漁師の仕事は厳しくて危険である。常に危険と隣り合わせであり、もっと言えば『死』と隣り合わせという覚悟がいる。いわゆる『度胸』がドーンと座っていないことにはいつ荒れ始めるやも知れぬ大海に乗り出すことなど出来るものではない。
♪ 沖は地獄だ 戦場だ~
というのはまさに亜矢ちゃんの歌う「度胸船」の一節であるが、やはり漁師さんは誰も、いつもこの覚悟を心の奥底に抱いて漁に出るのでしょうね。
それを支える家族も又半端な事では勤まらないだろうと思います。殊更妻の立場となれば相当な気構えがいるのではないだろうか。漁というものを生業とするものの宿命と言えばそれまでであり、毎日の暮らしの中ではそこまで深刻に考えて過ごしているわけではないだろうけれども、「いざ」という時の覚悟だけは常に頭のどこかに残っていることでしょう。
日常の明るい会話の中にもそんな厳しい現実が隠されているのかと思うと、ただそれだけでも漁師という仕事そのものに畏敬の念を払わずにはおられません。
そしてつい先日、それこそ「沖は地獄だ 戦場だ」という文句が現実のものとなってしまいました。政府や防衛省官僚に対する問題点が指摘されていますが、この親子の命はもう帰ってきません。
『浦じまい』という言葉を初めて知りました。事故直後は仲間の船も出て昼夜を徹して懸命な捜索が毎日続けられますが現実にはそのような状態をいつまでも続けられるものでもなく、家族・親族を中心にそれこそ断腸の思いで、諦めきれない思いを押し殺して覚悟を決めなければなりません。捜索打ち切りの儀式です。やりきれませんねー。
テレビの映像を見ている私達でさえ胸が締め付けられる思いでしたからその家族の方達、特に船長の妻であり息子さんの母である奥さんの心中は察するにあまりあります。
崩れ番屋で飯を炊きながら夫や家族の無事の帰港を待つ女の気持ちを思うと、「海ぶし」も心して聞かねばならないと思う今日この頃です。
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