Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

青い記憶

2012-06-04 01:04:55 | 野球
 ジャイアンツ杉内投手のノーヒットノーランは、個人的には様々な感情が湧いてくる出来事だった。

 まず一番目は「裏切り者の分際でノーノーなんかやりやがって。去年の夏、Kスタで今回と同じくマー君と投げ合った時は無様なピッチングだったくせに」という感情。ホークスを散々バカにする発言をした上での移籍だったから、面白くない気持ちがないと言えば絶対に嘘になる。

 一方で、どういうわけだろう。それ以上に強いのが「そりゃうちの看板投手だったんだもの。巨人程度のチームでならばエースになってもらわなきゃ困るし、ノーヒットノーランもやって当然」という感情なんだよね。杉内のことを好きか嫌いかと聞かれたら大嫌いだ。でも、だからと言って炎上している姿を見たいとは思わない。彼に対しては、そんな複雑な気持ちを抱いている。

 杉内の件に限らず、自分は性格的に意外と甘いところがある。最も印象深いのは、高校時代、友人が色々あってさ。相談相手にオレを選ぶんだけど、その方法があまりに非常識だったんだよね。学校から帰ってきたらすぐ電話が掛かってきて晩ご飯の時間まで話し、お風呂等を済ます時間を見計らうように改めて電話が鳴り、今度は深夜までひたすら愚痴を聞かされる、みたいな。

 そんな生活がひと月も続いたら、オレじゃなくたってストレスは溜まるだろう。最初は可哀想だと思って親身になって聞いていても、次第に「何だよ、こいつ。いつまでもウジウジしやがって。一番の原因はその性格にあるんじゃないのか」という気持ちが強くなってくる。だから、ある日、もちろん言い方には注意を払いながらではあるけれどアドバイスをした。「お前、もっと強くなれよ」と。

 そしたら、翌日、教頭に呼び出しを食らった。彼が学校を休んで、その理由としてオレからのイジメを挙げたらしかった。自分にしてみりゃ「冗談じゃねぇよ!」ってな感じなんだけども、あいつの両親が騒いだこともあって、停学や退学こそ免れたものの、その場で反省文を書かされた。こちとら、全然反省してないのにさ(笑)。

 どう考えても、あそこはオレの人生にとって大きな転機なんだよね。あの件で学校への不信感さえ抱かなければ、友達もたくさんいて楽しかった高校生活をドロップアウトすることなどありえなかったろうし、当然、通信高校なんかに行く必要もなかった。大学だってもうちょいマシなところに入れたかも分からない。もちろんそれは言い訳であって、現在無職なことも含め、全ては自己責任なんだけど、あのタイミングで半ばヤケ気味に進路を決めた代償が果てしなく大きいのも事実だと思う。

 にも関わらず、今になって「もう少し優しい言葉を掛けてやれなかったかな」などと考えることがある。誤解のないよう言っておくと、オレは自分の言動を後になって結構反省するタチではあるものの、10年前のあのアドバイスが間違っていたとは断じて思わない。しかし、すると同時に彼との楽しい思い出もセットで浮かんでくるようで、極端に言えば「オレが間違ってたことにしてもいいかな」と、そんな風になってしまう瞬間がある。

 まぁ遠い昔、オレがまだ青かった頃の話だ。今ならあんな奴の相談には乗らず、自分が傷付くこともないままに狡猾な立ち回りをするに違いない。違いないんだけども、一方で、またいつかあの時と同じ過ちを犯しそうな気もする。結局のところ、そんな自分がどこか嫌いになれないんだろうね。