2012年3月県議会 予算特別委員会
「原子力行政について」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 日本共産党の佐藤正雄である。
まず、原子力問題について質問する。
先ほど農業問題の質問があったが、福島県の農民の方が書いた詩を紹介したい。「田畑を耕すことをとめられ、家畜と引き離され、村を追われた人たち。海を、大地を、水を、空気を、故郷を汚した者たちを決して許さない」という詩である。福島原発事故は、農民だけではなく、中小業者、自営業者、普通の年金生活者を含めた福島県民、また、福島県民だけではなく、重大な影響を及ぼしている。
1年前の福島原発事故は、広島型原爆の20個分、セシウムでは168個分という大量の放射性物質をまき散らかした。15万人以上の人々が生活手段の一切を捨てて、ふるさとを追われたままさすらわなければならず、人生を根底から狂わされている。あらゆる分野に被害が及び、福島県内全体の産業活動は停滞、縮小し、人口減少もとまらない。34年前の人口と同じになってしまう、人口が半分に減るのではないかという試算まで、先日マスコミでは報道されている。1年たっても、事態は全く改善していない。そうした原発事故であり、野田総理の事故終息宣言の撤回を求める声が起こっている。福井県もそうであるが、福島県にも縄文のはるか昔から人々の営みがあったわけである。人が住めないといった、まさに日本の歴史始まって以来の取り返しのつかないことを残念ながら私たちの世代が引き起こしてしまったと言える。とりわけ福井県の嶺南地域、豊かな若狭地域には縄文の時代からの営々とした営みがあったことがいろいろな遺跡によって明らかになっているが、私たちはこの地域をこのような同じ惨害に遭わせてはならないと思う。そのために、やはり私は原発からの撤退を決断すべきだと思う。
こういう立場から、知事に何点か質問する。こういうひどい福島原発事故が起こったが、改めてこの責任はどこにあると考えるのか。
◯知 事 今回の福島の原子力発電所事故などの全般的な問題であるが、原発の安全対策について、国や電力事業者に大きな油断があり、また事故発生直後の最初動の対応にも不注意があったと思う。
国や電力事業者は福島事故の貴重な教訓を生かして、責任ある安全規制体制をつくり、安全対策のさらなら強化に全力を尽くす必要があると考える。
◯佐藤委員 知事はそういう立場で、福島事故での知見に基づいた暫定基準を求めており、国が再稼働について判断することを求めているが、総理大臣とか経済産業大臣とか関係の国の責任者が政治的に再稼働を決断し、福井県にその了解を求めてくるというような局面も予想される。県民の安全を考えて、その内容が不十分だというときには当然、そのことを拒否するつもりかどうか確認したい。あわせて知事が要求しているいろいろな基準、暫定基準を含め、国の監督する組織体制について、どのように求めていくのか。どういう体制があれば、そのことが担保されると考えているのか、二点尋ねる。
◯知 事 まず、国から考え方が示された場合にどう考えるかということであるが、原発再稼働の判断に当たっては、2月23日に牧野経済産業副大臣、神本文部科学政務官に対して要請したところであり、繰り返しになるかもしれないが、原子力発電の意義、原発再稼働の必要性に対する国の確たる見解、地震により重要機器の損傷がなかったと推定されることなどの知見に対する国の見解、福島事故の教訓や知見を反映した暫定的な安全基準の早期設定とスケジュールの明確化、日本海側の地震・津波の調査研究などの科学的知見の反映、こうしたことについて、国が責任ある回答を示す必要があり、県としてその実効性を十分確かめていくということになる。
また、暫定基準の問題に関連し、監督する組織体制についての質問であるが、国は今回の事故により損なわれた原子力の安全に関する信頼を回復し、その機能を強化するため、規制・利用を分離し、規制を一元化する観点から原子力規制庁を設置する法案を閣議決定している。その際には、原子力に関する深い知識と経験を有する人材が登用される必要があり、これが国民から信頼される、責任ある体制として確立されることが重要である。そういう期待もしているし、そして全体として政府が総合的な統制というか、判断を行うということが大事であると考える。
◯佐藤委員 先日、原子力発電・防災対策特別委員会も傍聴したが、福井県はストレステストの一次テストの結果に注目しており、福井県がかねてから要求している暫定基準がどういう形で示されてくるのかによると答弁されていた。この二つをセットで判断するということで間違いないか。
◯安全環境部長 今ほど知事から答えたが、ストレステストについては国のほうが評価するし、暫定的な安全基準も必要であるが、原子力発電の意義、原発再稼働の必要性に対する国の見解、さらにこの暫定的な安全基準についてスケジュールの明確化、重要機器に損傷がなかったとされることの知見に対する国の見解が全体として示されることが必要だと考えている。
◯佐藤委員 ストレステストの審査の結論がきょうにも出るのではないかというマスコミ報道があるが、安全委員会の委員長は「安全委員会が要請した安全評価は一次、二次セットであり、セットでやってもらわないといけない。一次だけでは総合的な安全評価としては不十分だ」と述べている。これは福井県の判断にどう影響するのか。
◯安全環境部長 ストレステストについては、一次評価では、安全上重要な機器が設計上の想定を超える事象に対し、どの程度の安全裕度を有するかを評価する。二次評価では、試験で確認された実際の材料の強さを基準として、機能喪失に至るかを評価するとされているが、この二次評価の時期や、どうやって行うかの手法については、現在明らかにされていない。
県としては、原発の再稼働については、当初からストレステストの結果だけで判断することは不十分であるとしており、本県はこれまで一貫して求めてきたとおり、国が福島原発事故の知見を反映した暫定的な安全基準示すことが大前提と考えている。
なお、原子力安全委員会の委員長の発言に対して、藤村官房長官は2月21日に、事業者が行った一次評価を原子力安全・保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解を含めて、政治レベルで総合的に判定するとしている。
