雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

さかしきもの

2014-06-07 11:00:23 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百四十一段  さかしきもの

さかしきもの。
今様の三歳児(ミトセゴ)。
乳児の祈りし、腹などとる女。物の具ども乞ひ出でて、折りものつくる、紙をあまたおし重ねて、いと鈍き刀して切るさまは、一重だに断つべくもあらぬに、さる物の具となりにければ、おのが口をさへひきゆがめて押し切り、目多かるものどもして、かけ竹うち割りなどして、いと神々しう仕立てて、うちふるひ祈る言ども、いとさかし。
     (以下割愛)


口達者な者。
近頃の三歳児。
乳幼児の病気平癒を祈祷し、産婦の按摩按腹などを業とする巫女。必要な材料などを出してもらって、祈祷の道具を作るのですが、紙を沢山押し重ねて、とてもなまくらな刀で切るさまは、一枚でも切ることが出来ないのに、きまりの道具になっているものですから、自分の口まで引き歪めてむりやり押しきり、刃の沢山ついた金物なんかで、幣を掛ける竹を打ち割りなどして、たいそう神々しく仕上げて、大きな幣を打ち振り祝詞を上げたりするのは、実に達者なものです。

その上、
「何とかの宮様、どこそこの殿の若様が、ひどくお苦しみでございましたので、拭いとるようにおなおし申し上げたものですから、ご祝儀を沢山下されたことったら。誰や彼やと他の祈祷師をお召しでしたが、効き目がなかったものですから、とうとう、この婆をね、お召しになりご贔屓にあずかっていますよ」
などと、話している顔も、物欲しそうなのですよ。

下種の家の女主人。
馬鹿な奴。そんな馬鹿が、口だけは達者で、本当に賢い人に教えがましくしたりするのですから。



いつの世も、あまり口が達者すぎるのは嫌われるようです。
ただ、枕草子の中では、御前近くに仕える女房方も、おしゃべりの方が多いようです。少納言さまはどうだったのでしょうか? 一言多いような場面が、たまに見受けられますが・・・。

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