松平記p71
翻刻
つき合けるに水野殿、石川を突伏せ、うちわをそへて、高名
被成候。大見藤六ハ、水野太郎作に突伏せられ、佐橋甚五郎
も爰にてうたれける。波切孫七郎ハ、家康自身追懸、鑓にて
後を二鑓突給へと、浅手なれハ、引拂退けり。味方も皆本陣
へ帰る。
一 正月十一日、針崎へ家康御出被成、敵も出、終日のせり合。
中根喜蔵と名乗味方の一番鑓、敵方には渡辺半之亟、鑓を
すてて太刀にてかかる。中根も手しげくかかられ、鑓を捨
て太刀をぬき、切合。互に手を負、相引に引ける処に、鵜殿十
郎三郎、渡辺を追かけ、討とらんとかかる。渡辺父源五左衛
現代語
水野藤十郎と石川新七が突きあいになったが、水野藤十郎が石川新七を突き伏せ、団扇を添えて高名、手柄をたてられた。大見藤六は水野太郎作に突き伏せられ、佐橋甚五郎もここに討たれた。波切孫七郎は、家康自身が追いかけ、鑓で後ろから二槍突いたが、傷が浅かったので、引き払って逃げて行った。味方も本陣に皆帰った。
一 正月11日、針崎勝鬘寺へ家康が出陣し、敵も出会い、一日中せり合った。中根喜蔵と名乗る味方の一番槍、敵方は渡辺半之亟(半蔵?)が立ち、渡辺は槍を捨てて刀でかかってきた。中根は何回も槍を突いたが、鑓を捨て太刀を抜き、切りあいになった。互いに傷を負い、ともに引こうとするところへ鵜殿十郎三郎が渡辺半之亟を追いかけ、討ち取ろうとした。渡辺半之亟の父源五左衛門
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