◯佐藤委員 国はわざわざ、テストを一次、二次に分けた。さきの答弁にあった原子力に精通している人材、有能な人材と言えるかどうかは別として、一応そういう人材とされている安全委員会のトップが、一次、二次がセットでないと総合的な安全評価としては不十分だと考えている。そういう考えは違うと言いたいのか。
◯安全環境部長 安全委員会は、当初から一次、二次が必要だと言っているが、再稼働の判断に当たっては、政府は一次評価の結果をもとに判断すると言っている。
本県としては、もともとストレステストというのは、机上のコンピュータのシミュレーションであるので、それに重きを置いているのではないということを説明申し上げた。
◯佐藤委員 ストレステストに対する県の批判はよくわかる。とにもかくにも一次、二次はセットだと言っている。しかも、本来、去年の末が提出期限だと言われていた。関西電力は出していない。ほかの電力会社も出していない。どこの電力会社も出していない。去年の末が期限のテストを出してこないのは、再稼働の判断に関係ないからである。だから、いまだに国から言われたことだけをやっている。国から言われなくても、県民、国民の安全のためにこういう仕事もしておかないといけないという立場に立ってないのではないか。違うか。
◯安全環境部長 委員御指摘のとおり、原子力の安全については、事業者はみずから、当然国の指示を待つことなく積極的にやらなければいけない。これは大切な姿勢であるし、私どもも人員の確保などについて事業者に対応を求めたところである。
今回のストレステストについては、確かに昨年の年末までに二次までの評価をするという指示が出ているが、もともとストレステストをどうやるかということについては、日本で初めて導入されたものであるし、事業者の理解がなかなか進んでいないこともあり、国からどのようにやるかという指示も出ていないので、進んでいないのが実態であると理解している。
◯佐藤委員 いかに国がいいかげんかということを部長は言われたと思う。そういうように何の責任感もない国の原子力行政だということを逆に裏づけた答弁だと思う。逆に言えば、一次テストも信用できないということである。
次に、枝野大臣は、さきの議論にもあった大飯原発の近くの海底断層FO-A、FO-Bと熊川断層の連動について「バックチェックをして、1.8倍の余裕が小さくなることもある」と言っている。当然、連動することを考えれば余裕が小さくなるのは常識というか、普通の理解だと思う。
こういう形で関西電力が県の委員会、あるいは県議会に対して、原子力安全・保安院が説明した1.8倍の余裕に関し、原子力安全・保安院が妥当とした余裕が小さくなると、県の判断にどう影響するのか。
◯安全環境部長 ストレステストの倍数であるが、もともとは、その基準となる地震動の何倍まで耐えられるかという倍数を出したものである。先ほどから申し上げているが、ストレステストにより出た倍数に意味があるのかどうかということについては、かねてから私どもだけでなく、学者の方も議論にのせているところである。
ただ、絶対的にどこまで耐えられるのかというシミュレーションは、それはそれで意味のあることだと思っているが、基準が見直されれば、その倍数が変わるのは当然であり、その辺の知見については、国がしっかり審査してほしいと考えている。
◯佐藤委員 こういうテストと倍数に意味があるのかというような答弁であるが、一体我々県民は何をもとに安全になったと判断できるのかということになる。部長の言われるのはそのとおりであり、枝野大臣も「ストレステストを行ったからといって、それだけで安全性が確認されるものではない」と国会答弁ではっきり言っている。
だから、逆に言えば、大臣も、部長と同じとは言わないが、「ストレステストをやったからそれで安全が確認されたというわけではなく、余り過信しないでほしい」と言っている。
こういう国のストレステストの結果に対し、福井県が国のやり方だけでは駄目だといろいろ注文つけているのはわかるし、福井県の注文というのは妥当だと思うが、本体の国が、大臣がストレステストをやっても安全性が確認されたわけじゃないと平気で言うような国の原子力行政は信用できないし、その結果も信用できないということになるのではないか。
◯知 事 余り極端な物の言い方はどうかと思うが、我々としては、ストレステストについてはしっかり進めてもらいたいと思う。
さらに、我々としては福島の知見をいかに反映させるかということで、さきに申し上げた4項目、あるいは5項目、それぞれスケジュールも違うが、それをきちっとしっかり進めていただき、それをもとに政府の責任ある見解、いろいろな方がいろいろなことを言われるかもしれないが、責任ある見解を国民の前に示すということが大事であるということを求めている。
◯佐藤委員 何も極端なことを言っているのではない。経済産業大臣の国会答弁である。経済産業大臣が国会答弁で、「ストレステストをやったからそれだけで安全性が確認されるというものではない」と言っている。僕が極端なのではない。経済産業大臣の答弁だから、知事も信用できなくなるのではないかと尋ねている。
◯知 事 そういうことを申し上げているのではなく、全般的な発言に対して、その発言の真意のもとに言っていただいたほうが議論がかみ合うのではないかと申し上げている。
◯佐藤委員 部長も枝野経済産業大臣もストレステストだけではきちんとしたサンプルにはならないということをわかって言われていると改めて私は痛感した。
次に、斑目安全委員会委員長は、非常に反省され、大分お疲れでもうやめたいと言われているみたいである。斑目委員長は国会で「シビアアクシデントについてはIAEAでは規制を検討しているが、平成4年に日本では事業者任せにしていた。深く反省している。それから今回の全交流電源喪失については、その可能性は非常に低いということで、真剣な検討を日本ではしてこなかった。非常に深く反省している」と答弁している。だから、やはりでたらめな安全委員会だったということが言える。全く規制が効いていなかった。委員長自身が国会で謝罪している。
そうなると、安全委員会が中心になってつくってきたいろいろな耐震とか原子力の指針のたぐいの見直しが始まっているが、こういうものがきちんと整合性がとれて、新しい規制体制のもとでつくり直されないと、安心して再稼働議論に進めないのではないか。
