とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

中学校教諭に裁判員制度の研修=日経の記事から

2005-08-29 00:40:25 | Weblog
 8月26日の日経新聞に,来年の夏休みから,中学校教諭を対象に,裁判員制度の研修を行うことになったという記事が出ている。今年はそのモデル研修ということで,法務省刑事局,東京地検,東京都中学校社会か教育研究会の共同主催で,刑事裁判の傍聴,法務省公報ドラマの鑑賞をしたというもの。その目的は,「制度を根付かせるため,法的なものの考え方や司法の役割に慣れ親しんでもらう『法教育』を授業で普及するにはまず,教える側の教諭によく知ってもらわなければ」ということだとのこと。(この記事はWebにはないようだ。)

 また法務省の主催ということで,弁護士会はどうした,になるが,それは今回はさておくことにしたい。


 なかなか良いところに目をつけた,と思う。考えてみれば,日本の教育システムにおいて,法律に親しむというカリキュラムはないに等しい。小中高と,憲法のシステムは三権分立として,裁判制度は裁判「所」の仕組みとして学習するが,実際の裁判がどのように行われるのかは,きちんと学習することになっていない。裁判所には,ときどき中高生が裁判傍聴に来ているようだが,刑事でいえば,捜査がどのようにして行われ,被疑者が逮捕されてから起訴されるまでどのように扱われるかとか,判決の言い渡しまで何が行われているかについての学習はない。ましてや民事裁判の仕組みなど,どこにも出てこない。

 更にいえば,法律とは何かということや,法に従うということは何かということについては,全く教えられることがない。

 大学の法学部の教育は,そういう意味では,小中高の教育とは全く断絶したものだということになる。法律とはなんぞやということは,大学に入って初めて教えられる。かつて,このブログにも書いたけれども,法律とは,社会の基本的なルールで,社会の構成員に対して平等な活動の場を設定するものである。だから,基本的に,それが社会の構成員の誰かに一方的に有利ということはない(少なくとも建前としては。)。特に,民主主義社会では,それが民意によって形成されているというのが建前である。

 しかし,小中高の多くの生徒にとって,ルールは大人が勝手に決めたもので,大人の側に一方的に有利なもの,という認識しかないのではないかと疑ってしまう。ネットの世界で反規範的な言動が幅を利かせているのは,その反映ではないかと思うのだが,その原因の一つ,ことによると結構重い原因が,中学・高校での校則の扱い(最近は少しはましになったか?)ではないかと思う。ここでは,ルールを決めた側=裁く側で,かつ,ルールが自体が決めた側に一方的に有利にできている。

 まあ,それは教育的配慮ということで,ある程度やむを得ないのかもしれないが,これは世の中一般のルールではない(昔は,特別権力関係などと称していた。)ということは,だれも教えない。多分,教える教師の側も,そのような理解はしていないだろう。


 たしかに,これではダメである。今回の法務省の企画は,裁判員制度の普及を木時としたもので,法とは何かの理解を売ることまでを考えたものではないと思われるが,裁判員制度ができたことで,その点が改めて問題となるきっかけができたようにも思われる。

 これを機会に,中高での法教育の在り方が考えられてもよい(その中には教師の側の意識改革も含まれる。)のではないかと思った。


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