とりあえず法律・・・・かな?

役に立たない法律のお話をしましょう

夫婦別姓に関する産経新聞の論説

2015-05-07 02:45:30 | Weblog
2015年4月13日の産経新聞の「視線」というコラムに,編集委員・大野敏明の署名入りで,「夫婦別姓の誤り」という記事が掲載された。そこでは,「姓」と「氏」は異なる概念であるから「夫婦別姓」といういい方は,法的に誤りであるとされ,「夫婦別姓」問題は,正しくは「夫婦別氏」問題であり,家族の呼称である「氏」を変更することは,本来の「氏」の概念とは相いれないものであり,その認識を誤ると,多くの誤解を招くことになる,と主張する。しかし,私には,その議論が,マスコミの論評がそうあるべきところの,「事実」に基づいているとも思えないし,議論の内容も正しいとは思えない。 . . . 本文を読む

登記制度は震災復興の妨げか? ~日経ビジネスのコラムより

2015-04-13 02:34:25 | Weblog
 日経ビジネス2015年2月23日号に,「震災復興を登記制度が阻害する」というコラムが掲載された。復興のための土地取得が,相続の登記がなされていないために,所有者の確定に労力を要する,それは相続登記を任意としている不動産登記制度が悪いのだ,というような論調になっているが,その指摘が正しいとは思えない。 問題は複雑であり,安易な議論は慎むべきだと思える。 . . . 本文を読む

最高裁が下級審を叱る 最高裁平成23年7月27日第三小法廷決定

2013-04-04 02:38:08 | Weblog
 偶然に,最高裁平成23年7月27日第三小法廷決定・裁判集民事237号307頁という事件に行き当たった。この決定は,いかにも最高裁が,役所的な思考をして当事者の権利を実質的に制限してしまった下級審を,けしからんと叱っているように感じられたので,そのことについて,少しばかり考えてみた。 . . . 本文を読む

会社分割に詐害行為取消権の適用を認めた最高裁判例

2012-11-18 00:06:56 | Weblog
 平成24年10月12日,最高裁第2小法廷は,新設分割の場合に,新設会社に債権が引き継がれなかった既設会社の債権者が自己にとって詐害的な会社分割に詐害行為取消権の行使が可能であるとする判断を下した。会社法の定める会社分割の制度が,立法時に意識されたところと異なって,濫用的に用いられているという現実からすると,この判決の意義は大きいといえる。しかし,残された問題もあり,濫用的会社分割を是正する法理を構築する必要があると思われる。 . . . 本文を読む

2011年を振り返って

2011-12-31 23:32:57 | Weblog
 2011年を振り返ると,法律の世界から見ても,東日本大震災が大きな出来事といえるだろう。しかし,これはまた,法律の無力さを感じさせる出来事でもあった。  次に,オリンパス事件と大王製紙事件も印象に残る出来事であった。企業統治というものの意味を改めて考えさせられる。  判例では,更新料有効判決が印象に残る。  法曹養成制度では,司法修習修了者の就職問題が,更に深刻になっている。  刑事司法では,裁判員制度が定着する一方で,問題点も明らかになってきている。  それと,今年,主要法令のひらがな化がほぼ完了した。 . . . 本文を読む

平成21年新司法試験の結果

2009-09-27 23:06:54 | Weblog
 去る9月10日に,平成21年新司法試験の結果が発表された。この試験結果では,例年どおり,伝統校の強さが際立っているものの,伝統校としても,洛に合格できるというレベルではない。このような合格率では,法曹界に優秀な人材を確保することは難しくなる。各法科大学院とも,定員の削減をしているが,それは,本質的な対策ではない。これからは,法科大学院の教育レベルを上げること,そのために教員の質や,授業内容のレベルアップ,そして,質の高い教材を用意する必要があると思われる。 . . . 本文を読む

最高裁の痴漢無罪判決に思う 2

2009-05-04 16:47:38 | Weblog
 多数意見と反対意見は,鋭く対立しているが,今ひとつ噛み合っていないように感じられる。多数意見は,反対意見の論拠に反論をしておらず,反対意見も,多数意見の論拠を薄弱と決めつけるだけで,これという論証をしていない。私が見るに,多数意見は,全体を通しての人間の行動としての自然さ・不自然さから疑問を提起しているのに対し,反対意見は,論理法則や経験則そのものを取り出して,原判決の検討を,そこに絞って,論理法則や経験則違背がないという判断をしているように思える。この判決により,今後は,「詳細かつ具体的」,「迫真的」,「不自然・不合理な点がない」という,信用性判断のマジックワードの適用に,一層の慎重さが求められることになりそうだ。 . . . 本文を読む

最高裁の痴漢無罪判決に思う 1

2009-05-04 16:40:57 | Weblog
 最高裁が満員電車内の痴漢行為について,原判決を破棄して無罪の言渡しをした。この判決は3対2のきわどい判決だったか,多数意見は,被害者に回避行動が見られないことや,その後の糾弾行為との落差が大きいことを取り上げて,なおその供述の信用性に疑問があるとした。反対意見は,被害者の供述は,詳細かつ具体的,迫真的で,不自然・不合理な点がないことを理由に,これが信用できるとし,多数意見の根拠は薄弱であるとしている。 . . . 本文を読む

ついに出た過払金の消滅時効起算点の判例

2009-02-14 23:47:05 | Weblog
 平成21年1月22日,最高裁は,サラ金の過払金返還請求訴訟における,過払金返還請求権の消滅時効の起算点について,これを取引終了時であるとする新たな判断を示した。その趣旨は,以前の判例で示されていた「過払金充当合意」の中に,一種の期限を読み込むという手法を用いているが,これは,過去の判例との整合性にも配慮した,巧妙な手法といえる。今回の判決は,サラ金マチ金関係に限定したものとなろうが,それと併せて,この判断手法の今後の展開が注目される。 . . . 本文を読む