絵本を100冊読む宣言をしたら、ぜひこれを読んでと同僚が貸してくれた本。
チビクロさんぽ
原作:ヘレン・バナマン
翻訳(改作):森 まもり
北大路書房
1997年10月20日初版
幼い頃に読んでいた「ちびくろサンボ」がある日突然、絶版となったことを覚えているだろうか?
そして、カルピスの商標やダッコちゃん人形も消えていったことを。
日本で育った私にとっては「ちびくろサンボ」が黒人差別の話と言われてピンとは来ない。
お父さんのジャンボとお母さんのマンボと主人公のサンボが暮らしていた。
ある日、両親に新しい上着、ズボン、靴、傘をもらったので、それを身につけてジャングルに行く。
そこで通りかかった虎たちに次々と命の代わりにと身につけていたものを渡していく。
ジャンボは裸になってしまった。
虎たちは誰が一番かを競いあい、お互いの尻尾に噛み付いて木の周りをぐるぐると回り出す。
取られてしまった、上着、ズボン、靴、傘は放り投げられ、サンボはそれを拾って家に帰った。
再度木に行くと、木の周りには美味しそうなバターが出来上がっていた。
そのバターを持ち帰り、お母さんにパンケーキを焼いてもらいみんなで食べた。
何がいけなかったのか。
「チビクロさんぽ」付属の解説書で説明されていた。
この本を書いたのは当時信州大学教育学部助教授。
「森 まもる」はペンネームである。
誰にも愛されたお話だから、悪いところを改定して出版すれば良いのではないかと出した本である。
主人公は「チビクロ」という名前の黒い犬。
当然、お父さんもお母さんも犬。
チビクロが森に散歩に行って虎と出会うお話。
当時、「ちびくろサンボ」は絶版となっただけで出版禁止になったわけではない。
それなのに、長野オリンピックを控えていた長野では書店や学校、図書館だけでなく家庭の本も廃棄するようにという運動が起こったらしい。
この本を貸してくれた同僚が話してくれた。
教育熱心な長野県らしいが、廃仏毀釈の時代のようだ。
出版はしたが、この「チビクロさんぽ」も問題図書だと抗議が来たらしい。
長野の歴史をまた一つ覚えた。
平成生まれの同僚に「ちびくろサンボ」知っている?
と尋ねたら「知らない」と返答。
2児の母である。
童話や民話などには差別的な表現は多々あった。
そういうものはどんどん消えていっているのだろうか?
それも歴史を知るひとつだと思う。
紹介してくれた同僚に感謝である。
私事ですがマクラメで長く使える質の良いフリント式ライターを探していたのですが皆無です。昨今の事情から培われた技術ともども消えてなくなることから修理も期待できないことから別なものを探しました。
公の場から姿を消す排斥の潮流は一度始まるとなかなかとまりませんし、その影響は長く続き、絶やしてはいけないと考える人が多いかと思います。
「それが」無くても支障がない人たちは作品自体の価値と無関係に決断できるのかと思います。支障があれば議論されるのでしょう。
でも、思い出のある方にはラブリーな作品。そういった本が大切に残されていたのかと思うと、少しほっこりしました。