Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

「グッバイ26歳」

2012-08-30 08:21:51 | 小説
 僕は明日で27歳になるニートです。恥の多い生涯を送ってきました。

 僕の朝に満員電車はありません。寝て起きてすぐ安い缶チューハイを飲むのが日課です。アルコールが心を消毒するように、今はとってもハッピーな気分です。色んな感情がマイルドになります。死ぬことさえも怖くなくなります。
 パソコンを広げ、就活ごっこをして、自分を誤魔化しています。「今日もリクナビのHPにアクセスしたぞ!」という事実が欲しいだけです。絶えず押し寄せる不安の波に任せてネットサーフィンすれば、自然とエロサイトにたどり着きます。快楽と引き換えに寂しさを手に入れました。
 気付けば毎日のようにミヤネ屋を観ている気がします。普通の社会人には縁のない番組です。僕はいつまでこんな生活を送るのでしょうか。テレビのスイッチを切ります。
 やがて中学生の下校時刻となり、家の周りが喧騒に包まれます。ふと覗いた窓の外に小柄な男の子を見つけ、若き日の自分を重ね合わせます。夕日に照らされたその背中をいくら目で追えども、ただ遠ざかりゆくばかり。僕は今日も己の幻影に惑っています。
 そろそろ野球の時間です。僕の応援する福岡ソフトバンクホークスは最近好調で、一時期と比べたらストレスフリーな観戦が叶います。でも、ふと虚しくなることがあります。たとえホークスが勝っても自分の人生には特に関わり合いのないことです。日本一まで漕ぎ着けても、それで職が貰えるわけじゃない。じゃあ僕は何のために野球を観るのだろう。何のために一喜一憂するのだろう……。
 夕食を取り、お風呂に入ると、再びお酒の時間です。今日は奮発して、甘口のワインと、おつまみはローストビーフです。僕はやがて公園のゴミ箱を漁って生計を立てる予定です。今のうちにささやかな贅沢を楽しんでおこうと思います。
 酔いを醒ますために散歩に出ました。歩き煙草をし、ちょっとワルになった気分のままに暗がりに歩を進めると、車の中で全裸になっているカップルがいます。街灯に照らされたペニスとヴァギナが丸見えです。

 僕は何だか27歳を頑張れそうな気がするのでした。ピンクの乳首に元気をもらったのでした。そんなバースデー直前なのでした。


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