三中のにも、ひとり親家庭の生徒はいます。
私たちは、とかく「保護者」とか「親」というとき、父親と母親の両方がいる家庭を思い描きがちであると思います。
しかし、三中だけではなく、市内の小中学校では、ひとり親家庭の比率は増えています。
また、事情があり、祖母や祖父が親がわりになり、中学生を育てている家庭もあります。
ひとり親家庭の生徒は、社会的には貧困の問題につながりやすいとか、生活上の問題に直面しやすいとか言われることもありますが、私はそうは思いません。
統計上は、そういう傾向が見受けられるかもしれませんが、三中の子をみる限り、子どもの問題はその子次第です。
昨年度も母子家庭の生徒が3年生にいましたが、お母さんは早くから高校の情報を集め、本人もがんばりやさんで、高校進学を果たしました。
また、中学生になると、かりにひとり親だとしても、そのことを本人がどう受け止め、その状況で自分がどう生きていくかは、子ども自らが考え、決めなければばならない。
三中救育目標である「自立に向かう子」は、両親がいようが、ひとり親であろうが、自分の家庭環境を踏まえて、自分で自分の進むべき道を決めるのは同じです。
さて、そのような前置きをして、次の話題を提供します。
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子どもがまだ幼い頃に、父親が亡くなった母子家庭の話です。
母親は小さな個人商店で働いていて、一人で息子を育てていました。
息子は小学生の遊び盛りでしたが、遊園地や動物園に連れて行くことができず、母親は内心そのことをすまなく感じていました。
ある日のこと。
母親は職場で、プロ野球の観戦チケットを2枚もらいました。
息子は大喜びします。
当日、二人はいつもより少し豪華なお弁当を持って球場に行きました。
しかし、チケットを見せて中に入ろうとすると、係員に呼び止められました。
係員はすまなさそうに、二人にこう言いました。
「これは入場券ではなく、優待券です。入場するには一人1000円のチケットを買ってください」
野球観戦をしたことがなかった母親は、優待券を入場券と勘違いしいたのです。
いくら割引きしてもらっても、入場券を買える余裕のお金は持ち合わせていませんでした。
しかたなく、二人は外のベンチでお弁当を食べて球場をあとにしました。
(この話は次回に続く)
※ この話は西沢泰生さん著の『夜、寝る前に読むと心が「ほっ」とする50の物語』から引用しています。