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言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

年金未納率は意外に低い

2010-11-10 | 日記
三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 ( p.184 )

 マスメディアは年金の「世代格差」の広がりや国民年金の納付率 (が下がった件) を繰り返し報道し、国民の年金に対する信頼を損なっています。しかし、これだけは覚えておいて欲しいのですが、たとえどれだけ国民年金の納付率が下がったとしても、年金は破綻することはありませんし、保険料を払い続けている人が損をすることもありません。
 極めて (恐らく本書の中で最も) 大切な話なので、繰り返します。国民年金の納付率が下がっても、年金は破綻しませんし、保険料を払っている人は損をしません。損をするのは、別の人になります。
 すなわち、マスメディアの「年金不安」に騙され、
「どうせ、俺らが年寄りになったときは、年金は破綻してるし~」
 などと安易に考え、保険料を納めていない人「だけ」が損をします。なぜならば、この方々が高齢者になったとき、未納ゆえに年金を貰えないからです。

(中略)

 なぜ国民年金の未納が増えても年金が破綻しないかと言えば、単純に未納者の数が少ないためです。この「未納率」に関するマスメディアの報道手法は、極めて悪質なミスリードになっているため、誤解している人は多いと思います。
 例えば共同通信は、2009年5月1日に以下の見出しで国民年金の納付率について報道しました。

 『2009年5月1日 共同通信「国民年金納付率、過去最低の公算 08年度10ヵ月で61・1%」』

 記事の中で、共同通信は不況による雇用情勢の悪化で滞納が増え、2008年度の国民年金納付率が、過去最低だった02年の62・8%を下回る公算であると書いています。また、記事中には社会保険庁は年金記録同題に足を取られ、保険料の徴収に人手を割けず、納付率の大幅な向上は見込めないとの記述もあります。
 この種の年金に関する記事は、本当に悪質です。なぜならば、国民年金の納付率について書く際に、絶対に書き漏らしてはならない肝心なことを、二つとも書いていないからです。
「肝心なこと」とは、具体的には以下の二つになります。

 Ⅰ マスメディアで書かれる「国民年金納付率」とは、国民年金の第1号保険者 (2100万人) から、免除者を除いた1600万人に関する納付率にすぎない。実際にはサラリーマンなどの厚生年金加入者も、基礎年金として国民年金に加入している。結果、国民年金加入者の総計は7000万人を超えている。1600万の第1号保険者 (除免除者) の半分の800万人が未納になったとしても、「正しい国民年金納付率」は90%に近い。
 Ⅱ そもそも賦課方式である以上、今の現役世代が将来に貰う年金の原資は、その時点における現役世代の保険料や税金が原資となる。すなわち、今の現役世代がどれだけ未納をしようとも、将来的な年金の信頼性とはほとんど関わりがない (国家は未納者に対して年金を支払う義務がなく、その分だけ将来の年金支払い負担が軽くなるため) 。

 ⅠやⅡの説明なしに、ただ「国民年金納付率、過去最低」などの見出しで書かれると、普通の人であれば年金システムそのものに不安を感じて当然です。結果、年金保険料の支払いをやめてしまった人は、将来的にその人だけが大損をすることになります。それも、自分の人生を大きく左右するほどの大損害です。


 国民年金納付率が下がっていると報じられているが、年金は破綻しない。なぜなら未納率が本当は低いからである。マスコミの報道は極めて悪質なミスリードであり、報道を信じると騙されて損をする、と書かれています。



 (長くなるので引用は省略しますが) 著者は上記主張をしたうえで、厚生労働省の公表している予測 (今後100年程度の年金収支見積もり) を引用し、年金は破綻しない、と強調されています。

 (いい本だと思いますので、必要であれば直接本を買ってください)



 納付率に関する著者の主張は極めて説得的です。納付率に関するかぎり、著者の主張は正しいと考えてよいと思います。

 しかし、納付率は「見かけほど」下がっていない、という著者の主張が正しいとしても、だからといって、ただちに「年金が破綻しない」と言うには無理があります。

 なぜなら、「年金制度が破綻する」という主張の根拠は、納付率が下がっていることではなく、社会の高齢化と人口の減少だからです。年金が破綻しないように制度を変更すべきだ、と主張されている (経済) 学者もおられます (「年金は積立方式に移行すべき」参照 ) 。



