minaの官能世界

今までのことは、なかったことにして。これから考えていきます。

どろろ

2007年11月04日 | 映画鑑賞
 他に観たい作品があったのだが、「どろろ」が気になって仕方がないので、朝一番の上映を観に行ったのは今年2月の劇場公開時のことである。今回、DVD鑑賞したのを機会に感想を少しだけ・・・・・・。
 原作は、手塚治虫の漫画である。
 学生時代によく通っていた漫画喫茶に「どろろ」の単行本が置いてあって、全巻読んだ。随分と前のことになるので、記憶は鮮明ではない。
 それでも「妖怪を一匹やっつけると身体の一部が戻ってくる」と言う不思議な設定は覚えている。そして、案外と熱中してしまって、全巻読み終えるまでコーヒー一杯で粘ったことも思い出した。
 原作では「どろろ」は、確か「男の子」だったような記憶があるのだが、はっきりとしない。そう言えば、盗賊であった父親の残した財宝の隠し場所が背中に刺青されていて、興奮するとそれが浮かび上がる仕掛けだった。

 こうなると、もういけない。
 わたしは、もう一度読み返すべく、全四巻を入手してしまった。
 そうだ。やっぱり「どろろ」は、「女の子」という設定だった。

☆原作が描かれたのは、昭和40年代・・・・・・

 オープニングは、さすがに漫画界の巨匠手塚治虫氏の作品だけに、これ以上はないというほどの劇的なものである。

 原作を読み直してみて、オープニングに関しては、映画が全く原作に忠実であることが判った。

 既に40年近い年月が流れていることを考えれば、今もって当時のままの構成で何の古臭さもなく、むしろ斬新な印象さえあるイントロができてしまうことは驚異的というほかない。
 わたしには、新作の構想を練っていた手塚氏が、ある晩、突然に「どろろ」の導入部分のプロットが閃き、一気呵成に原稿を書き上げる光景が目に浮かんだ。閃きだから、後のことなんかあまり考えなかったのではないかと思ってしまう。
 この作品の肝は、ほとんどがこの導入部分にあるといっても過言ではないだろう。
 己の欲望を満たすために、まさにこの世に生れ出ようとしている我が子の肉体を、妖怪に差し出す父親の罪深さは、この世の地獄として目を覆いたくなる。

 しかし、それでも、原作が描かれた頃の世情は、現代よりはずっとまともであったようで、父親の欲望とて、戦乱に明け暮れる非情な世を平定し、平和な世界を築きたいという高邁な理想に基づくものであった。今ならば、理想のために愛する我が子を犠牲にせざるを得なかった父親として、下手をすると美談になりかねない。

☆現代に通じる権力への抵抗

 原作で繰り返し描かれている戦乱の犠牲者たちの悲劇。飢えと貧困が、容赦なく弱者を襲う。

 どろろも百鬼丸も、その犠牲者であり、弱者の代表として描かれている。そこには、救いようのない悲しみがある。権力者たちの圧制に懸命に耐える民衆と、何とか圧制を撥ね返し一矢を報いようとする者、仲間を売ってでも自分だけは権力者側に取り入ろうとする者、それらの人間の業が見事に凝縮されて描かれている。
 この作品で描かれている民衆の苦難が、現代の疲弊し切った国民生活と重なって見えてしまうのはわたしだけではないはずだ。国民の生活を犠牲にした政治はどのような理由があるにせよ、否定されるべきものだ。「国民にも応分の負担を」などと自らの政治責任を棚上げするようなことをしゃあしゃあと言ってのけていた首相を、あんなに長く居座り続けさせた我々自身の責任も重い。
 日本人は自らを犠牲にするという行為に陶酔してしまう傾向がある。日本人は基本的にお人よしなのだ。その日本人がやっと間違いに気がついて、政権交代を要求しているのが現在の状況と言えるのではないだろうか。

