本大好き・音楽大好き

図書館と古本屋さんをipodを連れ合いにして歩くのがほぼ日課

頑張ったね

2009-03-20 19:39:06 | Weblog

夕方6時 退院前の説明を聞きに病院へ行く

見舞い客用のデイルームで 待っていると
  
     「どうしてなんだ…」  つぶやく声
  
     「え」
  
     「いえね 四人めなんですよ…妻や子供がみんな」

      訥々と話が続く


その方は齢80才

30代で妻を亡くし 男手ひとつで 3人の子供を育て

ようやく一息ついたところで 長男が大腸がんに倒れる

悲しむ暇もなく長女も幼子を残して子宮がんに

そして今度は いよいよ次男に肺ガンが見つかり

片肺を摘出手術中とのこと

症状を聞くと あまり思わしくない

掛ける言葉が見つからない

見つからない言葉を探しあぐねて

   「頑張ったんですね」

     と禁句が口をつく

   「そうなんですよ 本当に本当に頑張ったんですよ」

     とすがりつくような声

たったひとりの身内であるお孫さんの付き添いもなく

一人ぼっちの その背中はあまりに小さくて

「私 手術が終わる迄 いますから」 と云うと

呪文のように続く『どうしてなんだ・・』の合間に

    「ありがとう」 が吐息に混じる


ふと 先日テレビで見た 金賢姫さんを思い出し

  「抱いてもいいですか」  と

  背中からギュッと抱きしめたくなった

親不孝な子供たちの代わりに

  「頑張ってくれて ありがとう」   と

   抱きしめたくて 涙がこぼれた 


  翌日 夫は無事に退院した





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火事場の手術

2009-03-13 18:04:16 | Weblog

夫の手術 ひとまず無事成功

後は切り取った細胞の病理検査の結果を待つのみ

まだまだ油断は出来ないけれど ひと山は越えたのかな


それにしても 手術の真っ最中に

     「只今、霊安室が燃えております」

  の院内放送には参った

緊張の時間待ちにはこれが一番と

 針を持つ手が一瞬止まった

外にも内にもさしたる騒ぎは見えないし聞こえない

炎はもちろん一筋の煙も見えない

あ、霊安室は地下か

そう言えば直前に地下の売店に出向いた際

尋常ならざる人並みとすれ違い

     「ん? この奥にホールでもあるのか」

  と感じたことを思い出す

あれは  「お静かに走らず退去下さい」 てことだったんだな

唯一の臨場感は 時折入る院内放送のお姉さんの

やたらに動揺しまくった言葉遣いと 焦りの息遣いのみ

まるで消火器片手に
   「い、今、ガンバって消してますからっ」
 とたったひとりで走って消化活動に…まさかね

結局、どうして霊安室が燃えたのかは分からず仕舞い
(想像はつくけど)

しばらくして

小型の消防車が2台と救急車が1台来た頃には

院内消防団の活躍?でほぼ鎮火状態だったらしい(後日談)


ホッとして 気持ちが夫の手術に戻りかけたとき

 息子が云った

  「良かったね 母さん  少しは気持ちが解れたでしょ」

 まったく どこまでも 前向きな奴・・・

    と思いつつ にっと笑って うなずいた

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虫退治

2009-03-07 12:16:19 | Weblog

 Aちゃん ごめん

何回も電話くれたのね

この前は思わせぶりな言い方で 

余計な心配かけちゃったよね ホントにごめん

あの時は まだはっきりしてなくて言えなかったけど

 お察しの通り 夫の肺の中に

悪い虫が棲みついているそうで

月半ばに手術での退治が決まった

それでも 5年の生存率は60%だそうで、、、

        
    つい先日も知り合いの お連れ合いの訃報を

      聞いたばかりでね

   ≪なんだよなんだよ 団塊世代の男どもは軟弱だね~≫

    とうそぶいて気を紛らわしたりしてる


主治医のB先生・・・・

診察室のドアを閉めた途端に もう思い出せないような顔で

顔というか 存在感・・?  薄い薄い

暑も厚も篤も熱も 感じ取れない人だった

    検査結果を家族とともに聞く予約時間を

    2時間待たせるなんて 最低の病院だよね

    悪い予感と不安が増幅して 吐きそうになった

    あれで確実に夫の肺の中の虫は増えたと思う

    それでもなんでも あそこで手術するしかないけど

 

そもそも私は 医者を信頼しなさすぎるところがあって

息子の入院したS会病院も

夫が以前入院したT大学病院も

義母が入院した国立Iセンターも

それぞれ それなりに評価の高い病院なのに

一歩間違えば・・・の不手際を感じたし

 

  なんて これじゃダメダメだよね

         ぐちぐちは今回限り

明るい未来を信じて・・・頑張るから

薄口先生を(笑)信じて 頑張るから、ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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星野さんの動物たち

2009-03-05 10:30:13 | Weblog

友人が一冊の写真集を貸してくれた

身体の隅々まで温まってゆく写真集

      感情の起伏振幅が激しくて

      オマケに他人様に向ける笑顔に

      ちょっぴり嘘の混じるこの頃

星野さんの写し撮った動物たちは

 凍てつく氷の地から

    遥か遠く山の頂から

       深い森の奥から 草原から

ひたひたと私の心に染み入ってきて

しばらく遠ざかっていた安眠を授けてくれた


明日は夫の主治医による説明日

転移の有無により 手術の有無が決まる

息子も同席してくれる

不安に思いながらも 仕事や家庭を持つ息子に

頼むことをためらう私に 夫は

 「どうしていつも遠慮がちなんだ
      息子じゃないか ウチも家族じゃないか」と云った

ふむ   いつのまにか

夫と息子の心の距離はずっと近くなっていたらしい

家族観の違いかも・・・いや同志愛の始まりか・・?

なんて思考が別の次元に飛んで

   少しだけ気持ちが和んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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強がり

2009-03-01 13:50:40 | Weblog

いつもの朝の散歩道
「あら」  の声に目をやると にこにこ顔のご婦人
「この犬、確か・・」
どうやらコロの 野良犬時代の知り合いらしい
久しぶりに 私とコロとの出会いの顛末を話す
奇しくもそこは 2年前にホーちゃんが落ちて死んだ
側溝の傍だったので それも聞いてもらった
お互いに犬好きだったので、話が弾んだ
「良かったね 良かったね」と コロを撫でる手も 弾んでいた

「それじゃ」と別れて しばらく歩いていたら
 後ろから
   「大丈夫 神様は見てますよお
    あなたは幸せになりますよお!」
 声が追いかけてきた
    くっと息が詰まった

幸せなんかどこにもありませんよ
   神様なんかどこにもいませんよ

    ・・・・何年も前から
    いつでも良いですよ 
    アナタの御都合の良いときにどうぞ、と
    右肩を心持傾けて 待っている私を
    するりとすり抜けて 神様は
     第二の人生に 生きがいを見つけて
    着実に歩きはじめた夫の肩を叩いた

  幸せなんかどこにもありませんよ

   「アナタに何がわかるのよ」
     
   八つ当たりがつい口から出そうになって
    うぐっと飲み込み

    『ありがとおございまあす!!・・・』 と
        にっこにこの笑顔を作って 大きく手を振った

 

 

 

 

 

 

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