 とすると、年金制度は

   「未納は意外に少ない」ので「納付率」が原因で破綻することはないが、
   「社会の高齢化・人口の減少」によって破綻する可能性はある、

ということになるのではないかと思います。

 もちろん、実際には (厚生労働省の予測が正しく) 破綻しないかもしれません。しかし、「年金制度の世代間公平」などを考えれば、年金制度の改革は避けられないのではないかと思います。



 また、著者が主張している「納付率」についても、「非正規雇用者は年金加入率が低い」背景には、年金保険料を払いたくても払う余裕がないといった事情があり、(払わなかった人の) 自己責任では片付けられないと思います。

司法修習生の労働者性

2010-11-09 | 日記
 「日弁連の「司法修習生に対する給費制維持」論について」のコメント欄において、

   司法修習生の給費制を維持すべき根拠 (反対意見) として、
     司法修習生は「補助的な業務」を行っており、
     司法修習生には労働者性が認められる (労働者と学生の中間である)

と指摘されましたので、この点について、私の意見を記します。

 しかし、私は専門家ではないので、意見がズレているかもしれません。その場合には、どなたか指摘してください。

 (「素人は意見を主張するな」という考えかたもありうるとは思いますが、「書く」と約束していますし、そもそもこのような考えかたが成り立つならば「すべて専門家=法律家の言う通りに給与を支給しろ」ということになり、民主主義ではなくなります )



 司法修習生は「補助的な業務」を行っていると主張されているのですが、問題は、それが「どの程度なのか」だと思います。

 ここで、コメントされた青龍さんによれば、

 新司法試験の司法修習は、10か月の実務庁修習と、2か月の集合修習に分けられます。
 実務庁修習では、検察・弁護・裁判所(民事・刑事)で2か月ずつ修習を行います(残り2か月は修習生の希望に応じて修習先が決定されます。)
 この内、修習生は、検察では警察から送致されてきた事件の捜査を行います。指導係の検事の判断を仰ぐことも多いですが、捜査のかなりの部分を修習生が担当します。裁判所においては、裁判官の下で法廷傍聴をする傍ら、記録を検討して、事案の概要や問題点を裁判官に報告します。弁護では、指導弁護士について法廷や打ち合わせ、法律相談に立会い、指導弁護士の指示の下で答弁書・準備書面等の文書を起案します(もちろんその全てが採用されるわけではありません)。
 このように、実務庁修習には、OJTの部分と研修の部分が混在しています。
であり、かつ、
検察修習では、修習生は捜査のかなりの部分を担当しています。要所要所で指導係の検事のチェックは入りますが、基本的に事件処理のほとんどは修習生が行い、修習生の起案を流用して検事が起案するという関係にありません(調書は例外)。これに対して、裁判所、弁護では、修習生によって異なりますが、指導にかけていただいている手間の方が大きいのは事実です。
というのですから、

 実質的に補助的な業務を行っているといえるのは (すくなくとも強く主張しうるのは) 、「検察修習の2か月間のみ」であると考えられます。とすれば、その2か月間の補助的業務性をもって、司法修習「全期間について」給費制を採用すべきであるというには「いささか無理がある」と思われます。



 次に、他の期間についても「まったく」労働者性がないとはいえない、さらに給費制を維持すべき根拠として、(司法修習生の労働者性以外の) 他の事情をも持ち出せば (併せ考慮すれば) 、「全期間について」給与を支給すべきであるという結論を導き得る、という主張について考えます。

 この主張は「さまざまな根拠を合わせる」という構成をとっているために、「根拠のひとつひとつ」について検討しなければならない、とも考えられるのですが、

 給費制を採用すべき「主な」根拠が労働者性であるとすると、その「主な」根拠ですら給費制の根拠として「いささか無理がある」と考えられますから、他の理由は「根拠として、もっと弱い」と考えられます。とすれば、「根拠のひとつひとつ」について検討せずとも、給費制維持論は「根拠がかなり弱い」と考えるのが、適切であるように思われます。



 もっとも、これは司法修習生に支給される「金額による」とも考えられます。しかし、実質的にみて「2か月間のみ」であるとするなら、それは「給与」といえるレベルの金額にはならないと考えられます。

 上記程度で給与を支給すべきであるとすれば、(一般の) 大学等で教授の研究を手伝っている学生にも給与を支給すべきであるということになりかねず、どこまでも「(給与を支給すべき) 実質的な労働者」の範囲が広がってしまいます。



 司法修習生の修習について、実質的に労働といえる部分があるとはいえ、その程度はわずかであると考えられます。したがって、司法修習生を学生として捉え、学生として扱うのが適切ではないかと思います。



■追記
 しかし、検察修習の際、「基本的に事件処理のほとんどは修習生が行」うことに問題はないのか、と考えるのは私が素人だからでしょうか? 司法修習生は「無資格者」ではないでしょうか?