 小沢さんもそのへんのところを読み違えないようにしてほしい。あくまでも政権交代でなければ意味がないのだ。

☆カッコ良過ぎた仇役

 醍醐景光/中井貴一は、最後がカッコ良過ぎた。百鬼丸との戦いで、命を落とした多宝丸を救うために、妖怪を欺き、自分の身体に憑依させた上、自刃するなんて・・・・・・。

「さあ、討てっ。儂を妖怪もろとも殺せっ」
 一国の主として、父親として、カッコ良過ぎる。手塚治虫の原作にも、これはなかった。
 原作発表当時ならば、こんな安直な展開は使えなかっただろう。
 しかし、現代ではこれが新鮮に見え、ドラマの筋書として使えてしまう。自己犠牲は尊いものではあるが、美化し過ぎると「強要」の風潮を生む。太平洋戦争末期の「特攻隊」や沖縄戦における「集団自決」の例を挙げるまでもなく、「犠牲」というものはあってはならないものなのだ。「どろろ」発表当時は、まだまだ戦争の記憶は生々しかったから、特攻隊などの悲惨な「自殺行為」への反省から、安易な自己犠牲は描かれなかったのではないかと考えてしまう。
 現在は、それが風化してしまったに違いない。
 現在の日本は、生活苦、多重債務問題などで自殺者の数は依然として多く、先進諸国の中で自殺者数が断トツの1位というありがたくない結果となっている。風化してもいいような状況ではないのだ。

☆どろろvsあずみ

 わたしの個人的嗜好の問題なのだろう。どうしても、比較してしまいたくなった。
 わたしが監督なら、どろろ役には、もちろん上戸彩を起用する。わたしは、上戸彩の大ファンだから。御免なさい、柴咲コウさんのファンの方々。

 つまりは、「どろろvsあずみ」とは、「柴咲コウvs上戸彩」のことなのだ。
 柴咲コウの「どろろ」はとても良かったけれど、上戸彩のあずみほどはしっくりこなかった。どうしてなんだろうと考えてみると、年齢設定の問題に行き着く。既に大人の女の魅力を溢れさせている柴咲コウに、制作者たちは何歳の女の子を演じさせたつもりなんだろうか。原作の「どろろ」は、恐らく小学生くらいの女の子だろう。劇場版では、それに近いものを彼女に求めたような気がしてならない。そんな設定では、わたしの大好きな上戸彩ちゃんでも無理だ。そんなこともあって、わたしの希望は、もう少し違う設定で、上戸彩主演のテレビドラマ版の「どろろ」が観てみたい。
 もう少し違う設定とは、原作にある「どろろ」の「百鬼丸」に対する幼い恋心をもう少し大人の関係にするということだ。女優の年齢に合わせた設定で、無理なく情感たっぷりに演じさせてみたい。「あずみ」で果たせなかった恋愛における「ハッピーエンド」を上戸彩がどんなに演じるか、想像しただけでもファンとしてはわくわくしてしまう。

とてもおもしろかったので、ハートは3つ


☆ブログランキングに参加しています。

 気に入ったら、プチッと押してね、お願い → 

 こちらもお願いね → 



どろろ(通常版)

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

このアイテムの詳細を見る


最新の画像もっと見る

21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
小沢 (kossy)
2007-11-04 22:53:12
どうもお久しぶりです。
今日は小沢氏の辞任問題でニュースが埋め尽くされているようですが、想像するに単なる責任逃れのような気がしてなりません。
最近の日本の政治家なんて、美談なんてものは一つもなく、また変な動きが出てくるんじゃないかと不安にもなっちゃいますね~