◯安全環境部長 規制の全体について、すべて見直されなければ安全が確保されず、再稼働はできないという考えでなく、私どもとしては基本的なところの安全が確保され、その後、判明した知見については順次対応されていくことで安全性が確保されていくという考え方をとっている。
◯佐藤委員 基本的と部長は言われるが、指針は基本である。基本中の基本で斑目委員長は反省しているわけであり、基本がおかしかったと言っている。
◯安全環境部長 その意味は、今回の福島ではどういうことにより事故が起きたのか、また、その対策はどうかというのが今回の事故を踏まえた、まさに基本のところと考えている。そこのところについては、全電源喪失あるいは津波対策等々の対策が国の意見聴取会等で議論されていると考えている。
◯佐藤委員 そういうものがきちんと日本の指針には反映されていないということを安全委員長みずからが謝罪されているわけだから、やはり福井県民の安全を守るという立場に立って、そういう議論を精査し、それまで再稼働の判断はしないというぐらいのことを求めておきたい。
あわせて、もう一つ大事なのは、これまでも議会でも繰り返し取り上げられてきた地域防災計画の問題である。
細野原発事故担当大臣は、新しく法制度を発足させた上で半年ほどかけて新しい指針を踏まえた防災計画をつくると国会答弁している。
だから、ハード面では、例えば関西電力、原子力安全・保安院がいろいろやって、県の求めるものが出されてくる。しかし、もう一つの住民との関係の防災計画は、半年ぐらいたたないと新しい指針を踏まえたものが提起できない。そうなると、建物はそれなりに県の求めに応じたものになるが、肝心の住民避難の関係、防災計画の関係はまだ整わないということで間違いないか。
◯危機対策監 現在、福島の事故を教訓にして、防災指針を見直しているところである。
県もその防災指針の完成を待つことなく、今やらなければならないこと、福島の知見を踏まえてどういうふうに防災計画を見直していくのか、鋭意作業をしているところである。
◯佐藤委員 不十分なままの再稼働は駄目だということである。そういうものがきちんと、いざというときの体制も整えてからそういう議論をしなければいけない。
先ほど市議会議長会の話があった。敦賀市議会から出された意見書について、ほかの市長が反対し、結果的に否決された。これは、非常に大事な問題だと思う。知事も読んだと思うが、前の来馬原子力安全対策課長が一昨年本を出された。私も一昨年買って、読み、今回質問の前にもう一回読んだ。来馬課長は「原子力という公共性はオセロゲームに似ている。幾ら一市町村が賛成しても、周りの市町村が反対すれば無意味だ。もちろん福井県はオセロゲームで言うならばほぼ真っ白だ。要するに推進派である。しかし、高レベル廃棄物の最終処分場をめぐり、ある県の候補であったまちが、周辺自治体からの反対で候補から取り下げられたように、福井県もまた大きなオセロゲームの中にいる」と言っている。ゲームに例えるのはどうかと思うが、いずれにしても来馬課長は「君は原子力を考えたことがあるか」という著書の中で、このように表現されている。
来馬課長の言い方を借りれば、これまでは真っ白だったかもしれないが、今は黒い石がどんどん打たれている。ぱっと真っ黒になるかもしれない。そういう局面が県下の九つの市の市議会議長会での結論だと思う。知事はどのように認識されているか。
◯知 事 趣旨がわからない。
◯佐藤委員 要するに来馬課長は、これまで福井県は大体全市町村そろって、原発推進という立場で進めてきたが、実際には、どこかの県で一つでも反対が起こり、周りの市町村が反対すれば、うまく進まなくということを書いている。そのとおりだと思う。
だから、今回、原発立地の近くの越前市や小浜市を含め、もちろん嶺北の市も含め、やはり原子力政策は見直すべきだという声がほうはいとして上がっている。知事はどのように認識されているか。
◯知 事 今、例に取り上げられた著書についても、そのような単純なことだけを書いているわけではないし、いろいろことを総合的に書いている。その中での議論であり、もちろん我々は安全神話をずっと信じて仕事をしてきたわけではない。何十年にわたって責任を持って、立地あるいは周辺地域等々と十分な議論をしながら今日に至っている。そういう実績をしっかり理解願いたい。
◯佐藤委員 福島県もそうである。立地町はもちろん、ほかの市町も福島県庁の言うことを信用してきた。その結果が今度の事故である。
だから、今度の結果を受けて、福井県内の市町も本当に大丈夫かと心配し始めている。そのことを知事は感じないのか。
◯知 事 福井県は、福井県のみならず、議会もそうだし、市町もみずからの立場で住民の安全を守りながら原子力発電所の問題に取り組んでいる。私どもだけが何か特別なことを市町に指示したり、そんなことをしているわけではない。
◯佐藤委員 私はそういうことを言っているのではない。福島原発事故を受けて、これだけ心配の声が高まっている。県民はもちろん、県民だけでなく、自治体の首長、市長、あるいは議長、議員の中にもそういう不安の声が高まっているということを当然感じているから、知事も慎重になっているのだと思う。
だから、そういうことを踏まえ、かねてから要求しているように、説明会を開くとか、以前開いたようなフォーラム形式にするかどうかは別にして、やっぱり県民が不安に思っているときには県が積極的に前に出て答えてもいいのではないか。
◯知 事 そういういろいろなことがあるから、国に対してさまざまな条件なり、あるいは安全の基準なり、それ以外にも原子力事業者のいろいろな課題や、避難道というか制圧道路の問題や、さまざまなことを総合的に議論しながら進めているのであり、それをもとに今回の再稼働の問題やその他について県民の信頼を得る形で方向性を出したい。
◯佐藤委員 きのうの原子力発電・防災対策特別委員会で最後に中川委員長も言っていたが、なぜ避難道をつくるのかというと、それは事故が起こる可能性があるからである。やはり、そういうことを不安に思うわけで、それに応えてきちんと、道路をつくったからもういいだろうではなく、仮に避難道をつくっても、県民に対してきちんと説明責任を果たしていくことを求めておきたい。