中国経済がデフレ?

2010-11-09 | 日記
三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 ( p.105 )

 一時は世界経済希望の星などと歌われていた中国も、2009年7月のCPI (消費者物価指数) が前年同月比1・8%の低下となりました。同国のCPIは、これで6ヶ月連続のマイナスになります。
 また、中国はPPI (生産者物価指数) までもが、激しく低下する局面を迎えています。同月の中国におけるPPIはマイナス8・2%と、これまでにない大きな下落率を見せたのです。
 さらに、中国は一部の産業において、供給過剰が危険水域に突入している模様です。
 2009年5月、中国政府は国内の鉄鋼各社に対し「減産」の緊急命令を出し、世界を驚かせました。
 第一章において「政府は企業に指示も命令もできない」と書きましたが、あれは日本が正しく資本主義経済だからこそ言えるのです。表面的な資本主義を装いつつ、内実は共産主義そのままである中国は、政府が企業に命令することが普通に可能なわけです。
 中国政府は同国内の鉄鋼業界全体で、三割の余剰生産能力があると指摘し、命令に従わない場合は「罰則を適用する」と、かなり強い論調で企業に減産を強制しました。もちろん、中国政府が鉄鋼の減産命令を出したのは、史上初めてのことです。
 現在、公共投資による「内需拡大」を派手に喧伝している中国ですが、早くも需要の拡大を疑問視される状況になりつつあります。鉄鋼のみならず、銅やセメントなども供給過剰が明らかになっており、今後は減産対象製品が広がる可能性が高いのです。
 世界で最も成長しているはずの中国で、デフレーションが進行しているという事実は、金融企業や耐久消費財のメーカーの方々にとっては大変なショックでしょう。金融産業や耐久消費財産業は、どちらかと言えばインフレ期の方が売上や利益を伸ばすことができ、デフレは天敵なのです。


 中国では、消費者物価指数も生産者物価指数も下落している、と書かれています。



 しかし、

世界経済のネタ帳」の「中国のインフレ率の推移

を見ると、(一時期) 中国経済でCPIの下落がみられたとしても、全体の傾向としては、インフレ基調にあることがわかります。

 さらに、



REUTERS」の「中国インフレ率、11年は4%上回る見通し─政府研究員=新華社」( 2010年 11月 8日 09:59 JST )

 [上海 6日 ロイター] 新華社は6日、中国のインフレ率は来年、4%を上回り、インフレ圧力は2011年の最初の数カ月にピークとなる、と伝えた。中国国家情報センターの研究員の話として報じた。
 新華社によると、研究員はフォーラムで「中国は来年、強いインフレ圧力に直面する。上昇率は1─3月に最大となる」との見方を示した。

 中国の消費者物価指数(CPI)伸び率は9月は前年同月比3.6%となり、1年11カ月ぶりの高水準だった。ロイターの調査によると、11日に発表される予定の10月のCPI伸び率は4%に達する公算。

 中国政府は2010年の物価上昇率目標(上限)を3%としている。


 直近のCPIは上昇しており、来年は強いインフレ圧力に直面する、と報じられており、



 中国経済がデフレであるという著者の説には、いまひとつ、説得力がありません。

 ここで考えられる可能性は、次の二通りです。

   (1) 著者のいう「減産命令」によってインフレ基調を維持している、
   (2) 「一時的な」CPIの下落をもって、デフレ基調だと判断したのが間違い

 それでは、どちらが適切なのでしょうか。ここで、次の資料を引用します。



大紀元」の「マネーサプライ対GDP比、異常な260% バブルとインフレ危機の元凶=中国」( 10/11/05 07:00 )

 【大紀元日本11月4日】中国ではこのところ、不動産、食品、食糧、綿花などの価格が急騰しており、インフレ圧力が急激に増強した。中国人民銀行(中央銀行)によるマネーサプライの急増が主な原因であると専門家は相次いで指摘する。

 11月2日付「中国経済週刊」によると、中国人民銀行(中央銀行)の元副総裁で、現在全国人民代表大会(全人代、国会に相当)財政経済委員会の呉暁霊副主任は最近、「過去30年間、われわれはマネーサプライを急増させることで、経済の急速な発展を推し進めてきた」と認めた。同氏の話によると、「過去の一定期間、中央銀行にはマネーサプライの過剰な供給という問題がある。特に09年は、金融危機の対応政策として(中央銀行は)超金融緩和政策を採った」という。

