夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ミッドナイト・トラベラー』

2021年10月06日 | 映画(ま行)
『ミッドナイト・トラベラー』(原題:Midnight Traveler)
監督:ハッサン・ファジリ
 
第七藝術劇場にて、ドキュメンタリー3本ハシゴの〆。
 
アメリカ/カタール/カナダ/イギリス作品です。
 
アフガニスタンの映画監督ハッサン・ファジリは、タリバンから死刑を宣告されます。
彼が撮ったドキュメンタリー作品がタリバンの不興を買ったから。
親しかった友人は政府への不満からタリバンに入れ込み、
しかしハッサンの身が危険だということを知らせてきてくれました。
その友人が殺害されたことを知り、ハッサンは家族4人で出国することを決意します。
 
まず向かったのはタジキスタン。
そこで庇護申請の書類を提出しますが、却下されてしまう。
一旦アフガニスタンに戻ることを余儀なくされ、
その後、安全な場所を求めて一家の過酷な旅が始まります。
本作はその5,600キロに渡る旅を3台のスマホで撮影したもの。
 
食べるものがなくて果実を盗もうとしたら追いかけられたなんてのは笑えます。
でも、ぼったくりの密航業者に娘の誘拐を示唆されるのはもちろん笑えない。
難民キャンプに収容され、買い物に出かけたら、「移民は出て行け」と石をぶつけられる。
収容施設もさまざまで、不衛生なところも多い。
なんだかわからない虫に刺されて、娘の顔も体もぼこぼこになったり。
マイケル・ジャクソンの曲で楽しげに踊る娘の顔をずっと見ていられたらいいのに。
 
金を払えば密入国という手段もある。
けれど、不法に入国すれば、いつまでも追い出される心配がつきまとう。
時間がかかってもいいから合法的に入国したいという妻。
 
夫妻ともに映像に関わる仕事をしているからなのか、
悲惨な中にあっても景色も表情も豊かでとても美しい。
それだけに、彼らが安心して暮らせる日が来てほしい。
いまだに安住の地が見つからないまま。
コロナでより過酷な日々になっているかもしれません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする