雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

社会力の貧しさ ・ 小さな小さな物語(1780)

2024-06-23 08:03:27 | 小さな小さな物語 第三十部

六月二十二日午前、天皇皇后両陛下は、イギリスを国賓として公式訪問のため、政府専用機で羽田空港から出発されました。帰国は二十九日のご予定です。
わが国の皇室とイギリス王室との交流の歴史は長く、明治二年( 1869 )にイギリスのアルフレッド王子が来日しましたが、明治天皇は国賓の礼でもてなすことを命じ、王子と面談なさいましたが、これが両国の皇室(王室)交流の最初のようです。
その後、第二次世界大戦という不幸な期間はありましたが、私たち国民もイギリスという国家に親近感を感じる人は少なくありませんし、皇室交流は極めて親密と思われます。
さらに、天皇皇后両陛下ともに、オックスフォード大学に留学経験があることも今回の訪問に彩りを添えるような気がします。

皇室外交という言葉が使われることがあります。
わが国の憲法は、天皇は「日本国と日本国民統合の象徴」と定められています。この『象徴』をどのように理解すればよいのか未だに私は分らないのですが、政府はじめ多くの機関や人々が、天皇と政治を切り離すことに腐心しているようです。
宮内庁は特に神経を使っているようで、「皇室に外交はない」として皇室外交という言葉を使うことを嫌っているそうです。その為か、大手マスコミなどではあまりお目に掛からないような気がします。
しかし、外国の方々が見る目は少し違うようで、ほとんどの国の政権を担っている人などは、わが国の憲法上の立場を承知されているのでしょうが、そうした人々も含めて、訪問先では、政治的な実権はないとしても国家元首的な存在として受け取られているように見えます。そして、そのお人柄は、訪問国に多くのものをもたらせてくれています。
ある元外交官のお方が、「皇室の方のご訪問は、あたたかな関係を築くということでは、外交官が束になっても及ばない」と言ったことを話されていた記憶があります。

最近、オーバーツーリズムが問題視されることが増えています。
経済対策として、海外からの観光客の受け入れに躍起になってきましたが、旗振りに比べて受け入れ態勢への対応が手薄であったり、ネット社会の特徴として、国内では観光地の末席にも連なっていなかったような地域が、突然、大勢の外国からの観光客が訪れるようになり、小さな自治体は手も足も出なくなっている面もあります。
また、観光客の中には、お国柄もあるのかもしれませんが、ごくごく常識的に考えて、とんでもない行動や要求する人もあるようです。
受け入れ態勢などは、小さな自治体にまかせるだけでなく、国家全体の事業として対応すべきだと思うのですが、同時に、私たち国民の一人一人が、観光立国として胸を張れるだけの心構えも必要な気がします。
あたたかなおもてなしは当然必要ですが、目に余る行動や態度を取る観光客に対しては、内外からの人に限らず、凜とした態度で接することが出来る識見を育てたいものです。
社会力を向上させるということでしょう。

国力の向上には多くの要素が必要なことは当然です。そして、それらのベースとなるものは、国民一人一人の品格であり、つまり社会力の向上だと思うのです。
残念ながら、密かに懸念していたことですが、告知されたばかりの東京都議会選挙は、世界中に、わが国の社会力の貧しさ、低俗さを振りまいてしまっているような気がします。
東京都の健全で逞しい成長は、わが国全体のレベルを引き上げてくれるはずで、そのリーダーを選ぶ都知事選挙に大きな関心を持っていましたが、まったくがっかりしてしまいました。
国民一人一人の品格を少しずつ引き上げて社会力を豊かにする手段は簡単ではありませんが、その途上としては、アレも駄目コレも駄目といった、事細かな制限を設ける必要がありそうです。全く残念です。


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