(中略)

 1日に4度も変わる食用油の価格 国民生活が苦しい

 マネーサプライの急増で中国経済が大きく拡大したが、同時にインフレ圧力も一段と強まった。2日、国家発展改革委員会(発改会)が発表した10月の都市部食品小売価格調査によると、調査対象となる野菜、果物、食用油など31項目の商品のうち、24項目の価格がそれぞれ9月と比べて上昇している。同調査は北京、上海、重慶などの36の大中都市で行われている。

 また生産メーカー側の相次ぐ値上げにより、食用油、酒、インスタントラーメン、シャンプー、洗剤などの販売価格が10%から20%上昇。「価格表示が間に合わない」、「食用油を例にとると、1日に3、4回値上がりの通知を(生産メーカーから)受け取る。最も多い時は4回も値札を変えた」と北京のスーパーマーケット店員は嘆く。3人から5人家族の世帯の1か月の支出は少なくとも数百元は増えており、国民は物価高騰で生活苦に直面している。

 インフレ圧力を最も強く感じているのは台所を預かる主婦だ。広州市の6人家族を持つ主婦は、昨年と同じような水準の食事を維持するには今、倍近くの食費が必要だと話す。中国の各家庭では物価高騰の対策で、食用油やトイレットペーパーなどの生活に欠かせない物を大量に買い込んだり、生活費を切り詰めたりしているという。


 中国におけるインフレ圧力の原因は、マネーサプライの急増である。中国人民は生活必需品を大量に買い込んだり生活費を切り詰めたりしている、と報じられています。



 中国の人々が生活必需品を大量に買い込んだり、生活費を切り詰めたりしているならば、中国政府としては、「減産命令」を取り消し、「増産命令」を出すはずです。したがって、

   中国でみられたデフレは一時的なものであり、全体としてはインフレ基調である

と考えるべきだと思われます。



 もっとも、インフレの原因は、たんにマネーサプライの急増という金融政策的な側面によるものだとも考えられます。つまり、中国経済は「モノ余り」であるにもかかわらず、金融政策 (または為替政策) によって、インフレ傾向がみられるだけなのかもしれません。

 これについては、機会をみて、さらに考えたいと思います。

「『超法規的措置』は、取れないのか」

2010-11-08 | 日記
日本経済新聞」の「流出映像「海保編集と同一」 政府、刑事告発へ」( 2010/11/8 10:34 )

 衆院予算委員会は8日午前、菅直人首相と全閣僚が出席して今年度補正予算案に関する基本的質疑に入った。予算委に先立つ理事会で、尖閣沖での衝突事件を撮影したとみられるビデオ映像の流出について海上保安庁と法務省が報告し、映像は石垣海上保安部が編集したビデオと同一だと説明した。鈴木久泰海保庁長官は刑事告発の準備に入ったことも明らかにした。

 出席した議員によると鈴木長官は理事会で、インターネットに映像を投稿した個人は特定できていないと語り、調査には限界があるとの考えを示した。法務省の西川克行刑事局長は、検察から映像が流出した形跡は確認できないと説明した。

 ネットに投稿された映像は6本だった。海保が那覇地検の要請を受け、編集して提出した映像は4本だったことも報告した。

 政府の報告を受け、自民党は「説明はうのみにできない。ビデオは一般公開すべきだ」と全面公開を求めた。自民党など野党は国会審議で政府・与党の情報管理など危機管理体制をただし、攻勢を強める構えだ。


 政府は尖閣ビデオ流出の件で、いまだ投稿者を投定できていないものの、刑事告発の準備に入った、と報じられています。



 たしかに、尖閣諸島沖漁船衝突事件のビデオを勝手に流出させたことには、問題があるでしょう。

 しかし、おかしくないでしょうか。



 政府は、中国人船長の行為は公務執行妨害にあたるとしていたはずです。それは「超法規的措置」によって、事実上、非を問わない方針にしたはずです。それにもかかわらず、なぜ政府は、(ほぼ間違いなく) 日本国民による愛国的行為を、刑事告発しようとするのでしょうか?