それはともかく、民衆が痛めつけられ、それに抵抗していく姿を描いた作品は熱くなってしまいますなぁ。
返信する
どろろは……。 (えい)
2007-11-04 22:56:27
こんばんは。
ぼくも柴咲コウはミスキャストだと思います。
無理して男の子っぽく振る舞っていて
それが痛々しい。
ぼくは多部未華子と、
最初から思っていましたが
『西遊記』に取られましたね。
返信する
kossyさんへ (mina)
2007-11-05 00:18:49
小沢さん、辞めちゃったですねぇ。
党役員たちは慰留に努めるとの報道だから、どうなるか判んないけど。
わたしは、辞めて欲しくないですね。もうちょっとで、自民を打ち砕くことができるところまできているのだから。
ま、わたしのような無力な人間が何を言っても無駄でしょうけれどもね。
官僚と政治家。エリートのはずなのに、想いの外、能力がない。政治家は、我々が選んだのだから、仕方がないけれど、高級官僚のやりたい放題には憤りを感じています。連中をリコールする方法はないのか。
返信する
えいさんへ (mina)
2007-11-05 00:23:34
どろろには、もう少し少女に近い方を選んで欲しかったですね。わたしも、それらしい女優はいくらでもいるだろうにと思ってしまいました。
多部未華子は想像つきませんでした。
わたしの想像できる範囲は、例えば、新垣ちゃんとかエリカ女王様とかかな。もちろん上戸彩ちゃんも。
返信する
どっちかっつーと柴咲コウ派 (Ken)
2007-11-05 02:16:23
久しぶりに映画評が復活されましたね。
何だか嬉しいです。
「どろろ」原作漫画も読み返したら面白いでしょうね。僕は昔々読んだ記憶だけで、自分の「どろろ」記事で漫画の感想、書きましたから。昔の印象がそれ程残っていなくて(イイカゲン)。多分、ストーリーの内容的には映画より漫画の方がずっと濃いんじゃないですか?
映画はラスト、親子兄弟の情愛の方に行っちゃって‥。確かに妻夫木、柴咲の年齢の男女で、行動を共にしてお互いあれだけ親しければ、恋愛の方に、もっと濃い愛情に走らない方がむしろおかしく思われそうですね。現実にはあの二人はイロイロ噂されてたし。
まさか小沢さんが辞任するとは思いませんでしたね。福田さんとの連立に少しは気持ちの動いた小沢さんが、何人か連れて独立し、新党結成で福田自民党と手を結ばないことを祈るばかりです。
あれ?blogアタマに官能小説のショートストーリーが来てませんでしたか?あれは新作と思ってたんですが、そうじゃなかったんですね。あれも読んで、コメントを入れようかと思ったけど、官能小説のコメは難しいですね。ともすればセクハラと取られそうな気もするし‥。
映画評頑張って続けてくださいね。
返信する
Kenさんへ (mina)
2007-11-05 06:05:19
コメント、ありがとうございます。
ほんとに久しぶりに書きました。どろろに至っては、映画館で観てから半年以上も放置。簡単な感想を日記に書いてはいたのですけれど、しっくりしなかったもので・・・・・・。今般、小沢さんの一連の騒動をみていて、ちょっと書こうかなと。
官能小説は、しばらく掲示したら、後ろの方に引越しさせています。トップに晒したままだと、少し恥ずかしいので。カテゴリーで呼び出して読んでいただけたらうれしいです。
返信する
懐かしいです (bjsf2006)
2007-11-05 19:25:12
 実は映画はみていませんが,コミック「どろろ」ははるか昔,愛読書?でした.妖怪が怖くてページをめくるのに戸惑ったにも関わらず,百鬼丸が格好良くて大好きな本でした.
 どろろが背伸びして百鬼丸についていく様子ははらはらもしましたし,どろろの母親がお椀の代わりに両手で熱い粥を溜めて飲ませるところは,子供心にすごくつらく覚えています.
 手塚治虫はほんとにいろいろなことを言いたかったんでしょうね..
返信する
bisf2006さんへ (mina)
2007-11-05 20:21:22
どろろの母親のあのシーンは、何度観ても胸が痛み、涙が出ます。
親は子供のためなら、自分の命だって投げ出します。
そのはずなんです。
子供を虐待したり、殺したりできるはずがありません。それなのに、今の世の親たちは、お金のために自分の子供を殺したり、虐待したりする。
この世の地獄です。
そういうシーンが「どろろ」にも出てきます。
人間とは仏にも鬼にもなるものなのですねぇ。
返信する
柴咲コウ (猫姫少佐現品限り)
2007-11-06 00:28:04
うちの漢字変換、一発で柴咲コウと出るよ。
あたしはどろろ、全く違和感なかった。全然違うのにね。それより、おぼっちゃまなブッキーの方が、違和感あったわ。
あたしは今の世の中、はっきり言って、政治家や政党が、どう変わろうと、なんの変化もないと思う。変わるべきは国民。人の税金だと思って湯水のごとく使う基地外を、つるし上げて火あぶりにするとか、税金も年金も払わないプータローを、強制労働させるとか、、、
もっと過激なこと、いっぱいあるけど、、、もうやめた。
返信する
猫姫様へ (mina)
2007-11-06 07:38:19
ご来訪、ありがとうございます。
妻夫木さんは、なよっとしてる感じだけれど、男前なので許すことにしてます。
税金や年金を湯水の如く使ってしまった連中は・・・多分高級官僚のこと?・・・わたしも許せませんね。年金は、集めるだけ集めといて、払う気なんかなかったのではないかとすら思ってしまいます。どこかの悪徳商法と同じじゃない?
返信する

コメントを投稿