「新幹線・並行在来線経営分離について」
◯佐藤委員 次に、新幹線の問題である。
北陸新幹線により県民の利便が向上すると福井県はこれまで広報しているが、福井駅から東京駅、南越駅から東京駅、敦賀駅から東京駅、いろいろなことが考えられるが、こういうケースについて、現行の東海道新幹線の利用と比べると時間がどれだけ短縮されるのか。また、料金がどれだけ安くなるかという利便性はいかがか。
◯総合政策部長 今回、「ひかり」と「こだま」と、それより速い「のぞみ」タイプの中で「ひかり」の時間がクローズアップされて報道されていたようであるが、最速タイプの「のぞみ」タイプで計算すると、福井駅から東京が現行3時間28分であるのに対し、最速タイプで2時間52分で約36分短縮、料金は現行片道1万4,260円に対し1万3,840円で420円安くなるという試算である。
また、同様に南越駅から東京については、現行では武生から東京駅間が3時間20分であるのに対し、最速タイプと緩行タイプの「こだま」タイプを乗り合わせると約3時間9分で11分の短縮となる。料金については現行1万3,940円に対し、1万4,160円と220円のプラスである。
敦賀駅については、現行3時間に対し、最速タイプで3時間8分で8分のプラス。料金は1万3,210円に対し1万4,370円と、1,160円のプラスとなる。
なお、今回の国の試算については、費用対効果の確認のため、やや堅めに試算されている旨報告されており、実際のダイヤや料金については、開業直前に運行主体であるJRによって決められることから、ダイヤや料金が県民にとって利便性のあるものになるよう強く求めていきたい。
◯佐藤委員 こういう数字がきちんと県民に示されると、県全体、県民の全体益から見れば時間短縮効果もなかなか厳しく、料金が値上がりするところも出てくるわけだから、厳しいというのが実感だと思う。
例えば、最速タイプの「のぞみ」タイプの県内の停車駅はどこを想定しているのか。
◯総合政策部長 最速タイプで言えば、県庁所在地の福井駅、終着駅の敦賀駅ではないかと考えている。
◯佐藤委員 先日の新幹線・地域鉄道調査特別委員会の中で、「大宮駅どまりということが一部で言われたが、その可能性があるのか」という質問に対し、部長は「議論の中ではそういう話は出ていない」という答弁であった。
これは、あり得ないという意味か、それとも議論されていないだけで、あり得るという意味なのか、どちらなのか。
◯総合政策部長 あくまで東京から敦賀まで直通で来るということしか考えていない。
◯佐藤委員 ところが、平成12年の福井市議会で福井市の都市戦略部長は、「新幹線のダイヤについて、繁忙期には一部大宮駅発着となることもあるかもしれないが、通常期には基本的には東京への乗り入れが確保される」と答弁している。福井市の部長は、一部、埼玉県の大宮駅発着の新幹線ダイヤとなることもあると答弁しているが、この認識の違いは何か。
◯総合政策部長 福井市の部長の答弁の趣旨はよくわからないが、我々は東京駅から敦賀まで直通としか聞いていない。
◯佐藤委員 こういうことも含め、福井県庁、福井市役所がそういう大事な問題で答弁が違うということでは利便性の問題が大きく変わってくる。埼玉の大宮駅でおりて、乗りかえて東京に行かなければいけなということになると、時間短縮効果が飛んでしまう。そういうことも含めてきちんと精査してほしい。
◯総合政策部長 今のような事実を我々は聞いていないので、精査をするも何もないと思っている。
◯佐藤委員 福井市の部長が議会でいいかげんな答弁をしたと言いたいのかもしれないが、必ずしもそうではないと思う。
私も直接国土交通省へ行って、こういう問題が本当に起こるのかということで確認したが、福井市の部長の答弁のように、もちろん全部が大宮駅どまりにはならないが、あっちでもダイヤが込み合って、ふくそうしているので、繁忙期にはそういうこともあり得るというのが国土交通省の回答である。国土交通省がうそをついているのか。
◯総合政策部長 今、小委員会などでも盛んに議論されているが、そういう話題は一切出ていないので、我々としては全く承知していない。
◯佐藤委員 議論のテーマになっていないということと、そういう問題が起こり得ないということとは別だということで、最初に私は質問した。やはり、こういう問題にもきちんと対応して、県民に説明してもらいたい。
次に、三セク化の問題である。一般質問でも取り上げたが、沿線自治体の住民の多数は、そもそもこの北陸線がJRから切り離され、三セクになるということを知らないことが多い。一体どういう形になるのか、どういう姿になるのかということが示されないまま、先日、知事と沿線の市町長がJRからの経営分離の合意をしたことは大問題だと思う。このように、住民への説明責任を行わない行政でいいのか。
◯知 事 先般の県と沿線市町による合意であるが、新幹線着工の基本的条件である並行在来線の経営分離の同意に当たり、経営分離後も地域で存続を図ること、それから認可後に対策協議会を設置することなどを改めて確認し合ったものである。
並行在来線は県民の日常生活に欠かせない重要な交通手段であり、これまで新幹線の必要性とあわせ、ホームページ等各種広報手段、職員による出前講座などを通して先行した他の県の事例を説明するなど、幅広く理解を求めている。
新幹線の早期開業に向け、認可後も円滑な事業進捗を図っていくためには、まず、何よりも県民の理解と協力が必要であるので、引き続き県民に十分な理解を求めていきたい。
◯佐藤委員 マスコミによれば、沿線自治体だけではなく全自治体に負担を求めると報道されていた。
では、沿線自治体以外の、例えば大野とか勝山とか永平寺等の了解はとれているのか。また、沿線自治体以外の市町に対して、いつ説明しているのか。
◯総合政策部長 対策協議会にすべての自治体に参加してもらうかどうかについては今後議論していくということを言っただけである。一部マスコミ報道で全市町の参加を求めるという報道もあったように聞いているが、これは石川、富山の例を参考として出した際に富山県の例を引っぱられ、そのように受けとめられたと思っている。
我々としては、これから協議していきたい。
◯斉藤委員長 以上で佐藤正雄君の質疑を終了した。