   中国人による、日本を小馬鹿にする行為は
     「超法規的措置」によって非を問わないが、

   日本人による、日本を守ろうとする行為は
      「犯罪行為」であり、断固、刑事告発する、

というのでは、

   「いったい、どこの国の政府なのですか?」

と問いたくなります (「尖閣映像ユーチューブ流出に対する政府のコメントは「おかしく」ないか」参照 ) 。



 たしかに、ビデオを勝手に流出させたことには問題があります。それは私も否定しません。しかし、いかにもバランスが悪い。いまの内閣は、なにを考えているのか、と思いませんか?

 これ、おかしくないでしょうか?



 私としては、これこそまさに、

   「『超法規的措置』は、取れないのか」

と言いたい気分です (「この際、内閣総辞職されてはいかがでしょうか」参照 ) 。



■追記
 たったいま、リンク先のニュースが更新され (書き換えられ) ました。「海上保安庁は同日、容疑者不詳のまま、国家公務員法違反などの容疑で警視庁と東京地検に刑事告発した」と報じられています。すでに刑事告発されたようです。

日本のGDPの 99 %は「内需」である

2010-11-07 | 日記
三橋貴明 『高校生でもわかる日本経済のすごさ!』 ( p.96 )

 図2-6は日本の名目GDP (支出面) について、高度成長期からバブル崩壊までの百分比の推移をグラフ化したものです。日本の高度成長が「個人消費」「政府最終消費支出」そして「公共投資」の三大支出項目が増大し、膨らむ国内需要に対応するために「民間企業設備投資」が拡大した結果、達成されたことが分かります。
 GDP上の外需、すなわち純輸出 (※輸出-輸入) は、平均1%未満という極めて小さいシェアでしか推移していません。ちなみに、日本の純輸出がGDPに占める割合が絶頂に達したのは、1986年の4・0%でした。輸出大国 と思われがちな日本ではありますが、意外にもGDP上の外需 (純輸出) が5%に届いたことは、戦後はただの一度もないのです。
 二十世紀のみならず、直近の数値を見ても、日本の純輸出は極めて小さい値で推移しています。例えば日本の輸出対GDP比率が過去最高を更新した2007年でさえも、日本の純輸出はGDPの1・7%を占めるに過ぎません。同年の主要国の純輸出対GDP比率を見ると、中国が9・4%、ドイツが7・1%、ロシアが8・7%、シンガポールが28・9%となっており、一体全体日本のどこが外需依存なのか、筆者はますます理解ができなくなってしまいます。
 翌年の2008年に至っては、日本の純輸出対GDP比率は0・14%と、ほとんど誤差レベルにまで縮小してしまいました。同年の純輸出が占める割合が1%未満ということは、日本のGDPは99%以上が「内需」で構成されているという、衝撃の事実を意味しているのです。


 日本は輸出大国だと思われているが、実際には、日本のGDPは99%以上が「内需」で構成されている、と書かれています。



 この事実は重要だと思います。

 というのは、日本のGDPの99%以上が「内需」で構成されているとすれば、「ノーベル平和賞と、中国の立場」で引用した見解、すなわち

   中国は日本がいなくても経済的に問題はないが、
   日本は中国がいなければ経済的にやっていけない

といった見解は、事実に反していると言えるからです。

 「資本財中心の輸出と、日本の技術力」で引用・考察した内容をも考えれば、事実は逆であり、

   日本は中国がいなくても経済的に問題はないが、
   中国は日本がいなければ経済的にやっていけない

というべきである、と考えられます。



 このことからわかるのは、日本にとって、対中政策の自由度は高い、という事実です。経済的に、日本は中国なしでやっていける以上、対中政策にはかなりの自由度が認められます。逆に中国にとっては、対日政策の自由度はさほどないことになります (「中国は見かけほど強くないかもしれない」参照 ) 。

 したがって、日本は中国に遠慮しすぎる必要はなく、中国に対して毅然とした態度をとってよいし、また、とるべきである、と考えます。



■追記 ( 2011-11-22 )
 「日本のGDPは99%以上が『内需』で構成されている」と著者(三橋貴明)は書いていますが、これは「2008年」については、という話です。毎年そうだというわけではありません。しかし、2008年以外の年においても、日中の輸出依存度を比べれば、日本の輸出依存度のほうが「かなり低い」ことには変わりなく、「中国は日本がいなくても経済的に問題はないが、日本は中国がいなければ経済的にやっていけない」という主張が成り立たない以上、「日本は中国に遠慮しすぎる必要はなく、中国に対して毅然とした態度をとってよいし、また、とるべきである」という私の主張(結論)には問題がないと考えます。