本大好き・音楽大好き

図書館と古本屋さんをipodを連れ合いにして歩くのがほぼ日課

K君のこと。

2007-11-01 21:17:09 | Weblog

K君は三十二歳の青年。
家族は両親と祖父母の五人。
兄弟はいない。

父親は単身赴任で不在。
母は病弱で寝たり起きたりが日常。
ほとんど祖母の手で育てられた。

引っ込み思案な性格故か
小中高の学生生活を鬱々と過ごし
高校を卒業する頃には人との係わりの煩わしさが
限界を超えるほどの辛さになり
以後引きこもるようになった。

それからの十数年を
彼がどう過ごしていたかは定かでない。


この八月、彼は思いを胸に抱き、外に出た。
ハローワークに行き職業訓練校に入校した。
ヘルパー二級の資格を得るために。

  
ハローワーク経由の講習は半端ではない。
  三ヶ月間、月~金曜日の終日を学び
  帰宅すると毎日復習をしてレポートを書き提出。
  実習も全員が確実に習得するまで繰り返し
  アイデア介護用品を制作出品
  グループ毎に介護壁新聞の発行等々。


彼は頑張った。
仲間の訓練生は云う。
・・自己紹介も殆ど聞き取れなかった
・・話しかけても話しかけても言葉が返ってこない。
・・でも云われたことはキチンと取り組んでたよ。
・・何かの拍子にふとこぼれた「笑顔」が
  たった一度だけ見た笑顔が心に残る・・。

最終日。
修了式の後、一人づつ言葉を置く。

彼はしばらく黙した後、ひっそりと
  
    「僕は明日からまた一人です」
                  
             と云った。

  そうか。
  K君、一人じゃなかったんだね。
  孤立してたんじゃなかったんだね。

              
               それなら大丈夫。  






コメント
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