ここで休憩する。再開は午後1時とする。
「原子力行政について」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 日本共産党の佐藤正雄である。
まず、原子力問題について質問する。
先ほど農業問題の質問があったが、福島県の農民の方が書いた詩を紹介したい。「田畑を耕すことをとめられ、家畜と引き離され、村を追われた人たち。海を、大地を、水を、空気を、故郷を汚した者たちを決して許さない」という詩である。福島原発事故は、農民だけではなく、中小業者、自営業者、普通の年金生活者を含めた福島県民、また、福島県民だけではなく、重大な影響を及ぼしている。
1年前の福島原発事故は、広島型原爆の20個分、セシウムでは168個分という大量の放射性物質をまき散らかした。15万人以上の人々が生活手段の一切を捨てて、ふるさとを追われたままさすらわなければならず、人生を根底から狂わされている。あらゆる分野に被害が及び、福島県内全体の産業活動は停滞、縮小し、人口減少もとまらない。34年前の人口と同じになってしまう、人口が半分に減るのではないかという試算まで、先日マスコミでは報道されている。1年たっても、事態は全く改善していない。そうした原発事故であり、野田総理の事故終息宣言の撤回を求める声が起こっている。福井県もそうであるが、福島県にも縄文のはるか昔から人々の営みがあったわけである。人が住めないといった、まさに日本の歴史始まって以来の取り返しのつかないことを残念ながら私たちの世代が引き起こしてしまったと言える。とりわけ福井県の嶺南地域、豊かな若狭地域には縄文の時代からの営々とした営みがあったことがいろいろな遺跡によって明らかになっているが、私たちはこの地域をこのような同じ惨害に遭わせてはならないと思う。そのために、やはり私は原発からの撤退を決断すべきだと思う。
こういう立場から、知事に何点か質問する。こういうひどい福島原発事故が起こったが、改めてこの責任はどこにあると考えるのか。
◯知 事 今回の福島の原子力発電所事故などの全般的な問題であるが、原発の安全対策について、国や電力事業者に大きな油断があり、また事故発生直後の最初動の対応にも不注意があったと思う。
国や電力事業者は福島事故の貴重な教訓を生かして、責任ある安全規制体制をつくり、安全対策のさらなら強化に全力を尽くす必要があると考える。
◯佐藤委員 知事はそういう立場で、福島事故での知見に基づいた暫定基準を求めており、国が再稼働について判断することを求めているが、総理大臣とか経済産業大臣とか関係の国の責任者が政治的に再稼働を決断し、福井県にその了解を求めてくるというような局面も予想される。県民の安全を考えて、その内容が不十分だというときには当然、そのことを拒否するつもりかどうか確認したい。あわせて知事が要求しているいろいろな基準、暫定基準を含め、国の監督する組織体制について、どのように求めていくのか。どういう体制があれば、そのことが担保されると考えているのか、二点尋ねる。
◯知 事 まず、国から考え方が示された場合にどう考えるかということであるが、原発再稼働の判断に当たっては、2月23日に牧野経済産業副大臣、神本文部科学政務官に対して要請したところであり、繰り返しになるかもしれないが、原子力発電の意義、原発再稼働の必要性に対する国の確たる見解、地震により重要機器の損傷がなかったと推定されることなどの知見に対する国の見解、福島事故の教訓や知見を反映した暫定的な安全基準の早期設定とスケジュールの明確化、日本海側の地震・津波の調査研究などの科学的知見の反映、こうしたことについて、国が責任ある回答を示す必要があり、県としてその実効性を十分確かめていくということになる。
また、暫定基準の問題に関連し、監督する組織体制についての質問であるが、国は今回の事故により損なわれた原子力の安全に関する信頼を回復し、その機能を強化するため、規制・利用を分離し、規制を一元化する観点から原子力規制庁を設置する法案を閣議決定している。その際には、原子力に関する深い知識と経験を有する人材が登用される必要があり、これが国民から信頼される、責任ある体制として確立されることが重要である。そういう期待もしているし、そして全体として政府が総合的な統制というか、判断を行うということが大事であると考える。
◯佐藤委員 先日、原子力発電・防災対策特別委員会も傍聴したが、福井県はストレステストの一次テストの結果に注目しており、福井県がかねてから要求している暫定基準がどういう形で示されてくるのかによると答弁されていた。この二つをセットで判断するということで間違いないか。
◯安全環境部長 今ほど知事から答えたが、ストレステストについては国のほうが評価するし、暫定的な安全基準も必要であるが、原子力発電の意義、原発再稼働の必要性に対する国の見解、さらにこの暫定的な安全基準についてスケジュールの明確化、重要機器に損傷がなかったとされることの知見に対する国の見解が全体として示されることが必要だと考えている。
◯佐藤委員 ストレステストの審査の結論がきょうにも出るのではないかというマスコミ報道があるが、安全委員会の委員長は「安全委員会が要請した安全評価は一次、二次セットであり、セットでやってもらわないといけない。一次だけでは総合的な安全評価としては不十分だ」と述べている。これは福井県の判断にどう影響するのか。
◯安全環境部長 ストレステストについては、一次評価では、安全上重要な機器が設計上の想定を超える事象に対し、どの程度の安全裕度を有するかを評価する。二次評価では、試験で確認された実際の材料の強さを基準として、機能喪失に至るかを評価するとされているが、この二次評価の時期や、どうやって行うかの手法については、現在明らかにされていない。
県としては、原発の再稼働については、当初からストレステストの結果だけで判断することは不十分であるとしており、本県はこれまで一貫して求めてきたとおり、国が福島原発事故の知見を反映した暫定的な安全基準示すことが大前提と考えている。
なお、原子力安全委員会の委員長の発言に対して、藤村官房長官は2月21日に、事業者が行った一次評価を原子力安全・保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解を含めて、政治レベルで総合的に判定するとしている。
