雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

高齢者が優しい社会 ・ 小さな小さな物語 ( 1806 )

2024-09-18 08:00:03 | 小さな小さな物語 第三十一部

9月16日は「敬老の日」でしたが、周囲でどういう行事がありましたか。
私が属している町内会では、75歳以上の人に対してカステラが贈られました。5~6百円の物ですが、十年以上続いています。市からの補助金らしいものもあったのですが、支援条件が難しくなり、当町内会は数年前から受け取っていません。受け取る人の数は年々増えていますので、乏しい町内会会計は厳しくなりつつあります。
以前は、町内会とは別に、「老人会」という親睦団体もありましたが、これも数年前に解散しました。入会者が減ってきたことと、世話する人、つまり役員のなり手が減り、自治会の上位の役員が全て高齢者であることもあって、消滅に至りました。
そして、今日は9月18日ですが、身の回りで、高齢者に関する行事や話題は何か出ていますでしょうか。

もっとも、こうした事は何も「敬老」に関してだけでなく、何々記念とか、あれから何年といった物の多くはそういうもので、1年365日の中には、かなりの記念日などがありますから、そうそう関わっていられないというのはよく分ります。たとえ1日でも拘ってもらえる記念日は、まだ結構だと言うことかもしれません。
それでも、敬老会の当日には、テレビでは各地の催しの様子が幾つも伝えられていました。幼い子供たちがお年寄りたちにお手紙を書いたとか、ちょっとしたプレゼントしたとかといった、あたたかな話題は、見ていてとても嬉しいものです。まあ、動物園などで、高齢の動物にプレゼントしているニュースの方が、視聴率が稼げるという話もあるらしいですから、複雑な気持ちもありますが、「高齢者に優しい社会」は、やはり良いものだと思います。

敬老の日の新聞には、高齢者の数がこれまで最多の3,625万人になったという見出しが大きく出ていました。65歳以上の人の人口を指していますが、総人口の29.3%で先進国で突出しているそうです。さらに、まだまだこの比率は高くなり、2040 年には34.8%まで上昇する見込みだそうです。
敬老の日はご承知の通り国民の祝日の一つですが、その法律には、「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ことを趣旨としています。
ところが、残念ながら、一面のかなりのスペースを割いているその記事には、老人への敬愛のかけらも見受けられず、高齢化社会の大変さを述べ続けているように見受けましした。
私たちの社会は、果して「高齢者に優しい社会」なのでしょうか。

高齢化社会が、若い人への負担を増大させ、社会全体を疲弊させると考えるのであれば、高齢者の数を減少させ、全人口に占める比率を低下させるしかありません。その為に、「姥捨て山政策」が取れないのであれば、高齢者の定義を変更させるしかありません。すでに医療保険制度では、前期高齢者と後期高齢者を75歳で区切っていますが、例えば、これを参考とするならば、75歳までの労働環境を劇的に整備を進めるべきだと思うのです。折から、自民党総裁選挙では、各候補者が働き方改革も話題にしていますが、75歳までの人が快適とまではいかなくとも、それなりの生きがいと経済的利益を得られる環境を構築して欲しいと願います。
そして、同時に、高齢者となり、あるいは差し掛かろうとしている人たちは、「あれも欲しい、これも欲しい」はそこそこにして、別の価値観を手にする必要があります。
「高齢者に優しい社会」は豊かで心温まる社会です。わが国の伝統としてそうした社会を守っていきたいと思いますが、わが国の現状を考えたとき、ここは一つ覚悟を決めて、「高齢者が優しい社会」の構築に向かうべきではないでしょうか。


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