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『アバウト・レイ 16歳の決断』

2018年02月10日 | 映画(あ行)
『アバウト・レイ 16歳の決断』(原題:3 Generations)
監督:ギャビー・デラル
出演:ナオミ・ワッツ,エル・ファニング,スーザン・サランドン,
   テイト・ドノヴァン,リンダ・エモンド,サム・トラメル他

5本ハシゴしようと思えばできた日。
去年までの私なら、何が何でもハシゴを完遂していたはず。
しかし、「無理はしない」のが今年のテーマだから、
気分が乗らないままダラダラしていたら出遅れました。
休みの日のハシゴ1本目が11時近くなんてあり得んと苦笑いしつつ、
大阪ステーションシティシネマにて3本ハシゴの1本目。

それぞれに問題を抱える母娘三代を描く作品。
母娘三代ではなかったけれど、『20センチュリー・ウーマン』(2016)と似た雰囲気。
新旧名女優たちが揃っています。

ニューヨークに暮らす16歳の少女ラモーナは、
幼い頃から性同一性障害に悩み、自分は男であると公言。
“ラモーナ”ではなく“レイ”を名乗っている。

レイを育てたのは、あけすけな恋愛を繰り返してきたシングルマザーのマギー。
そしてこの母娘が身を寄せるのは、祖母ドリーのアパートの上階。
ドリーはレズビアンで、長年パートナーのフランシスと同棲。

性別移行を望むレイに、ドリーは「なぜレズビアンでは駄目なのか」と問う。
女が好きならばレズビアンでもトランスジェンダーでも同じじゃないか。
そう考えるドリーは、レイの想いがどうしても理解できない。

16歳になったレイは転校を決意。
新しい学校で男としての生活を開始させるのに間に合うように、
一刻も早いホルモン治療を希望するが、それには親の同意書が必要。
しかも母親のマギーのみならず、父親の署名もいるという。
仕方なくマギーは長らく音信不通の夫クレイグの居場所を探すのだが……。

そもそも本作が製作されたのは3年も前。
トロント国際映画祭で上映したら評判イマイチだったため、
公開を止めようかという話になり、やっぱり公開。
日本でも2年前に公開するはずが取りやめ。
どういう経緯があったのか、今になってやっぱり公開に。

主演のエル・ファニングトランスジェンダーでないことも咎められたそうな。
トランスジェンダーでない俳優がトランスジェンダーの役を演じるのは
好ましくないということのようですが、うーむ、難しい。
トランスジェンダーの俳優がそうでない役を演じるのがあかんという話にはなりませんよね。
おそらくそういう役ばかりオファーが来たら、差別だと言われかねず。
だけど、カミングアウトすれば、自然とそういうオファーが増えるでしょうし、
仮にそうでない役を演じていても、カミングアウトしたことを知っていれば、
いくら演技だとわかっていても、この人はトランスジェンダーだとか、ゲイだとか、
映画鑑賞中もそれを考えずにはいられない場合があります。
たぶんこうしてトランスジェンダーとゲイを同じように並べて書いている時点で、
私は何もわかっちゃいないことになるのでしょう。

イマイチだという批判は知らなかったことにして、
個人的には普通以上に楽しめる作品でした。

脇毛ボーボーでこの役に臨んだエル・ファニング。
女として扱われたときの同様がよく表情に出ていると思いました。

娘の意思を尊重したいと思いつつも、娘はまだ16歳、
もしも今後、やはりあのとき治療すべきでなかった、
女のままでいればよかったとレイ自身が思う日が来ないとも言えない。
署名を躊躇するマギーの心情をナオミ・ワッツは見事に表しています。

そしてドリー役のスーザン・サランドンはやはり名優。
こんなふうに生きられたら素敵です。

ジェンダーを扱う難しさは、ただ事ではないのでしょう。
お気楽に観ては駄目ですか。

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