「もう、帰りましょう」
ひとみは、隣の智也に切羽詰ったように言った。
「なんだ、もう、我慢できないのか」
智也は、ひとみの肩を抱くようにして、そのまま、ひとみのブラウスの襟元から腕を入れ、胸をやわやわと揉みしだいている。
ひとみは、彼女の勤め先と智也と同棲しているアパートの途中にある公園のベンチに、智也と二人並んで座っていた。こうして、ひとみの勤め帰りに、智也が公園まで迎えに来て、ひと . . . 本文を読む
「智也さんになにかおいしいものを食べさせたいな」
ひとみは、スーパーに向かいながら思った。幸福だった。愛する男と二人きりで過ごす。別々の家に帰らなくても良いのだ。一緒に寝て、起きれば、すぐ隣に居る。たったそれだけのことだったが、そのことがひとみを幸せにしていた。二人の仲がいいのは、近所でも有名だった。買物もほとんど一緒に出掛けたし、いつも腕を組んだり抱き合っているものだから、目立っていたのかも . . . 本文を読む
男たちは、ひとみの腕と脚の縛めを解いた。
ようやく、手足が自由になり、自分を拉致した連中を観察する余裕ができ、彼らの風貌をちらちらと盗み見した。男は、全部で四人。ゆったりしたシルクのシャツを纏い、白いタイツ状のものを穿いている。全員、日本人離れした逞しい体格をしており、まるで、映画に出てくる特殊部隊の隊員のようだった。
こんな連中が何故わたしなんかを……。
ひとみには、合点がいかなかった。 . . . 本文を読む
「一年間の専属契約です」
目の前に座っている若い女はこともなげに言った。その日の生活費にも苦労している売れない駆け出しの絵描きの彼にとって、夢のような話だった。
「これは、支度金として、百万円。社長から預かってきました」
彼、杉野 智也は、いちもにもなくその話にのった。今時、余程の事でもない限り、パトロンなんてつく時代ではない。思い出のあるこのアパートを離れ、パトロンの別荘に移り住むのは . . . 本文を読む
扉を開けると、2階まで吹き抜けのエントランスホールだった。大理石張りの床には緋色の絨緞が奥の大階段まで一直線に敷かれ、天井には、豪華なシャンデリアが輝いている。絨毯の両脇には、うやうやしくメイドたちが並び、出迎えてくれた。
驚いたことに、メイドたちは申し訳程度の小さな前掛けのほかには下着を着けておらず、パンティストッキングを穿いているだけだ。乳房は丸出しだし、陰毛もはっきりと透けて見える。 . . . 本文を読む
理菜の部屋は、智也の部屋よりもかなり広く、管理を任せられているだけあって、部屋の中にはパソコンやモニターといった監視機器が並べられている。壁を埋め尽くしたいくつものモニターには屋敷のあらゆる場所が映し出されていた。
「智也、見て」
智也をよぶのが、いつのまにか呼び捨てになっている。これが、何度か肌を合わせた証なのか。見れば、モニターのひとつに、涼子とその他の女たちが映っている。
涼子は後 . . . 本文を読む
「我国の軍事衛星から送られてきた写真です。東京郊外の山中から巨大なエネルギー波が発生しているのが鮮明に写っています。」
「それで、これを何だと思っているのかね、国務長官。」
「不明です。しかし、日本政府は、この件については、関与していないようです。」
「うむ。さっそく極秘で調査部隊を派遣するのだ。これほどの高出力のエネルギー源は核エネルギーでなければ無理だろう。さもなければ、全く新しいテ . . . 本文を読む
イシス星は、地球から十万光年離れた銀河系のはずれにある。千年以上も前に宇宙開拓に乗り出していたイシス星人は、その黎明期に、偶然にも短時間で地球に辿り着ける一種の時空のひずみであるワープ航路を発見した。以来、彼らは頻繁に地球に訪れるようになった。彼らにとって、地球は安心して滞在できる場所だった。彼らと地球人の外観はそっくりであり、また、両星の生態系も相違点を見つけることの方が難しい位、酷似してい . . . 本文を読む
ケンはどうやら会社に間に合った。イリヤもぎりぎりで遅刻せずにすんだ。全くエクスプレスラインは速い。ただし、2千万エクスもエネルギーを使ってしまった。2億エクスもあれば、半年は楽に生活できることを考えると勿体なかった気もするが、まだ、4千万エクスも残っているのだから、よしとしなければならない。そんなことより、彼の突然の変化の方が気になる。どうして、あんなに大量のエネルギーを放出できたのか、イリヤ . . . 本文を読む
それから、一週間後、彼らは受胎休暇を正式に取ることにした。双方の上司はいい顔はしなかった。特に、ケンの女上司は必死で止めさせようとした。特別昇格や勤務条件の優遇など、彼女の権限でできることは全て使って止めようとした。最後は泣きながらすがりついてきた。
「どうしても行くのね。」
女上司は最後にポツリと言った。
「判ったわ。でも、必ずこの職場に復帰してほしいの。あなたなら・・・、あなた . . . 本文を読む
美奈はケンの胸の中で、ケンの黒いスーツの胸に描かれたSのマークを指でなぞっていた。
「よかった。」
美奈は呟いた。
「なにがよかったんだい。」
美奈はケンの眼をみつめ、いたずらっぽく笑った。
「ばか。そんなこと、きかないで。」
「これで、支配人に怒られないですむね。」
「ええ。ありがとう。」
「計測してみないのかい。」
「ううん・・・。もう少しだけ、こうしてい . . . 本文を読む
休暇施設に戻った美奈は、大変な歓迎を受けた。既に、性エネルギー局からSSクラス承認の通知が届いていたからである。アルバート支配人は、施設の玄関口まで出ていた。
「美奈さん、SSクラス昇格、おめでとうございます。」
彼は、満面の笑顔で彼女を迎え入れた。性エネルギー法では、SSクラスにあらゆる特権を認めており、職位で言えば、彼女は支配人よりも上席になる。この施設のあらゆる決済権限は、今や、 . . . 本文を読む
彼女は、足元まで覆う白いローブを羽織っていた。イシス星の女性が身体を隠すのは珍しいことだ。歩を進める度にローブの前が割れて、一瞬、股下まで白い脚が覗く。思わず奮いつきたくなるような脚は、むっとするような色気を発散していた。膝より上は見えそうで見えない。いつも見えているものが見えないとなると、どうしても見たくなるのは、当然の心理である。梢は、そんなケンの心のうちを見透かしたか焦らす様に、殊更、ゆっ . . . 本文を読む
「局長のご両親も、子供が欲しくて、転地療法で地球に行かれたのですよね。地球では妊娠し易いと言われていますから。そして、局長をお産みになった。イシス星の女性にとって、地球生まれということが知れると、ご両親の妊娠能力に問題があったと思われてしまい、とても不利なんです。そして、その子供である自分もそうだと決めつけられると、男性を獲得するのに、とても大きなハンディになってしまいます。」
「だから、地 . . . 本文を読む
「さて、イリヤと美奈にどう話そうか。」
「美奈さんをここに呼んでください。」
「どうしてだ。」
「実は、美奈さんと知り合いだと言ったら、びっくりする?」
梢は、語尾を上げるような話し方をし、ケンの顔を覗き込んだ。驚いたことに、梢にセックス技術を指導したのは、美奈だと言うのだ。美奈は、まさかそれがケンのために行われているものであるとは知らずに、個人指導を続けたのだ。道理で、ケンの . . . 本文を読む