本大好き・音楽大好き

図書館と古本屋さんをipodを連れ合いにして歩くのがほぼ日課

終の住処

2007-07-05 16:40:28 | Weblog


そこは山の中か森に近い場所がいい。
林の中でもいいかなあ。


住まいは小さな平屋。
玄関のドアを開けると居間とキッチンが見えて
ちょっと広めの居間を半分にしてアトリエに。
奥に寝室とクローゼット。


余分な物はいらない。
心地良い椅子がひとつと
猫たちがくつろぐ陽だまりの縁側。


余分な空間はいらない。
たまに訪れる人に
「ごめんなさいね、泊ってもらえなくて」
と申し訳無さそうに言うには
寝具もひと組でいい。


20分ほど歩くとバス停がひっそりと立っていて
午前と午後の、日に2本だけ書かれた
角のめくれた運行表が。


そこから30分ほど乗るとちょっとした町に出る。


週に幾度か命繋ぎに町に出る。


人生を語り合いたくなったらバスに乗る。


或る日はその町の
図書館の中庭で
日がな一日を本の世界で遊び


また或る日は
ふとした縁で知り合った人と
それこそ人生を語り合うかもしれない。


町の手芸屋で毛糸や布を買って
図書館の好きな絵本を
一冊、また一冊と作りためて


「読んでくれると嬉しい
      遊んでくれると嬉しい」


の言葉だけ残して旅立てたら
どんなに幸福だろうか。


家族は犬が一匹と猫が二匹。
どんなささいなこともとりあえずは異種協議。
でも決定権はもちろん私。


私も含めて放し飼いだから
生も死も己に委ねる。


玄関を出て斜め左に見事な枝ぶりの大樹が一本。
丈夫な紐を長さを調節出来るように掛けておく。
心穏やかに暮らせて
風も光もそよそよと体の中を
吹き抜けてゆける間は
紐を長く「ブランコ」にして時折り
体中をふわりふわりと舞い上げ
ゆらりゆらとりと揺らす。


朝の目覚めからどうにも心が塞ぎ
暮らしに色や匂いや暖かさが無くなって
心も体も痛む日が続くようになったら
最後の力を振り絞って
紐を短くして命を託す。


病院には行かない。
究極の在宅死。自然死。


・・そんなことは出来ないんだろうなあ。


誰の心にも傷を付けず
誰の心にも存在を残さず
まるでこの世には存在していなかったかのように
ひっそりと「丸ごと」消えたい。
それが夢。


唯一残したものは
無名で作りためた「布絵本」だけ。
なんという幸福だろうか。


・・・夢のまた夢のお話。

コメント (4)
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