組織を大幅に自由化し,それぞれの企業の実情に合った組織編成をすることを認めることとなったが,それは,会社の私物化,会社組織の濫用を許すものではなく,適法性が確保された上での自由化でなければならないことは,誰の目にも明らかである。

 しかし,裁判沙汰の世界で見ていると,どうも,法による自由化を逆手にとって,一件適法だが,その実は,違法な結果を得ようとしていると疑われるような,会社の組織の利用が見られない訳ではない。自由には責任が伴うというのは,個人の世界ではうるさくいわれていることであるが,これからは,組織法の世界でも同じようなことが指摘されるに至るのではないかと思われる。

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 最高裁判例も,いろいろのものが出されて,とても思い出すこともできないが,一つ印象に残ったのは,賃貸借の更新料有効判決である。建物賃貸借(賃貸マンション)の更新料は,1年に1回とか,2年に1回,まとまった金銭を取られるので,賃借人にとっては,大きな負担になっていたものであるが,契約上,約束している以上,やむを得ない,それは契約自由の原則の範囲内だとして,何となく気持ちの悪いものを残しながら,受け入れられてきていたものである。それが,消費者契約法による消費者保護制度からの見直しを受けて,何時だったかの京都地裁の判決を期に,下級審レベルでは,どちらかと言えば,無効判断が多く出されるようになっていた。

 これに対し,平成23年7月15日の最高裁判決は,「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと解するのが相当である。」として,1年につき2か月の更新料条項を有効とした。

 この判決をどう読むかは,「特段の事情」の限定がおかれているため,何とも難しいところであるが,一つには,更新料が一義的明確に定められていることが客観的に必須の要件であり,次いで,「高額に過ぎないこと」が評価的な要件ということになろう。

 そうはいっても,このような「高額に過ぎる」が何を意味するのかは,特に建物賃貸借については,とても難しいことになる。建物の賃料は,様々な要因で決定されるもので,一義的に決められるものではない。その上で,「高額に過ぎる」という判断は,どのようにしてすべきものか,とても難しい判断を迫られることになりかねないと思われる。

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 法曹養成の関係では,いよいよ弁護士の就職難が問題となってきている。それを意識してかどうか,司法試験の合格者も2000人止まりで,それ以上の増加は当面期待できないであろうし,増加すれば職にありつけない弁護士資格者が増え,逆に減らせば,法科大学院が潰れかねないということで,これもまた,法曹養成制度の再改正との絡みで,難しく,政治的な判断を迫られることになりそうである。

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 刑事司法では,裁判員裁判は,幸いなことに,ほぼ定着したといえる。しかし,ひとつには,否認事件や,多数犯罪事件など,裁判員に大きな負担をかける事件が現れ始めていることであり,既に全体で1か月にわたるような長期裁判も出始めている。

 また,近時の報道では,覚せい剤事犯で,裁判員が無罪としたものを,高裁が逆転有罪としたケースも2つほど出てきたとのことであり,薬物事犯に関する裁判員裁判の適否という問題も提起されてきている。

 この辺りについて,そろそろ見直し時期も近づいていることであり,どのような見直しがされるのか,その流れに着目していきたいところである。

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 忘れていたが,立法面では,非訟事件手続法の改正が成立した。これで,主要な法令のひらがな化が完了した(商法の一部を除く。)。昭和55年の民事執行法の改正から起算しても30年,昭和22年の親族・相続法の改正から起算すると65年間を要している。もちろん,民法,刑法は,カタカナを単純にひらがなに直した部分がほとんどで,実質改正を経ていないが,それ以外は,大きく変わったといえる。

 民事訴訟法からは,民事執行法,民事保全法が切り出され,民法からは一般法人法,商法からは会社法と保険法が切り出された。趣旨は少し違うが,刑法からも,多くの特別刑法が切り出されている。

 また,法律改正のスピードも上がった。民事執行法の改正には20年以上を要したという。しかし,民事訴訟法の改正は2年で済んでいる。これからは,時代に合わせた法律の改正が進む時代になったといえるであろう。しかし,それだけに,実務家が,法律改正をフォローアップし,新しい法律の理解を正確にしていく必要は大きいといえる。

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 いずれにしても,司法制度改革以来,司法が国民に身近になったこともあって,司法での出来事が何かと注目される時代になっている。今の司法制度が信頼されるものかどうか,また,再びの改革をするとして,どのような改革を進めるべきか,なかなか難しいものがあるように思われる。




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