◯佐藤委員 国はわざわざ、テストを一次、二次に分けた。さきの答弁にあった原子力に精通している人材、有能な人材と言えるかどうかは別として、一応そういう人材とされている安全委員会のトップが、一次、二次がセットでないと総合的な安全評価としては不十分だと考えている。そういう考えは違うと言いたいのか。
◯安全環境部長 安全委員会は、当初から一次、二次が必要だと言っているが、再稼働の判断に当たっては、政府は一次評価の結果をもとに判断すると言っている。
本県としては、もともとストレステストというのは、机上のコンピュータのシミュレーションであるので、それに重きを置いているのではないということを説明申し上げた。
◯佐藤委員 ストレステストに対する県の批判はよくわかる。とにもかくにも一次、二次はセットだと言っている。しかも、本来、去年の末が提出期限だと言われていた。関西電力は出していない。ほかの電力会社も出していない。どこの電力会社も出していない。去年の末が期限のテストを出してこないのは、再稼働の判断に関係ないからである。だから、いまだに国から言われたことだけをやっている。国から言われなくても、県民、国民の安全のためにこういう仕事もしておかないといけないという立場に立ってないのではないか。違うか。
◯安全環境部長 委員御指摘のとおり、原子力の安全については、事業者はみずから、当然国の指示を待つことなく積極的にやらなければいけない。これは大切な姿勢であるし、私どもも人員の確保などについて事業者に対応を求めたところである。
今回のストレステストについては、確かに昨年の年末までに二次までの評価をするという指示が出ているが、もともとストレステストをどうやるかということについては、日本で初めて導入されたものであるし、事業者の理解がなかなか進んでいないこともあり、国からどのようにやるかという指示も出ていないので、進んでいないのが実態であると理解している。
◯佐藤委員 いかに国がいいかげんかということを部長は言われたと思う。そういうように何の責任感もない国の原子力行政だということを逆に裏づけた答弁だと思う。逆に言えば、一次テストも信用できないということである。
次に、枝野大臣は、さきの議論にもあった大飯原発の近くの海底断層FO-A、FO-Bと熊川断層の連動について「バックチェックをして、1.8倍の余裕が小さくなることもある」と言っている。当然、連動することを考えれば余裕が小さくなるのは常識というか、普通の理解だと思う。
こういう形で関西電力が県の委員会、あるいは県議会に対して、原子力安全・保安院が説明した1.8倍の余裕に関し、原子力安全・保安院が妥当とした余裕が小さくなると、県の判断にどう影響するのか。
◯安全環境部長 ストレステストの倍数であるが、もともとは、その基準となる地震動の何倍まで耐えられるかという倍数を出したものである。先ほどから申し上げているが、ストレステストにより出た倍数に意味があるのかどうかということについては、かねてから私どもだけでなく、学者の方も議論にのせているところである。
ただ、絶対的にどこまで耐えられるのかというシミュレーションは、それはそれで意味のあることだと思っているが、基準が見直されれば、その倍数が変わるのは当然であり、その辺の知見については、国がしっかり審査してほしいと考えている。
◯佐藤委員 こういうテストと倍数に意味があるのかというような答弁であるが、一体我々県民は何をもとに安全になったと判断できるのかということになる。部長の言われるのはそのとおりであり、枝野大臣も「ストレステストを行ったからといって、それだけで安全性が確認されるものではない」と国会答弁ではっきり言っている。
だから、逆に言えば、大臣も、部長と同じとは言わないが、「ストレステストをやったからそれで安全が確認されたというわけではなく、余り過信しないでほしい」と言っている。
こういう国のストレステストの結果に対し、福井県が国のやり方だけでは駄目だといろいろ注文つけているのはわかるし、福井県の注文というのは妥当だと思うが、本体の国が、大臣がストレステストをやっても安全性が確認されたわけじゃないと平気で言うような国の原子力行政は信用できないし、その結果も信用できないということになるのではないか。
◯知 事 余り極端な物の言い方はどうかと思うが、我々としては、ストレステストについてはしっかり進めてもらいたいと思う。
さらに、我々としては福島の知見をいかに反映させるかということで、さきに申し上げた4項目、あるいは5項目、それぞれスケジュールも違うが、それをきちっとしっかり進めていただき、それをもとに政府の責任ある見解、いろいろな方がいろいろなことを言われるかもしれないが、責任ある見解を国民の前に示すということが大事であるということを求めている。
◯佐藤委員 何も極端なことを言っているのではない。経済産業大臣の国会答弁である。経済産業大臣が国会答弁で、「ストレステストをやったからそれだけで安全性が確認されるというものではない」と言っている。僕が極端なのではない。経済産業大臣の答弁だから、知事も信用できなくなるのではないかと尋ねている。
◯知 事 そういうことを申し上げているのではなく、全般的な発言に対して、その発言の真意のもとに言っていただいたほうが議論がかみ合うのではないかと申し上げている。
◯佐藤委員 部長も枝野経済産業大臣もストレステストだけではきちんとしたサンプルにはならないということをわかって言われていると改めて私は痛感した。
次に、斑目安全委員会委員長は、非常に反省され、大分お疲れでもうやめたいと言われているみたいである。斑目委員長は国会で「シビアアクシデントについてはIAEAでは規制を検討しているが、平成4年に日本では事業者任せにしていた。深く反省している。それから今回の全交流電源喪失については、その可能性は非常に低いということで、真剣な検討を日本ではしてこなかった。非常に深く反省している」と答弁している。だから、やはりでたらめな安全委員会だったということが言える。全く規制が効いていなかった。委員長自身が国会で謝罪している。
そうなると、安全委員会が中心になってつくってきたいろいろな耐震とか原子力の指針のたぐいの見直しが始まっているが、こういうものがきちんと整合性がとれて、新しい規制体制のもとでつくり直されないと、安心して再稼働議論に進めないのではないか。
