本大好き・音楽大好き

図書館と古本屋さんをipodを連れ合いにして歩くのがほぼ日課

世情

2008-06-23 14:26:40 | Weblog

雨上がりの道をコロと散歩。


一台の車がスウッと徐行になった。


一瞬、指先が冷えて、引き綱が離れそうになる。


ちらと横目で見ると、金髪のちゃらちゃら兄ちゃんが。


わわと構える暇もなく、ぶいいんと速度を上げて


走りすぎてゆく。


一瞬の出来事。


ほっと緊張を解いた顔に、水しぶきがピシャリ。


軽トラが通り過ぎてゆく。

    
    ・・・・そうか。


彼は水溜りを避けてくれたんだ。

  
  やだね。 疑い深くなっちゃって。


遥か遠くに見える真っ黄色の車に

   
   ≪ありがとね≫  とコロと云った。

 
 ほこりと胸の奥が暖かくなった。

 

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一期一会

2008-06-01 23:16:50 | Weblog

図書館へ返本に行く道すがら、
空はすっきりと晴れ上がっているのに
胸の奥が淀んだままどうにも晴れない。


『バスに乗りたい』
突如そんな思いに駆られ駅へと踵を返す。


最寄りの駅から一番近い都内の駅で降りて
「一日乗車券」を手にするや
鬱屈した思いをバスに乗せて
  東京中を走り走る。


東京都庁、新宿御苑、歌舞伎町、
コマ劇場を横目で見て二丁目通りを走り抜ける。


青山墓地の、思いの外の広さと雑多な墓模様に
『うんうん、墓はこうあるべきだよね』
        と独りごちる。


前に座った中年男性の読む
「山でクマに会う方法」という本が気になり
話しかけたくてたまらない気持を抑える。


広尾の「有栖川公園」で少しだけ目を閉じて
鳥の声を聴く。



Kさんとは何故か同じバスに乗り合わせる。
銀髪の髪をすっきりとまとめ、斜め掛けの
手作りのバッグがおしゃれな婦人。


Kさんは必ず老婦人の隣にすわる。


「あなた、お幾つ?」
とっかかりはいつもそう。
「80歳です」
「あらそお。私はねもうすぐ95歳」
ひくりと鼻が動き、唇の端をくいと上げて待つ。
「あらあ!お若い~」という言葉を。


三度同じバスに乗り合わせ、座る場所も近い・・?
流石に偶然過ぎるよな、と思ったとたん
「ねえ。それでこのバスはどこ行き?」
と私の袖を引きつつ、話しかけられる。


今日はバスに乗る日。
誰にも話しかけない、話もしない。
そう自分と約束していたのに破ってしまった。


だって三度も同じ状況で聞き耳を立てていたから
気持ちの中ではすっかりお友達。
Kさんと云うお名前も、自慢のお歳も、
家族構成も、特にお嫁さん大好きということも。


今日はこの人、と決めてさりげなくついて歩くんだって。
「私、人を見る目はあるのよ」と小鼻をぴくり。
褒められた・・・・んだろうか。
知らずのうちに、私は本日の引率人だったってことかな。


それにしても、世の中には「生きる意味」なんぞ関係なく
気力、活力を鞄に詰め込んで颯爽と闊歩して歩く
「後期高齢者」の多いことったら。


すっかり打ち解けたKさんの去り際の言葉

 
 「明日はどんな人と出会えるかと思うと
      おちおち死んでなんかいられないわ」

   
   
      やらねばならぬ山積みを置いて
         「バス」に乗って本当に良かった。 

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