◯安全環境部長 規制の全体について、すべて見直されなければ安全が確保されず、再稼働はできないという考えでなく、私どもとしては基本的なところの安全が確保され、その後、判明した知見については順次対応されていくことで安全性が確保されていくという考え方をとっている。
◯佐藤委員 基本的と部長は言われるが、指針は基本である。基本中の基本で斑目委員長は反省しているわけであり、基本がおかしかったと言っている。
◯安全環境部長 その意味は、今回の福島ではどういうことにより事故が起きたのか、また、その対策はどうかというのが今回の事故を踏まえた、まさに基本のところと考えている。そこのところについては、全電源喪失あるいは津波対策等々の対策が国の意見聴取会等で議論されていると考えている。
◯佐藤委員 そういうものがきちんと日本の指針には反映されていないということを安全委員長みずからが謝罪されているわけだから、やはり福井県民の安全を守るという立場に立って、そういう議論を精査し、それまで再稼働の判断はしないというぐらいのことを求めておきたい。
あわせて、もう一つ大事なのは、これまでも議会でも繰り返し取り上げられてきた地域防災計画の問題である。
細野原発事故担当大臣は、新しく法制度を発足させた上で半年ほどかけて新しい指針を踏まえた防災計画をつくると国会答弁している。
だから、ハード面では、例えば関西電力、原子力安全・保安院がいろいろやって、県の求めるものが出されてくる。しかし、もう一つの住民との関係の防災計画は、半年ぐらいたたないと新しい指針を踏まえたものが提起できない。そうなると、建物はそれなりに県の求めに応じたものになるが、肝心の住民避難の関係、防災計画の関係はまだ整わないということで間違いないか。
◯危機対策監 現在、福島の事故を教訓にして、防災指針を見直しているところである。
県もその防災指針の完成を待つことなく、今やらなければならないこと、福島の知見を踏まえてどういうふうに防災計画を見直していくのか、鋭意作業をしているところである。
◯佐藤委員 不十分なままの再稼働は駄目だということである。そういうものがきちんと、いざというときの体制も整えてからそういう議論をしなければいけない。
先ほど市議会議長会の話があった。敦賀市議会から出された意見書について、ほかの市長が反対し、結果的に否決された。これは、非常に大事な問題だと思う。知事も読んだと思うが、前の来馬原子力安全対策課長が一昨年本を出された。私も一昨年買って、読み、今回質問の前にもう一回読んだ。来馬課長は「原子力という公共性はオセロゲームに似ている。幾ら一市町村が賛成しても、周りの市町村が反対すれば無意味だ。もちろん福井県はオセロゲームで言うならばほぼ真っ白だ。要するに推進派である。しかし、高レベル廃棄物の最終処分場をめぐり、ある県の候補であったまちが、周辺自治体からの反対で候補から取り下げられたように、福井県もまた大きなオセロゲームの中にいる」と言っている。ゲームに例えるのはどうかと思うが、いずれにしても来馬課長は「君は原子力を考えたことがあるか」という著書の中で、このように表現されている。
来馬課長の言い方を借りれば、これまでは真っ白だったかもしれないが、今は黒い石がどんどん打たれている。ぱっと真っ黒になるかもしれない。そういう局面が県下の九つの市の市議会議長会での結論だと思う。知事はどのように認識されているか。
◯知 事 趣旨がわからない。
◯佐藤委員 要するに来馬課長は、これまで福井県は大体全市町村そろって、原発推進という立場で進めてきたが、実際には、どこかの県で一つでも反対が起こり、周りの市町村が反対すれば、うまく進まなくということを書いている。そのとおりだと思う。
だから、今回、原発立地の近くの越前市や小浜市を含め、もちろん嶺北の市も含め、やはり原子力政策は見直すべきだという声がほうはいとして上がっている。知事はどのように認識されているか。
◯知 事 今、例に取り上げられた著書についても、そのような単純なことだけを書いているわけではないし、いろいろことを総合的に書いている。その中での議論であり、もちろん我々は安全神話をずっと信じて仕事をしてきたわけではない。何十年にわたって責任を持って、立地あるいは周辺地域等々と十分な議論をしながら今日に至っている。そういう実績をしっかり理解願いたい。
◯佐藤委員 福島県もそうである。立地町はもちろん、ほかの市町も福島県庁の言うことを信用してきた。その結果が今度の事故である。
だから、今度の結果を受けて、福井県内の市町も本当に大丈夫かと心配し始めている。そのことを知事は感じないのか。
◯知 事 福井県は、福井県のみならず、議会もそうだし、市町もみずからの立場で住民の安全を守りながら原子力発電所の問題に取り組んでいる。私どもだけが何か特別なことを市町に指示したり、そんなことをしているわけではない。
◯佐藤委員 私はそういうことを言っているのではない。福島原発事故を受けて、これだけ心配の声が高まっている。県民はもちろん、県民だけでなく、自治体の首長、市長、あるいは議長、議員の中にもそういう不安の声が高まっているということを当然感じているから、知事も慎重になっているのだと思う。
だから、そういうことを踏まえ、かねてから要求しているように、説明会を開くとか、以前開いたようなフォーラム形式にするかどうかは別にして、やっぱり県民が不安に思っているときには県が積極的に前に出て答えてもいいのではないか。
◯知 事 そういういろいろなことがあるから、国に対してさまざまな条件なり、あるいは安全の基準なり、それ以外にも原子力事業者のいろいろな課題や、避難道というか制圧道路の問題や、さまざまなことを総合的に議論しながら進めているのであり、それをもとに今回の再稼働の問題やその他について県民の信頼を得る形で方向性を出したい。
◯佐藤委員 きのうの原子力発電・防災対策特別委員会で最後に中川委員長も言っていたが、なぜ避難道をつくるのかというと、それは事故が起こる可能性があるからである。やはり、そういうことを不安に思うわけで、それに応えてきちんと、道路をつくったからもういいだろうではなく、仮に避難道をつくっても、県民に対してきちんと説明責任を果たしていくことを求めておきたい。
「新幹線・並行在来線経営分離について」
◯佐藤委員 次に、新幹線の問題である。
北陸新幹線により県民の利便が向上すると福井県はこれまで広報しているが、福井駅から東京駅、南越駅から東京駅、敦賀駅から東京駅、いろいろなことが考えられるが、こういうケースについて、現行の東海道新幹線の利用と比べると時間がどれだけ短縮されるのか。また、料金がどれだけ安くなるかという利便性はいかがか。
◯総合政策部長 今回、「ひかり」と「こだま」と、それより速い「のぞみ」タイプの中で「ひかり」の時間がクローズアップされて報道されていたようであるが、最速タイプの「のぞみ」タイプで計算すると、福井駅から東京が現行3時間28分であるのに対し、最速タイプで2時間52分で約36分短縮、料金は現行片道1万4,260円に対し1万3,840円で420円安くなるという試算である。
また、同様に南越駅から東京については、現行では武生から東京駅間が3時間20分であるのに対し、最速タイプと緩行タイプの「こだま」タイプを乗り合わせると約3時間9分で11分の短縮となる。料金については現行1万3,940円に対し、1万4,160円と220円のプラスである。
敦賀駅については、現行3時間に対し、最速タイプで3時間8分で8分のプラス。料金は1万3,210円に対し1万4,370円と、1,160円のプラスとなる。
なお、今回の国の試算については、費用対効果の確認のため、やや堅めに試算されている旨報告されており、実際のダイヤや料金については、開業直前に運行主体であるJRによって決められることから、ダイヤや料金が県民にとって利便性のあるものになるよう強く求めていきたい。
◯佐藤委員 こういう数字がきちんと県民に示されると、県全体、県民の全体益から見れば時間短縮効果もなかなか厳しく、料金が値上がりするところも出てくるわけだから、厳しいというのが実感だと思う。
例えば、最速タイプの「のぞみ」タイプの県内の停車駅はどこを想定しているのか。
◯総合政策部長 最速タイプで言えば、県庁所在地の福井駅、終着駅の敦賀駅ではないかと考えている。
◯佐藤委員 先日の新幹線・地域鉄道調査特別委員会の中で、「大宮駅どまりということが一部で言われたが、その可能性があるのか」という質問に対し、部長は「議論の中ではそういう話は出ていない」という答弁であった。
これは、あり得ないという意味か、それとも議論されていないだけで、あり得るという意味なのか、どちらなのか。
◯総合政策部長 あくまで東京から敦賀まで直通で来るということしか考えていない。
◯佐藤委員 ところが、平成12年の福井市議会で福井市の都市戦略部長は、「新幹線のダイヤについて、繁忙期には一部大宮駅発着となることもあるかもしれないが、通常期には基本的には東京への乗り入れが確保される」と答弁している。福井市の部長は、一部、埼玉県の大宮駅発着の新幹線ダイヤとなることもあると答弁しているが、この認識の違いは何か。
◯総合政策部長 福井市の部長の答弁の趣旨はよくわからないが、我々は東京駅から敦賀まで直通としか聞いていない。
◯佐藤委員 こういうことも含め、福井県庁、福井市役所がそういう大事な問題で答弁が違うということでは利便性の問題が大きく変わってくる。埼玉の大宮駅でおりて、乗りかえて東京に行かなければいけなということになると、時間短縮効果が飛んでしまう。そういうことも含めてきちんと精査してほしい。
◯総合政策部長 今のような事実を我々は聞いていないので、精査をするも何もないと思っている。
◯佐藤委員 福井市の部長が議会でいいかげんな答弁をしたと言いたいのかもしれないが、必ずしもそうではないと思う。
私も直接国土交通省へ行って、こういう問題が本当に起こるのかということで確認したが、福井市の部長の答弁のように、もちろん全部が大宮駅どまりにはならないが、あっちでもダイヤが込み合って、ふくそうしているので、繁忙期にはそういうこともあり得るというのが国土交通省の回答である。国土交通省がうそをついているのか。
◯総合政策部長 今、小委員会などでも盛んに議論されているが、そういう話題は一切出ていないので、我々としては全く承知していない。
◯佐藤委員 議論のテーマになっていないということと、そういう問題が起こり得ないということとは別だということで、最初に私は質問した。やはり、こういう問題にもきちんと対応して、県民に説明してもらいたい。
次に、三セク化の問題である。一般質問でも取り上げたが、沿線自治体の住民の多数は、そもそもこの北陸線がJRから切り離され、三セクになるということを知らないことが多い。一体どういう形になるのか、どういう姿になるのかということが示されないまま、先日、知事と沿線の市町長がJRからの経営分離の合意をしたことは大問題だと思う。このように、住民への説明責任を行わない行政でいいのか。
◯知 事 先般の県と沿線市町による合意であるが、新幹線着工の基本的条件である並行在来線の経営分離の同意に当たり、経営分離後も地域で存続を図ること、それから認可後に対策協議会を設置することなどを改めて確認し合ったものである。
並行在来線は県民の日常生活に欠かせない重要な交通手段であり、これまで新幹線の必要性とあわせ、ホームページ等各種広報手段、職員による出前講座などを通して先行した他の県の事例を説明するなど、幅広く理解を求めている。
新幹線の早期開業に向け、認可後も円滑な事業進捗を図っていくためには、まず、何よりも県民の理解と協力が必要であるので、引き続き県民に十分な理解を求めていきたい。
◯佐藤委員 マスコミによれば、沿線自治体だけではなく全自治体に負担を求めると報道されていた。
では、沿線自治体以外の、例えば大野とか勝山とか永平寺等の了解はとれているのか。また、沿線自治体以外の市町に対して、いつ説明しているのか。
◯総合政策部長 対策協議会にすべての自治体に参加してもらうかどうかについては今後議論していくということを言っただけである。一部マスコミ報道で全市町の参加を求めるという報道もあったように聞いているが、これは石川、富山の例を参考として出した際に富山県の例を引っぱられ、そのように受けとめられたと思っている。
我々としては、これから協議していきたい。
◯斉藤委員長 以上で佐藤正雄君の質疑を終了した。
ここで休憩する。再開は午後1時とする。